生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第二十五話 『願望・欲望・希望・絶望』

 一ヶ月の自由期間最後の日。

 神殿に割り振られた部屋の一角では扉越しでも分かるほどの淫乱な喘ぎ声と甘い匂いが漂っていた。

 

「くぅ……ぁあ……んぅ!」

 

 左腕を背中へ回し、右手で胸を荒々しく揉んでいるセヴンスは膨らんでいるもう一つの胸をしゃぶるように吸う。

 責められて感じているような声を出すセリカはそれでも両手でセヴンスを抱きしめて離そうとしない。

 

 その行為はセヴンスが満足するまで永遠と続けられた。

 

 セヴンスが無事満足し、セリカを見る。

 セリカは身体に力が入らないのかグッタリとベッドで横になっていた。

 その目には精気の色は見えず、放心状態と言っても過言ではない。

 

 本来なら<性魔術>で精気を吸収するセリカがこんな状態になるはずはなく、これにも理由はあった。

 セヴンスが<性魔術>で勝ち、わざとセリカに負けるように、隅々まで極限に感じるように命令したからである。

 対戦面ではセリカに精気吸収させないのは効率に悪いが、今のセヴンスは溢れる感情を抑えきれない。

 原作のセリカと違って感情の一部が欠落している共通点を除けば、<性魔術>による感情制御をセリカは行っていない。

 だからこそ、セリカはセヴンスとの<性魔術>の時でも自然な反応を見せていたが、興味本位だろうか。

 愛しいセリカの感じる姿をもっと見ていたくなったのだ。

 言ってみれば、これは己の『願望』であり、満たされるのは己の『欲望』のみである。

 それを差し引いても、セリカの感じる姿は新鮮そのものだった。

 

 壊れたようなセリカの姿を見て、これをもう一度、いや何度も壊し続けたいと思えてしまうのは仕方ないことなのだろうか。

 放心状態のセリカに迫ったセヴンスは抵抗の色すら見せることのないセリカを貪り尽くした。

 

 行為を終えたセヴンスは完全に気絶してしまった後のセリカをそれでも堪能していた記憶を胸に仕舞いながらセリカの綺麗な蒼髪を優しく撫でた。

 

「刻まれた身体はさらに俺の色に染まったか」

 

 ただ必要以上に感じさせるだけではなく、<性魔術>を発動させてセヴンスはセリカを支配し続けていた。

 初期から従順だったセリカだが、蒼髪になってから感情的になるようになった。

 それでも命令は聞いてくれるので問題はなかったが、今のセヴンスはただセリカが欲しい。

 故に理由などなくてもセリカに<性魔術>で破れない命令を刻み込み『絶対服従』を永遠のものとする。

 茶番でしかないが、セヴンスは同じ命令を、同じ作業を、この一ヶ月間繰り返してきた。

 無意味だということは百も承知だった。

 それでも関係なく、この溢れる感情の赴くまま支配し続けてきたのだ。

 

「そういえば主様はなぜ俺を抱かないんだ?」

「……何言ってるんだ? 抱いたじゃん。さっきもお前が溺れるほど」

「いや、そっちじゃなくて……『肯定』したのに一度も俺を犯さないから気になった」

「ああ、そっちか。……お前は犯されたかったのか?」

「そうじゃない。単純な疑問だ。深い意味はないし、主様も深い意味がないなら言わなくてもいい」

「言うなと言われたら言いたくなるのが人間だ。と言ってもそれほど複雑な事情があるわけじゃねぇよ。まあ、なんだ。今ここでお前の処女を破って滅茶苦茶に引っ掻き回すのが『勿体無い』と思っただけだ。……それに……」

 

 なんだかんだで守ってきた初めてをこんな中途半端なところで散らしてグチャグチャにするのは一時の欲求が癒されるだけで意味がない。

 ここまで来たら次の戦争も勝ち抜いて二人で獣のように貪り合いたいと思ったのだ。

 我慢するという行為に慣れておらず、代わりにセリカの身体で遊ぶ時間が増えてしまったが、気にしなくなった。

 

