メリルを見て呆然としそうになったが、慌てて頭を回転させる。
「わかった、地下の独房だな?」
「そうだ、後で人質の1人も連れて行く。」
もう2人の人質、DARPA局長のドナルド・アンダーソンとアームズテック社の社長ケネス・ベイカーの姿が見えない。おそらく今、リボルバー・オセロットと楽しく
「こいつの装備はどうした?ついでに倉庫に持って行ってやるよ」
「いいのか?悪いな」
同僚に気をきかせる素振りを見せ、いいってことよと装備をもらう。そのままメリルを連行し、戦車格納庫の地下1階へと向かう。地下の独房に入れる前に装備を机のそばに置く。メリルもしっかりと見ていた。ここで確保しておかないと、後で俺が身ぐるみ剥がれるんだよ!
そしてメリルの身体検査をやった後、右側の独房に入れて鍵を閉める。身体検査の時、露骨に顔を歪めて睨まれた。やましい気持ちがないとは言えないが、そんな気持ちも引っ込んでしまう。
とにかく、メリルを預かって一息ついたところで椅子に座り考えに耽る。
何故今、このタイミングで思い出したのか?
心当たりがない訳ではない。ガスマスク姿の男、サイコ・マンティスだ。
あの男、まんまとゲノム兵に洗脳をかけ、蜂起に参加させてしまった。俺も間違いなくかかっていた。おそらく洗脳が解けたのはメリルにあった瞬間だ。理由は不明だが、前世の記憶との関係もあるのかも知れない。
というか、何故今まで気付かなかったのか。ニュースでやってたじゃん!アウターヘブン蜂起にザンジバーランド騒乱!転生して10数年も経ち、記憶が薄れていたから仕方ない・・・のか?大統領のジョージ・シアーズなんて、もろにソリダス・スネークだったけど!
ともかく洗脳が解けた今、蜂起への思いやFOXHOUNDのリーダー、リキッド・スネークに感じたカリスマも幾分か冷めたように感じる。同僚がジーン・セラピーの影響で苦しんでいるのに思うところがないと言えば嘘になるが、蜂起に参加を決意した時ほどではない。なにより、俺ジーン・セラピー受けてないしな!
過ぎたことを考えても仕方がない、どうするかを考えねば。
まず、洗脳が解けていることをゲノム兵達に気づかれてはならない。その上で、この事件を解決に持っていけるようにしたい。そうなると鍵を握るのはやはりメリルとオタコン、そして伝説の男、ソリッド・スネーク。
もうしばらくすればスネークは潜入してくる。それまでに出来ることは何だ・・・?
※※※
突然の部隊配置にも驚いたが、まさかその部隊が核ジャックを起こし合衆国を脅迫するとは夢にも思わなかった。反抗したところで当然捕まり、VIP2人と同じ部屋に拘束された。
そこでアームズテック社のベイカー社長からカードを預かった。何のカードか説明はされなかったが、重要なものなのだろう。事実、2人ともどこかへ連れて行かれてしまった。私も地下の独房に入れられると言う。
カードは身体検査を上手くやり過ごし、今でも隠し持っている。残念ながらセキュリティ・カードは装備と共に没収された。
何とかここを脱出しなければ。メリルは先行きに不安を感じながらも、独房で反撃の機会を窺っていた。
「おい、聞こえるか?」
ドアの向こうから話しかけられた。先程メリルを連行してきたテロリストである。
「何の用?私に話すことなんかないけれど」
「声を落とせ、聞かれるとまずい」
不安を隠すように強気な態度を取ったが、どうも様子がおかしい。変な気でも起こすつもりなら急所に一撃加えるつもりだったのだが、どうやらそうではないらしい。小声でも聞こえるように、ドアの近くまで行く。
「メリル・シルバーバーグだな」
「さっきご紹介に与った通りよ、それでわざわざ呼び寄せて何のつもり?」
「時間がない、君はベイカー社長からカードを預かっているな?」
思わず息を呑む。態度に出てしまったことを後悔するも、もう遅い。気付かれていないか?このままでは不味い。
「あら、何のこと?」
「とぼけなくていい。持っているならそのまま大事に、無くさないようにしてくれ」
どう言うつもりか、このテロリストは追求しないばかりかそのまま持っておけと言う。
「どういうつもり?大して重要なものでもないってことかしら?」
「今はまだ知らなくていい、いずれわかる」
情報を得ようとするも失敗、一体彼は何を知っているのか?
