気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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Missing Link 第4話

 格闘訓練を終えたジョニーは重い足取りで報告へと向かう。仕事熱心な方ではないが、この後オセロットと会わずに済むなら非常呼集でも喜んでやる。

 伝令に要件を伝え、案内してもらう。ここまでオセロットには会わなかった。何処にいるのか気にはなるが、まずは報告を済ませてしまおう。

 伝令の報告に対してオルガの入室を促す声が聞こえる。軽く深呼吸をして気持ちを切り替えて中へと入る。

「本日の訓練の報告に参りました」

 部屋にはオルガの他に、来客用のソファでオセロットが何かの資料に目を通していた。

「失礼しました、お邪魔でしたか?」

「構わないわ、報告を」

 来客がいるならと場を辞そうとするが報告を求められればやるしかない。オセロットがいるのは気になるがいつも通り報告する。オルガが不機嫌そうに見えるのは気のせいか。

「本日の格闘訓練について、予定通り終了しました。人員等異常ありません」

「皆の練度はどうかしら?」

「予定していた練度に概ね達していると考えます。一部、特に格闘技経験者に個癖があるものもいますが、致命的な箇所は逐次指導しています」

「致命的な箇所?」

「はい、明らかに動きを阻害する悪癖は問題ですが、本人の慣れた動きで使えるならばそれに越したことはありません。自分のやり易い方で選べるよう基本は教えています」

「なるほど、射撃の姿勢や構えと似た話かしら」

「その認識で問題ないかと。基本を教えた後は自分に合ったやり方を見つけられれば本人のためでしょう。その上で自分の弱点を理解し改善できるならばさらに自信や意欲の向上にも繋がります」

「順調のようね、引き続きよろしく頼むわ」

 オルガは満足そうに頷く。不機嫌そうに見えたのは気のせいだったか。

 

「何故その新入りにやらせているんだ?()()だと言っていたが」

 オセロットの発言にオルガが目を細める。不機嫌なのは気のせいではなかった、原因と結果が目の前にある。何故少し回復したのに余計なことを言うのか。

 あとCQCを独学と言ったのを根に持ってるの止めろや、さっき痛めつけられたのでノーカンだろ!

 正直にスネークから教わりましたなんて言ったらそれこそオルガに殺される。いや、オルガなら俺を人質に取ってスネークを呼び出すか、拷問して居場所を聞き出しそうだな。想像しただけで冷や汗が出てくる。

「ご不満かしらシャラシャーシカ?」

 当のオルガは苛立ちを隠そうともしていない。オセロットも意に介さず、資料から目を離さないまま続ける。

「いいや?単に気になっただけだ」

「貴方もやってるところを見たんでしょ?使えるものは使う、それだけの話よ。皆の希望もあったわ」

「ふっ、使()()()()()か、確かにな」

 今鼻で笑ったか?いちいち癪に障る男である。

「ジョナサンと言ったな?貴様はどう考えている?」

「えっ、自分ですか?」

 オセロットが資料から目を離してこちらに話を振ってきた。全くの予想外で答えに窮する。促すような圧をオセロットから受け、オルガは興味深そうな表情で続きを待っている。

「・・・この技術を皆が認めて、やる気を出していることは素直に嬉しいです。自分もまだ未熟ですから皆と一緒に精進したいと思います」

「それだけか?他には?」

「他ですか?そうですね・・・任務にも好影響かと。潜入や捕虜捕獲任務(スナッチ・ミッション)向けの技術ですし、銃を外に持ち歩けない状況(ロー・プロファイル)での護衛等にも役立つと考えます」

「そうか、そうだな」

 どうだ?無難な答えだが間違いではないだろう?

 オセロットは答えを聞くとゆっくりと立ち上がり、ジョニーをその鋭い眼差しでじっくりと眺めながら移動する。質問を続けるわけでもなく、何も言わずジョニーの周りを歩いたと思えば、窓に近づいて外を眺める。

 窓からは先程まで訓練していた広場が見える。もう直ぐ暗くなる外に今はもう誰もいない。

「せいぜい使い物になるように鍛えてやるがいい」

 窓の外を眺めたままオセロットが呟くように話した。

 一体何が聞きたかったんだ?質問の意図が全くわからない。ジョニーは1人不安になっていた。

 

「それで、報告は終わりか?では場所を変えよう」

「あら、聞かせたくない話でも?」

 やめなされやめなされ、これ以上部下の前で上司同士争うのはやめなされ・・・!

