ソードアート・オンライン 〜君と共に〜   作:楽々亭

72 / 102
第62話 剣と魔法の空中戦

 

 初めてダイシー・カフェを訪れてエギルから画像を見せられた時、似ているどころの騒ぎではなく本人に間違いないのではないかという感想を抱いたが、実際に実物を目の当たりにしても、その考えに変わりはなかった。

 さらに言えば、単なる画像からは感じ取ることのできない凄みを肌で受けた瞬間、わずかに残っていた疑念は一滴残らず消え去った。対峙することでしかわからないプレッシャーの大きさは、明らかに歴戦の猛者でしか発せられない代物だったからだ。

 

「キリト……」

 

 この場にいる者にしかわからない緊張の空気を破り、カイトは尋ねる。

 

「お前は……キリトなのか?」

 

 問い掛けに対し、言葉による返答はない。ただただ無言を貫くのみ。

 その代わりなのか、行動による返答がなされた。

 ほんの一瞬だけ腰を落として背中の翅を震わせたかと思いきや、全速力で飛行し、直線上にいるカイトへと肉薄する。カイトは突然の出来事に理解が追いつかなかったが、条件反射で背中の剣に手をかけて防御体制をとったのは流石というべきだろう。黒い剣が彼目掛けて振り下ろされたその時には、既に受け止める準備が完了していた。

 

 ――――ガキイィィンッ!!!!

 

 細身の片手剣同士が衝突したにも関わらず、重量級の武器がぶつかったかのような音が響き、接触部位を起点として空間に音の波紋が広がる。近くにいたアスナとユイは耳を塞ぎ、小さな悲鳴を漏らした。

 

「――ぐっ……」

 

 一方、剣を完全に受け止めたカイトだったが、腕に伝わってきた衝撃が想像以上だったため、顔を歪ませる。どうにか耐えてみせたが、何度も受けるのは勘弁したいというのが正直な感想だった。

 

「挨拶代わりにしてはきっついな。……それで、これが質問に対する答えか?」

「…………」

 

 今度も返答はない。口を真一文字に結び、沈黙を貫く。

 至近距離からまじまじと顔を見るが、どこからどう見てもキリト以外にあり得ない。見た目だけで言えばSAOクリア時と変化ないが、あえていうなら瞳に輝きはあるものの活力がない、といったところだろうか。一切の感情を読み取れないその表情から寒気と微々たる恐怖が湧き上がり、その振る舞いからはプレイヤーを攻撃するという命令を忠実に守っている人形のような印象を受けた。

 

「うお……らあっ!!」

 

 ジリジリと迫る剣に負けじと、カイトは両腕に力を込めて押し返す。そんな彼に対抗すべく、《黒の剣士》も負けじと剣で押し戻そうと力を込めたが、この一瞬をカイトは待っていた。

 カイトが自然な動きで剣の角度を斜めに傾けると、漆黒の剣は彼の剣の刃先を滑る。力を外へ受け流したことで《黒の剣士》の初撃は空を切り、さらには体勢を崩したが、これで終わりではない。生み出した一瞬の隙は好機と同義語だ。

 カイトは体勢の崩れた《黒の剣士》の背後に回り込むとその場で反転し、左から右への水平切りを繰り出した。狙いは人体の中心であり、腹部に横一閃の軌跡が刻まれる未来図を脳裏で思い描いたが、彼は次に起こった出来事に度肝を抜かれた。

 体勢を崩され、まともな回避は困難。コンマ1秒の間にそこまで判断したであろう《黒の剣士》は、翅を震わせて推力を生み出し、身体の向きを無理矢理カイトと向かい合う形にすると、あろうことかパリィを試みてきたのだ。

 

 ――キイィィン…………――

 

 剣同士が接触した際の金属音が鳴ったが、完全にパリィすることは叶わなかったようだ。その証拠に《黒の剣士》の腹部には小さいながらもダメージエフェクトが発生しており、視界に表示されたHPが少しばかり減少している。ファーストアタックには一応成功したが、満足できるダメージを与えることは出来なかった。

