ソードアート・オンライン 〜君と共に〜   作:楽々亭

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第75話 飛翔する妖精達とグランドクエスト(中編)

 

 グランドクエスト。

 それは、多くのプレイヤーが『攻略不可』と(ささや)いている一方、一部のハイランカーが運営側の『攻略可能』という言葉を信じ、懸命に人員の確保と装備の充実、そして戦略を練って挑み続けている――――にも関わらず、ALOのサービス開始から1年が経った今でもクリアされていない最難関クエスト。『攻略可能』と『攻略不可』という正反対の意味を含んだそれは、矛盾した存在(アノマリー)であると言わざるを得ない。

 そんなグランドクエストを最難関たらしめている理由は、内容がゲームバランスの埒外と言っていい規模だからだ。

 世界樹の内部に形成されている、円形のドーム状空間。この空間の頂点には精緻な装飾が施された扉があるのだが、プレイヤーはそこを目指して飛行し、扉を開ければ樹上への道が開けるのだ。

 しかし、そこへ辿り着くまでに白銀の鎧を纏った守護騎士モンスターの妨害があり、これが非常に厄介極まりない。単体で見ると危険視するような戦闘力を持ち合わせていないが、このモンスターはドームの壁面から無限に湧き続ける上に、湧出スピードが尋常ではないのだ。倒しても倒してもキリがない、天蓋に進もうとすればするほど扉から遠ざかっている、と思ってしまうほどに。

 そんな高い難易度を誇るグランドクエストだが、必要なのは『挑戦する意思』だけあれば良い。世界樹の根元で2体の巨大な石像に守護されながら鎮座する大門をくぐれば、誰しもが受諾出来るのだが、全種族中最強と称されるサラマンダー部隊が撃沈して以降、この大門は固く閉ざされたままだった。更なる装備と人員の充実を図り、プレイヤーが再び世界樹に挑むのはまだまだ先だろうと、運営側はそう思っていただろう。

 だが、そんな予想を大きく裏切り、グランドクエストに挑もうとしている2人のプレイヤーの手によって、大門の重い扉が数ヶ月ぶりに開かれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 石で出来た守護像の最終確認を終え、カイトとアスナとユイは世界樹の内部へと繋がる大門の扉を開いた。目を凝らして中を確認するものの、完全な暗闇に包まれているため、構造がどうなっているのか全体像を把握することは叶わない。

 しかし、カイトが中に1歩足を踏み入れた時、頭上から眩い光が降り注いだため、思わず3人は目を細めた。

 内部は途轍もなく広い円形のドーム状空間だった。アインクラッド第75層のボス部屋も広いと感じたが、部屋の直径と高さはその比ではない。周囲に目をはしらせれば、床は(つた)のようなものが密に絡み合って出来ており、それは外周部で垂直に伸びて壁を形成しながらなだらかに天蓋部分へと続いていた。

 そして伸び上がった蔦の行く先にある天蓋部分を見ると、床よりも(まば)らではあるが蔦が絡み、ステンドグラス状の紋様を描いている。そしてこの紋様から白い光が放たれているため、カイト達と樹の内部を照らした光源はおそらくこれだろう。

 そして、天蓋の頂点――――ここに精緻な装飾が施されたリング型のゲートがあり、遥か高みからカイト達を見下ろしていた。

 

「あそこか……」

 

 目指すべき樹上への道――――そこへ辿り着くための扉を確認すると、カイトは隣のアスナを見やった。

 アスナも彼と同じように天蓋の頂点にあるゲートを見ているが、その瞳からは一刻も早く飛び立ち、樹上で囚われているキリトの元へ行きたいという衝動が漏れていた。長い長い旅路の終着点が目と鼻の先にあるのだから、無理もない。

 そんな彼女の肩にちょこんと座っているユイが、心配そうな顔でアスナを見た。

 

