気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 落ち着いて聞いてください、私がサボっていたのは1年と2ヶ月です。


Missing Link 第3話

 

「・・・私だ」

 

「何、失敗?何があった?」

 

「父親・・・?」

 

「いや、状況が変わった。誰にも気づかれるわけにはいかない」

 

「そうだ、奴らを監視しろ。必要があれば私も動く、いいな?」

 

 

「はい、私です」

 

「例の件ですが失敗しました」

 

「ええ、ただの偶然か我々の計画が漏れているのか・・・調査が必要です」

 

「はい、状況によっては計画の修正が必要かと」

 

「勿論です、我々の存在を気取られるような真似はしておりません。あの小娘もまだ私が味方だと信じています」

 

「ええ、S3のためにもここは慎重を期すべきでしょう」

 

「はい、それでは」

 

 ※※※

 

 出産から日を待たずしてオルガとサニーは退院した。部隊では新たな家族だと盛り上がっている。その小さな家族が誘拐されかかったとは想像もしないだろう。当のオルガですら気づいていないのだ。

 こちらとしては奴らの手がいつ伸びてくるか気が気ではない、このまま諦めてくれると助かるのだが。

 四六時中襲撃者を警戒しているのはかなり疲れる。何せ原作知識が役に立たない。自分の知るストーリー通りに今後進もうとするならば必ず奴らは来る。

 タンカー事件でスネークが指名手配された時からジョニーはこの世界には修正力があるのではないかと疑い始めていた。もし修正力が存在するならサニーは誘拐されオルガは死ぬ。信じたくない仮説だったが、なんとかして防げないかと苦心している。

 オルガに警備を強化しようと言った時には考え過ぎだと苦笑された。まるで父親みたいねと揶揄われすらした。こっちは本気なのである。部隊の仲間やオルガは何も知らないのだから当然だが、ジョニーからすれば能天気にしか感じられず苛立ちを覚えることもあった。

 そして、いくら心配だからと常にサニーのそばにいる訳にはいかない。部隊としての行動がある。サニーから目を離さないでくれとオルガにはしつこく訴えた。どこまで伝わっているかは疑わしいものである。流石に産まれたばかりの子供を放置して部隊と行動を共にするということはないが、それもいつまでのことか分からない。

 

 

 そんな心配を胸に訓練キャンプで格闘訓練に励むジョニーである。

 ゴルルコビッチの部隊と行動を共にしてまだ1年弱しか経っていないが何故か教官側にいる。

 いや、何故かと言われれば、以前酒に酔って暴れた奴を制圧するのにスネークと励んだCQCの成果をお披露目してしまった。

 周りで見ていた奴らが「ジュードー!ジュードー!」と面白がっていた。そこで酔っ払いどもも記憶を失ってくれれば助かったのだがしっかり覚えていた。あの動きを教えてくれと初めは片手間にやっていたのがズルズルと規模を大きくしながら続いてしまって今に至る。

 季節は夏、外にいるだけでも暑い季節に格闘なんて激しいものをすれば尚更だ。休みを多めに、展示と説明、実践を繰り返して訓練をしていた。

 

「変わった動きだ、ジュードーか?」

 

 説明の途中にかけられた声に驚いて声の主を探すと、展示を囲うようにして見ていた兵士達の一角が割れるように道を開け、姿が見えた。

 

 白髪の長髪、口髭に腰のリボルバー。トレードマークのダスターコートは着ていないが間違いようもない。

「ォ・・・シャラシャーシカ?」

 

 オセロットが何故ここに?いやそれよりも、よりによって1番見られたくないやつに見られた。

「いや、少し違うか。だが、サンボやグレイシーとも違うな?どこで習った?」

 分かってて聞いてるのか、興味本位で聞いてるのか判断がつかない。無難に誤魔化せるか?

「・・・自己流というか独学というか・・・色々な格闘技をミックスしています。」

「ほう?それにしては、()()()()()()()()()だ」

 あ、こーれCQCなのバレてます。まずいヤバいまずいどうする?

