生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第二十七話 『決着』

「堂々と僕の前に現れるなんて君はやはりどうしようもない愚者だったようだね」

「うるせぇよ。どうせ<悠久の幻影《アイ・スペース》>を張るお前なら俺の居場所なんぞ隠れてたって一発で探し当てられるんだろうが。そんな状態で単独行動なんてとった日には負け確定になっちまうだろう」

 

 神殿の外では余裕の笑みを浮かべる黒髪の少年と蒼髪の従者を連れている黒髪の青年が対峙していた。

 周りは既に青い世界に包まれており、決戦は既に火蓋を切っていた。

 

「今更僕の方から名乗る必要はないと思うけど、まあ所詮は戯れ合いだ。改めて名乗らせてもらおう。僕の名は第一位(ファースト)。この生存戦争の遊戯主(ゲームマスター)にして、神々の頂点に立つ『王』であり、神々の叡智の一つである召喚せし者だ」

「俺は第七位(セヴンス)。この生存戦争に巻き込まれた優勝候補の一人だ。原作は……見ての通り戦女神シリーズの主人公であるセリカ=シルフィルを連れ歩いている」

 

 名乗りは上げた。

 両者を縛る鎖はもう何も残っていないと見ていいだろう。

 どちらかが飛び出せば、その瞬間から勝負の火蓋は幕を開ける。

 そこからはただの殺し合い。

 どちらかが死ぬまで続く地獄。

 ただ一つ。ファーストを倒せる可能性が皆無であることを除けば。

 

「名乗りを上げて早速で悪いけど、さよなら」

「――っ」

 

 ファーストの言葉に動揺しながらも奴の思惑であり、何もしてこないと頭を無理矢理納得させようとする。

 しかし、嫌な予感は無くなるところか増していく。

 その理由は分からない。

 

「『神の見えざる掌』『不可視の一撃』『知覚不能の衝撃』」

「……くそがっ!」

 

 ファーストの口から次々と紡がれる言葉に違和感を覚えたセヴンスは納得させようとしていた頭を諦めさせて、後方へ下がる。

 しかし時既に遅し、まるで小槌に腹部を殴られたような衝撃がセヴンスを襲うと肺に溜まっていた空気が漏れ出し、嗚咽を上げながら吹き飛ばされる。

 蒼髪の神殺しはファーストの知覚できない速度で接近を図ろうとするが、セヴンスと同じように後方へ吹き飛ばされる。

 

「がはっ!? ……ぐっ……ぁ……」

「あははっ、弱いねぇ。そんなに弱くてよくここまで勝ち残ってこれたよね。そっちのセリカって子を見習いなよ。顔色一つ変えてないよ?」

 

 そんなことは分かっている。

 セヴンスにとってセリカは宝のような存在だが、同時にセヴンスではセリカを使いこなせないことはわかりきっていた。

 価値観からして全く噛み合っていないのだ。

 セヴンスが受けた一撃も、セリカが受けた一撃も、全く同じ攻撃にも関わらず、セヴンスは満身創痍。セリカは傷一つない。

 

「……セリ、カ。注意しろ。奴の攻撃は見えない。ただ透明にしては察知することすら出来なかった。彼奴が変な行動をとらなければ片鱗すら見えない」

「……大丈夫だ。『見えている』」

「……?」

 

 セリカの妙な言い回しに疑問を覚えたセヴンスだが、ゆっくりと迫るファーストを見て顔色を変える。

 すぐに立ち上がって逃げようと思ったが、腹部からこみ上げられてくる吐き気に襲われて上手く立ち上がれない。

 よく考えれば何処に逃げても無駄であることを思い出せるのだが、人間悲しいかな。

 冷静ではないほど、邪念が交じり、冷静な判断力を失う。

 

「それじゃあ終わりだ。これ以上、苦しむことがないように徹底的に、そしてこの一撃で終わらせてあげるよ」

「――来る!」

 

 負担の大きい身体に鞭打って動かし、後方へ滑るように移動するが、ファーストの笑みは崩れない。

 そうこうしている間にファーストのみに見える『神の見えざる掌』は文字通りセリカの横を通り過ぎ――なかった。

 セヴンスへ迫る直前に刀を取り出したセリカが高速移動でセヴンスの下へ駆けつけると虚空を斬りつける。

 意味不明な行動に疑問視していたセヴンスだったが、対照的にファーストはあからさまに顔色を変えてセリカを睨みつける。

 