 ダメージに怯むことなく、《黒の剣士》はやられた分を取り返すかのようにすぐさま反撃に転じようとした――――が、側面から接近する気配を感知したらしく、その場から大きく飛び退いて距離をとった。

 

「やあっ!!」

 

 次の瞬間、《黒の剣士》がいた場所目掛け、加勢にきたアスナがレイピアを突き出した。剣は虚しく空を貫いただけだったが、あと少し速ければ追加でダメージを与えることが出来ただろう。

 

「遅れてごめんね、カイト君」

「いや、むしろ助かった。あのまま続けてたらいつかこっちのペースが崩されて、やられてたと思う。それにしても……」

 

 カイトが怪訝な顔をするが、その理由をわざわざ訊かずともアスナは理解できた。

 一撃の重さ、咄嗟の判断力。そして最大の特徴は、常人ならあり得ないほどの反応速度。

 特にカイトの攻撃に対して行ったパリィは、普通なら不可能だ。仮にやろうとしても、パリィする前にカイトの剣に切りつけられるのが先なので、間に合うことなくダメージを受けるのがオチだろう。

 だが、目の前にいる《黒の剣士》は、不完全ではあるにせよ不可能を可能にしてみせた。これはSAOで最大の反応速度を誇っていたキリトにしか出来ない芸当だ。

 

「やっぱり、こいつはキリトなんじゃ……」

「いえ、違います」

 

 ハッキリと否定したのは、アスナの肩の上でホバリングしているユイだった。

 

「見た目と戦闘だけ見れば確かにそう思うかもしれませんが、()()()()()()()()()()()()()

「ユイちゃん、どういうこと?」

 

 これまで自分たちに提示された情報から判断するなら、目の前にいるのはキリトで間違いないはずだ。

 しかし、ユイはプレイヤーが知りえないシステム上の情報を閲覧することが可能である。彼女の力強い否定は、おそらくそこに由来しているのだろう。

 

「あの人はNPCです。プレイヤーならば本来あるはずのもの……プレイヤーIDがありません」

「じゃ、じゃあなんでキリトと瓜二つの格好をしてるんだ?」

「おそらく、SAOのキャラクター・データをそのまま引き継いでいるからだと思われます。ママとカイトさんはステータスのみですが、あのNPCはアバターの姿やステータスを含めたすべてを引き継いでいます」

 

 アバターの姿が瓜二つの理由、そしてカイトに力で勝る理由は、今のユイの説明で納得できた。しかし、ただのNPCにあそこまでの反応速度が再現できるものなのかとカイトは頭を捻ってみせるが、彼の顔色から心情を察したユイがさらに補足する。

 

「ここでいう『すべて』とは、数値的ステータスやスキル値、さらにはパパ自らがアインクラッドで積み重ねた戦闘技術などを指します。アバターの反応速度についても、システムの補正をかけることでパパ本人と遜色ない動きを再現しているのでしょう」

「それじゃあ、あのアバターはキリト君ではないけれど、キリト君と同等の強さをもったNPCってこと?」

「その通りです、ママ」

 

 カイトはユイの言葉を聴きつつ、内心で『冗談はよしてくれ』と毒づいた。

 キリトの戦闘能力は《二刀流》を抜きにしても攻略組で上位に位置し、対人戦ではシステム外スキルや相手の裏をかく戦法で数々の勝利をおさめている。そういった戦術を駆使してくるとしたら、一撃の重さはともかく、限られた攻撃パターンで攻めてくるアインクラッドのフロアボス以上に面倒くさい相手だ。

 

「とりあえずあいつはキリトじゃないから、倒しても問題ないっていうのがわかっただけでも収穫だ。それに向こうもこっちをタダで見逃すつもりはないみたいだし……アスナ、いけるか?」

「うん、大丈夫」

 

 強敵だが、カイト1人で戦うのではなく、今回はアスナという心強いパートナーがいる。トップギルドの副団長を務め、《閃光》の二つ名を持つ彼女とならば、キリト相手に遅れをとることはないだろう。

 

