気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 お食事中の方には基本的にこの小説お勧めできません。


第3話

 メリルと話したあとしばらくして、独房にもう1人入れると連絡があった。連行されてきたのは黒人の男、DARPA局長のドナルド・アンダーソンである。シャツに血の跡、体の至る所には拷問を受けた跡があった。

「核発射コードが手に入ったそうだ、これでいつでも核を撃てる」

「じゃ、こいつは用済みか?」

「さてね、まだ利用価値があるんだろう。ボスが上手くやるだろうさ」

 連行してきた隊員と言葉を交わし、局長を独房に入れる。その表情は発射コードがテロリストの手に渡ってしまった絶望からか、暗く沈んでいる。

 名演技ですねぇ、デコイ・オクトパスさんよ!

 局長については「愛国者達」の内紛の成れの果て、リボルバー・オセロットによって、拷問中の事故に見せかけて既に殺されている。核発射コードも喋っておらず、彼らに核を撃つことはできない。

 これを知るのは当然一部の人間だけである。例えゲノム兵達に真実を伝えたところで、洗脳されている状態では意味を成さないだろう。

 ともかく、メリルと話した後にオクトパスが来てよかった。来てからでは怪しまれる可能性があるし、話してる最中に見つかったら目も当てられない。

 

 原作の知識があっても出来ることが少ない・・・そもそもジョニー何もしなくても勝手に解決するよね?と、真理に触れてしまいそうになる。だからと言って何もしないわけにはいかない。

 そもそもシャドーモセス事件において、助けられる人とは?FOXHOUNDのメンバーは厳しいだろうし、ゲノム兵達も一応仲間にはなるのだろうが、正直仲間意識は強くない。それこそメリルやオタコンぐらいなのでは?グレイ・フォックスも助けられるなら助けたいが、彼自身がそれを望むか。

 更に、ゲームの世界と気がついていまだに混乱している自分がいる。ジョニーというキャラクター、役割(ロール)を果たすべきなのか。俺は一体誰なんだ?あ、これなんか雷電っぽい。

 思考の沼にハマりかけていた時、連絡が入る。侵入者の形跡あり、警戒を強化?詳しい話は入ってこなかったが、これはもしかしてサイボーグ忍者(グレイ・フォックス)?役者は揃いつつあるが、未だに主役は不在だ。

 

 人質の見張りを交代して休憩し、再び交代して優れない体調と通常運転の胃腸に苦しみながら監視を続けていると、無線がなった。

『対空レーダーに反応あり。高度160、反応2、スティンガー射撃用意』

『スティンガー待て、航空要員はヘリポートまで前進、出撃準備』

 外は嵐だったはず、あんな中でヘリを飛ばすなんて正気の沙汰ではない。準備に外で作業する彼らには同情する。地下の仕事につけてラッキーだった。

 この嵐の中、ヘリポートのハインドを操縦するのはリキッドその人なのは間違いない。レーダーに映ったのはアラスカのガレーナ基地から飛び立ったF-16が2機、ソリッド・スネークの潜入に合わせた陽動作戦だ。リキッドは天才的な腕前でこの2機を撃墜してしまう。

 物語の開幕は近い。

 

 無線がヘリが飛び立ったのを伝える。今頃スネークは潜入経路を探っているところか。この後ミラーに扮したリキッドから通信が来て・・・ということはリキッドはヘリを操縦しながらミラーのフリをしていた!?まさかこんなところでリキッドのチートぶりを再認識するとは。

 ゲーム通りならば、ナノマシンの信号を辿ってこの独房にやってくるはずだ。ついに主人公のお出ましだ、ゲームの主人公に現実で出会える日が来るとは転生らしくなってきたのでは?

 緊張と期待で気分が高鳴る中、腹痛で一旦トイレへ向かう。ドアが開かないため、スネークはダクトを通って独房の中に入る。このトイレの上にもそのダクトは通っている。

 ダクトに意識が向かうが、下手に目が合って撃たれでもしたらたまったものではない。早くトイレから出よう。

 トイレから出て間もなく、独房からドナルド・アンダーソンの声が聞こえてきた、正確に言えばデコイ・オクトパスだが。スネークと話しているのだろう。メリルも隣で2人の会話を盗み聞きしているはずだ。

 ていうか割と声でかいな!そりゃゲームでもジョニーにうるさいって言われるわ!

 

 しばらくすると突然スネーク達の独房から苦悶の声が響く。ついにFOXDIEによる心臓発作が起きたか。声を聞いてメリルが騒いでいる。時はきた。

「ちょっと!どうしたの!」

「しっ!静かに、今開ける」

 独房のドアを開けメリルを解放し、装備を渡す。

「急いで装備するんだ」

「これがあなたのいうチャンスってこと?」

「議論は後だ、急げ」

 メリルは何か言いたげだったが、手早く装備を身につけた。

「よし、俺を殴れ」

「何ですって?」

「早く!」

 戸惑いながら力のこもっていない拳が顔に当たる。

「もっと!強く!」

「意味がわからないわ!」

「いいから!」

「ああもう!」

 混乱してヤケになったメリルの、鋭い一撃が、顔に・・・!

いってぇええぇぇーーー!!!??

 強くとは言ったが強過ぎだろ!ゴリラかよこいつ!ゴリラはMGS4だったろ!

