気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 待たせたな。

本当にお待たせしましたごめんなさい。


第13話

 これまでの場所と違い、そこには誰もいなかった。大きな格納庫に鎮座する鋼鉄の巨体を取り囲むように整備用の足場(キャットウォーク)が張り巡らされているが、どこにも人の気配はない。

 沈黙のせいか、わずかな音でもひどく耳障りに感じる。まるで御神体を祀る神殿かなにかのように緊張感のある空間だ。側溝を流れる汚水の臭いがなければ、博物館のような雰囲気ですらある。

 だが、そこに置かれているのは退役して時が経ち、再び動くことのない展示兵器ではなかった。少ない照明で薄暗いが、存在感は全く消え去っていなかった。

 最新鋭の技術と多額の資金を持って造られた、世界を破滅へと導くもの。未だ実戦を経験していない、()()()()()()()兵器。

 ジョニーは今、メタルギアREXの前にいた。

 

 俺、本当にメタルギアの世界に来たんだなぁ。

 ジョニーはメタルギアREXの実物を前にして改めて、MGSの世界に来たことを実感した。ムービーかボス戦の俯瞰視点、もしくはスティンガーを構えた時の主観で散々見てきたつもりだったが、やはり実物の存在感は全くの別物だ。当たり前だが、ゲームをしていた時には実際にこの目で見ることになるとは思わなかった。ファン冥利に尽きるというやつか。

 じっくりと眺めていたかったが、その余裕はなかった。原作(ゲーム)の流れだとディスクの交換はとっくに終わって、ストーリー終盤に差し掛かっている。メリルも連れていかれてからどこにいるのかも分かっていない。

 おそらく、ジョニーが何もしなくてもこの事件は原作通り解決する。だからといって何もしないつもりはなかった。出来ることをやる、やることは山積みだ。

 上手くやらなければ。ジョニーは1人気を引き締めた。

 

 ※※※

 

 オタコンは雪原でスナイパー・ウルフの最期を見届けた後、PALキーの仕掛けを解明するべく、コンピューター・ルームに戻りセキュリティ・ファイルと格闘していた。道中はステルス迷彩のおかげで気づかれることはなかった。

 騙されて核兵器開発に協力させられたことへの怒り、まんまと利用された自分への憤り、開発者としての使命感、スナイパー・ウルフを失った悲しみ、あらゆる感情がオタコンの中で渦巻いていたが、1人潜入任務にあたるスネークの役に立ち、何としてでも核発射を阻止するという意志だけは固かった。

 

 それに、なんのために戦うのかという質問の答えをスネークからまだ聞いていない。

 

 眼鏡をずらして眉間を揉む。いくら得意とは言え、こうも気を張ってモニターの前にいることはそうそう無い。

 スネークの無線の声はとても驚いていた。かつて火遊びが過ぎてFBIをクビになり、アームズ・テック社に拾われていいように利用されてきたが、ここでハッカーとしての腕前が役に立つとは、人生何があるか分からない。 

 役に立てるのが嬉しくて「最も僕らしい呼び方だ」なんて言ってしまったのが今になって少し恥ずかしくもある。

 懐かしい友人とも再会した。こんなところでこんな状況でなければゆっくり話でもしたいが、まずは目の前の難題を解決しなければ。

 

 スネークに連絡して間も無く、オタコンはついにPALキーの仕掛けを解明した。手の込んだシステムだが、種が分かれば後は簡単だ。すぐにスネークに無線をして方法を伝えた。

 あとはスネーク頼みだが、これでREXを止めることができる。生みの親としての責任は果たせそうだ。

 まだ事件の首謀者であるFOXHOUNDのリーダーが残っているが、スネークがなんとかしてくれるはずだ。

 根拠もなく楽観的に考えていると無線から声が聞こえてきた。

「オタコン、聞こえるか?」

「ジョニーだね?聞こえてるよ」

「今どこにいる?調べて欲しいことがあるんだ」

「調べて欲しいこと?一体何だい?」

 ここにきてジョニーから頼まれごととは何事だろう?