 そして2人の準備が整うのを待っていたかのように、《黒の剣士》は再び動き出した。

 

 静止状態から一気に加速して瞬く間にカイトへ肉薄すると、右手の剣が閃いて右斜め下から上へと跳ね上がる。剣本体が霞むほどの恐るべきスピードだったが、あらかじめ予測していたアスナがレイピアを突き出し、剣の腹を正確に捉えて真横に弾いた。彼女が一瞬の攻防でみせた剣技の正確性と速度に胸中で感嘆の声を漏らしたカイトは、生まれた隙を逃すまいと最小限の動きで剣を振り下ろした。

 剣が《黒の剣士》の肩口へ吸い込まれ、斜めの軌道を身体に刻みつける――――が、手応えを得た感覚と真紅のダメージエフェクトが発生しない。違和感を感じた次の瞬間、目の前にいた《黒の剣士》は黒い靄に変化し、その場で霧散して静かに消え去った。

 

「どう、いう……?」

 

 状況を理解できずに混乱しているカイトだったが、背後で何かが動いている気配を察知して振り返る。そこにはたった今不可思議な現象で姿を消した《黒の剣士》が剣を振り下ろしており、思考が追いつくよりも早く、研ぎ澄まされた剣がカイトの身体に1本の紅いラインを刻みつけた。

 

「うぐっ――――」

 

 《黒の剣士》は(うめ)くカイトの声など気にも止めずに剣技を繰り出し、垂直方向に追加で3度切りつけた。連続剣技が空中で正方形の軌跡を描き終える頃、カイトのHPバーは大きく減少し、追加で発生したノックバック効果で体勢を崩されていた。

 

(そういえば……確かスプリガンは幻惑魔法が得意だっけ……)

 

 《黒の剣士》が使ったトリックの正体、それは幻惑魔法。自動操縦のダミーアバターを出現させ、相手の注意が逸れている隙をつき、術者はカイトの背中をとったのだ。アスナとの会話に集中しすぎてスペルの詠唱を見逃したのか、あるいは遭遇する前から既に魔法を発動させて待機状態にしていたのかもしれない。

 追撃を覚悟したカイトが《黒の剣士》に目を向けると、案の定剣を構えている相手の姿があったが、さらにその背後にはレイピアを引き絞っているアスナの姿もある。剣先をクリティカル判定が出やすい心臓にピタリと照準し、一気に腕を前へ突き出すことで、ダメージを与えつつカイトのフォローをするつもりなのだろう。

 だがその考えを読み取ったかのように、《黒の剣士》は攻撃を中断すると背面のアスナに向き直る。突き出されたレイピアの切っ先から最小限の動きで回避し、アスナの脇腹に水平蹴りを見舞うと、彼女は突如襲ってきた横からの衝撃に抗うことなく吹き飛ばされた。

 

「――――っ!」

 

 鈍重な不快感を頭の隅に押しやりつつ、背中の翅を震わせて崩された体勢を空中で立て直すと、アスナはすぐに肉薄する《黒の剣士》の姿を捉えた。ギリギリまで引き寄せてカウンターをくらわせようと考えた彼女は反撃の姿勢をとるが、《黒の剣士》が背中にあるもう1本の剣の柄に手をかけた瞬間、嫌な汗が彼女の頬を伝い、同時に次の考えが脳裏をよぎった。

 

 ――二刀流を使う気だ――

 

 ユニークスキルもソードスキルもないALOだが、スキルがないからといって剣を2本装備して戦えないというわけではない。

 二刀を用いたキリトの剣戟は通常攻撃でも恐ろしい速度を誇っていた。フロアボス戦やヒースクリフとのデュエルで見た光景がフラッシュバックし、咄嗟の判断で身構えた彼女は剣で受けようと防御姿勢をとる。

 《黒の剣士》の左手が閃き、上から下へと振り下ろされる。レイピアに重い一撃が入った証拠として腕に衝撃が加わることを予想したアスナだったが――――その意に反し、実際には何も起こらなかった。その理由は、《黒の剣士》の振り下ろした左手が全てを物語っていた。

 

(……フェイク!?)

