「私です。・・・ はい、一部を除いて予定通りです」
「はい、残念ながらソリッド・スネークは現れませんでした。別の男です。・・・ ですが問題ありません、予定通りのシナリオでいきます。・・・ ええ、明日のニュースが楽しみです」
「そうです、場所も予定通り、例のポイントです。海兵隊の計画も海の藻屑と。・・・ はい、ですが、ソリッド・スネークの動きには注意すべきかと」
「・・・ええ、大統領」
※※※
人気の無い船着場で何隻か船が繋がれている。どの船も嵐に備えてロープを増やしてある。
その中に1隻、舫作業をしている船がある。どうやら何処かから帰ってきたばかりのようだ。無精髭を生やしたガッチリとした男が黙々と作業をしていた。
作業を終えても男は船の中には戻らず、雨の中周囲を警戒している。そこに、新たな影が現れた。無精髭の男が警戒を強めて雨具の影に消音器付きの銃を準備した。
「スネーク、俺だ」
「・・・ジョニーか」
無精髭の男、スネークが警戒を解いて銃をしまう。ジョニーは苦笑いしながら船に乗る。
「気を張りすぎじゃ無いか?ここなら大丈夫だと思うが」
「あんな事があった後だ、警戒するに越したことはない」
「この嵐の中にわざわざ船の外にいる方が怪しいけどな」
「・・・お前は気を緩め過ぎだ、着くなり飛び降りてトイレに行くなんてどうかしてるぞ」
「・・・結果的に見つかってないし、漏らすよかマシだ。勘弁してくれ」
ジョニーは肩をすくめて中に入るように促した。スネークは一瞬躊躇ったが、ジョニーと共に中に入った。
中ではオタコンがパソコンと向き合っている。2人に気がつくと手を止めた。
「やぁ2人とも、外はどんなだい?」
「天気は相変わらずだな、お陰で今のところまだ騒がしくなってない。それも明るくなるまでだろうがな」
「ネットは既に大騒ぎだよ、こんな感じさ」
オタコンがパソコンの画面をこちらに向ける。TV局や新聞等、各種報道機関が速報を出している。悪天候の影響で現場の様子を写した決定的なものはまだないようだ。流石にこの天気で民間のヘリを飛ばすところはないのだろう。
それ以外にも、匿名掲示板や昨年サービスが始まったばかりの
2005年のサービス開始以来急速な成長を続ける
数時間前の出来事があっという間に世界に広まっている。今や誰もが情報の発信者となる時代だ、情報化社会様々ってところか。
よく考えるとニューヨークのすぐ近くでタンカー沈没って大事件では?スネーク達と一緒に行動し過ぎたせいか、感覚が大分おかしくなっている気がする。
「こいつはすごいな、これでよく無事だったもんだ」
「全くだよ、助かったのは奇跡的という他ないね」
いや、そこは普通に驚くんかい。君達もっと凄いことやってるし、これからもやるよね?
ツッコミを心の中に抑え込みながら、ジョニーは2人の会話を遮った。
「それより、早くここから離れた方がいいんじゃないか?明るくなり始めるとマズいぞ」
「先にトイレに行ったのはお前じゃないか」
いやゴメンて、それは俺が悪い。
「まぁまぁ。慌てて飛び出るよりも、今は状況を整理して態勢を整えよう。勿論、明るくなる前にはここを離れるよ。それに・・・」
オタコンが視線を別の場所へと向けて続ける。
「彼女をどうするかも決めないとね」
3人の視線が未だに気を失っているオルガに集中した。
「ゴルルコビッチの娘のオルガ、だったか?どこまで知っていると思う?」
「親子で認識は共有していると思うが・・・」
「つまり、オセロットのことも父親以上のことは知り得ないと。そして、オセロットは親子を殺したがっていた」
スネークの質問にジョニーが答えるとオタコンが後を継いだ。
「どういう事なんだ?何故このタイミングで裏切る?」
「あくまでロシアの再建を望むゴルルコビッチが邪魔になったってところか?」
「邪魔って何の?」
「・・・オセロットも言っていた、『愛国者達』の計画とか?」
ジョニーがそれとなく名前を出す。全てを知っている身としては、注意して話さないと余計な事まで喋ってしまいそうだ。
「『愛国者達』・・・、一体何者なんだ?」
「海軍のメタルギア計画を調べてた時に名前が出てきたけどね、まさかここでも出てくるとは」
その名前が出ると幾ら調べてもその先が出てこない、お手上げだとオタコンが嘆く。
「話を戻そう、オルガをどうするかだ」
「成り行きで助けたとは言え、これ以上何かできるわけでもないぞ」
「そうだね、どうにか連絡して・・・」
「待ってくれ、このままだと奴らに利用されるんじゃないか?」
スネークとオタコンは原作通り、ここで解放するつもりだったようだ。実際、この状況ならそうするのが普通だろう。だが、ジョニーとしてはこのまま何もしないのは目覚めが悪い。
「利用?どういうことだ?」
「オセロットはオルガを親父共々殺すつもりだった。そんな相手が何も知らず生きて戻ったらどうなる?」
「殺されるかも?」
「それだけならまだマシかもな。復讐の為とか理由を与えて利用するかもしれん」
「復讐?」
「俺が父親と仲間達を殺した仇だってことにしてな」
『愛国者達』に利用されるとは言えないので、それらしく話せるところだけ話してみたが苦しいかな?
