生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第九話 『第十位』

 後に第十位(テンス)と蔑まれる男の人生には常に軍服という枷が付きまとっていた。

 生まれた頃から戦場の中心で奇跡的に生き延びていた男に不満はない。

 これが当然だ。日常だ。ありふれた光景だ。

 生きるために産まれてきた男は死ぬために戦場へ身を投じるのみ。

 何も変わらない。何も変えられない。そんな日々が当然のように続いていくと本当に信じていた。

 

 ――そんな愚者の日々も絡繰が解けると終わりも告げる。

 

 軍服を来た青年は、外の世界を知ってしまった。

 それだけで歯車は容易く縺れる。

 自分はどうして彼らと違い死ぬ為に戦い、彼らはどうして自分とは違い日常で戦っているのだろう。

 男にとって平和は眩しく、喉から手が出るほど欲した。

 

 こうして、男は初めて軍服を脱ぎ捨て、平和を手にすることができた。

 今までの働きに免じて人生を楽しむだけの金額は貰ったが、男には関係なかった。

 これからは自分の知らない祝福に満ちた未知を体験するのだと心が躍った。

 そんな幻想が呆気なく崩れることも知らずに。

 

 男が目指した道は、外の世界を知ってしまったことで中途半端な結果を迎えた。

 平和を知らずに戦場を駆け回れば、英雄になれた可能性も、怪物と恐れられた可能性も残っていた。

 戦場を知らずに平和に生き続けていれば、経済を歯車となり、世間の荒波に立ち向かっていたかもしれない。

 中途半端な道を辿ったことで男は狭間を生き続ける。

 

 そして気づいてしまった。

 平和に生きる者達は、戦場の過酷差を知らず、戦場で生きる者達は、平和の素晴らしさを知らない。

 どちらが外の世界で、どちらが鳥籠の中なのか。

 何も知らず、誰かの為に戦場で生き続けることか。何も知らず、自分達の為に命をかけている者達のことも知らず、平和に浸り生き続けることか。

 

 そんな時だった。

 自分が進むべき道も分からなくなった人間の前に現れた純白の悪魔。

 漆黒の翼と純白の翼を生やし、銀髪美少女を自称する天人、メルティア=アークエンジェルと名乗る天使と出会ったのは……。

 

 戦場で迷う男に戦場と平和の狭間で生きるために戦い戦争を起こしている事実を銀髪の天使は告げた。

 何処から現れた。何故姿を現した。

 そんな疑問が湧いたが、それよりも重要視するべき問題を聞かされた。

 自分が悩み続けた世界は悪意の欠片に過ぎず、この『上位世界』こそ平和な世界であり、『下位世界』こそが戦場であったこと。

 そして、その狭間では生存を賭けて戦争が開始されそうだったこと。

 

 この世界は鳥籠で、さらに外の世界が、次の鳥籠が存在していた事実。

 これではキリがないのではないか?

 彼の生に意味などあったのだろうか。

 天使は告げる。

 

『貴様は世界の一部であり、歯車の欠片に過ぎない。行動、行為、自分にとって意味はなくとも、世界にはなくてはならぬ存在だ』

 

 男に逃げ場はない。

 否、必要もない。

 脱ぎ捨てた筈の軍服に身を包むと彼は戦場へ足を運んだ。

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