 焦りを表に見せないのに必死なジョニーの前で、オセロットはガンベルトを外して制服の上着を脱いで近くの兵士に預けた。

「さて・・・ひとつ手合わせ願おうか」

 何言ってるんだこのジジイ?

「しゃ、シャラシャーシカ?本気ですか?」

「勿論だ、遠慮は要らん」

「しかし、右腕は大丈夫なのですか?」

「心配には及ばん、さぁ」

 どうしたんだ一体?何を考えているか皆目分からない。

 困惑するジョニーを他所にオセロットは隊員の囲む中に入り、ジョニーと対峙する。周囲の兵士は、アフガン侵攻を始め各地の戦場で戦った歴戦の猛者として知られるオセロットと期待の新入りの手合わせと聞いて期待と興奮を隠そうともしない。

 ジョニーの前に立つオセロットは値踏みするようにこちらを見ている。

 やるしかないのか。

 

 覚悟を決めてオセロットに挑んだがはっきり言って相手にならなかった。勿論、悪い意味でだ。

 打撃を加えようとしてもガードや()()()で防がれ、出した手を掴まれ投げられた。ならばとこちらも組み技やカウンターを狙っていくが、投げるつもりが投げ返される有様だった。

 60は優に超えてるはずなんだが勝てる気がしない。そう言えばMGS4でCQCは俺の方が上だとスネークに言っていたな。そりゃ無理だ。

 油断したつもりも手加減したつもりも全くなかったが、ここまで手も足も出ないといっそ清々しい。ザ・ボスと戦ったネイキッド・スネークの気持ちが少し分かる気がする。

 

「どうした、もう終わりか」

 地面に転がり空を眺めるジョニーの頭の上から声がかかる。少し顔を見やるとオセロットが見下ろしていた。もうって言いますが貴方何回投げたとお思いで?全身痛いし立ち上がるのも億劫だ。

 周りで見ていた兵士達も始めはジョニーが地面に転がる度に面白がっていたが、途中から飽きている様子だった。まだやるのかと呆れというか少し引いたような反応すらあった。

 こっちだって止めたかったさ!でも圧が怖くて!いつ終わるかもどこで止めていいかも分からないんだよ!

 そんな思いを知ってか知らずか、オセロットがジョニーに左手を差し出す。これ握ってもザ・ボスみたいに肘鉄しないよな?

 ビビりながら手を握ると引っ張って起こしてくれた。

「流石はシャラシャーシカですね、手も足も出ませんでした」

 このタイミングを逃してはならじとオセロットに話す。もう終わりにしましょうよ!時間が勿体無い!

「貴様も荒削りだが悪くない。いいセンスだ」

「ありがとうございます、シャラシャーシカ。精進致します」

 あれだけボコボコにして励ましのつもりか?嫌味なのか?言い返したい気持ちはあるがそれを口に出す度胸はない。内心不貞腐れながらも無難に返事するに留めた。

 

「さぁみんな、見せ物は終わりだ。次はお前達も地面に転がる時間だぞ」

 全身についた土埃を軽く払いながら、見学していた兵士達に隊形を広げるよう促す。ふっふっふっ、オセロットには敵わないとは言え初心者相手ならまだまだやれるぞこっちは。

 すると、兵士から上着とガンベルトを受け取り、着直したオセロットが近づいてきた。

「後で話を聞かせてもらおう、じっくりとな」

 小声でそう告げて、返事も待たずにオセロットはオルガのいる建物へと立ち去っていった。

 ジョニーはその後ろ姿を呆然と眺めるしかなかった。

 今から入れる保険がありますか?ない?そう・・・。

 

 ※※※

 

 オルガは退院後すぐに現場に復帰するつもりだったが、周りから猛烈な反対を受けた。当初は不満が大きかったが、子育ての忙しさにその感覚はすぐに過去のものとなった。

 子育て、そう、子育てだ。

 赤ん坊というものは泣くのが仕事というが、本当によく泣く。なんとか眠ったと思えば夜泣きして起こされ、業務していても泣いて中断することもしょっちゅうだ。今は業務用の部屋の一角、特別に準備してもらったベビーベッドで大人しく眠っている。