「なるほど、あり得そうな話ではあるね」
「だとしても、俺達に何が出来るわけでもないぞ。仲間にしてオセロットへの復讐の手助けというわけにもいかないだろ」
「それはそうなんだよな・・・」
痛いところを突かれた。全てを話したとしてオルガが仲間になるとは限らない。なんなら手は借りないとか言って1人で突っ込みそうな気までする。
ジョニーはオルガの扱いをどうするか決めかねていた。こちらに引き込むか?それとも、このまま解放して
助けたいのは山々だが、助けた影響による原作改変が全く読めないこともジョニーの決断を鈍らせていた。
議論が行き詰まり、3人とも黙り込んでしまった。外から聞こえてくる雨と風の音がやけに大きく感じた。
嵐はまだ止みそうにない。
※※※
オルガが目を覚ますとそこは見知らぬ病室だった。自分はタンカーにいたはずでは?
ちょうど看護婦がやってきてオルガの意識が戻ったことに気づき、人を呼びに姿を消した。程なくして看護婦が医者と思しき男を連れて戻ってきた。体調について幾つか質問をされる。
オルガの記憶はタンカーで妙なモノを撃たれたのが最後だ。未だに混乱している。
すると今度は数人の男達がわらわらとやってきた。よく見ると、生死を共にしてきた部隊の兵士達だった。部隊の長であるセルゲイ・ゴルルコビッチの娘として上の立場ではあったが、オルガにとって彼らは家族も同然だ。
そんな彼らは慌ててやってきたようだが、オルガの姿を見て安心した表情を見せる。中には涙ぐむ者もいた。
部屋の外にいる護衛から知らせを受けて、駆けつけてきたとのことだった。オルガの無事を皆喜んでいた。
だが、オルガが質問をすると彼らは表情を曇らせた。
「教えてちょうだい、一体何があったの?作戦はどうなったのかしら?」
問われた男達は意識を戻したばかりのオルガの身を案じてどう伝えたものか悩んだ。ハッキリしない男達の態度にオルガはイラつきを隠せず、話すように促した。
男達は人払いをして、諭すような口調で話し始めた。
「いいですか、落ち着いて聞いて下さい。タンカーで御父上・・・セルゲイ大佐が亡くなられました。他の同志達もです。タンカーにいて無事だったのは、貴女とシャラシャーシカだけです」
何を言っているのかわからなかった。仲間達が、親父が死んだ?
呆然としていると仲間の1人が端末を取り出した。今年発売されたばかりのタッチパネル式の
"ロウアー湾でタンカー沈没!重油が大量流出、史上最悪の環境テロ"
"犯人は『シャドー・モセスの英雄』ソリッド・スネークか"
派手な見出しに続いて、倒れた人の横でカメラに向かってVサインをする目出し帽の男の画像が出てきた。"制圧した船員の横でポーズをとり挑発するソリッド・スネーク"、その他にも波間で浮かぶ遺留物や漂う重油の画像が続いた。
この場所は・・・倒れているのはもしや・・・。
「タンカーが沈んで捜索している時に何者かから通信が入りました。男の声で回収頼むと場所だけ伝えられて、現場に向かうと貴女を発見したという訳です」
オルガの横で男達が何か言っていたが、オルガの耳にはほとんど届いてなかった。見せられたニュースとソリッド・スネークの画像を見て怒りで視界が赤く染まりそうな錯覚すら覚える。
私をコケにして親父と
私はお前を許さない。
タンカー編 完 To be continued...
その時代に何があったのか調べるとビックリすることが多いです。
皆様良いお年を。