ネグレクトされた少年がトレセン学園で幸せになる話 作:山吹色ノ大妖精
キタちゃんとダイヤちゃんのトレーニングが夕方に終わり、二人が帰った後に書類を整理すべく自身のトレーナー室へ向かおうとすると、草むらが揺れてドスンという音が聞こえた。
「うん?・・・誰かいるのか?」
もし誰かが倒れていたら大変だ。そう思いながら草むらに近づく、するとそこにはアグネスデジタルが口から血を流しながら倒れていた。
「あぁ・・・またか」
彼女はウマ娘の尊さとやらで血を出して倒れている所をよく発見されているらしく、そのヤバさはあの破天荒なゴールドシップでさえやべーやつと評されるほどにヤバい。
「このままにしても自然と回復しそうだが、そういうわけには行かないな」
俺は独り言をこぼしながらアグネスデジタルを背負って彼女が休める場所に移動した。この時間帯では保健室は閉まっているのでトレーナー室に向かった。途中後ろから『ウェヒヒ・・・』と聞こえたが無視することにした。そんな中ようやくトレーナー室に到着したら彼女をソファに寝かせて自分は書類作業
に入った。それから30分位経った時にアグネスデジタルは起きた。
「むぅ・・・アレ?ここは・・・」
「俺のトレーナー室だ。草むらに倒れていたお前をここまで運んだ」
「駿川ミノルさん!?そしてトレーナー室・・・そ、それはありがとうございます。私はもう大丈夫なので、これd・・・ウェエ!?」
「うぉっ!?ど、どうしかしたか?」
「そ、そのぱかプチは・・・まさかッ!?」
アグネスデジタルは起きるや否やここから出ようとすると、突然奇声を発しながら俺の方に凝視した。突然の事態に混乱していると、アグネスデジタルは俺の・・・いや、机の上に置いてあるぱかプチを手で指し向けてそう言った。
「これ?このぱかプチがどうしたの?」
「それは作成されてから発売されるまでにとある事情で販売中止されて数が少数しかない幻のぱかプチではありませんかぁあああ!?」
「お、おう・・・」
凄い早口でなんか言っているけど、最後の幻のぱかプチって言ってたから、これって凄いものだったのかな?
「そ、それを何処で・・・?」
「あぁ・・・それね、恐らく俺の父親が適当に買ってくれたものなんだけど・・・」
「トレーナーさんの・・・ですか?」
「まあ、うん。殴られてばかりで、顔は忘れてしまったけど」
「え・・・?」
そう言いながら顔の火傷痕に触れる。父親に付けられた消えない傷、それを見たアグネスデジタルは気まずそうにしていた。
「ごめん。気持ち悪い話をしたね」
「い、いえ!これは聞いてしまった私の落ち度です!」
「話を戻すけど・・・実際は物心ついた時から手元にあっただけだね」
「そ、そうですか・・・」
未だ気まずそうにしているアグネスデジタルを見て雰囲気を変えようと、ふと思ったことを言ってみた。
「このぱかプチの写真撮る?」
「ウェッ!?い、イイんですか!?」
「それくらいなら別に構わないよ」
俺がそう言うと、アグネスデジタルは恐る恐るスマホを取り出し、パシャリと鳴らす。
「えっと・・・念のため全角度で撮ってもよろしいでしょうか?」
「うん?それくらいなら構わない」
「あ、ありがとうございますぅ!」
アグネスデジタルはそう言って幻のぱかプチとやらを前言通りに360°あらゆる角度から写真を撮った。
「きょ、今日は本当にありがとうございます!」
「どういたしまして。それと倒れる場所は考えてくださいよ?」
「は、はい。それでは失礼しました」
そう言ってアグネスデジタルはトレーナー室から出て行った。それを見送った俺は席に戻り、机にあるアグネスデジタルが言っていた幻のパカプチを見る。
「幻のぱかプチ・・・実際はどんな名前なんだ?お前は」
「トキノミノルですよ。ミノル」
そう言ってトレーナー室に入ってきたのは母さんだった。
「トキノミノル?」
「そうですよ。貴方の名前の元で、私は貴方に幸せの時間が実るように願って名付けたんですよ」
「へぇ・・・そうだったんだ」
母さんに付けてくれた名前の意味を教えて貰った俺はもう一度トキノミノルのぱかプチを見つめた。
「もう遅いですし、今日は一緒に食べましょう」
「いいんですか!?俺、カレーを食べたいです!」
「ふふっ、いいですよ」
そう言ってくれた母と一緒に、俺は外食でカレーを食べた。