「ママ、大丈夫ですか? これまで得たあらゆる情報から類推すると、ここを突破するのはかなりの困難を伴うと予測出来ます。いくらママとカイトさんのステータスが高いとはいえ、たった2人では……」

「ありがとう、ユイちゃん」

 

 アスナは身を案じてくれている愛娘の頬を指先で撫でると、穏やかな微笑みを浮かべた。

 

「大変なのはわかってるつもりだよ。……でもね、頭で理解していても、心は違う。もう少しでキリト君に会えると思うと、居ても立っても居られないの」

「ママ……」

 

 天蓋の頂点まで続く道のりは、目で見える以上に遠く困難であることを、アスナは充分理解している。それでも、アスナにとってはこの高く長い1本道を昇ることだけが、キリトに会う唯一の手段なのだ。この先にどんな困難が待ち受けていようとも、それらを全てはね退けて突き進むだけの覚悟を、彼女はとっくに胸の内で決めていた。

 アスナは指先でユイの頭を撫でた後、今度はカイトに顔を向けた。

 

「ごめんね、カイト君。私の我が儘に付き合うような形になっちゃって」

「今更だぞ、アスナ。…………まぁ、オレもアスナと同じで居ても立っても居られなかったからな。落ちてきたカードキーの件がなかったら、真っ先に飛び出してたのはオレかもしれなかったし。オレ達は同じ目的でここまで来た運命共同体なんだから、最後までとことん付き合うさ」

 

 そして覚悟を決めていたのは、カイトにも言えた事。キリトと同様に囚われているであろうユキの元へ駆けつけ、もう一度あの屈託のない笑顔を見るまでは立ち止まらないと決めてここに来たのだ。

 援軍が来るとわかっている今の状況なら、間違いなくそれを待ってから突入するのが利口だろう。しかし、そんな理屈などお構いなしに感情が先行する、というのは時としてあることだ。

 理性で感情の波を押さえつけ、堅実に動こうとしたカイト。

 衝動に駆られて一目散に飛び出したアスナ。

 双方が出した解答は等しく正解だが、どちらが最適解なのかは事が終わってからでないとわからない。『正しい』を『正しかった』に変えるため、彼らは動き出そうとしていた。

 

「それじゃあ、あいつらを迎えに行くとするか」

「…………うん。ユイちゃん、しっかり掴まっててね」

「はい。…………ママ、カイトさん、気を付けて下さい」

 

 そう言ってユイはアスナの肩から飛び立つと、素早くアスナの服のポケットに身を隠した。

 カイトは背中の片手剣を、アスナは腰のレイピアを抜剣し、目指すべき天蓋の頂点を見定めて背中の翅を広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人が大門をくぐって世界樹の内部に足を踏み入れる時、リーファは黙って彼らの背中を見送ることしか出来なかった。

 昨日《蝶の谷》で行われた領主会談においてサラマンダーからの強襲を受けた際、30秒足らずでその実力を示したカイト達の助力により撃退に成功したが、その見返りは『世界樹攻略に協力すること』だ。サクヤ率いるシルフ族と、アリシャ率いるケットシー族はその約束を履行するため、現在も全速力でアルンに向かってきているだろう。

 そして本来ならば、カイトとアスナがグランドクエストに挑戦しに行く時、その約束を願い出たリーファも彼らについて行って共に戦うべきなのだ。

 しかし、いざ世界樹を前にした時、彼女は足が竦み、多くのプレイヤーに刷り込まれている『攻略不可能』という言葉が脳裏を掠めた。サラマンダーの精鋭達が挑んで失敗したクエストを、1パーティーにも満たない人数で挑戦しようというのが、既に無謀この上ないのだ。

 せめてサクヤ達が来るまで、とリーファは考えたが、アスナにはいつ来るかわからない援軍を待つ心の余裕などなく、その上そんな彼女を放っておけないカイトまでもが世界樹の奥へと進んでしまった。2人を止めることが出来るのはこの場で自分しかいないとわかっていたが、カイト達の固い覚悟を崩すには役者不足だとリーファは悟った。

