気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 お待たせしました。


第11話

 通信棟の階段を1人昇るジョニー、その顔には汗が滲んでいた。

 いくら鍛えているとはいえ、フル装備に加えカールグスタフと弾、爆薬が追加されているのだから負荷は相当なものである。ジョニーはカールグスタフを持っていく決断をした自分を恨み始めていた。

 なんとか中間層の扉まで到着する。扉には機銃掃射した時にできたであろう穴が空き、外からはハインドが飛び回るのが聞こえた。

 穴は空いているが溶接自体は頑丈にされているらしい、蹴飛ばしても扉は開きそうに無い。ブリーチング・チャージを取り出して扉に貼り付け起爆装置を繋げる。爆発を避けるため少し扉から離れる。

 

 Click, Click, KABOOM!

 

 爆発と共にドアが吹き飛ぶ。大きな音がしたが大丈夫だろうか?風通しの良くなった扉から外の様子を伺う。飛び出てハインドとこんにちはするのは大変よろしく無い。挨拶代わりの12.7ミリは遠慮願いたい。

 ハインドはこちらを警戒する様子も近づいてくる様子もない。気付かれていないようだ。ならばとダッシュで飛び出してすぐに隣の棟へと入る。

 緊張と寒さで腹が痛くなりそうだ。だが今はまだ我慢だ、下に降りなければ。

 

 1階近くで階段が壊されているのでロープで下に降りる。それほど高さは無いが、恐怖はそれなりにある。

 人間が1番恐怖心を感じる高さは11mだと言われている。その高さからロープ降下する訓練を何度もやった。繰り返してやる事で動作を体で覚え、恐怖を克服できるのだ。

 スネークと違って、ヘリに撃たれながら降りるわけでは無いからまだマシか。だが静かに降りるのには苦労した。いくらヘリが音を立てているからと言っても限界がある。

 なんとか下に降りてすぐ、赤外線ゴーグルを装備する。大腿部のホルスターから武器庫で拝借したP226を取り出しサプレッサーをつけた。

 警戒しながらエレベーターホールに向かうと、エレベーターのドアが開いて止まっている。ゲノム兵が4人、準備を整えているのが見えた。ゴーグルを少しずらして見ると肉眼でも無防備な姿が確認できた。

 奴らは気づいていない、チャンスだ。

 大丈夫、VR訓練通りにやれば良い。

 手の中で銃が跳ねる。サプレッサーで音が小さくなっていたことでゲノム兵達の反応が遅れた。暗がりから撃つジョニーに対してホールの照明に目が慣れていたことも災いし、あっという間に4人とも倒れて動かなくなった。

 呆気ないものだった。ほんの何秒かの間に4人が死んだ。

 新兵であるにも関わらず訓練通りに動けたし、人を殺したというのに然程動揺していない自分に驚いた。VR訓練とは大したものだ。

 赤外線ゴーグルを外し、死体を隠そうとするがいい場所がない。仕方なく破壊された階段の下の暗がりに隠した。4人分移動させるのはかなり大変で時間が掛かった。床にも血痕が残っているがそこまで手をつける余裕はない。できればスネーク達に無用に警戒されるのは避けたかったがやむを得ない、そのまま放置していくことに決めた。

 死体を物色して探る。見開かれたままの目が自分を責めているように感じ、耐え切れず手で瞼を閉じさせた。すぐに目的のものが見つかったのがせめてもの救いか。

 ステルス迷彩だ。

 オタコンの研究室にFOXHOUND用に試作品が5つ持ち込まれていた。オタコンが使っているもの以外の4つを使ってスネークを奇襲しようとしていた訳である。装備しているのを警戒して赤外線ゴーグルをつけていたが杞憂に終わった。バッテリーの消費が早いので奴らも節約していたのだろう。

 先回りとチートアイテム入手を目的としていたが上手くいった。早速装備してみる。スイッチを入れるとジョニーの姿は陽炎のようにボヤけて消えた。どういう原理か全く分からないがすごい技術だ。いやマジでどうなってんのこれ?

 時間があれば色々調べたいところだが、突然響いた爆音に現実に戻される。安定していたローター音が不規則になり、再び大きな爆音と共に地面が少し揺れた。

 どうやら決着がついたらしい。スネークがハインドを墜としたようだ。

 慌てて止められていたエレベーターを元通りに動くようにした後、ジョニーは先を急いだ。追いつかれたらなんのために先回りしたか分からない。

 

 ※※※

 

 リキッドの操るハインドを撃退したスネークはエレベーターに乗って下に降りていた。さっきまで動かなかったエレベーターはオタコン曰く、何もしてないのに再び動き出したという。乗った時にも特に問題なかったため気にもとめなかったが、オタコンから無線が入る。

