ソードアート・オンライン 〜君と共に〜   作:楽々亭

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第54話 世界の終焉と旅路の涯

 

 千の欠片となって散った筈のカイトが次に目にした光景は、夕陽によって紅く染め上げられた空と雲。風に乗って目的もなく流れる雲の群をぼんやり眺めること数秒、思考がようやくハッキリとし出したので、彼は手始めに自分がどこにいるのか整理し始めた。

 彼が今立っている場所は、まごうことなき空の上。重力に従って真下へ落下しないのは、足下に透明な水晶のパネルがあるからだ。つま先で軽く叩いてみるが強度は申し分ないらしく、突然ガラスのように割れてゲームオーバー、という事態にはならなさそうだ。

 周囲を見渡せば、最初に目に映った景色同様、どこまでも続く夕焼け空が広がっている。遥か彼方の夕陽は地平線に向かって少しずつ進行し、この光景も時間が経てば身を潜めて闇に包まれるだろう。そうなって欲しくないと思ってしまうのは、心の何処かでこの絶景をいつまでも眺めていたいと望んでいるからなのかもしれない。仄かな赤金色に化粧された雲は、現実世界でも滅多に見れないほど鮮やかな色合いだった。

 

(オレは……死んだんだよな……?)

 

 ヒースクリフに剣を突き立てられた胸の中心部を触る。

 この絶景の前に記憶しているのは、胸を貫かれ、HPゲージがゆっくりとゼロに下降し、死の宣告を受けたこと。

 そこから更に記憶を掘り下げると、見る見るうちに顔が青ざめ、泣き顔一歩手前にまで変化したユキの顔。

 そこまで思い出したことで、ようやくカイトは確信に至った。

 

(あぁ、やっぱりオレは死んだんだ……。それにしても……)

 

 彼にはまだ、気がかりなことがあった。

 アバターが消滅してからそう時間を置かず、ナーブギアの高出力マイクロウィーブにより脳が破壊されて死に至るのだとばかり思っていたが、その様子は一切ない。こうして意識を保っているということは、病院のベッドで寝ているであろう自分の身体は未だ機能しているということになる。

 もしかするとここは死後の世界なのかもしれない――――という仮説を立証すべく、試しに右手を伸ばして軽く振り下ろすと、見慣れた紫色のシステムウィンドウが出現した。つまりここは死後の世界ではなく、アインクラッドの中らしい。

 では、今の自分が置かれている状況は何なのか?

 疑問をそのままにウィンドウを見つめると、目の前には【最終フェイズ実行中 現在18%完了】の文字。いつもの装備品やアイテム欄はなく、その文字だけが映し出されている。意味がわからず、首を傾げたところで――。

 

 ――コツッ……

 

 ――足音が彼の聴覚を刺激したため、カイトは音の発生源に顔を向けた。

 真っ直ぐカイトに目を向けて歩み寄ってくるのは、白シャツにネクタイを締め、白衣を着た研究者を思わせる風貌の男。身体の線は細く、顔立ちは鋭角的だが、金属質な双眸にカイトは引き寄せられていた。

 そしてその男を見た途端、頭の片隅にチクリと何かが刺さる。男の印象的な眼は、何処かで見た覚えがあるからだ。だが、どこで見たのかまでは思い出せない。

 

「えっと……誰?」

「そうか、君は現実での私の姿を知らないのだね。私は茅場晶彦。アインクラッドでは、ヒースクリフと名乗っていた」

 

 つい先程まで対峙していた最強の敵が、カイトの前に立っていた。

 ゲーム雑誌などで茅場の写真を見た事はあるが、そこまで熱心に開発者の姿を刻みつけた覚えはなく、ましてや最後に見たのは2年も前だ。カイトが茅場の現実での姿を思い出すのは、断片的にでも不可能だった。

 

「ゲーム開発者がわざわざ見送りに来てくれるなんて光栄だね。他の死んだプレイヤーにも、同じような事をしていたのか?」

「まさか。これは私が君と話をしたいがために、この場を設けたのだよ。私はキリト君に対して多大な興味を持っていたが、カイト君に対しても、同様に興味を抱いていた」

「誤解を招く言い方はやめろ。気色悪い」

 

