気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 待たせたな(2回目)
 まず言い訳をすると仕事が忙しくなってここまで遅くなりました。しかも今回、ほぼほぼ説明回、文字数はいつもより多いのに物語が進みません。
 
 章変わったら話数はリセット?何も考えずに書き始めた弊害がここに。


タンカー編 第1話

 2007年11月14日

 マンハッタン ハドソン川

 

 嵐の中を1隻のタンカーがハドソン川を進む。見回りの船員も雨具を着ているが、雨風共に激しく意味を成していないようだ。積荷が重いのか船の喫水が深い。外見はなんの変哲もないただのタンカーだ。

 だが、航海計画書によればこのタンカーは上流で重油を下ろしており、積荷は軽くなっている筈だった。知らなければ誰も気づかないだろう。

 偽装タンカーはマンハッタン島に差し掛かる。このままいけばニューヨークの摩天楼を横目にニューヨーク湾を経て洋上へと出る。

 タンカーの前に巨大な吊橋が見えて来た。ハドソン川を下るとマンハッタン島に最初にかかる橋、ジョージ・ワシントン(ブリッジ)だ。橋の背景に高層ビル群が霞んで見える。

 その橋の上に1人の男がいた。降りつける雨を気にする様子もない。雨具のフードを被り、顔はよく見えない。

 船が接近するのを確認すると男は被っていたキャップの縁を持って下げる。頭のキャップは目出し帽(バラクラバ)を巻き上げたものだった。ニューヨークでそんな格好をすれば目立つこと間違いないが、突風が吹いて雨具が巻き上げられた瞬間に男の姿は見えなくなった。

 ステルス迷彩だ。

 雨が体に弾けてできる輪郭で辛うじてその姿を認識できる。影は走り出し、タンカーが橋の下を通過しようかというところで橋からその身を投げ出した。

 1番高いところで水面まで65mあるこの橋から船に向かって身を投げればタダでは済まない。あわや激突といったところで落下が止まる。夜の闇と嵐のせいで分かりづらいが、橋からロープが伸びていた。いわゆるバンジージャンプの状態だ。

 男の影は伸び切ったロープの反動で浮き上がる。タンカーの船橋(ブリッジ)にぶつかりそうになったが、男は足で衝撃を吸収し同時にロープを切り離した。そのまま甲板に受身を取って衝撃を殺して着地する。

 見事な着地だったがステルス迷彩が耐えられなかったようだ。スパークと共に再び男の姿が浮かび上がってきた。

 男は顔を上げ、周りを見渡す。潜入に気づかれた様子はないことを確認すると小さくため息をついて呟いた。

「ついにきてしまったか・・・」

 

※※※

 

 主人公なり替わりとか望んでなかったのになぁ。

 ジョニーは頭を抱えたい気持ちでいっぱいだったが、体は自動的に次の行動へと移り、身を隠せる場所から様子を伺う。この約2年の間に染み付いた習慣(ルーティン)だ。

 無線で相手を呼び出す。

「こちらジョニー、聞こえるか、オタコン?」

『やぁ僕だよ、ジョニー。聞こえる』

「・・・待たせたな、潜入(スニーク)ポイントに到着した」

 原作(ゲーム)と全く同じ台詞を言う。ジョニーは複雑な気分だがオタコン達には知る由もない。

『異状はないか?潜入を気取られた様子は?』

「スネーク?大丈夫だ、気づかれた様子はない。着地の衝撃でステルス迷彩が壊れたぐらいだ」

『随分とコキ使ってきたからね、悪いけど我慢してくれ』

『本当に大丈夫か?必要なら今からでも・・・』

『君も心配性だね、スネーク?』

 当のスネーク(主人公)はと言えば随分とやきもきしているらしい。

『確かに初めての単独潜入だけど、ジョニーを鍛えたのは君だろう?彼の実力はよく知ってるはずだ』

『それはそうだが・・・』

『なら、あとはジョニーを信じて待つだけだよ。きっと、彼なら大丈夫だよ。スネークも、たまには後方でサポートしかできない立場ってのも味わってみるといいさ』

『・・・俺には向いてないようだ』

『何事も経験さ、慣れるもんだよ』

「悪いんだが、そう言う話は俺の聞いてないところでしてくれないか?」

 潜入している当の本人に裏話は聞かせないで欲しい。

『ハハハ、ごめんごめん。でも、君も少し緊張してる様子だったからね。ちょっとはリラックスできたかな?』

「問題ない、最初の単独潜入任務(スニーキング・ミッション)がアウターヘヴンだった伝説の英雄(ソリッド・スネーク)様に比べれば気楽なもんさ」

『随分と余裕そうだな、最初の頃は毎回死にそうな顔をしていたのにな』

「・・・昔の話はよしてくれ」

『昔の話を最初に振ったのはそっちだぞ』

『はいはい、2人ともそこらへんにしときなよ』

 脱線しつつあるスネークとの戯れ合いの会話をオタコンが諌める。流れが不利だったので助かった。

『でも、確かにね。僕から見ても逞しくなったと思うよ、ジョニー』

 おや?オタコンまで参加してきたぞ。しかもそっち(スネーク)側だな?小っ恥ずかしい話をするようなら無線を切ってやる。

 そんなことを考えながらジョニーも、ここ2年の出来事を思い出していた。

 