 

 左手には何も握られておらず、引き抜いたと思っていた剣は背中の鞘に納まったまま。二刀で攻めてくると思わせ、アスナにミスリードを誘発させるためのフェイントだった。

 上段からの剣撃に備えていたアスナを嘲笑うかのように、《黒の剣士》は右手で握った剣で下段からの切り上げを繰り出した。切っ先がガラ空きの胴体を切りつけ、アスナのHPバーが減少する。

 

「アスナ! 左右どっちでもいい、避けろっ!」

 

 背後からの指示を受けたアスナは無意識に身体を捻り、左側に飛ぶと、いつの間にか回り込んでいたカイトが絶妙なタイミングで飛び出した。アスナを目隠しの壁にして放った突進技は、相手からすれば突然カイトが現れたように見えただろう。

 通常はここまでする必要はないが、敵はキリトと同等のスペックを持ち、キリトの戦闘データを蓄積したモンスターだ。高次元の駆け引きは自分達も苦しいが、それだけのことをする価値が対峙するスプリガンにはある。

 

 だが、それでも届かないことはある。

 

 回避できないと思われたタイミングだったが、それは一般プレイヤーの常識であり、《黒の剣士》も同様に当てはまるとは限らない。《黒の剣士》は上方に飛んで突進技を回避すると、カイトから約5メートル離れた地点で反転し、左手を前にして右手の剣を担ぐ形をとった。それだけで、カイトは彼が次に何をするのかを察した。

 

(……間に合えっ!)

 

 そう願った直後、ジェットエンジンのような音を轟かせ、空気を切り裂いて突撃してくる《黒の剣士》の姿があった。開いた距離を瞬時に埋めるこの技は、片手剣スキルの中でも高い威力とリーチを兼ね備え、かつてキリトが好んで多用していた単発重攻撃《ヴォーパル・ストライク》そのもの。システムアシストがないにも関わらず本物と遜色ないスピードを再現している理由は、背中の翅で生み出した推力を余すことなく利用しているからだろう。

 

「……ここ、だっ!」

 

 迫る剣先を凝視してタイミングを図ったカイトは、自身に到達する寸前で相手の剣の腹を思い切り叩いた。その結果、直線軌道を描いていた剣が斜めに修正され、《黒の剣士》はカイトの真横を通り過ぎていく。切っ先が腹部を掠めてHPがわずかに減少するが、失敗して直撃するよりかは遥かにマシだ。

 交錯して位置を入れ替えた2人はほぼ同時に振り返り、大きく振りかぶって大上段からの一撃を放つ。剣同士が接触して甲高い音と火花が散り、両者は一歩も譲らない鍔迫り合いへと移行した。

 

(こいつがキリトの偽物(コピー)だって……? 本物(オリジナル)と見分けがつかないぞ)

 

 動きも、技も、展開に応じた最適な判断も、剣を交わす度にそのすべてがキリト本人と戦っているような感覚を思い起こさせる。もしユイがいなければ、間違いなくカイトもアスナもこのキリトは誰かに操られているのだろうと思い込んでいたはずだ。

 

 力の限りを尽くして剣を押しやるが、相手も負けじと押し返してくる。均衡は終わりの見えないものに思えたが、《黒の剣士》が何かを察知し、突然後方に飛んでカイトから距離をとった。その直後、カイトと《黒の剣士》を白い霧のようなものが襲い、瞬く間に彼らの視界は真っ白に染まる。

 

「一体なにが……」

 

 景色が白一色に染まり、自分の手元すら見えないほどだ。視界がホワイトアウトしたことで自分の位置や方角がわからなくなり、カイトの中で混乱と動揺が生まれたが、凛とした声がそれらを一掃した。

 

「カイト君。こっち!」

 

 不意に腕を掴まれたかと思いきや、カイトの身体は声の主――アスナに引っ張られる形で急降下し、白一色の視界がすぐに元の彩りを取り戻す。彼女の導きに任せて肩越しに後ろを一瞥すると、そこには巨大な雲とでも呼べる白い塊が浮遊していた。その正体は細かな水蒸気を多量に生み出して雲を作り、敵の視界を遮る妨害魔法だ。アスナがカイトを退避させるための時間稼ぎに放った魔法で、彼女はどうにか狙い通りに事を運ぶことが出来た。