「どういうことだ……! 君は『見えて』いるのか?」

 

 まるで仇敵でも殺さんとするかのように睨みつけるファーストに対して涼しげに目を逸らすセリカは何も答えない。

 

「答えろセリカ。一体何がどうなっている? なぜファーストは動揺しているんだ?」

「『見えている』『黄金の掌』『数多ある指先』」

「……!?」

 

 ファーストの驚き不機嫌になる顔を見てセヴンスは直感する。

 セリカはファーストの弱点となり得る不可視の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』が見えているのだ。

 

 そういえば、ファーストは一度だけ敗北している。

 その敗北がなければ、セヴンスはファーストと対決することはなかっただろう。

 ファーストが唯一敗北した相手はセヴンスの幼馴染である高嶺咲だ。

 高嶺咲は特別な眼を持ち<直死の魔眼>を開眼させている。

 見えざるものを見ることが出来る眼。

 そこに共通点があるのかもしれない。

 

 神々の叡智を持つ人間と女神から切り離された神殺し。

 

「あー……大分楽になってきた。なあ、ファースト。焦ってるところ悪いが一つ質問していいか?」

「何を言っている! 僕が、この僕がお前ら程度に焦るわけがないだろう。それに戦争を前にして敵に質問するなんてやはり愚者だね」

「何とでも言え。俺が聞きたいのはただ一つだ。前に<始まりの大地(イザヴェル)>で俺に協定を結ぶように依頼してきたよな」

「それがなんだ? 今更命乞いかい? 残念だけど今の僕は君に救いを与えてやるほど慈悲深くはないんだ」

「そうじゃねぇよ。俺が聞きたいのはお前が俺と対面する前からセリカがお前の能力が見えることを知っていたんじゃねぇか?」

「な、何を言っている!?」

「前々から疑問だったことがあるんだ。同盟を組むにしても基本的に俺達は一体一だ。俺のような予想外を外せばこの原則は守らねぇとならねぇよな。お前がゲームマスターだから問題ないと当初は思っていたが、進めば進むほどに疑問は膨らんだ。その大前提に当たるのが俺がお前より弱いと分かっていながら同盟を申し出たことだ」

「……」

「当たり、か。まあよく考えれば自分より弱い奴と組んで得られるメリットは少ないよな。二対一で追い込むにしても前から俺の転生特典を知っているかも知れないお前が俺だけを呼び出したのも不自然だ」

「……僕が前から君の能力を知っていたという根拠は?」

「そんなもんお前が自白しただろうが。『生存戦争で一番弱い君を選んだ』ってね」

「……なるほど。よくできた妄想だ」

「何とでも言え……兎に角、お前が否定しない以上は肯定として受け取るぞ」

「肯定した覚えもないけどね。……まあ、勝手にしなよ。解釈は人それぞれだ」

 

 するべき話を終えた両者は再び殺気を放つ。

 本当ならセヴンスが一方的に聞くだけではなく、ファーストからの質問もできる限りの範囲でなら受け入れるセヴンスだったが、相手が相手だ。

 迂闊な言葉を口にして下手に不利に追い込まれるほど腐ってもいない。

 

「セリカ。できる限り『腕』を潰せ。ファーストは邪魔にならない程度なら無視しても構わない。さっきのお前の行動で腕が潰れたのか弾かれたのか分からなかったが、取り敢えず全ての『腕』は潰して構わん」

「……わかった」

 

 突進するように敵前へ迫るセリカに驚きながらもファーストはその腕を伸ばしているらしい。

 見えない腕に翻弄されるだけならセヴンスのいる意味はないだろう。

 セヴンスは敵前逃亡するかのようにファーストの傍から離れていく。

 セヴンスの考えが正しければファーストの『腕』は自分の周囲にしか放てないかもしれない。

 例え周りへ拡散させることができたとしても逃げ回るセヴンスに集中を割いている間にセリカの勢いは上がっていく。

 しかし、セヴンスは腕が見えているわけでもなく、一歩でも間違えれば腕に捕まる危険性がある。

 故にその足を止めることは許されず、走り回る。

 腕がセヴンスを追っているのかなんて知りはしない。

 酸素不足で腹部から激痛が走るが、それでも止まらない。

 そして極限まで走り回ったセヴンスは<悠久の幻影(アイ・スペース)>が無事に解除されるまで死ぬ思いをしながら走り回り、最後には無言で地面に倒れた。

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