 

 反メタルギア財団『フィランソロピー』に参加してからの約2年間、ジョニーはスネークと共に文字通り世界中を飛び回った。

 オセロットの流したデータを元に作られたメタルギアとその亜種に対して、生産・研究施設の物理的破壊又はクラッキングによる電子的破壊によって開発・生産を妨害し、完成したメタルギアがあれば破壊した。

 ある時は某国の秘密研究施設、またある時は兵器メーカーの工場、市街地から森林、山岳、砂漠地帯と世界各地を渡り歩いた。

 こうして言うと何もかもが上手くいっていたかのようだが、もちろんそんなことはなかった。

 次世代特殊部隊として戦闘訓練は受けていても、潜入(スニーキング)のための訓練は殆ど受けていない。訓練を間に挟みつつ、現場ではスネークの援護をする形で当初は始まった。

 だが、スネークとの連携も最初は大変だった。実際に一緒に行動すると分かるが、潜入モードのスネークは凄い。存在感を消すと言うか影が薄くなると言うか、とにかく目で見ていないと認識するのがかなり難しい。

 前を歩いている時、後ろにいると分かっていても不安で振り向いてしまうほどで、少し目を離すだけでどこに行ったのか分からなくなる。そのせいで援護するのも一苦労だった。

 ジョニーの行う援護も多岐に渡った。偵察からの狙撃支援、潜入のための陽動、危険領域(ホットゾーン)離脱時の援護、車両・航空機によるスネークの潜入(insertion)回収(extraction)(このためにヘリや飛行機の操縦訓練をさせられた)、オタコンのクラッキングが及ばない時の現地におけるセキュリティの解除及びデータの破壊・・・

 うわっ・・・わたしの仕事、多すぎ・・・?

 流石に一度に全部やることはまずないが、これ原作(ゲーム)ではどうしてたんだ?オタコンが現地に行くこともあったかもしれないが、荒事は専門外だ。描写がないだけで協力者がいたのだろうか。もしそうでないなら、かなり厳しい戦いをしていたことになる。

 その厳しい部分が自分に回ってきていると思うのは考えすぎか?

 

 訓練を続け、潜入の数をこなすにつれてスキルが磨かれていったように感じる。潜入モードの感覚(SENSE)もなんとなく分かるようになった。身近で実際に見ることができたのも大きいのかもしれない。スネークが援護しながらジョニーが潜入する時もあった。

 それでも、ジョニー単独での潜入は今までなかった。相棒(バディ)で行動する方が円滑に回るのもあったし、スネークが渋っていたのも理由だ。

 だが今回、このタンカーへの潜入にあたって、潜入方法の制約とタンカーという場所の制約、天候、相手の規模等、諸々の条件を鑑みて単独での潜入に決まった。通常の室内戦闘(CQB)海上船舶臨検(VBSS)ならば目の数が多い方が有利だが、潜入となると人数の多さは被発見率を高める要因となってしまう。狭く隠れる場所の制限される船舶なら尚更だ。

 ここでいつもならスネークに自動的に決まるのだが、今回はオタコンからジョニーにも単独潜入の経験を積ませるいい機会ではないかと提案があった。

 スネークはかなり渋っていたが最終的に俺に任せるとのことで折れた。

 俺はといえば、遂にMGS2突入かと感じいっていたが、単独潜入はかなり悩んだ。自分を試したい気持ちもあったが、ここで大きく原作に介入することの影響を考えると迷った。

 でもよく考えたら、スネークが行かなければタンカー沈没の濡れ衣も着せられないし、割とアリなのでは?あわよくばタンカー沈没も阻止したい。そうすればビッグシェルは作られず、『愛国者達』は計画を変更せざるを得ない筈だ。

 ジョニーはタンカーへの単独潜入に同意した。

 

 そんなわけでタンカーに降り立ったジョニーだったが、橋の上から下を覗き込んだ時は少し後悔した。

 懸垂下降(リペリング)高速ロープ下降(ファストロープ)するには高さがあるのと強風で煽られて危険とのことでバンジージャンプとなった。まごつけば降りる途中に見つかる恐れもあるからだという。だが、タイミングを間違えば船橋に激突するか、船に間に合わず橋に宙吊りになってしまう。

 嫌な想像をしたが、飛び降りてしまえばもう後戻りはできない。最後までビビりながらもなんとか乗り込むことができた。

 今思えば、ステルス迷彩を着ていたのだから見つからないのでは・・・?無茶しすぎて俺の感覚もおかしくなってきたのか?