 間髪入れずに入れたカイトの鋭いツッコミなど意に介さず、茅場は話を続けた。

 

「君は、FNCというのを知っているか?」

「唐突だな。ええと、確か……フルダイブ不適合(ノン・コンフォーミング)、だっけ?」

 

 FNC――フルダイブ不適合(ノン・コンフォーミング)――とは、フルダイブマシン装着者がフルダイブ環境下において何らかの障害を生じてしまうことだ。大抵は五感のどれかが機能しない、脳との通信にタイムラグが生じてしまうといったものだが、極稀にダイブ自体が出来ないというものもある。これはナーブギアを最初に装着した際に行われる接続テストで判明するが、判定が出たところでゲームが出来ないわけではない。症状の度合いにもよるが、フルダイブ環境を楽しむことは一応可能だ。

 

「そう。君も知っての通り、フルダイブ環境下での適格性を欠くというものだ。その中でも視覚野のFNC判定は、ことSAOにおいては致命的だと言わざるを得ない」

「そりゃあ、まぁ……」

 

 通常のMMORPGならば、中・遠距離攻撃を得意とする魔法使い(メイジ)弓使い(アーチャー)があるが、SAOの基本は近距離戦闘――つまり剣だ。視覚のFNC判定を受けた者は遠近感が掴めないため、剣を使う戦闘は不向きである。

 一応SAOにも遠距離武器はあるが、ダメージは微々たるものなので、主武装にはなり得ない。

 

「視覚に異常判定が出た場合は遠近感、つまり奥行きが掴めなくなるのが特徴だが、実はSAOで実装されているバッドステータスの中で、それに限りなく近い状態になるものがある。それこそが、《盲目(ブラインドネス)》だ」

 

 それは実に耳慣れた、これまでカイトも幾度となく苦しめられたものだ。ここ最近ではユキとのデュエルで陥ったのが記憶に新しい。

 

「但しこれは先程の私のように両目ではなく、片目の欠損になった場合に限られる。剣を振れば何もない空間を切り、回避したと思えば身を刻まれることも往往にして起こりうるだろう。このように通常は剣での戦闘が困難になるのだが、あろうことか私が抱いていたその認識を覆し、平常時と遜色ない戦いをやってのけた者がいた。それが君だ」

 

 茅場は鋭い眼光をカイトに向けて言い放つ。確かに、言われた本人にも心当たりがあった。

 75層のコロシアムで行われたユキとの勝負。戦闘中にユキの攻撃で片目を欠損し、その影響で《盲目(ブラインドネス)》となった。その時は確かに距離感を掴めず戸惑ったが、これまでの経験で染み付いた感覚と愛剣の切っ先から柄までの長さを利用し、ハンデを背負いつつも彼女と渡り合ったのだ。辛くも勝利したが、内心ヒヤヒヤだったのをカイトは鮮明に覚えている。

 

「私は確信したよ。その時、既にカイト君は《治療術》を習得済みだったが、ロックされているユニークスキルの内の1つ、《射撃》を取得するのは君なのだ、と」

 

 《射撃》というからには、遠距離武器関係のスキルなのだろうが、現時点での遠距離武器は投擲用のピックやスリングぐらいしかない。もしかしたら《射撃》の解放と共に、NPCショップで弓やボウガンといった武器の販売がされるようになったのかもしれないが、最早カイトにそれを知る術はなく、わかっているのは茅場だけだ。

 

「なんでそう思ったんだ? そもそも、1人で複数のユニークスキルを取得出来るものなのか?」

「……まずは1つ目の質問から答えよう。ユニークスキルの取得条件はそれぞれ異なるが、《神聖剣》を除き、取得条件の内容は個々の持つ能力によるものと、プレイヤーの実績やアイテムを要件とする2つに大別される。例えば前者は《二刀流》や《射撃》、後者は《治療術》が挙げられる」

「そういえば、《二刀流》の取得条件は『全プレイヤー中で最高の反応速度を持つ者』って言ってたよな? つまり、潜在能力みたいなものが関わってくるのか?」

「その通り。《射撃》に関していえば、『全プレイヤー中で空間認識能力が最も秀でた者』だ」

 