 確かに育児は大変だが、兵士として戦場に立つ時の感覚とはまた違う充実感をオルガは感じていた。これが親になるということなのか。

 

 セルゲイ(親父)は死に、父親もわからぬサニーの肉親は自分だけだ。この子のためにも強くならなければ、早く身体を出産前に戻して現場に戻らなければならない、そんな焦りがあった。

 そんなオルガに対して、部隊の皆は理解を示しながらも強く引き止められた。中でも、子供から目を離し体を鍛えようとした時のジョナサンの剣幕はすごかった。何度か同じやり取りをして、専属の警備の配置を提案されたときは仰天した。

 なんとか説得し、オルガが訓練や業務で目を離さざるを得ない時はお守りとして誰かつける形で纏まった。それでもジョナサンは最低2人は欲しかったと不満げにしていた。自分も部隊は家族同然だと思っているが、あれはいくらなんでも心配し過ぎだと思う。

 ─でも、親父もそんな気持ちだったのかもしれない。

 セルゲイとの最後の会話を思い出し、刺さった棘の痛みのような後悔を感じる。死ぬまでこの棘は抜けないだろう─

 

「隊長?よろしいですか?」

 ドアの叩く音で意識を戻す。少しぼんやりしていたようだ。夜泣きで睡眠が削られているのもあるかもしれない。

「どうしたかしら?」

「シャラシャーシカがいらっしゃいました、お通ししてよろしいですか?」

 珍しい来客に眉を顰める。シャラシャーシカ─オセロットは親父の友人()()()男、昔からどこかいけすかないところはあったがタンカー事件で親父を見殺しにしたことが決定的だった。

 タンカー事件で死んだとされるソリッド・スネークに次いでオルガが嫌う人間の1人だ。

 入室を促すと伝令の兵士がドアを開け、オセロットが続いてきた。いつも気取った服装の男だが、今日は少し乱れている。少し汗ばんでいるようだ。いつも涼しい顔をしているのに珍しいこともあるものだ。

「貴方がここに来るなんて珍しいじゃない、ご用件は?」

「親友の娘が出産したんだ、挨拶ぐらい来るものだろう?」

「親父の代わりのつもりかしら、生憎間に合ってるわよ」

 親父のことを思い返していた時に来たせいか、つい険がある言葉になる。オセロットは軽く流してサニーの眠るベッドを覗き込む。

「息災なようで何よりだ。─そっちは疲れているようだがな」

 ベッドから離れオルガを見て挑発するようにオセロットが言う。いちいち気に食わない男だ。

「それで?何の用で来たのかしら?」

「言ったはずだ、様子を見に来たと」

 早く本題に入ってもらおうとするが、本当に会いに来ただけなのか?こっちは育児と業務があるのに、いい気なものだ。

 

「だが、面白いものが見れた」

「面白いもの?」

「あれは新入りだろう?」

 窓から外で訓練する兵士たちが見える。今日はジョナサンが格闘訓練をするとなっていた筈だ。

「ジョナサンのこと?」

「ジョナサンというのか、何者だ?」

「何者って、あの事件の後の募集で入ってきただけよ」

「前はどこに?」

「PMCにいたとしか聞いてないわ、でもモセスの連中(元ゲノム兵)に知り合いもいるみたいだから軍にもいたんでしょ」

「ほう・・・」

 興味深そうにオセロットは聞いている。何がそんなに気になるのか、軍からPMCに行くなんてそう珍しくもない。

「できるのか?」

「優秀ね、何でも屋って感じ。1人でなんでもやりたがるけど自己中ってわけでもないし、周りとも上手くやれてるわ」

 率直な感想を述べる。それを聞くオセロットは獲物を狙う鷲のような鋭い目をしていた。




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