 

 

『ジョニー?聞いてるかい?ジョニー?』

「・・・すまない、なんの話だったか?」

 昔のことを思い出していたらどうやら聞きそびれたらしい。

『だから今までみたいにはいかないって話だよ。スネークの援護はないから危なくなっても誰も助けられないし、先の様子も自分で調べながら行くしかないんだ。今まで以上に注意してくれよ』

「勿論だ、こんなところでゲーム・オーバーはゴメンだからな」

『本当に分かっているかい?スネークと違って、ナノマシンの入ってない君の行動はある程度しかモニター出来ない。くれぐれも見つからないようにね。報告もこまめに頼むよ』

 スネークのことを心配性なんて言ってたがオタコンも大概だ。俺?俺はただのビビりだ。

 未だにナノマシンは体に入っていない。連絡もナノマシンによる体内通信ではなく昔ながらの無線機だ。

 後々のことを考えるとナノマシンを入れるわけにはいかないし、何より注射は嫌だ。オタコンも初めはあの手この手でやろうとしたが、頑なに拒否する俺に諦めがついたようだ。

 未来で仲間を救うためだ、仕方ない仕方ない。

 

 オタコンが今回の任務(ミッション)について改めて説明する。

 目的は船内にある新型メタルギアを発見、その証拠映像を写真(カメラ)に収めることだ。まずは船橋最上階にある操舵室に向かい、偽装タンカーの行先を調べる。ブリーフィングの通りだ。演習場所を特定することで新型メタルギアの性能や完成度を推測するという。

『できるだけ戦闘は避けてくれよ、さっきも言ったけど援護はないからね。あくまで目的は新型メタルギアの証拠を集めて公開すること、誰にも見つからずに脱出できればそれが1番だ』

「頼まれたって派手にドンパチするつもりはないさ」

 そう上手くいけばいいんだがなぁ、無理だろうなぁ。

 双眼鏡で様子を伺いながらジョニーはそう思わずにはいられなかった。()()()()()()

 

 吹き荒れる風の音に別の音が混じってきた。ヘリのローター音だ。リキッド(MGS1)といい、無茶をする奴が多いことだ。

 ヘリからファストロープで次々と乗り込んでくる。羨ましいなオイ、お前らもバンジーしろよ。

 見張りの海兵隊員が次々と排除されている。鮮やかな手並みだと、1人感心してしまった。

「オタコン、スネーク、お客さんだ」

『なんだって?』

「ヘリから乗り込んできてる、見張りがやられた」

『ヘリだと?何者だ?』

「武装はAKS-74uに減音器(サプレッサー)付き、装備は揃いの迷彩服に暗視眼鏡(NVG)と無線機、オマケに動きも一流(プロ)だ」

『そいつらもメタルギアが狙いか?』

「だろうな、船を乗っ取るつもりのようだ」

 襲撃者達を観察していると目的の人物が見つかった。オタコン特製のカメラに持ち替えて撮影し画像を転送する。

「今写真を送った、奴らが誰か分かったぞ」

『えっ、誰なんだい?』

「セルゲイ・ゴルルコビッチ、元参謀本部情報総局(GRU)の大佐だ」

『それってシャドー・モセスでリキッド達と合流しようとしてた?』

「そう、その大佐殿だ」

『よく顔を知ってたな』

「モセスの後、尋問された時に嫌というほど見せられたからな。一応確認しておいてくれ」

 勿論嘘だ。尋問ではそんな事はほとんど聞かれなかった。

『奴ら、まだメタルギアを欲しがってるのかい?わざわざアメリカまでやってきて?』

「さてな、そこんとこの考えは分からん。とにかく、今は奴らにも見つからないようにやるしか無い」

『そうだね、僕の方でも調べてみるよ』

『気をつけろよ』

「ああ、また連絡する」

 さて、いよいよ"初めてのおつかい"の始まりだ。

 無線を切って、隠れていた場所から中への入り口を探した。すぐ近くにあるが巡回の兵士がいる。タイミングを見て甲板を走る。雨と風がいい隠れ蓑になっている。

 ジョニーは気づかれる事なく、船内へと侵入した。




 実質これもプロローグ
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