「REXは今本当に核を撃てるのか?システムから確認できないか?」

「ちょっと待ってくれよ、それが分からないからスネークが来たんだろう?外部からアクセス出来れば苦労はしないんだ」

「それは分かってる。外部ではなく、同じ基地のネットワークからでも駄目なのか?」

「駄目だね、核発射に関わる部分は完全にクローズ系さ。でないと、誰でも好き勝手に核が撃てるようになってしまう」

 今更すぎる質問にオタコンは力が抜けそうになる。そんなことが分からないような男ではないはずなんだが。

「どうしたんだい急に?何か気になるのかい?」

「・・・順調過ぎてな。PALキーを入力されたら奴らは交渉のカードを失う。何故もっと必死にスネークを止めない?捕まった時にオセロットが回収しなかったのも気になる」

「僕らに仕掛けがわかると思ってなかったんじゃないか?実際、ボクがいなければ分からずじまいだっただろうし」

「そこもだ、何故オタコンを自由にさせている?お前のことを知っていれば殺してでも止める筈だ」

「急に怖い事言うなよ、それこそ知らなかっただけさきっと」

 ジョニーの発言に、拷問されて死んだDARPA局長の姿に自分を重ねて想像してしまい、オタコンは1人顔を青くさせた。

「奴ら本当にPALコードを入力したのか?」

「PALコードの方はDARPA局長はマンティスに読まれて、ベイカー社長はオセロットの拷問でゲロったって話じゃないか。PALキーの仕掛けも分かったし、それももうおしまいさ」

「・・・PALキーの仕掛けは()()分かったのか」

「そうだよ?社長の極秘ファイルから見つけたんだ」

「・・・・・・」

 PALキーの仕掛けを解いたと聞いてジョニーは黙り込んでしまった。さっきから本当にどうしたのか。

「ジョニー?」

「・・・PALコードを入力した場合、REXはどうなる?」

「え?どういう意味?」

「言い方を変えよう、PALコードの入力でREXは起動するのか?」

「・・・それはどうかな?今までのテストじゃ普通に起動させていたけどね」

「だが今回は最終試験、それも模擬核弾頭の発射も予定されていた筈だ。実際のプロセスで試験しなければ意味がない。そのためにわざわざPALコードを使ってまで再現しているんだろう?」

「まぁ有り得る話だね?でもそれが何か?」

「その前提で話すとREXは起動済みと言うことになる」

「それはそうだね」

「なら、試験用のデータを集める回線からREXの状態を確認できないか?」

「それは出来ると思うけど、一度起動した後にスタンバイさせているだけかもしれないよ?」

「その時は普通に起動できるか試せばいい、外部からでも出来るんだろう?起動できるかどうかを確かめたいんだ」

「まぁ、試してみるけど・・・」

「急いでくれ!本当に奴らがPALコードを入力していなければ、スネークのPALキーが最初の入力になってしまう」

「!大変だ、スネークに連絡するよ!それじゃ!」

「頼む」

 最後の連絡から時間が経ってしまった。まずスネークを止めないと!

 

 ※※※

 

 スネークは最後のPALキーを読取機に挿入した。コンピューターが反応し電子音が鳴る。

 これでREXは無力化できる筈だ。ザンジバーランドではグレイ・フォックスの操るメタルギアと戦う羽目になったが、今回はやり合わずに済みそうだ。

 ・・・グレイ・フォックス、やつは何故ここにいるのか。

 メタルギア、サイボーグ忍者、FOXDIE、ナオミの裏切り・・・

 この任務(ミッション)はブリーフィングの時の状況から大きく変わり過ぎている。メリルの居場所も依然として分からない。FOXDIEの発症時期も不明なまま、あとどれぐらい時間が残されているのか。

 確かなのは、このままでは終わらないことだ。核発射はこれで阻止できる。次はリキッド達だ。

 そうしてPALの認証を待っているとオタコンから無線で呼び出された。

「オタコンか、どうした?」

「今どんな状況?入力はまだだよね!?」

「どうしたんだ?今ちょうど最後のPALキーの認証待ちだ」

「えぇ、もう!?」

「何か不味かったのか?」

 すると、コンピューターのディスプレイの表示が変わる、読み込みが終わったようだ。合成音声が内容を告げる。

 

『PALコードを認証しました。起爆コードが入力されました。発射準備完了しました』

 