 とは言え、オルガの立場からすれば当然の反応だろう。ジョナサンことジョニーはオルガの部下であり、オセロットを信用しきれない部分もオルガの態度を助長していた。

「次の仕事に関する件だ、まだ決まりではないが」

「それなら尚更私に話を通すべきでは?」

「かなり機密性の高い案件だ、関わる人間は減らしたい。失敗は許されんのでな」

 オセロットが説明するがオルガは納得していない。このままでは埒が明かないな。

「隊長、シャラシャーシカのお話を聞くだけです。実際にやると決まったら隊長にもお話しするのでしょう?」

「勿論だとも、ゴルルコビッチの部隊は優秀だと評判だからな。頼りにさせてもらおう」

 芝居掛かった口調でオセロットが話を繋ぐ。そういうところが信用されないのでは?信用されるつもりもないのかもしれないが。

「・・・1つ気になります、何故自分を?」

「資料は見させてもらった、貴様の能力を買ってのことだ」

 なるほど、何を読んでるのかと思えば俺の資料か。だが、能力を買ってというのはダウト、2人になる口実を作るための方便だろう。いよいよ腹を括るしか無い。

「・・・分かりました、それではどちらへ?」

「こっちだ、ついて来てもらおう」

 オセロットが先導して部屋を出る。後ろに続く前にオルガへ向き直り、敬礼をして退室する。

 2人が出てすぐ、部屋の中から赤ん坊の泣く声が聞こえてきた。ジョニーはその声を聞きながら振り返らず、オセロットについて行くしかなかった。

 

 

「これで2人きりになれた。さて、話してもらおうか」

「任務の話では?何を聞きたいんです?」

「もう惚けなくていい、ここなら盗聴もされない」

 オセロットが案内したのは隊舎の裏側、他の人間が近づけば確実に気がつき、近くに隠れて話を聞く場所もない。内緒話には持ってこいだ。

「何故貴様がここにいる?何が狙いだ?」

「・・・・・・」

「貴様は2度、あの娘を助けている。最初はタンカー、あそこで死ぬはずだった女は助かった。次は病院、父親を名乗ったのは貴様だろう?」

「なんのことやら?」

「何が狙いだ?助ける意味はなんだ?」

「・・・母親と赤ん坊を助けるのに理由が必要か?」

 答えには注意しなければ、敵だと見做されればオセロットは容赦なく排除にかかるだろう。

「ただの善意だと?馬鹿な、貴様に何の得がある?」

「サニーのためというのが1番の本音だが、まぁ、如何に優れた兵士とは言え母親は母親だ。母親から赤子が奪われるのを見過ごせなかっただけだ、目覚めが悪すぎるだろ?」

 これは偽らざる本心だ。正直、オルガを助けることにそんなに意味はない。サニーのことを考えると何とか助けてやりたいと思っただけだ。

「・・・それだけの理由で計画を妨害したとはな」

「わざわざアンタが確かめに来たということは、"キャスト"が足りなくなるのがそんなに問題なのか?」

「・・・・・・」

 オセロットは何も答えない。俺がどこまで知っているか測りかねているのだろうか。

 

 原作(プラント編)でオルガはシャドー・モセスの再現のための駒の1つとして、サイボーグ忍者の役割(ロール)を当てられた。子供(サニー)を人質に捕られ仲間を裏切り、最後にはソリダスに殺される。

 誘拐を防いだことで脅迫材料は存在せず、『愛国者達』に協力する理由はないはずだ。シャドー・モセスのゲノム兵の役目をするゴルルコビッチ部隊も参加しなくなれば、そもそもビッグシェル事件自体起きないのではないか。

 あれ?よく考えたらプラント編が起きないと、BIGBOSSの居場所を突き止めるための手掛かりが無くなるのか?G.W.がなければJ.D.の破壊もできない・・・?

 今更恐ろしい原作改変をしてしまったことに気がつく。プラント編を成立させながらサニーの誘拐を防ぎオルガを助ける?奇跡か何か?生憎俺は幸運(フォーチュン)ではない。

 突然顔色を青くしたジョニーを見てオセロットが訝しがる。

「どうした?顔色がわるいようだが?」

「い、いや・・・奴らは、『愛国者達』はまだあの親子を狙っているのか?」

「そうなるだろうな。いや、()()()()()()()()()()が・・・」

「・・・?」

 不穏な言葉を切ってこちらを見つめるオセロットの様子に困惑する。

 途轍もなく嫌な予感がする。

 

「もう1人適役がいるようだな?」

 

 なんですと?

