気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 遅くなりました、不快な表現があったらごめんなさい。


第12話

 う〜、トイレトイレ。今トイレを求めて雪原を全力疾走しているのはごく一般的な兵士、強いて違うところを上げるとするならば転生者ってところかな?名前はジョニー。そんなわけで地下格納庫入口のトイレを目指して走っているのだ。

 

 うおおぉぉ!雪で足が進まない!

 冗談でも考えて便意を誤魔化そうとしたが限界が近づいていた。なんとか保っていた腹の調子だが、初めての殺しのストレスと雪原に出た気温変化で遂に破局点を迎えた。

 雪に足を取られながらも何とか入口に辿り着いた。そのままの勢いで階段を駆け下り、溶鉱炉近くのトイレへと駆け込む。急いで装備を外してズボンを下ろす。

 地獄に仏、助かった!

 雪原でスナイパー・ウルフとすれ違ったが、特に気にする様子もなくスルーされた。今の彼女はスネーク以外には興味がないのだろう。

 それにしてもトイレに間に合ってよかった。もしダメだったら雪原でズボンを下ろすのも本気で考えた。ウルフに尻を晒すことにならずに良かった。

 

 バカなことを考えていると無線が鳴った。呼び出す相手に心当たりは1人しかいない、何事だろう?一瞬躊躇ったが、無線を取る。トイレしながら無線とは相手はどう思うだろうか?

「ジョニー、聞こえる?」

「どうしたんだ一体?」

「君たちの中で、スネークと忍者以外の侵入者の話とかってあるかい?」

「・・・いや、どうして?」

「スネークが通信棟で死体を見つけたんだ。忍者の仕業じゃなさそうだって、正体不明の誰かがいるみたいなんだ」

 いやそれ俺やねーん!

 思わずツッコミそうになった。そう言えばオタコンにどこに行くか伝えていなかった。これは俺がやったとは疑ってないのか?

「悪いが何も情報は来ていないな。スネークの仕業と思われてスルーされているのかもしれない」

「確かにそうかも知れないね。分かったよ、ありがとう」

「・・・スネークは今どこに?」

「スネーク?地下格納庫に向かってるはずだよ?」

「・・・雪原にスナイパー・ウルフが待ち伏せしている、情報が入った」

「ええっ、ウルフが!?」

「もう戦っているのかも知れないが・・・」

「ごめんジョニー、また!」

 慌ててオタコンが無線を切った。

 通信棟のやつらは自分だと伝えようか迷ったがやめた。知る必要のないことは知らない方がいい。

 だが、ウルフのことは話さずにはいられなかった。情報が入ったと適当なことを言ったが、気づかれるだろうか。

 これからウルフに、友の愛する人に起こることをジョニーは知っている。頑張れば止められるのかも知れない、だがその為に命を賭けるつもりにはなれなかった。せめてもの償いと言えば聞こえはいい、結局は自分の罪悪感を軽くするための言い訳だ。

 許してくれ、オタコン。

 腹痛の波がまたやってきた。これは天罰か?ジョニーは1人トイレで耐え忍ぶしかなかった。

 

 ※※※

 

 スネークは雪原を抜けて地下格納庫を目指そうとしていた。酷いブリザードだ、嵐は止みそうにない。そこにオタコンから無線が入る。

「スネーク大丈夫!?隠れてくれ!」

「どうしたんだ突然?」

 酷く慌てた様子が声から伝わってくる、一体何事か。怪しみながらもオタコンの警告に半ば無意識で反応し姿勢を低くした。

 その瞬間、弾丸の風切り音とほんの少し遅れて銃声が響く。一気に体が反応しアドレナリンが駆け巡る。雪に足を取られそうになりながらも近くの物陰へ飛び込んだ。その間も銃声は響いていたが、弾がスネークを捉えることはなかった。