「何だと!俺は解除したぞ!」

「あぁそんな!()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「どう言うことだオタコン!」

「私が説明しよう、スネーク」

「マスター、これは?」

 突然、マスター・ミラーから通信が割り込んできた。一体何が起きている。

「貴様には感謝しているぞ。PALキーを見つけてくれたばかりか、入力までしてくれるとはな。エメリッヒ博士、よくぞ仕掛けを見抜いてくれた。スネークだけではどうしようもなかったからな」

「何のことだ?」

「DARPA局長のPALコードは入手できなかったんだ。ベイカー社長と同じく、マンティスの精神干渉を受け付けなかった。オセロットが聞き出す前に殺してしまってな。俺たちは威嚇射撃さえ撃てなかったんだ、途方に暮れたよ。核が撃てないのでは要求は叶えられん。PALコードが手に入らない以上、別の方法を使うしかない」

 マスターの突然の告白に脳が理解を拒絶する。

「だからスネーク、お前に賭けてみたんだ」

 ミラーから語られたデコイ・オクトパスがDARPA局長に扮していた理由、全ては仕組まれていたこと、全てが衝撃の連続だった。

 そして、()()()()()()

「貴様、誰だ!」

「全て教えてやるとも、俺の場所まで来れればな」

「スネーク、その男はマスター・ミラーではない!」

「遅かったなキャンベル、もう手遅れだ。核発射準備は整った」

 キャンベルが通信に割り込んできたが、ミラーを名乗る男は隠すどころか焦る様子も見せない。

「マスター・ミラーの自宅から遺体が見つかった、死後3日経過している。彼との通信がオフになっていたので分からなかった。メイ・リンによれば発信源はその基地内だ」

「それじゃ、おまえは・・・?」

「俺だよ、兄弟」

 地下格納庫の司令室の窓の向こう、すぐ近くのキャットウォークに人影が現れる。無線を持ちながら残虐な笑みを浮かべている。

「リキッド!」

「この偉大な兵器を見ながら死んでいけ、兄弟!そしてエメリッヒ博士、まだ聞いているな?」

「え、ええ?ボク?」

「何やら()()()()()を言っていたな?あとでじっくり聞かせてもらおう」

 そう言ってリキッドは無線を切り、メタルギアの操縦席に近寄っていった。慌ててスネークが司令室から出ようとするが、ドアがロックされガスが吹き出し充満し始める。

「少し待っててくれスネーク!今セキュリティを解除する!」

「お前も狙われているぞオタコン!急ぐんだ!」

「わかってるよ!」

 

 間もなくセキュリティが解除され、ガスが止みドアが開いた。

「よし開いた!スネーク、REXのことが知りたかったら無線してくれ!」

「助かったオタコン、お前も死ぬなよ」

「勿論だよ。お願いだスネーク、REXを止めてくれ」

 そう言うと無線は静かになった。

 さっきまで薄暗かった格納庫内には煌々と明かりが灯り、危険位置からの退去を告げる警報が響いていた。

 メタルギアを起動させてしまったのは自分だ。何としてでも止めなければ!

 スネークはメタルギアへと歩くリキッドの背中を追った。

 

 ※※※

 

「さて、どうしようかな?」

 オタコンがスネークの為にセキュリティを解除したまでは良かったが、その時点でコンピューター・ルームの外が騒がしくなり始めていた。ドアの前に簡単にバリケードのようなものを作ったが、それももう破られそうである。

 またステルス迷彩で逃げるしかないかと、ここにきて慣れてしまった動きで起動させ姿を消す。

 ドアが破られてゲノム兵が雪崩れ込むが部屋には誰の姿もない。そのまま部屋を出ようと考えるオタコンだったが、ゲノム兵が赤外線ゴーグルを取り出したのを見て顔から血の気が引く。

 なんとか視界から逃れようと机の下に隠れたが無駄な抵抗だった。

「・・・そこか、動くな!」

 ゴーグルをつけたゲノム兵達に囲まれて銃口を向けられ、動けなくなる。ついに僕もおしまいか。

「そこから出てこい」

 震える手足に力を込めて机の下から這い出る。怖くて顔が上げられない。

 すると、奇妙な音と共にゲノム兵達が次々と崩れ落ちる。訳がわからず顔を上げると、床に倒れたゲノム兵と同じ服を着た男が映画で見るような消音器付きの拳銃を構えて立っていた。

 

「大丈夫かオタコン?」

「・・・ジョニー?!どうしてここに?」




 シャドーモセスも後数話で終わるかと思います。
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