 空間認識能力とは、三次元空間における物体の位置・方向・間隔といった状態を正確に把握し、認識する能力のことだ。

 例えば、飛んでくるボールの大きさ、位置、距離感を瞬時に判断し、キャッチあるいは回避する際にも、この空間認識能力が関係してくる。

 

「50層のフロアボス戦で、君は突如現れた4体の取り巻きを相手しただろう? その時、君は片手剣の範囲技を繰り出したはずだ」

「そ、そうだったっけ……?」

「そうだ。そして君は取り巻き4体を絶妙なタイミングで同時に吹き飛ばすため、危機迫る状況下で瞬時に判断し、立ち位置を調整してからソードスキルを放った。あの動きは四方からくるモンスター達と自分との距離感を正確に把握している……つまり、空間認識能力が高くないと出来ない芸当だ」

 

 自分はフロアボスの相手をしていた筈なのに、よくそこまで他の奴に目を向けていられるなぁ、とカイトは内心で感嘆の声を漏らす。

 

「そして時間が掛かってしまったが、ユキ君とのデュエルで彼女に片目の欠損状態を故意に作るよう指示し、君の空間認識能力がどの程度のものかを確かめさせてもらった。並の者なら彼女の剣技に抗う暇もなく決着が着くところだが……私の目に狂いはなかった。これこそ、君が《射撃》を取得すると思った理由であり、1つ目の質問の答えだ」

 

 カイトはこの能力が高いが故に、片目の欠損状態であっても体制を立て直し、ユキとの戦闘で勝利を収めることができたのだ。

 そして自覚こそなかったが、自分には他のSAOプレイヤーより秀でた能力があったのだと認識すると、カイトはどこか誇らしげな気持ちになれた。

 

「次に2つ目の質問だが、結論から言えば、ユニークスキルの同時取得は可能だ。『1つのスキルを取得できるのは1人だけ』であって、『1人が取得できるのは1つのスキル』ではないからね。だが、個々の持つ能力で全プレイヤーの頂点に2つ以上君臨するのは非常に難しい」

「というより不可能だろ」

 

 カイトの鋭い指摘に、茅場は静かに首を縦に動かした。

 

「だけどオレの《治療術》みたいな、取得条件に能力の高さが関わらないやつなら、複数のスキル保持もあり得なくない、と。……ところで、《治療術》の取得条件って何なんだ? さっきの話だと、《治療術》の取得はプレイヤーの実績やアイテムが関係してるって言ってたけど、オレとしては全然心当たりないし」

「それは君が単に思い出せていないだけだ。過去を振り返ってよく考えてみてくれたまえ」

 

 腕を組み、カイトは言われるがままに過去の記憶を遡ってみる。

 プレイヤーの実績で考えるならば、『特定のモンスターを最も多く狩った』とかが浮かぶが、誰かに誇れるような討伐数は自分にはない。感覚的には《アリ谷》の巨大アリを一番狩ったとか思うが、キリトとどっちが上かと問われれば微妙なところだ。

 アイテムの線でも考えてみるが、ユニークスキル取得要件のアイテムともなれば、サーバーで1つしかないものだろう。しかし、そんな超がつくほどのレアアイテムは、アイテムストレージの何処を探しても永遠に見つからない自信が彼にはあった。

 脳から湯気が出るほど考えてみるものの、全くと言っていいほど閃かない。降参(リザイン)! の一言を告げようとしたその瞬間、茅場の口から声が漏れた。

 

「では問おう。君は先の戦いで自らの身体が四散する感覚を味わった筈だが、その感覚に覚えはないか? ……君は知っている筈だ。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………あっ!!?」

 

 もたらされたヒントを元に茅場が何を言いたいのか察し、カイトの脳裏に当時の記憶が蘇る。

 