 ……それに、セヴンスの見方ではセリカの大胸は素晴らしいが、それも感情補正が入っているのだろう。

 世間一般的に言えばセリカの大胸は平均より少し下くらいで……。

 いや、でも顔を埋めれるし、揉み心地は病み付きになるほど最高だ。

 ……そうは言っても……。

 

「…………」

 

 気づけばセリカの胸に視線が集まっていた。

 セリカもそれに気づいたのかセヴンスを見た後、自分の胸を見る。

 

 なんでセリカは自分の身体をペタペタと触り始めたのだろう……。

 

「……主様」

「……駄目だ、セリカ。その願いは俺の力を遥かに凌駕している」

「まだ何も言ってない。……それに主様にパイオツカイデーにしてもらおうなんて思ってない」

「よく知ってんなそんな言葉」

 

 妙な覚醒を迎えて蒼髪にイメージチェンジ(イメチェン)した影響の一つだろうか。

 セリカの謎知識に素直に感心していると、セリカはおもむろにセヴンスに擦り寄ってきて膝の上に乗ると首裏に手を回してくる。

 その顔は優しく微笑んでいた。

 まるで甘えるように誘っているかのように思えてゾクゾクするが理性を押さえつける。

 流石にこれ以上の負担をセリカにかければ明日の戦争にも影響してしまうかもしれない。

 なんだかんだ言って、今までロクな練習もせずにイチャイチャしていただけだったので、幾ら強化したとは言え、不安も募る。

 

「……この身体でも、俺を抱かないのか?」

「あん?」

 

 女体化したセリカは自身の胸を両手で挟み込むと谷間を作り、セヴンスを魅了するかのように見せつける。

 セリカの自分から行った行動に呆然としつつも、それがセヴンスを虜にする為の行動であることはわかった。

 

「……これでも主様の好きな胸はある」

「いや、別に胸が極端に好きなわけでもないが……胸があるって言っても……」

 

 別にセヴンスが特別巨乳好きというわけではない。

 セリカの腹筋を枕代わりに頭を置いた時も男性の肌にも関わらず、柔らかくて居眠りしてしまったことだってある。

 特に一つだけが好きというわけではなく、セリカの身体は至る所で満喫できる。

 

 だが、頑張って寄せているであろう胸を見て思わず……。

 

「…………っふ」

「死んでみるか?」

「おい、こら、よせ、やめろ!?」

 

 セリカの手にある刀を押し退けながら告げると、セリカは愛刀たる凶器を何気なく放り出し、セヴンスに甘えるように縋り付く。

 それは猫が人に甘えてくる動作と似ていたので優しく顎を撫でた。

 

 常に知り得ていることだったが、次の対戦で生存戦争は終了するらしい。

 生存戦争の終わりには誰が一番勝ち星が多いか発表されることになる。

 しかし、セヴンスは次の対戦相手が必ずファーストだとわかっていた。

 理由にはセヴンスはテンス以外の対戦相手には全勝しているし、テンスが一度も負けない限りは、高嶺咲に一敗しているファーストと当たるだろう。

 高嶺咲もセヴンスに不戦勝で負けているので、ここまで勝ち上がってこない限りは必ずファーストである。

 そもそも一年間が十二ヶ月なのに戦った相手はテンス、高嶺咲、セカンド、サード、そしてこれから戦うであろうファーストを合わせても五ヶ月しかない。

 残りの七ヶ月はどこに消えた? そう思えてくるが、気にしたら負けだろ思う。

 

「勝とうが負けようが次で最後。長期に渡って続いてきたこの悪夢もようやく終わりが見えてきたな」

「……むぅ」

「なんでお前はそんなに不機嫌なんだよ」

 

 セリカがセヴンスを不機嫌な態度で睨みつけているが、その理由がさっぱり思い当たらない。

 もしかすると転生特典として転生後もこき使われるのが嫌なのではないだろうか?