「スネーク、そういえばさっき言い忘れてたんだけど」

「どうした?」

「僕の研究室にステルス迷彩の試作品が全部で5セットあったんだ」

「それで?」

「余ってるやつをスネークにもあげようと思って取りに行ったら、残りの4セットが無くなってたんだ」

「何?」

「それでさっきのエレベーターなんだけど・・・どうやら誰かが止めてたみたいなんだ」

 スネークは思わず周りを見渡した。息を殺して気配を感じ取ろうとしたが何も感じなかった。

「・・・・・・」

「スネーク?」

「・・・続けてくれ」

「それと気になるのがさっき僕が乗った時、重量オーバーのブザーが鳴ったんだ。僕以外誰もいなかったのに」

 何故そんな重要なことをエレベーターに乗ってから教えるのか。スネークは誰もいない虚空を睨みつけていた。

「・・・俺が乗った時にはブザーは鳴らなかったぞ」

「本当かい?じゃあ、やっぱり故障だったのかな?」

「・・・どうしてそうなる?ステルス迷彩の奴らがさっきまでここにいたに違いない。今ここにいないということは下で俺を待ち伏せしているのかもしれん」

「ええっ!?そりゃマズイよ!」

 どこか呑気だったオタコンがようやく慌てる。オタコンの言う通り、かなりまずい状況だ。エレベーターに隠れられる場所もありそうにない、万事休すか。

 せめて少しでも不利な条件を減らそうと赤外線ゴーグルをつけた。周囲を見てもエレベーターの中には誰もいない。やはり下で待ち構えているのか。スネークはドアが開く瞬間に備えた。

 

 程なくしてエレベーターが止まる。ドアが開いても正面からは人がいるように見えなかった。再びドアが閉まりそうになるその瞬間、スネークは飛び出した。少しでも身を隠そうと正面から死角になるところから外を伺っていたのである。

 スネークはといえば、少し拍子抜けしていた。期待していたわけではないが、敵にまんまと嵌められたと覚悟していたため当てが外れて困惑していた。

 周りを警戒していると何か踏んだ感覚がした。足をどかして確認すると薬莢のようだった。赤外線ゴーグルを外して見ると9mm口径の空薬莢で、少なくとも古いものではなかった。

 加えて、赤外線ゴーグルをしていて気づかなかったが、床には血痕が点々としていた。空薬莢も同じく転がっている。

 更に、血痕が続く先を辿るとゲノム兵の死体が4つ、転がされていた。階段下、明らかに目立たないように隠されている。しかも、階段が壊された箇所の近くにロープが垂れていた。

 一体ここで何が?

 その疑問に応えるように無線が鳴る。

「スネーク、大丈夫だった?」

「・・・オタコン、ここの連中をやったのはお前か?」

「ここの連中って?」

「1階エレベーターホールで戦闘の形跡があった。そこからゲノム兵の死体が隠すように動かされている」

「なんだって、一体誰が?」

「分からん、だが少なくともあの忍者ではない」

 スネークは死体を調べながら話し続けた。

「斬られたような跡はない、全員撃たれている。近くに拳銃の薬莢も落ちていた。オタコン、銃声を聞いたか?」

「君が戦っている間に?上の騒ぎで自信はないけど、聞いてないと思うよ」

 申し訳なさげにオタコンが答えた。確かに上がうるさかっただろうが、この建物の構造で1階の銃声が全く聞こえないというのも考えにくい。サプレッサー付きか?

「弾が全部入っている、全員だ。無駄玉も撃ってないし反撃も許していない、いい腕だ」

「そんな・・・君以外にも誰か潜入しているのかい?」

「俺は知らされていないがな。階段にロープも残っていた、何者かが動いているのは確かだ。大佐にも聞いてみよう」

「気をつけてくれよスネーク、僕の方でも調べてみるよ」

「分かってる。オタコンこそ気をつけろよ」

 

 オタコンとの通信が切れてすぐ、今度はキャンベル達を呼び出した。

「大佐、聞いていたか?」

「ああ、こちらでもモニターしていた。だが、我々にも別の作戦の話は来ていない。あくまで君の単独潜入の筈だ」

「この天候だし、レーダーやソナーでもスネーク以外の侵入者は確認できてないわ」

「では一体誰がどうやって?」

「外からではないとすると中から・・・」

 キャンベルの言葉をメイ・リンが補足した。支援(サポート)チームさえ何も分からないことに少し声を荒げたが、ナオミが気になることを言った。

「中?奴らが仲間割れしているということか?」

「どうかしら?あなたや忍者達に大勢殺されて、FOXHOUNDやヘリまで倒されてるのだから彼等の士気は下がっているはずよ」

「なるほど、あり得なくはないということか・・・」

「しかし、死体に争った形跡はなかったし、痕跡を消そうとしている。仲間割れにしても不審な点が多い、わざわざ一方的に殺した目的が分からん」

 確かに仲間割れの可能性も捨て切れないが、突発的、衝動的な殺しではなく、明らかに理性的なものであった。

「それにしてもスネーク、ラッキーだったわね!」

「ラッキー?何がだ?」

「だってその人が居なかったらスネークが襲われてたかもしれないでしょ?」

「「・・・・・・」」

 何気なくメイ・リンの言ったセリフにスネークだけでなくキャンベルも言葉を失う。

「・・・?どうしたの?」

「・・・いや、まさかな。俺を援護しているとは考えにくい」

「そうでもないかもしれん、スネーク。メリルが言っていたことを覚えているか?」

「・・・"協力者"か?」

「そうだ、例の協力者と今回の人物が同じだとすると1番辻褄が合う」

「辻褄は、な。結局何もかも分からずじまいだ」

 始めから今まで余りに不明な点が多い、スネークは思わず毒づいた。

「そう言わないでスネーク、あなたは1人じゃない。私たちもサポートするし、エメリッヒ博士もいる、きっとなんとかなるわ」

「そうだ、これ以上悩んでも仕方がない。奴の正体がなんにせよ、君の任務は変わらないんだ。スネーク、核発射を止めてくれ」

 任務は変わらない、か。謎や不審な点が多すぎるこの任務で、核発射の阻止という目的だけは揺らいでいなかった。この先の雪原を超えれば地下格納庫への入り口がある。メタルギアまでもう少しだ。

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