 激戦に次ぐ激戦。

 阿鼻叫喚の地獄絵図。

 少女を助けた代償として、自分の胸に深々と突き刺さっている毒針。

 直後、砕けたボスの後を追うようにして空中で四散するアバター。

 にも関わらず、死地から奇跡的に復活したのは、掌に収まるほどの小さな結晶アイテム。紛れもない奇跡を引き起こし、カイトの魂を呼び戻したそれは、奇怪なサンタクロースからのクリスマスプレゼントだった。

 

「《還魂の聖晶石》……」

 

 10秒という制約時間はあるが、この世界で唯一の蘇生アイテム。このアイテムをクラインが使っていたからこそ、カイトはその後もプレイヤーとしてい続けられたのだ。

 カイトが答えに気付いた事に満足したのか、茅場の口角がわずかに持ち上がり、微笑した。

 

「蘇生アイテムはSAOのサーバー内であれひとつしかない。あのアイテムは誰もが喉から手が出るほど欲しがる死者復活アイテムであると同時に、効果対象者に《治療術》を取得させるトリガーを兼ね備えた、いわばキーアイテムの役割も担っていたのだ」

 

 死の淵から生還を成し遂げるだけでなく、その手に蘇生アイテムの力の欠片――『癒し』を付与して舞い戻る。カイトは手に余るほどの『特別』を宿した掌を、じっと見つめた。この手があったからこそ、これまで救えた命があったのだ。

 

「そして《治療術》の面白いところは、スキルをどう行使するかでスキル保持者(ホルダー)の人間模様を映し出すことだ。己を顧みずに文字通り命を削って行使するのか、あるいは己の命を最優先で行使するのか。君がどちら側の人間だったのかは……身を呈してキリト君とアスナ君を庇った行動が示しているな」

 

 もしかしたら、あの場を切り抜ける方法が他にあったのかもしれない。そもそも庇う必要性はなく、ヒースクリフの技後硬直を待ってから動き、安全にゲームクリアを成し遂げることも出来た。

 しかしそれはアスナの命を見捨てるのと同義であり、それならいっそ自分の身を差し出したほうが早いと、カイトの心がそう答えを導き出した。彼の頭に浮かんだ最善手は、あれ以外なかったのだ。

 

「さて、随分と遠回りしてしまったが、君と話をする機会を設けたのは、1つ頼み事をしたくてね」

「頼み?」

「あぁ。実はこれまで外部からカーディナルシステムへ連日にわたり侵入を企む者がいたのだが、2週間ほど前からピタリとその動向が止んだ。杞憂で済めば良いのだが、生憎私の魂は現実に帰還する術を既に持ち合わせていない。なので君が現実へ戻った際にこの世界と関係のある由々しき事態が起こっていた場合、可能な限りその解決に尽力してくれないか?」

「ちょ、ちょっと待て。オレは探偵でもなければ警察でもないし、現実だと只の学生だぞ。そんな事出来るわけが――」

「だから言っただろう。『可能な限り』と」

 

 茅場は何の意図があってこんな頼みをするのか、カイトはさっぱりわからなかった。そもそも依頼の内容が曖昧であるため、具体的な方法も示唆されない。

 茅場の『依頼』に対してカイトは逡巡し、少しでも彼の真意を探ろうと双眸を注視する。しかし、茅場の表情は一切変わらず、向けられた視線に対して真っ直ぐ見返してきた。瞳の奥で何を考えているのかは、不可視のフィルターに阻まれて読み取れない。

 数秒の沈黙を要し、カイトは肩を大きく落として溜息をついた。

 

「……わかった。内容は意味不明だけど、頭には留めておくよ。『可能な限り』やらせてもらう」

「君ならそう言ってくれると思っていたよ」

 

 最初からカイトが断らないと踏んでいたのだろう。その言い方には、確信めいたものがチラついていた。

 

「ただし条件がある。もしもあんたの危惧する事が起こっていてオレがそれに取り組み、なんらかの障害が発生した場合、力を貸すことを約束してくれ」

「それは不可能だ。さっきも言ったが、私は現実世界に戻ることが出来ない。茅場晶彦の肉体はこのゲームが崩壊すれば、魂を持たない只の抜け殻に成り果てるのだから」

「確かにそう言ってたが、さっきと少し言い方が違うな。正しくは『()()()()現実に帰還する術を持ち合わせていない』だ。その言い方だと、魂は仮想世界に残り続ける、って意味にも捉えられなくないか?」