 アスナは地面に降り立つと同時に別の魔法の詠唱を開始。彼女の周りに光り輝く文字がいくつも浮かび、それらが消えると2人を薄い水の膜が包み込んだ。

 

「アスナ、なにを……」

「しっ! 静かに」

 

 アスナが人差し指を立てて口元に添えながら注意を促すと、上空で風の生まれる音が聞こえた。2人が空を見上げると、さっきまであった巨大な雲が霧散して消える光景がそこにあった。《黒の剣士》が剣を水平にして固まっているが、おそらくは凄まじい速度で剣を振り、水蒸気の塊を薙ぎ払ったのだろう。

 視界が一気に開けた《黒の剣士》はすぐに辺りを見回し始めた。間違いなく、見失った攻撃対象のカイトを探している。

 

「アス……」

「大丈夫。ハイディング効果のある魔法をかけたから、ここまで離れていれば、いくらキリト君の《索敵》スキルが高くても見つからない」

 

 今彼女が使った魔法は水の膜で光の屈折率を変化させ、相手から術者を見えなくするものだ。しかし、ハイディング効果があると言ってもまだアスナの魔法スキルは高くないため、効果もどの程度あるのかわからないし、最悪気休め程度かもしれない。あとは運良く気が付かずにいてくれるのを願うだけだ。

 そしてその願いが叶ったのか、《黒の剣士》は対象の発見を諦めて剣を背中の鞘に納めると、何事もなかったかのように西の方角へと飛び去っていった。その姿が黒い点となり、遂には目で捉えられなくなった時、ようやくアスナは安堵の息を零した。

 

「……良かった。上手くやり過ごせたみたいね」

 

 一安心といった様子のアスナだが、カイトは彼女のとった行動の真意を図りかねた。

 

「アスナ、どうしてとめたんだ? 別に負けてたわけでもなかっただろう?」

「確かにそうかもしれなかったけど、あのまま続けてたらきっと負けてた。だって私たち、昨日ALOを始めたばかりなのよ。いくら剣の戦闘に慣れていても、空中戦闘や魔法を織り交ぜた戦いは初心者同然でしょう? この場は流すべきだわ」

 

 事実、カイトは相手のダミーアバターにまんまと騙されたし、領地を出てからのモンスター戦は地上で繰り広げていたので、空中戦闘は何を隠そうついさっきが初めてだ。内心では不慣れな戦闘に戸惑っていたし、アスナが言うように戦闘を継続していてもジリ貧だった可能性は確かにある。

 

「……はぁ、わかったよ。それなら次会った時のためにも、空中戦闘と魔法には慣れとかないとなぁ……」

 

 新たな課題を発見したカイトは頭を抱えるが、これもすべては目的を達成するために必要なこと。魔法の詠唱は英単語の暗記みたいで無意識に遠ざけていたが、剣だけで進めるほどこの世界は甘くないということだ。

 そこでふと、これまで一切魔法を使っていないカイトに対し、既にアスナは2つの魔法を行使してみせたことに違和感を感じた。

 

「アスナ。そういえばさっき魔法を使ってたけど、一体いつ覚えたんだ?」

「領地を出る少し前だよ。使えそうなやつをいくつかピックアップしてその場で覚えたんだ。そうは言っても、まだ4つしか使えないけどね」

「い、いや……十分です。というか流石です、アスナさん」

 

 さらりと言ってのけたアスナだが、1つの魔法を発動するのに唱えたスペルワードの数は決して少なくなかったはずだ。集合してから領地を発つまで確かに少し余裕はあったものの、その限られた時間の中で魔法を覚える暇がどこにあったのか、カイトにはまったく思いつかない。

 アスナの準備の良さと能力の高さを改めて認識し、舌を巻かずにはいられないカイトだった。

 




次回から3話程度、リーファsideの話となります。(予定)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。