気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 祝マスターコレクションVol.2発売決定


プラント編 第1話

 

 2009年4月29日

 マンハッタン

 

 雲ひとつない空、この時期のニューヨークは日によってはまだ肌寒い日もあるぐらいだが、今日の日差しは心地よく春の訪れを実感させる良い天気だった。

 だが、Ka-60(カサッカ)に揺られその時を待つジョニーには天気を楽しむ余裕はなかった。ヘリの中はジョニーの他にも完全武装のゴルルコビッチ兵達で満載だ。降下に備えて開けられたドアからは風が容赦なく入り込んでいる。それでも着込んだ装備のせいか若しくは緊張のせいか、服の中は汗ばみ始めている。

 

 ベラザノ橋が眼下に流れていく。前に来た時はタンカーで下を通ったんだなと1人妙な感傷に浸る。

 目的地はもう直ぐだ。洋上に浮かぶ巨大な建築物が近付いてくる。

 六角形を2つ繋げたような構造の海洋除染施設、ビッグシェル─2年前のタンカー事件の後建造された環境保護のシンボル─

 改めて見るとかなりの規模の施設だ。一方で、各作業の自動化によってかなり省力化されている。というのが方便で、実際には新型メタルギア建造の機密保持が目的だろう。ジョニー含むゴルルコビッチ兵達が目標(ターゲット)とするVIP達がここにいる理由も完成間近のメタルギアの進捗の確認だ。

『目標まで30秒』

 ヘリのパイロットから無線が入り、機内のゴルルコビッチ兵達が最後の装備点検を行う。ジョニーも同様に点検をして準備する。

 いよいよ本番だ。

 

 

 ソリダス達との顔合わせの後、オルガ達ゴルルコビッチ兵は準備を急ピッチで進めた。ビッグシェルの構造を頭に叩き込み、ファットマンの指導の下で爆発物取扱訓練、施設への侵入要領の確認、必要な機材の見積をして補給を加速させた。

 それに比例してジョニーも駆けずり回ることとなる。訓練に加えて新規機材へ個人識別装置の組込・登録、『愛国者達』の内通者としての準備、たまに来るオセロットとの手合わせ等々多忙を極めた。

 オルガも気を遣って練度は十分だからと訓練の量を調整し、準備に専念できるようしてもらえたりもしたが、内通者としての準備を減らせるわけでもなく焼石に水といった状態だった。

 そんな中でもお構いなしにやってくるオセロットには本気で殺意が湧いた。憂さ晴らしにと本気で取り組むがまだまだ敵わない。

 約2年の潜入の中でも1番の修羅場だったがそれもこれで終わると思うと喜びも一入、あとは俺の任務を達成するだけだ。

 

 

 結論から言うとビッグシェルの占拠と大統領含むVIP(人質)の確保は呆気なく成功した。それもそのはずで、ジョンソン大統領の大統領警護隊(シークレット・サービス)が裏切ってこちら側にいるのだからそもそも戦闘にすらならなかった。

 正確に言えば1人だけ裏切り者ではなかった。視察前に急遽護衛に追加されたエイムズという男がいたが多勢に無勢、抵抗することもなく人質に仲間入りした。

 人質を集める傍らオセロットの表情を伺うが、素知らぬ顔で人質に鋭い視線を向けている。奴は知っている筈だよな?

 このエイムズだが、正体はリチャード・エイムズ、国防情報局(DIA)所属の大佐であり『愛国者達』から大統領を監視するために送られたいわばスパイである。大統領の怪しい動きを察知しての話だったのだろうが、ソリダス達の動きの方が早かったようだ。

 いや、因果関係が逆か?そろそろだから大統領警護に入れられたのか?果たしてどの時点から"演習"の一部として組み込まれているのか判断が難しい。

 おそらく彼の運命を変えることはできない。シャドー・モセスの裏でも暗躍していたようだが、『愛国者達』からすれば使える駒の1つに過ぎなかったということか。

 

 シェル1中央棟のB1のホールに人質が集められていく。抵抗できないように一人一人手を縛り目隠しをする。中にはテープで口を塞がれた者もいた。潜入している身としては手荒な扱いをするのは気が引けるがやむを得ない。

 人質の処置があらかた終わったところで人数が足りないことに気がついた。人質の中でもとびきりのVIP、海軍大佐と大統領その人である。近くにいた仲間に聞いてみるとオセロットの指示で別の場所へ連れて行かれたらしい。

 確か原作(ゲーム)ではシェル1のB脚でSEALsに一時確保されていた筈だ。その後フォーチュンとヴァンプに襲われ再び人質となる。

 B脚の上部は変電室で、昔は何故こんなところに大統領が?と思ったが、そもそも大統領には居場所を告げるナノマシンが入っている。それを逆手に取り、SEALsを誘い出す作戦なのか?

 この作戦自体が奴らの仕組んだ“演習"だが、巻き込まれるSEAL TEAM10にはどこまで情報が与えられているのだろうか?デッドセルの元メンバー達になす術もなく全滅させられてしまう彼等だが、爆弾解体のプロを連れてくると言う役割(ロール)が与えられている。

 ついでにそこに便乗して()()()()()もやってくる。そのために必要な犠牲だとジョニーは自分を納得させたつもりだ。だが、全てを知って見て見ぬふりをすることへの嫌悪感は消えてくれない。

 

 当のデッドセル達はといえばファットマン以外はシェル1中央棟で待機している。ファットマンは人を連れて爆弾設置に勤しんでいる。正確にいえば訓練した面々に指示をして爆弾を設置させて本人は別行動をしていた。

 "臭いなし"の準備だな?