「要領を得ないわね、あなたは敵なの?味方なの?」
「少なくとも敵ではない、そう思ってくれていい」
「あらそう。じゃあ、ここから出してくれない?」
「今はダメだ。チャンスがくる、その時を待て」
「それっていつ?」
「その時が来ればわかる」
「
彼の徹底した秘密主義に思わず苦笑いする。
「脱走の時に装備を忘れるな。あの格好ならしばらくは誤魔化せるはずだ。君が脱走して落ち着いたら無線で
「お優しいことね、装備も返してもらえるなんて」
肝心なことは何も言わない癖に、細かく指示を出す。まるで子供の心配をする母親のようで、メリルの神経を逆撫でする。
「何故あなたは私を助けるのか、その説明がないけれど?」
「・・・・・・」
「仲間を裏切る理由は何?そんな危険を犯すメリットは?」
急に口が重くなったところに畳み掛ける。困ったような雰囲気を出す男に僅かな優越感を覚えたが、それもすぐ霧散する。
「・・・一目惚れとでも思っておけばいい」
「・・・は?」
「・・・冗談だ、忘れてくれ。俺の理由はどうでもいい。ゲノム兵もそうだが、FOXHOUNDのメンバーには特に注意するんだ」
無理矢理話を変えたこの男、本当に大丈夫かと不安になるメリル。しかし現状、彼の言葉を信じて動くしかないのも確かなのだ。
「FOXHOUND・・・どうして彼らはこんなことを・・・」
「・・・今はそんなことを気にしても仕方がない。特にガスマスク姿の男に気をつけろ。あいつはサイコ・マンティス、
彼曰く、基地のゲノム兵は皆洗脳されており、強力な
「それで、気をつけるってどうすればいいの?」
「・・・分からない、俺もさっきまで洗脳されていた」
「とても頼りになる助言ね、涙が出ちゃう」
思わず皮肉が出てしまう。やっぱりこの男当てにならないのでは?
「と、とにかく今は待つしかない。大人しくしててくれ」
「待って、交渉はどうなってるの?
離れようとする彼を呼び止めて質問する。今は何でもいい、情報が欲しい。
「進展はない。もうすぐ作戦が始まる」
「作戦?何の?ここをまともに取り戻すつもりなら生半可な兵力じゃ不可能だし、この天気では行動も制限されるわ。一体どうするの?」
「作戦については君の伯父が指揮を取っている。来るのは1人だ」
「1人?正気なの?それに伯父って・・・」
「それに、作戦については俺は含まれていない。俺の事はくれぐれも秘密にしておいてくれ」
この地で何かが起きようとしているが、彼は関係ないと言う。だが自分のことは秘密にしてくれとはどういうことなのか?メリルには判断する材料が少な過ぎた。
「もういいだろう、奴が来るとまずい」
「待って」
「今度は何だ?」
「あなたは何と呼べばいいの?
「・・・ジョニーだ」
「ジョニーね、よろしく頼むわ」
ジョニーと名乗った男は用は済んだとドアから離れて、そのままトイレに消えて行った。
※※※
よし、楽しく話せたな?
取り敢えず、メリルに接触することに決めた。というか、現状できることはそれしかないのである。
スネークがやってきたら接触すれば良いと考えたがダメだ。スネークと接触→マスター・ミラー=リキッドに俺の存在がバレてしまう→無事死亡
素敵な未来しか浮かばない。メリルを介してスネークに助言をする、原作のディープスロート的立ち位置を目指す事にしたのである。
しかし、いざ話すとなるとどこまで話していいのか分からなくなる。何せ昔やったゲームの知識、それもシリーズを通しての記憶に変わっている。今の時点で知らない方がいいことも間違いなくある。PALキーの話なんて、俺が知っているのがおかしな話だ。
しかも奴等にはサイコ・マンティスがいる。気をつけろと言ったがどう気をつけるんだ?私にもわからん。
メリルのこの後を考えると話したのは失敗だった気がしてきたがもう手遅れだ。マンティスにダイブされる時にはもうスネークの存在もバレてるし、きっと大丈夫、だと信じたい。そもそもミラーがすり替わってる時点でセキュリティもクソもないか、開き直ろう。
何故助けるのか聞かれた時には困った。咄嗟に原作のジョニーに倣って一目惚れだと軽口を叩いたが、辛口評価に終わった。ツラい。
スネークのことも話そうと思ったが、話すより本人にあったほうが早い。何より、腹痛がやってきてそれどころではなかった。風邪を拗らせて腹痛も酷くなりそうだ。暖かくして眠りたい・・・。