 

(私は、2人みたいに強くないよ……)

 

 今も大門は開け放たれており、新たな挑戦者――目の前にいるリーファ――が入門するのを待ち構えているが、彼女が動き出す気配はない。今頃世界樹の内部ではカイトとアスナが鬼神の如く剣を振るい、天蓋の頂に向かって飛翔しているだろう。

 何もしていない自分に対して歯痒い思いを抱き、唇を固く結んだ――――その時だった。

 

「リーファちゃ〜〜〜〜ん!!」

 

 背後から名を呼ばれてリーファは振り返るが、彼女の事を『ちゃん』付けで呼ぶのは1人しかいない。リーファを妖精の世界に誘った張本人であり、彼女のフレンドリストに唯一登録されているレコンだ。わざわざ振り返って姿を確認するまでもなく、リーファは呼び方と声で充分相手を特定出来ていたが、問題は『何故彼がアルンにいるか』という事だ。

 

「……れ、レコン!? な、なんであんたがここにいるのよ!」

「いや〜、リーファちゃんがアルンに行くって言った後で僕もついて行こうと思ったんだけど、サクヤさん達と一緒にスイルベーンを出たって聞いてさ。すぐに領地を出て道中出くわしたモンスターは全部他のプレイヤーになすりつけながらここまで来たんだよ」

「……それってMPKじゃん…………」

「この際細かい事は良いじゃん! ところで……」

 

 レコンは立ち位置を少しだけ左にズラすと、リーファの背後にあるグランドクエストの大門を見た。

 

「大門が開いてる…………ま、まさか、またサラマンダーがグランドクエストに挑戦し ているとか……」

「ううん、違うわ。今あの奥で戦っているのは、ウンディーネよ。しかも、たった2人で」

 

 リーファは振り返り、2枚扉の奥に見える世界樹の内部を覗いた。彼女の位置から視認するのは叶わないが、今頃カイト達は世界樹内部を飛び、天蓋の頂点に向かって必死に戦っているのだろう。

 

「私ね、中で戦っている2人に助けてもらう代わりに、グランドクエストの攻略に協力する約束をしたの。……でも、いざ目の前にすると足が竦んじゃって、中に入らないでこの場所にいるんだ。自分が苦しい時は助けてもらって、相手が苦しい時には何もしないなんて、私、最低だよね」

 

 カイト達が飛び出した時、自分も一緒に行けば今味わっている罪悪感を感じずに済んだのに、という後悔の念が込み上げてくる。しかもその思いは、時間の経過に比例して増大していった。

 そんな自責の念に囚われているリーファを見たレコンは、何かを決心したかのように表情を硬くし、不意に彼女の手をとった。よそ見をしていたリーファは急に手をとられたため、驚いた様子でレコンを見る。

 

「だ、ダメだよ、リーファちゃん。そんな暗い顔してるなんて、リーファちゃんらしくないよ!」

「……れ、レコン…………?」

「リーファちゃんは笑っている時が……笑顔の時が1番輝いているんだ。僕はそんな悲しそうなリーファちゃん、見たくないよ。リーファちゃんが元気になってくれるなら、僕、何だってするよ。だ、だから…………」

 

 ここでレコンの顔が紅潮し、眼を見開いたかと思えば、急に表情が硬くなり出した。

 

「リーファちゃんが寂しい時は、僕が傍にいるから…………絶対、絶対独りにしないから! …………だって、僕……僕は…………」

 

 レコンの様子がいつもと違う事に気が付いたリーファは、ふと嫌な予感に襲われた。彼女の直感がこれ以上レコンに喋らせてはいけないという警告信号を発し、次いでこの状況を切り抜ける打開策を捻り出すため、頭をフルに働かせ始める。

 

「僕は……リーファちゃんが…………直葉ちゃんの事が…………」

 