 あのまま頭を上げていたら雪原に脳漿をぶちまけていた。オタコンにまた助けられたことになる。

「狙撃だ!銃声からすると相手は1人か、このブリザードでいい腕だ」

「あぁそんな・・・本当にいるなんて・・・」

「オタコン?何を言っている?」

「ウルフだよ、彼女がいるんだ!」

「ウルフ・・・スナイパー・ウルフか!」

「スネーク、彼女を殺さないでくれ!」

「何を言ってる!やつは俺とメリルを殺そうとしたし、今も狙われてるんだぞ!」

「彼女いい人なんだ、話せばきっと分かってくれる・・・」

「あの女はそんな甘い世界に生きてはいない!」

 ストックホルム症候群か?通信棟であった時、妙なことを質問してきたがそう言うことか。一体何があってウルフを庇うのか知らないが、今は議論の時ではない。

 すると突然、回線に割り込んで別の声が聞こえてきた。

「・・・また邪魔されるとはね、つくづく運の良い男」

「・・・ウルフか、このブリザードの中で大したやつだ」

「言ったでしょ?お前だけは私が狩ると」

(ウルフ)猟犬(フォックスハウンド)になるとは皮肉だな」

「ウルフ、お願いだ!」

「子どもは出しゃばるんじゃない!」

 なんとか止めようとするオタコンだがウルフは相手にしていない。今の彼女には獲物であるスネークしか見えていない。

「通信棟でやられたのを忘れたらしいな」

「あら、可愛い相棒さんがいなくて強がってるのかしら」

「試してみるか?今度は逃さん」

「男は詰めが甘い、最後の最後に音をあげる」

「スネーク、ウルフ、やめてくれ!」

「うるさい!誰にも邪魔はさせない」

 オタコンの悲痛な叫びも意味がない。スネークは無線をしながらPSG-1の準備をしていた。吹雪荒ぶ雪原に隠れる場所は少ない、地形と雪をうまく使わなければ。

 先程まで繋がっていた無線も今は静かだ。

 お喋りの時間はここまでだ。

 

 ※※※

 

 溶鉱炉区画から資材運搬用エレベーターに乗って更に下へと向かう。溶鉱炉の近くは熱で他の場所より冷え込んでいないが、これから地下に行くと一気に冷える。今から体調(主に腹)が心配だ。

 

 降りる間もずっとウルフを殺さずにすむ方法はないのかと考えたが、そもそもスネークと接触した時点でFOXDIEに感染している。前提からして詰んでいた。心臓発作が起きる条件もよくわからない以上、止めようも無い。

 血清とかワクチンも確かなかったはず。MGS4(原作)ではスネークの体内に残ったFOXDIEが無差別殺人ウイルスに変異しようとしていた。結局最悪の事態は避けられたが、()()方法はなんとしても避けたい!

 

 そうしていると1番下まで着いた。地下のはずなのに、少なくない数のカラスが耳障りに鳴き声を上げ、時たま飛び上がっては頭の上をグルグルと飛んでいる。

 カラス達からの不躾な視線を無視して倉庫へと進む。分かってたけどメチャクチャ寒い!カードキーはこちらに来る前にしっかり入手してきた。さっさと通り抜けよう。

 

「俺の仲間が騒いでいたが、迷い込んできたのは(スネーク)だけではなかったか」

 

 声の方へと顔を向けると、コンテナの上に裸の上半身に刺青が目立つ巨漢がいた。額に痣か刺青が分からないが(レイブン)が黒々と描かれている。背中にアモパック、手にはM61A1バルカンを持っていた。

 ここでバルカン・レイブンと出くわすとは。

 なんで裸で平気なの?なにその化け物ガトリング?戦闘機用を改造したって脳筋にも程がある。個人に対して使うにはオーバーキル甚しい。

 いずれにせよ、ここでスネークを待ち構えていたのは間違いない。いるかもしれないとは思っていたが、声をかけられるとは予想外だ。

「メタルギアの警備につくべきだと、ボスに具申に向かうところです。スネークが近づいてきています」

 咄嗟に適当な理由を言ったが苦しいか?このシャーマンの表情は読みづらい、何も言わずにこちらを見つめている。

 突然、レイブンの額が蠢いて見えた。錯覚かと思いきや、刺青の烏が額から飛び出てジョニーの肩にとまった。

 体が動かない!?

 ゲームではスネークが食らっていたが、実際に自分が受けることになるとは。ジョニーは軽くパニックになっていた。

「ほう・・・お前、面白い魂をしているな?こんなやつは見たことはない」

 体を動かなくした張本人のレイブンが興味深そうにジョニーに話す。

「肉体の死を経て魂が再び肉体を得る時、記憶は新しいものとなる。だがお前は違うようだ」

「シャーマンの(まじない)か?」

「造られた蛇達とはまた違う世界から・・・新たな肉体を得て何を成すのか?」

 なんとか絞り出したジョニーの声も無視してレイブンが話す。

「一体なんの話だ?」

「そう恐れることはない。全ては自然のままに、お前がここにいるのも何かの(ことわり)なのだろう」

「・・・・・・」

「行くがいい、旅人よ。俺は見ているぞ」

 肩の烏が飛び立ち、ジョニーの体は再び自由になった。

 一体なんなんだ?

 訳も分からずレイブンの方を見ると早くいけと顎で示し、興味を失ったかのように座り込んだ。そこに烏が集まっていく。ジョニーは逃げるように倉庫の出口を目指した。

 

「・・・行ったか、異界の魂よ。お前がこの世界で受容されるか、拒絶されるか。不要な存在となった時、大烏(レイブン)がお前の元へと向かうだろう」

 レイブンの言葉は誰に聞かれることなく、永久凍土へと消えていく。これから激しい殺し合いになるとは思えないほど静謐な空間だった。

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