 

 どこか引っかかる言い方をすると感じたカイトは、訝しんだ内容を遠慮なく茅場に突きつけた。それに対して誤魔化すことはせず、茅場は微笑して応答する。

 

「中々鋭い指摘だ。しかし、この後私の意思を仮想世界に留められる確率は千分の一もない。それでも、私がその可能性を掴み取り、再び君の前に現れると思うのかね?」

「思う。あんたはここで死ぬような奴じゃない」

 

 なにをどうするのか知らないが、茅場は自らの意思――脳の電気反応――をデジタルコードに置き換え、本物の電脳となってネットワーク内に存在しようと考えているのだろう。

 茅場の言うように限りなく不可能に近いのだろうが、可能性はゼロじゃない。きっと彼なら、稀代の天才プログラマーならば、その可能性を掴み取る。そう期待せざるを得ない。

 

「わかった。ではその時が来れば善処しよう。……さて、長々と話し込んでしまったが、実は待たせている人物が他にいるのでね。私はここで失礼するよ。ゲームクリアおめでとう、カイト君」

 

 身を翻し、白衣を風に揺らしてカイトから遠ざかるように歩き始める。刹那、肌を撫でる爽やかな風が吹いたが、ほんの少し目を逸らした瞬間に茅場の姿は音もなく消え去っていた。きっと今頃、その待たせている人物の元へ向かっているのだろう。

 茅場が去った後、カイトは足元に展開されている水晶パネルの端に座り、夕陽に照らされながら崩壊していくアインクラッドを見つめる。現在もデータの完全消去作業は進行しているが、城の崩壊と最終シークエンスの進行状況がリンクしているのならば、なかなか凝った演出である。

 

(ゲームクリア、か……)

 

 あれほど望んでいたにも関わらず、いざなってみると拍子抜けしてしまっていた。もしかしたら、いつの間にかこの世界に居心地の良さを感じ、現実世界に戻りたくないと心の奥底で思っていたのかもしれない。

 

(……いや、それはないか)

 

 ただ単に思考が、理解が追いついていないだけ。果てしなく遠くにあったゴールにたどり着いた事をまだ信じられず、実感が湧いていないだけだ。

 それにこの世界が終われば、これまでの事も全て終わってしまうわけではない。ゲームの中で出会った人達と現実で再開し、また他愛のない会話をして笑い合う。きっと、いつか、等と夢にまで見た出来事が、ようやく現実味を帯びてきたのだ。

 すると、突如カイトの身体が転移エフェクトに似た光に包まれ始めた。仄かな光は輝きを増し、彼を下から上へと照らしていく。

 

(ユキには申し訳ない事をしたなぁ……)

 

 ヒースクリフに刺された後の、瞳に焼きついた彼女の顔が剥がれない。1度のみならず2度目の絶望感を味わう結果となり、彼女の心中は深い悲しみを占めたはずだ。そんな思いをさせてしまった事が、彼の中にある唯一の心残りだった。

 いつもなら隣で寄り添う彼女がいるが、今、カイトの傍らにその姿はない。共にいてくれる彼女がいないのが、酷く不安で、心細かった。

 

(最初は「ごめん」。次は「おかえり」と「ただいま」。その後は――)

 

 そこまで考えたところで彼を包む光がより一層強くなり、デスゲームで2年もの間生き残ったプレイヤーネーム《Kaito》のアバターは、静かに世界から旅立った。

 




《射撃》の取得条件は独自設定、ユニークスキルの複数取得は独自解釈です。なお、原作(プログレッシブ)では今後どうなるかわかりませんが、今作の《還魂の聖晶石》はサーバー内で1つしかないアイテムとして扱います。

あらかじめ張っておいた伏線をようやく回収できました。今回の話を知ったうえで該当箇所を見ると「あぁ、この部分か」と感じていただけると思います。蘇生アイテムの使用とユニークスキル早期解放の描写は2章19話を、空間認識能力に関連するのは2章13話と6章44話の描写となります。

次は毎度恒例の番外編となります。
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