 しかし、予想外かつこれまで陥ったことのない展開の対処法を持ち合わせていない彼女には、何をどうすべきなのかが全く閃かない。言葉で彼を制するにしても、適切な文言が浮かばないのだ。

 

「ちょ、ちょっと…………」

 

 よって彼女の脳が下した最終判断は――――。

 

「ちょっと…………ストーーーーーーーーップ!!!!」

 

 このイベントを強制的に終了させる、力の行使。

 簡潔に表せば『殴って黙らせる』だった。

 

「ぐほぉ!!」

 

 リーファの繰り出したボディーブローがものの見事にレコンの鳩尾(みぞおち)を直撃したため、彼はそれ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。街中であるが故に数値的ダメージはないものの、レコンはノックバックの発生によって足が地面から離れた後、1メートル程度浮いてどさりと落下した。両手で腹部を押さえ、苦悶の表情を露わにする。

 

「うぐぐぐぐ…………まだ言い終わってないのに……」

「う、うう五月蝿い! どうせ変な事言うつもりだったんでしょ。言わせないわよ!」

「べ、別に変な事じゃないのに……」

 

 レコンはその場で胡座をかいてガックリと項垂れた。

 一方、動揺から立ち直り始めたリーファは、少しだけレコンを羨ましく感じた。理屈云々は考えず、ただ自分の心と正直に向き合って行動できる、その素直なところが。

 出来る出来ないは考えず、今自分が何をしたいのか考えた時、リーファの心にはすぐに閃くものがあった。

 彼女は未だ項垂れ続けているレコンを見て、ポツリと呟く。

 

「でも、あんたのそういう所、あたしは嫌いじゃないよ」

「へ?」

「……ううん、何でもない。たまにはあたしも、あんたを見習ってみようかなって話」

 

 不思議そうな顔で見るレコンをよそに、リーファは世界樹を見上げるが、その瞳の奥では断固たる意志の炎が灯り始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長大な剣を携えて向かってきた守護騎士の腹部をカウンター気味で一刀両断すると、敵は即座に純白のエンドフレイムに包まれて四散する。

 その消滅を最後まで見届けず、すぐに接近してきた別の個体へ視線を向けると、彼は休むことなく剣を振るった。

 

(――くっそ! 次から次へと…………)

 

 グランドクエストはまだ始まったばかり――――にも関わらず、カイトは既に追い込まれ、切羽詰まった状況に陥っていた。

 

 開始直後に出現した守護騎士を瞬殺したことで快調なスタートを切ったかに思えたが、その数秒後にはおびただしい数の守護騎士がカイトとアスナを出迎えたため、『クリア出来るかもしれない』という期待は早々に泡となって弾けてしまっていた。

 敵が壁から湧出するスピードは衰えることを知らず、1体葬る間にまた新たな守護騎士が現れる。敵のステータスがさほど高くないため見落としがちだが、総体的に見ればHP無限の巨大ボスと大差ない。ユーザーの挑戦心を煽り、可能な限り引っ張るつもりなのだろう。

 

「……らあっ!!」

 

 肉薄する敵の長大な剣をパリイすると、カイトはその場で身体を独楽(こま)のように回転させ、勢いを乗せた剣で守護騎士を斬る。右手に確かな手応えを感じとるとすぐに振り返り、背後から接近していた敵の剣を受け止めた。回転した際に視界の端で一瞬だけ敵の影が入り込んだのを、彼は見逃していなかった。

 攻撃を受け止めた際の膠着状態はカイトが競り勝ったことで破られると、すかさず大上段からの垂直斬りで敵を真っ二つにする。身体に纏わりつく純白のエンドフレイムを振り払うと、天蓋に向かって再び飛行しようとしたが、見上げた先に広がる光景を見た途端、カイトの顔が強張った。