「俺にディープ・スロートになれと?本気か?」

「勿論お膳立てはするとも、心配はいらん」

 余りに突拍子も無い提案に狼狽えるのを隠さなかった。オセロットが愉快そうに話を続ける。

「シャドー・モセスでも似たようなことをしていたんだろう?そう言えばアレも小娘に対してだったか?」

「・・・あの時とは状況が違う、一緒にしないでくれ」

 シャドー・モセスの時はマンティスの洗脳のせいか、疑問も持たずゲノム兵の1人として反乱に参加していた。メリルに会って全てを思い出した時にはもう手遅れだっただけだ。

「そうか、では貴様の知っていることを全て吐かせ、予定通り子供を誘拐して、あの女に働いてもらうだけだ」

「な・・・!」

「私としてはどちらでも構わん。貴様で()()()のも悪くない」

 いよいよ退路を塞がれてしまった。そもそも対等な取引など望むべくもない。オセロットと予定外に遭遇した時点で詰んでいたのか?

 

「・・・条件がある」

「何?」

「ナノマシンは無し、これは絶対条件だ。生体工学(バイオニクス)系も勿論だ」

 交渉開始、しかし手札が余りにも少ない。

「成程、他には?」

「もう1つ、俺は()()()からしか指示は受けない。第三者(カットオフ)も無しにして欲しい」

「・・・注文が多いな、それで貴様は私に何を提供する?」

「・・・情報と協力を」

 強調した意味は伝わっているだろうか?奴がリキッドとなった時に巻き込まれるのは御免だ。だが、その条件を抜きにしてもこちらが提供できるのが情報と協力だけしかない。

「ほう、具体的には?」

「部隊の近代化、データ収集のためのナノマシンの導入、とかか?」

「それだけか?話にならんな」

「・・・『愛国者達』だけではなく、アンタとEVAにも手を貸そう・・」

 オセロットの眼光が鋭くなる。ナノマシンの導入や近代化なんてオルガを使ってでもできる。ここが勝負どころだ。

「・・・聞かせてもらおうか」

「"演習"で手に入れるHVT(高価値目標)の情報と確保への協力だ」

「HVT?」

 

「BIGBOSS、ジョンを見つけて奪還する」

 

「・・・モセスでも言っていたな」

「アンタが演習に参加する目的のひとつのはずだ、俺も乗らせてもらう」

「・・・・・・」

 オセロットが黙ってこちらを見てくる。モセスでの会話を思い出しているかもしれない。俺を信用できるのか、不確定要素として許容できるのか判断しかねているのだろう。

「・・・何故BIGBOSSを?目的は遺伝子治療か?」

 おっと、何故ときたか。そう言われると正直答えに困る。

「それこそモセスでも言ったじゃないか、ファンの1人だと」

「・・・・・・」

「伝説の男を助けたいのはアンタも昔から変わらないだろ?」

「ソリッド・スネークでは足りないと?欲張りだな」

()()()()についたアンタがそれを言うか」

 イーライことリキッド・スネークがアフリカで蠅の王国を作った後の遍歴は分からない。FOXHOUNDに入ったリキッドとオセロットが再会した時はお互いどんな顔していたのだろうか。

 

「それで?俺を拷問する気は無くなったか?」

「・・・いいだろう。言った通り役割(ロール)を果たしてもらう。」

「お手柔らかにお願いしたいな」

 よし!よし!ヨシ!

 なんとか乗り切った!いや乗り切ったのか?

 ゴルルコビッチ部隊の中に潜入しながら愛国者達の計画に参加しつつ、オセロットとEVAに協力することになってしまった。何重スパイなんだこれ?

 先のことを考えると色々恐ろしいが、先ずは首が繋がったことを喜ぼう。未来のことは未来の俺がきっとなんとかする!

 

 ジョニーが内心浮かれて飛び上がらんばかりのところへオセロットが続ける。

「それともう一つ」

「まだ何かあるのか?」

「貴様の独学とやらを私にも()()()貰おう」

「え゛」

「なに、そう気負わなくていい。今日のように手合わせしようじゃないか」

「いや貴方様ならワタクシ如きが教えるまでもないと言うかなんと言うか・・・」

「そう卑屈にならずともいい。貴様も言っていたようにまだまだ未熟だからな、共に精進しようじゃないか」

 どうしてこうなった!

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