気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 初めまして、よろしくお願いします。


第1章 シャドー・モセス
第1話


 吾輩は転生者である、名前はジョニー。

 

 日本で普通の家庭に生まれ普通の学校を出て普通の会社に勤める、普通の人間として生活していたはずがいつの間にかアメリカに。英語で話しかけられ混乱しているところに、自分が赤ん坊である事に気づきパニックになりギャン泣きしたのも今ではいい思い出である。

 加えて、転生前は21世紀を生きていたはずがどうも少し時間が遡っているらしい。

 まず、自分の身の回りにある家電が古臭い事に疑問を感じた。そういう趣味なのかな?と赤ん坊生活を送るうちに携帯、パソコンと言った文明の利器が見当たらない事に気が付く。

 極め付けに、ブラウン管テレビに映るニュースでは、ソ連のアフガニスタン侵攻が激しさを増し、国連総会で撤退を求める決議が賛成多数で採択、ソ連を批判する合衆国大統領の顔も名前も彼の知るものと異なっていたのである。

 転生という事実のショックから抜け出しつつあるタイミングでの再びのショック、感情の発露の結果として再び大泣きしてしまい両親を大いに困らせた。

 家族については転生前と同じくごく普通、敢えて言うならば父親は日本ではさほど馴染みの無い、軍人だった。

 変わっていることがあるとすれば名前、父親の名前も息子である俺と同じ"ジョニー"。父の父、つまり俺の祖父も"ジョニー"。父曰く、代々長男には"ジョニー"と名付けるのだそう。

 もっとも、祖父については冷戦前にソ連に移住し、以来父も会っていないという。祖父もソ連では軍人、嘘か真か確かめる術もないがエリートなのだという。

 冷戦によって分たれた家族、祖父と同じ道を辿って父は軍人を目指したのか、などと考えてはみたが、生まれたての我が身としてはイマイチピンとこないまま、寂しそうに話す父の言葉を聞いていた。

 

 転生チートを生かして、アメリカンドリームを成し遂げようと考えていた時期が私にもありました。そんなの無理です、ハイ。

 絶妙に自分の知識の少ない時代、しかも違う国(アメリカ)、前世で英語を話せればまだしもそんな都合のいいことはなく、文字通りゼロからのスタートに等しいものだった。言葉が話せないのはまだまだ小さいからと言ってられるうちにと、必死になって英語を習得した。

 数年が経ち、なんとか普通に話せるようになっていると信じたい。その間にも、リンゴの会社やお金持ち(前世の印象)の会社が新商品を発表したり、20世紀最大のチャリティ・コンサートが開催されたりと、前世の歴史と同じように時間は流れているように感じられる。

 年の流れに従い、赤ん坊から成長を続けていた自分の体について気づいたことがいくつか。まず、胃腸が弱い。あと、注射ムリ。

 胃腸が弱いのはどうも遺伝性のものらしく、パパジョニーもよくトイレに駆け込んでいる。トイレの争奪戦になると大人子供は関係なくなる。いや、むしろ父親としての尊厳と子供への気遣いと襲いくる腹痛のバミューダ・トライアングルの中で苦しむパパジョニーの方が大変かもしれない。

 注射が苦手なのは前世からであった。だが、転生してより悪化しているように感じる。予防接種の時はサボろうか本気で悩んだ。嫌過ぎてお腹が痛くなってきた気がするほどに悩んだ。

 結局、家族に連行され情けない姿を見せることとなってしまった。2度と注射はしない。

 ドンドン!ドンドン!

 激しくドアを叩く音が響く。

「まだか!?早くッ!・・・ぐううぅぅっ!!」

 許せ、父よ。

 

 時は流れ、世界は回り続ける。

 転生したのにイマイチ実感がないのは同じ現代に生きるからか。しかし、歴史に残るイベントを実際に肌で感じられるのは少し楽しい。ベルリンの壁崩壊、リベリア内戦終結、東西ドイツ再統一、ソ連崩壊、湾岸戦争、ソマリア内戦、ユーゴスラビア内戦・・・

 いや、戦争多いな?歴史では知っていても、実際に軍人である父を持つ家族としてはあまり嬉しいことではない。事実、何度か派遣され家を不在にすることが多かった。

 冷戦終結とともに世界は平和になると誰もが信じたのだろう。歴史を知る身としては真顔にならざるを得ない。転生チートで次の戦争を吹聴してドヤる趣味もない。

 派遣の度に不安げな顔をする母親に付き添い、帰ってくる時の少し疲れた父の顔を見て抱きつくことしかできないこの身が少し悔しい。

 そしてまた、新たな争いがアフリカで起きているようだった。傭兵、今風に言えば民間軍事会社が武装蜂起したと言う。

 こんな事件あったっけ?と疑問に思ったがアフリカの歴史にはさほど明るくない。アフリカと傭兵と言ったらワイルド・ギースとエグゼクティブ・アウトカムズしか思いつかない。しばらくニュースを賑わした事件も、NATO軍の空爆によって鎮圧されて終わった。

 だが、今度は中央アジアで軍事政権が樹立された。ロシア主体のCISが部隊を派遣したが、なんと独立を守り切った。噂によると世界中の傭兵が集まり活躍したという。

 そんな国も独立から数年後、再び部隊の派遣を受け陥落した。世界各地の核兵器廃棄所を攻撃し核兵器を奪取、更には高純度の石油を精製する微生物を発明したバイオ・テクノロジーの専門家キオ・マルフを拉致、技術の独占を図ろうとしたためであった。

