ネグレクトされた少年がトレセン学園で幸せになる話   作:山吹色ノ大妖精

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前回で書き忘れたことを載せときます。
ミノルは当時、心因性失声症でした。今パートからは普通に喋れます。


今の生活

 あれから八年経った。父と呼ばれた男は前に犯罪に手を染めていて逮捕された。本来息子と呼ばれる俺は孤児院に入れられる筈だったが、たづな母さんに引き取られることになった。この八年間でやったことと言えば勉強や母さんの手伝いなどをした。今ではトレーナー見習いや用務員をしている。

 

「ミノルさんおはよう!」

「おはようございます」

 

 グラウンドの整備をしていると朝練をしているウマ娘に挨拶をされている。最初は顔の火傷痕や雰囲気が悪く不気味がられるだけだったが、笑顔の練習をしたり、差し入れをあげることで次第に受け入れて貰えた。

 

「おう!ミノルじゃ無いか!」

「沖野師匠、おはようございます」

 

 後ろから声をかけられたので振り返ると、俺の師匠の沖野トレーナーがいた。自分には師匠が二人いて、もう一人は向こうでウマ娘の朝練を見ている東条師匠だ。ちなみに師匠呼びは嫌がられている。

 

「ミノルさん、おはようございます」

「あ、マックイーンさん!おはようございます!」

 

 沖野師匠の後ろからマックイーンさんが現れた。マックイーンさんはウマ娘の名門メジロ家のご令嬢だ。いつも目が合ったら手を振ってくれる愛想の良いヒトだ。

 

「マックイーンさん、これをどうぞ」

 

 そう言って俺が取り出したのは差し入れのコトコト人参スープの入った水筒だ。俺の自慢の得意料理で独自に編み出したものであり、食堂の方々にもレシピを秘匿している。

 

「あ、ありがとうございます・・・」

「あー!ずるいよマックイーン!ミノルー!ボクにもちょうだーい!」

「はいはい」

 

 差し入れをマックイーンさんに渡すとまた後ろからトウカイテイオーがやってきた。マックイーンさんとテイオーは沖野師匠の担当しているチームスピカに所属している。テイオーの要求に俺はもう一つの水筒を取り出して渡す。

 

「わーい!ありがとう、ミノル!」

「はいはい」

「・・・ねぇ、なんかボクに対しての対応雑じゃない?」

「そんなことないぞ?それじゃあ俺はこれで」

「おう!またな!」

「あ!待てぇ!」

 

 テイオーの言葉を否定してここから去る。用務員兼トレーナー見習いは多忙なのだ。次の仕事に着手するため俺は移動した。

 

 

 

 

「ミノルさん・・・」

 

 愛しい彼の背中を見て八年前を思い出す、転んで怪我した所に絆創膏ではなくチョコレートをくれた顔半分に火傷痕が残っている彼。久しぶりに会った時、彼は憶えてないだろうが、その特徴のある顔を見てすぐに思い出した。よく話しかけたり、目が合ったら手を振っているが効果は今ひとつだ。

 

「俺たちも行くか」

「わかりました」

「よーし!頑張るぞぉー!」

 

 いつか彼にいい所を見せるためにも今日も練習に集中する。

 

 

 

 

「失礼します。資料を持ってきました」

「歓迎ッ!入ってきたまえ」

 

理事長室に資料を持って入室する。理事長室にはたづな母さんとやよいさんが仕事をしている。俺はやよいさんに他のトレーナーさん達から預かっている資料を渡す。

 

「感謝ッ!いつも助かっているぞ!ミノル!」

「いえ、俺がやりたくてやってることですから、そこまでお礼を言わなくていいんですよ?」

「そこは素直に受け止めるところですよ、ミノル」

「はい、わかりました。母さん」

 

母さんの指摘を聞いて反省する。母さんは俺が間違った時や良くない所にはちゃんと言う。

 

「そういえばミノル、メジロマックイーンさんとはどうですか?」

「マックイーンさんと?」

「グラウンドの整備中にお話していたでしょ?」

「・・・・・・」

 

 何で知ってるの?

 

「グラウンドは理事長室から見えますよ」

「サラッと俺の考えていることを当てないでください」

 

 母さんは良く俺の考えていることを良く当てる。母さん曰く、顔に出ているとか。

 

「・・・まあ、良くしてくれてますよ。目が合ったら手を振ってくれますし」

「あらあら・・・」

「・・・何で笑ってるんですか?」

「ふふふ、我が息子の将来は安泰だなって思ってましたよ」

「何ですかそれ・・・」

 

 何のことかよくわからないよ・・・

 

「それでは失礼しました」

「うむ!またな!」

 

 俺はやよいさんに挨拶をして理事長室から出る。よーし、他にもやることは沢山あるからな、どんどん行こう。

 

 

 

 

「道のりは長いですねぇ・・・」

「うむ・・・それとたづなよ」

「はい、何でしょうか?」

「実はな・・・そろそろ彼にもウマ娘の担当をしてもらおうと思っていてな」

「・・・そうですか」

 

 ミノルが出た後、たづなは息子の将来を想像しているが、自分の発言に考慮する。ウマ娘のトレーナーは昔から人手不足。彼には良きトレーナーになってもらうべく、敏腕のトレーナーに時間を作ってもらって教育している。定期的にやっているテストをやらせた結果、十分な腕であることも確認した。しかし、たづなは息子がトレーナーになることには少々渋っていた。理由はウマ娘の性質にあるがここでは省く。

 

「いいですよ」

「ッ!本当か!」

「『可愛い子には旅をさせよ』ですよ。このことは私から言います」

「感謝ッ!それでは資料の準備をしよう!」

 

 たづなから許可を得たので彼がトレーナー試験を受けれるように手配を始める。彼は間違いなく逸材である。ここで腐らせるわけにはいけないと思いながら仕事を再開した。

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