生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

26 / 28
第二十六話 『第一位』

 第一位(ファースト)と呼ばれている黒髪の少年は、愛国心に満ちていた。

 内心に秘める愛国心は、欲望の表れでもある。

 この国が好きだ。この国を愛している。この国が欲しい。

 けれども、国に巣喰う国王に嫉妬と失望を抱えていた。

 なぜ、この程度の人材が国の代表に立っている?

 王とは指導者であり、国を導く者だ。民は王に従い道を切り開く者だ。

 国は王にとって財産であり、そこにいる民もまた王の財産である。

 その財産を食い潰して混乱を招き入れている国王が少年には許せなかった。

 

 ――簡単なことではない。思っている以上に難しいことだ。お前なんかではできるはずがない。

 

 簡単なことではないことは当然のことだろう。

 思っていた以上に難しい? それくらい想定しておけ。事が起こってから動くようでは国王なんて務まるわけがない。

 お前なんかにできるはずがない? 高い位置に立ってから己が特別な存在にでもなったつもりか?

 

 王とはこの世で最高の指導者であり、王の終わりは国の終わりを意味している。

 例え血縁者がいようとも、真の指導者の資格はない。

 意味を知らぬ者にとって、王という甘い汁を維持する為に、王という立場に立って甘い汁を吸うために。

 国に尽くし、民の為の王になる者は相応しくない。

 国とは王の力の一端に過ぎず、それを理解できぬ者は偽善者と罵られるだろう。

 国があるから王なのではない。

 そんな者達では、原初の王には届かない。

 

 誰かが言った。

 

『王は人の子ではない。王は神の子である』

 

 王とは栄光の神である。

 神とは人の欲望の中にこそ秘めている。満たされることのない欲望。上を目指すとさらに上が見えてしまう。

 

 自らの欲望を極めた者が王であるからこそ、欲望の頂点に君臨する王は栄光の神である。

 

 王は二人も必要ない。

 無能な王を脱落させたいが、この世界の国王と民は原初の王を失い破滅する定めから逃れる為に、民から選ばれた者を代表としている。

 破滅する未来から逃げる為の行為だとしても愚かとしか言い様がない。

 今まで王の示してきた道ばかりを歩いてきた模造品が、王の先の道を描くなど並大抵のことではない。

 そもそも、正規の指導者でもない無能が人気で選ばれただけで国を上手く導けるのかは別である。

 

 黒髪の少年は夢を見る。

 生まれてから一度も見たことのない夢を見るようになった。

 

 純白の片翼と漆黒の片翼を持つ、銀髪の美少女のメルティア=アークエンジェルが『今回』の生存戦争に置いて最初に出会った黒髪の少年。

 彼は第一位(ファースト)と呼ばれて、この生存戦争の遊戯主(ゲームマスター)を任された。

 ゲームマスターとは、場を支配し、ゲームを自分の選んだ物語へ進ませる存在である。

 故に少年は願う。

 己は神々の頂点に立ち、神々の願いを叶える礎となる。

 欲望を叶え、欲望のまま進んでいく。

 それはきっと自分以外の全てを不幸へと変えてしまうことになるだろう。

 人が世界の一部であるように、世界を苦しめて手に入れた欲望で王は娯楽で欲望を満たす。

 満たされない欲望を胸に、誰も到達できない欲望を手に入れる。




『神は栄光の王である』
 逆から読むと『王は栄光の神である』になる。
 しかも、この作品では、人間の欲望=人間が考える中で最高の神様 になる。
 王とは欲望の頂点に君臨する者。
 故に神々の頂点に君臨するとも言える。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告