 もう1発と手を振り上げるメリルを慌てて止める。何でナチュラルに追撃しようとしてんのこの娘、こわ。

 クリーンヒットした鼻から血が噴き出る。血がフェイスマスクについて息苦しい。慌ててフェイスマスクを鼻が出るようにずらして呼吸を楽にさせる。鼻血で詰まっているが何もしないよりマシだ。

「ちょっと、大丈夫?」

「・・・腕を、縛ってくれ」

 お前が殴ったんやぞ?大丈夫に見える?まぁ、殴らせたのは俺なんだが。

 結束バンドで後ろ手に縛ってもらい、やられたように偽装する。流石にメリルも俺の意図が分かったようだ。

「俺のカードを持っていけ、役に立つ。彼と接触するんだ、少なくとも俺より頼りになるはずだ」

「分かったわ、あなたは?」

「しばらくここで転がってるよ、さぁ行け!」

 それらしいことを言っても、腕を縛られて顔から血を流して横になっている絵面が全てを台無しにしている。俺の言葉に頷いて、また後で、と独房を出るメリルを見て、気絶したふりを始める。顔が痛い、いっそ本当に気絶できた方が良かったかもしれない。

 

 ※※※

 

 急死したDARPA局長の姿に動揺を隠せないスネークだったが、すぐに行動に移す。隣の女の声が聞こえなくなり、ゴソゴソと動く音がするのを聞いてこのままではまずいとダクトに戻る。廊下の上まで戻り下を確認して降りる。

 隣の女のいた独房のドアが開いているのを見て確認すると、後ろ手に縛られた男が倒れている。すると後ろから声をかけられた。

「本当に1人?信じられない」

 声色に敵意は感じない、ゆっくりと後ろを振り向く。テロリストと同じ服装だが、奴らの仲間ではなさそうだ。体つきから女だと分かる。銃を腰だめに構えて警戒はしているが、目つきに自信がない。

「あなたが伯父の遣い?何者なの?」

「伯父?するとお前がメリルか?」

「質問に答えて」

「残念だがおしゃべりの暇はなさそうだ」

 エレベーターへとつながる通路へのドアが開き、銃を構えた兵士が突入してきた。スネークは素早くホルスターからSOCOMピストルを抜き、銃弾を浴びせる。メリルは突然のことに反応できていなかった。

「何をしてる!撃て!怯むな!」

 スネークの声にようやく動き出す。廊下に銃声が鳴り響き、空薬莢が散らばる。メリルにとって初めての実戦が始まった。

 

 最後の敵兵が倒れ、空薬莢が転がるのをやめて静寂が広がる。メリルは通路を確かめて敵がもういないか確かめる。スネークから見ると明らかな興奮状態(コンバット・ハイ)にあった。

「大丈夫か?」

「え?あぁ、大丈夫よ」

 とてもそうは見えなかったが言わないでおく、今は議論の時ではない。

「また敵兵が集まってこないとも限らない。まずはここを離れよう」

「それもそうね、分かったわ」

「!おい待て!」

 メリルがエレベーターへと走る。

「私はこの服装だから大丈夫よ!後で無線で話しましょう!周波数は140.15よ!」

 振り向いて、スネークにそう告げるメリル。突然のメリルの行動は、ぶん殴って気絶したフリをしたジョニーをそのままに会話する気にもなれず、また少し強く殴り過ぎたかなという罪悪感と気まずさによるもので、スネークの与り知らぬところだった。

 メリルがエレベーターに乗ったところで奇妙な音楽が頭に響く。体の平衡感覚が失われるような感覚が2人を襲い、同じ幻覚を見た。スネークが気がついた時にはエレベーターは動き出していた。

 

 ※※※

 

 取り敢えずのファーストコンタクトは無事終了か?ゲームと同じく、メリルがエレベーターにそのまま乗っていくとは思わなかった。だが確かにスネークの言にも一理ある。ここで悠長に会話するのも危険だ。

 銃撃戦の時は独房の中で小さくなって耐えていた。独房の壁が抜けないか不安だったが何とかなった。銃声がまだ頭の中で鳴り響いている気がする。殺戮の後に漂う血と硝煙の香りはゲームの世界とは言え、自分の中では紛れもなく本物だ。

 対面は叶わなかったがスネークの声は聞けた。ご対面の機会は果たして来るのか?ボタン壊しの拷問イベントは出来れば避けたい。初めてプレイした時は舐めていたのとあまりのキツさに服従してしまった。許せメリル。

 一方で、1人残された身としては早く誰か来ないか待っている。既に誰もいないから目が覚めた体で動いてもいいのだが、後ろ手に縛られた腕が厄介だ。

 そしてなにより、このタイミングで腹が痛くなってきた。まだ我慢できそうだがいつまで耐えられるかは自信がない。このままではパンツに核発射してしまう。誰か俺の胃腸にもPALキーをつけて欲しい。

 腹痛と焦りで思考がまとまらず、意味不明なことを考えてしまう。せめて無線機か電話で助けを呼べればいいのだが、後ろ手にされているせいでそれも難しい。当然、この状態でズボンを下ろすのも至難の技だ。メリルに指示した過去の自分が恨めしい。

 おぉあぁぁ、波がきたぁ・・・。不味いまずいマズイ、誰か早くっ・・・!神様神様紙様・・・!

 




 お腹痛い時、しょうもないこと考えちゃう。
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