 

 そんななかで自分はといえば、転生もののテンプレ、2度目の学園生活を送っていた。

 自分で言うのもアレだが、ワタクシ、なかなかイケメンなのでは?というかこの身体(ジョニー)がすごい。頭脳明晰、運動神経抜群、そして爽やかイケメン。相変わらず胃腸は定期的に悲鳴を上げるが、それを差し引いてもプラスだと思う。周囲とも良好な関係を作れていると思う。ただ、ガールフレンドが出来ぬ、何故だ。

 ハイスクールを卒業していい大学へと進学できた。ここは前世の知識を存分に生かさせてもらった。でも、本物の天才にはチートを使っても敵わない。

 以前にふとしたきっかけで会った、ロボアニメ好きの円眼鏡のひょろっとした男なんかいい例だ。その彼も火遊びが過ぎクビになったとの噂がある。しかしその後すぐにスカウトされたとも聞く。捨てる神あれば拾う神ありとはよく言うものだ。

 

 キャンパスライフを謳歌していたある日、事件は起きた、()()()()()()()()()()

 

 2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ

 転生してから10数年が経ち、歴史が紡がれていくのを見て傍観者の立場を貫いていた。将来は適当にIT系の会社に勤めよう、幸いどの会社が当たるかは知っている。それぐらいの軽い気持ちだった。

 だが、あの日のニュースはそんな考えを吹き飛ばした。合衆国が攻撃を受けた、この地でアメリカ人の血が流れた。自分でも憤慨する自分の気持ちに驚いた。

 そして、この憤慨は、知っていて何もしようともしなかった自らへの憤慨でもあると気づいた。

 ニュースでは、今年就任したばかりのジョージ・シアーズ大統領が演説をしている。そう、前世とは違う人物が大統領である。ついに違う歴史が始まるのかと、就任演説を聞いて興奮した。だが、歴史は変わらなかった。

 転生して生きる中で、ジョニーは確かに"ジョニー"になっていた。この国(アメリカ)を好きになっていた。だからこそ、何もしようとしなかった自分を責めた。

 

 ジョニーはある一つの決意をする。

 大学を卒業後、軍に入ったのであった。

 

 軍に入ったのち、次世代特殊部隊への希望を出し、選抜された。この身体が全力を出せばなんとかなる、腹痛以外は。

 部隊ではVRミッションと呼ばれる訓練をやっていた。転生してきて最大の驚きはこれだったかも知れない。実戦さながら、気分はすっかり歴戦の兵士である。

 確かに大学でもこの分野の発展が著しいとは思っていたが、まさかここまで進んでいるとは!

 更に驚いたのが、遺伝子治療(ジーン・セラピー)である。なんでも、ソルジャー遺伝子と呼ばれるものを遺伝子に組み込むらしい。そこから俺たちのことをゲノム兵と呼ぶ者もいる。らしい、というのは注射を伴うからであり、あの手この手でずっと回避しているからである。嫌なものは嫌、ムリなものはムリ!

 部隊で勤務していく中で色々と面白い話も聞いた。1番突拍子もなかったのは昔の中央アジアの軍事政権が1人の兵士によって陥落したと言う話だった。しかも、この世界ではかなり有名な話らしい。ゲームじゃあるまいし!

 

 そんなある日、とある特殊部隊との合同訓練の話がやってきた。それがなんと、例の兵士のいた部隊だと言う。ここまでくると信じざるを得ないのか。半信半疑で顔合わせの日を迎えた。

 なんだこの曲?あのガスマスク姿の男は一体・・・

 

 例の特殊部隊、FOXHOUNDのリーダーの話を聞いて、目が醒めるような感覚がした。確かに、仲間に原因不明の体調不良者が出ていると言う話を聞いていた。それがまさか、遺伝子治療のせいだったなんて。

 リーダーは次の演習を利用して決起をすると言う。とてつもない計画だ。

だか、この男が言うとできる気がする。

 男はいう、俺たちは家族だと。

「ビッグボスの子供たち」だと。

 

 演習の場所はアラスカ、フォックス諸島沖のシャドー・モセス島、表向きは核兵器廃棄所だが、実際はアームズ・テック社の兵器実験場であり、新兵器の最終テストが行われるところであった。

 この極寒の地で、俺たちの計画が幕を開けた。

 島の占拠に成功し、リーダーは合衆国に対して要求を伝えたと言う。まずは計画通りと言ったところか。

 しかし、この寒さで風邪を引いたか体調が悪い。他のゲノム兵は不凍糖ペプチドを注射されており、この寒さもある程度平気そうに見える。自分の体とは言え、不便なことこの上ないなとこの時ばかりは恨むしかない。

 

 人質の監視につこうとした時に連絡が入った。なんでも、部隊に急遽配置された隊員が計画への参加を拒否したため拘束したのだと言う。地下1階に急造した独房に入れるとのこと。

 引き取りに行って例の隊員を見て驚いた。女だったと言うのもあるが、それだけではない。フラッパー・スタイルの赤褐色の髪、気の強そうな目。連れてきた同僚が名を告げる。

「メリル・シルバーバーグ、こいつだ。」

 

ここ、メタルギアの世界かよ!

そして俺は、()()ジョニーだ!

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