 ファットマンには爆弾に自分の香水をかけて()()()を残すルールというかポリシーを持っている。

 しかし今回、ファットマンに対抗するために海軍水上戦センター(インディアン・ヘッド)の教官である“義足のピーター"こと、ピーター・スティルマンがSEALsと共に作戦に参加する。教え子であるファットマンの手の内を知る相手に対して、ファットマンはポリシーを捨てて無臭性爆弾で罠を仕掛けている。

 参加すると断言できるのは原作(ゲーム)でそうだったからという訳ではなく、ファットマンが『愛国者達』に雇われた“試験官"だからである。“演習"に進むための仕上げを確認するための試験官として、ファットマンが求めた条件がスティルマンとの対決だった。

 爆弾解体の伝説的プロであり恩師でもあるスティルマンとの対決にファットマンはかなり拘っていたようだ。爆弾界で伝説になる─そんなことを言っていた筈だ。

 スティルマンも出来れば助けたいが介入のタイミングがかなり難しそうだ。“ディープ・スロート"役を上手く利用できるかが肝になるだろう。

 

 それにしても爆弾界とか碌でもない世界クソ狭そうだなとぼんやり考えていると後ろから声をかけられた。

「状況はどうかしら?」

「概ね順調です。抵抗もほとんどなく制圧できました。後はセキュリティの掌握ですね。監視カメラが使えれば警備に使えます」

「今のところ予定通りと言ったところね」

 オルガと人質の様子を見ながら話す。今のところ信用されているがオルガの動きには要注意だ。正体がバレた時1番近くにいて欲しくない人物である。

 理想は気づかれないまま戦死(KIA)若しくは行方不明(MIA)扱いが1番後腐れないが、そう上手くいくかな?最悪気付かれても混乱を利用して行方をくらまして逃げるだけだ。

 

「ところであのおもちゃはどうするの?」

「おもちゃ?・・・ああ、サイファー達のことですか?もう準備は始めている筈です。アレもセキュリティと同期させれば同じシステムでいける筈です」

 オセロットの手引きかソリダスの伝なのか分からないが、新たに手に入れた装備に無人機、サイファーがある。そう、2年前にタンカーに潜入した俺を撮影し、ソリッド・スネークをでっち上げたドローンと同じ物だ。

 某大乱闘ゲームではソリッド・スネークの技に使われるなどメタルギアを代表する顔の1つと言っても過言では・・・いや流石に言い過ぎか?

 

 ともかく、サイファーを飛ばして警備に使えれば人手を削ることができる。武装したガンサイファーなら攻撃もできて言うことはない。

 簡単に妨害される弱点はあるが、妨害に強い有線誘導では人手が取られてしまうし飛ばし方に制約が生まれる。サイファーの映像を監視カメラのネットワークに繋げて妨害を受けた瞬間に警報(ALERT)を出すのも考えたが、ビッグシェルの警備ネットワークの強度が読めなかったのでやめた。欲張って監視カメラまで使えなくなっては意味がない。

 そもそもサイファーやカメラが破壊されたからと言って人をすぐ送る余裕は無い。せいぜい持ち場の警戒を強めるのが関の山と言ったところだろう。

 プログラムされた場所を飛んでカメラ検知で警報が出せればそれで十分だ。

 言うのは簡単だが、警備用には飛行パターンを設定しなければならない。事前にビッグシェルの構造をもとにある程度プログラムはしたが、最後の調整は必要だ。

 適当な事をしてビッグシェルに衝突するサイファーなんて情け無い物は見たくない。潜入してくる雷電には悪いが仕事をさせてもらおう。

 オルガに断って人質の監視を外れてサイファーの準備の様子を見に行くことにした。

 

 トイレを済ませてからヘリポートに行くとコンテナが下ろされていた。Ka-60(カサッカ)で突入要員を下ろした後、2機のヘリは陸に戻って荷物を積みコンテナを吊るしてまた戻ってきたのである。ビッグシェル襲撃が察知され空域が封鎖されるまでの僅かな時間を危険を犯して輸送を成功させた。

 いくら『愛国者達』によって場が整えられていると言っても限度がある。まずはここまで順調に進んでいる事を確認し安堵した。

 サイファーの制御装置は既にコンテナから出されて準備が進められていた。ジョニーもその中に加わり手伝い始める。

 サイファー本体はヘリで持ち込んでいない。全部運ぼうと思ったら荷物が大変なことになってしまう。ではどうしたかと言えば飛んできてもらった。

 地上制御で飛ばした後、ビッグシェルに制御装置を開設して制御を貰うやり方だ。これなら場所も取らずこちらで操作もできて、すぐ使うことができる。航続距離は問題ないし、ビッグシェルで補給できるよう燃料も持ち込んである。

 ヘリポートから中央棟へと荷物を運び終え、サイファーの飛行系の準備と合わせてセキュリティと同期する準備を進める。

 よくよく考えると、ジョニーがシェル1中央棟にいたのはシステム関係をやっていたからなのでは?MGS4では“アキバ"の名が示すようにそう言ったシステム系に強いようだった。

 最初からそっちを押し出していけば悪目立ちしなくて済んだのでは・・・?

 オセロットにもバレずに潜入できた可能性から必死に考えを逸らして目の前の仕事に集中する。

 

 あと数時間もすればSEALの突入だ。それに合わせてFOXHOUND(存在しない部隊)の隊員とサプライズゲストのご登場だ。




 ちなみに米海軍にはRed Cellという部隊が実在しました。デッドセルのモデルと言われる部隊で、気になる方は"DEVGRU Red Cell"で調べて見てください。
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