 最初は視認できた天蓋の頂点にあるゲートが、今や100を優に超えるであろう守護騎士の影によって覆い隠されていた。その光景があまりにも衝撃的であったが故に、カイトの中にある闘争心が帯びていた熱は、急激に失われていく。

 

(……無茶苦茶だ…………)

 

 カイトは、自分の見通しの甘さを嘆いた。たった2人で挑むこと自体が間違っていたのだ、と。

 異常なスキル熟練度の高さ故に突破力はあるかもしれないが、数の暴力によってそれは問答無用でねじ伏せられ、最早意味をなしていない。カイトの脳裏で『諦める』という言葉が浮かびかけた。

 

「やあっ!!」

 

 しかし、未だ困難な状況に抗い、戦場で凛とした声を発しながら剣を振るう戦乙女(ワルキューレ)がいた。次々と襲いかかる猛襲をなんとか退けているが、それでも少しずつ追い詰められているため、HPバーの減少は着実に進行している――――にも関わらず、アスナは戦うことを止めない。

 そして、カイトの心に再び火を灯すのは、その姿を見るだけで充分だった。

 自分が、アスナが、必死になって戦う理由。もっと言えば、この世界にダイブした理由を考えた時、『諦める』という言葉は瞬時に消え去り、狭まっていた視野のせいで見失った本来の目的を、カイトは取り戻した。

 

(そうだ……グランドクエストの攻略は、ただの手段でしかない。目指すべきゴールは、こんな所じゃないんだ)

 

 ベッドの上で寝たきりの少女に対して一方通行に話すのではなく、向かい合って会話をし、時々笑い合うような明るい未来を欲しているからこそ、カイトは戦っているのだ。そう考えると、大切な人と本当の意味での再会を果たしていないことに比べれば、今の状況は苦しくもなんともない。

 

「――おおぉっ!!」

 

 固まった身体に鞭打つかのように叫び、カイトは背中の翅を震わせた。行き先は天蓋ではなく、窮地に陥っているアスナの元。

 そんな彼の進む道を、1体の守護騎士が阻もうと立ち塞がる。袈裟掛けに振るわれた長剣を寸での所でカイトは躱し、剣先を敵の鏡面マスクに照準して一気に貫いた。神々しい見た目からは想像できない奇声を上げて消滅したが、その様子に構うことなく、背中の翅で空気を叩く。

 しかし、加速しかけた身体を光の矢が貫いたため、カイトはその場に留まることを余儀なくされた。

 

「ぐっ……」

 

 苦悶の表情を浮かべながら上空を仰ぎ見ると、彼方でスペルを詠唱し、光の矢でカイトを射抜かんとする多くの守護騎士たちの姿があった。1本あたりのダメージ量はさほど問題ないが、もしも矢が一斉に放たれれば、カイトだけでなく、アスナも光の雨に穿たれるだろう。

 

「アス――」

 

 アスナに注意喚起するためカイトは叫ぼうとしたが、その前に矢が放たれ、予感していた光の雨が世界樹の内部に降り注いだ。そこでようやくアスナも異変に気が付いたが、時既に遅く、2人は身体の各所に痛々しいまでのダメージ痕を刻み付けられる。

 カイトとアスナのHPバーが急激に減少し、イエローゾーンに突入した。回避又は剣で防御しようにも数が多すぎるため、とてもじゃないがHPバーの減少は止めることが出来ない。

 

(こんな、所で……)

 

 終わるのか、と考えたその時、永遠に降り続けると思われた光の雨が止んだ。HPはレッドゾーンに突入し、すぐにでも回復する必要があると判断したカイトは、回復スペルの詠唱を始めようと息を吸い込んだ。

 しかし、背後から気配を感じたカイトが振り返ると、いつの間にか肉薄していた守護騎士が剣を振りかぶった状態で立っていた。

 

「しまっ――」

 

 虚を突かれたカイトが立ち直るのを待つわけもなく、守護騎士は容赦なく剣を振り下ろした。

 




次回は後編。以下執筆中です。
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