 流石のセヴンスでもセリカの視点から今までの扱いを緩和見てもあり得ない話ではないと思える。

 

 それにセヴンスが残りの日々や転生について語っている時に決まって不機嫌になる。

 最悪の場合は刀を振り回して話を逸らそうとするもんだから、怯えて過ごす日もあった。

 感情が豊かになって新鮮なセリカが見られるようになった反面、制御が今まで以上に難しくなった。

 だが、セヴンスには転生してまでセリカを束縛するほど外道でもない。

 

「別にいいんだぜ。嫌ならここに残ってても、元の世界に帰りたいなら俺から事前にメアに話をして記憶を取り戻させてから元の世界に送ってもらえるように便宜を計らうけど」

 

 転生特典のない転生は苦しい道のりになるとは思うが、次の人生について考えると逆に邪魔になる代物かも知れない。

 セヴンスはあくまでも日常を謳歌することだけが目的であり、非日常に憧れているわけでもない。

 学生時代のセヴンスだったなら少なからず興味は持っていたかも知れないが、今のセヴンスにはそんな感情は微塵もない。

 そもそも前世の知識という他の誰も手に入れたことのない能力があるので、無理してセリカを連れて行くよりも、学生時代をやり直して、充実した人生を満喫した方がお得かも知れない。

 

 まあ、なんだ。つまり、結論から言うとセリカは邪魔なわけで……。

 

「……行く!」

 

 この従者、主に向かって刀投げつけてきやがった。

 

「……さようでございますか」

 

 リスのように頬を膨らませて、セリカは『不満だ撫でろ』と言いたげに甘えるように顔を擦りつけて来る。

 その姿に微笑ましい感情を胸に抱きながら、セリカの頭へ手を伸ばす。

 

「うー……」

 

 髪の毛を乱暴に撫でると猫みたいな唸り声を出した。

 

「今更過ぎるかもしれないけど、今までよくお前も俺の命令を素直に従ってたよな。完全ブラックでいつ逃げ出されてもおかしくないって考えてたけど。やっぱり、転生特典の強制力でも働いてるのか?」

 

 どれだけ戦闘でセリカをこき使ったり、柔肌に傷を増やしていったのか覚えてもいない。他にも<性魔術>でセリカを不必要に責めたりしている以上はセヴンスに従う価値はない。

 従者と主という関係がなければ、とっくに刀で斬られているか、逃げ出されてもおかしくはない、ってことくらいは自覚している。

 

「……それは」

 

 セリカはセヴンスに撫でられながら、不安そうな顔をした後、不満気に唇を尖らせる。

 

「……主様が……いないと」

「俺が? いないと?」

「…………」

「この世界の『全てが揃って何もしなくていい幸せ』に押しつぶされそうだったから。記憶を無くした時点で行動に意味がなく、意味のないことをする必要性を感じなかった。あのままだと生きる必要すら失いそうで主様に縋った」

「そこまで大袈裟な話だったっけ?」

「この世界は主様の知ってる世界とはまるで違う、はず。狭間の世界、天界だからこそ、生きてても死んでてもどちらでも構わない。だからこそ、あそこで見捨てられてたら死んでた」

 

 転生特典でセリカを手に入れた当初も同じ結論に至っていたが、まさか本当に死ぬ間際まで追い詰められていたとは……。

 幸せも度が過ぎると全てが必要なくなって『生きる必要』すら危ぶまれる。

 理由のあるセヴンスに縋ることで自分の生きる理由をセヴンスに従うことにしたのだろう。

 原作ですら様々な問題がセリカに付きまとっていた。

 だからこそ、セリカは『生きる』ことができたのかもしれない。

 

 ――そして、次の対戦はやって来た。




元ネタ『悪女装』
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