気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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第4話

 ふ〜スッとしたぜ〜。

 社会人としての尊厳が失われかけたギリギリのタイミングで人が来て助かった。急いで結束バンドを切ってもらい、すぐさまトイレに駆け込み事なきを得る。トイレから出た時、助けてくれたやつが複雑そうな顔をしていた。

 いや確かにまずは状況説明とかあったかもしれない。だがそんな余裕は皆無、漏らしながら報告するような鋼の精神は生憎待ち合わせてはいない。

 兎も角、上官に何が起きたのかの報告を行った。女に気絶させられた軟弱者の評価を受けかけたが、顔の状態を見ると皆同情してくれた。

 その足で医務室へと向かう。カードがないので部隊の1人に付き添われて行った。やや憔悴した医療スタッフが顔の傷を診てくれた。殴られた部分を冷やすように指示を受ける。

 診察の傍ら、侵入者について聞いてみるとやはり、スネークとは別で何者かがステルスで侵入しているらしい。何人か斬殺され、ベイカー社長を囮にスネークを待ち伏せて交戦したオセロットも腕を切り落とされていた。処置を受けにここに来たらしい。疲れた顔をしていたのはそれか、災難だったな。

 ついでに風邪薬も貰えないか尋ねると、ナノマシンの不調を疑われた。栄養剤の注射をされそうになり、慌てて誤魔化して薬だけ貰うことに成功した。少し休んだ方がいいとも言われた。

 

 医務室を出て上官のもとに向かい、休む許可を貰うことができた。話のわかる人で助かる。カードの代わりも受け取り、自分用に占拠した部屋に入る。今なら誰もいない。

「メリル、聞こえるか」

「その声はジョニー?」

 呼び出してすぐ応答があった、うまく部隊の中に紛れているようだ。

「どうやら無事のようだな」

「あら、心配してくれてたの?」

「軽口が叩けるなら問題なさそうだ」

 先程初めて実戦を経験した(人を撃った)はずだが意外と落ち着いている。

「今どこだ?」

「戦車格納庫の運搬口を開けに行くところよ」

「となるとスネークとコンタクトは取れたんだな」

「やっぱりあなたは知ってたのね、ますますあなたが何者か分からなくなったわ」

「ただのファンの1人だよ」

「へぇ?私には一目惚れ、お次はスネーク・オタク(ファンボーイ)って訳?」

「・・・・・・」

「私が社長からカードを貰ったのも、ストーカーよろしく何処からか見てたっていうのかしら?これが何かも知っていたみたいだったし」

 スネークの名前を出したのは失敗だった。ディープ・スロート(グレイ・フォックス)流に誤魔化そうとするも失敗、余計に警戒されてしまった。

「スネークのことはちょっとしたサプライズさ。俺の渡したカードのおかげで、大好きな憧れの伝説の英雄(ヒーロー)のお手伝いができてラッキーじゃないか」

「・・・・・・」

 言われてばかりなのも癪なので話を変えるついでにカウンターをお見舞いする。我ながら良く回る口だ。メリル君、君のことは何でもお見通しなのだよ!・・・これはちょっとキモいな、言わなくて良かった。

 

「それで、運搬口を開けた後は?」

「・・・スネークが核弾頭保存棟にいるエメリッヒ博士を保護してから、合流する予定よ」

「ふむ、だが大人しくしているつもりはないんだろう?」

「・・・!」

 無線機越しにでも困惑しているのが伝わって来る。

「別に止めたりはしない。その格好ならそう怪しまれることはないはずだ」

「・・・本当に何でもお見通しなのね」

 さっき言わなかった台詞を逆に言われてしまった。お見通しというか、それこそ全てを知っている。ゲームだけじゃなく、小説版も読んだしな!

「・・・あなたから見ても私は分かり易い新米(ルーキー)ってことかしら?」

「突然どうしたんだ?」

 おや、なにやら雰囲気が変わったぞ?何事だ?

「スネークにも言われたわ、新米は大人しくしてろってね。あなたが止めないのはどうして?」

「特に深い理由はない。スネークは不要だと言うかも知れないが、いくら単独潜入のプロだとしても、協力者がいるに越したことはないはずだ。それに、それこそスネークがいればなんとかなる。そうだろう?」

「・・・・・・」

 本当に深い理由はない。実際、ゲームでは何とかなってたしな。

 スネークと話して落ち着いたかと思ったがそうでもなかったようだ。何とかいい方向に持って行きたいが出来るだろうか?

「それに自分のことを棚に上げて、人のことを新米扱いはできないな」

「・・・え?」

「・・・ん?」

「ちょっと待って、あなた実戦経験は?」

「ないな」

「入隊はいつ?」

2004年(去年)

「・・・本当に新米じゃない!」

 メリルが急に声を上げる。沈み込んだと思えば急に元気になったり、忙しいやつだ。

「ゲノム兵の殆どが実戦経験がないのは知っていたはずだ」

「それはそうだけど・・・」

「だけど何だ?」

「その・・・とても大人びて、落ち着いて見えたから」

「それは俺がオッサンくさいと言うことか?」

「ごめんなさい、悪気はないの。でも、本当にベテランだとばかり思ってたから」

 成人男性に大人びて見えるとはどう言う事だ?確かに精神は転生前から合わせると中年も通り過ぎて還暦手前だが、身体はまだピチピチじゃい!

 

「・・・どうしてあなたはこの状況で落ち着いていられるの?周りは敵ばかり、バレたらおしまいなのに」

「落ち着いている訳じゃない。自分にできることをやろうとしているだけだ」

「自分にできること?」

「そうだ。経験がないのは当たり前だ、誰だって最初は新米だからな。今は自分の最善を尽くして、選択肢を増やしていくしかない」

「でも、危険を冒すものが勝利する(Who Dares Wins.)とも言うわ」

「この世界で失敗は命に関わる。実戦なら尚更だ、死ねば次のチャンスなんてない。訓練や経験に裏打ちされて冒すリスクと無謀な挑戦を取り違えるな。俺たち新米にできることは少ない、だからできる最善を尽くすんだ」

「あなたの今できる最善って?」

「君を通じてスネークをサポートする」

「直接スネークとコンタクトすればいいじゃない?」

「君も聞いたと思うが、スネークが知らされてないことが多すぎる。作戦自体が怪しい。部外者である俺の関与は最低限にしたい」

「私が関与するのはいいって言うの?」

「君の伯父が作戦の指揮をとっているのからして、君が演習直前に部隊配置になったのも偶然とは思えない。君も作戦の要素(ファクター)として組み込まれていると考えるべきだ」

「仕組まれてることだっていうの?誰に?」

「さぁな、そのうち分かるかもしれん」

 知ってるんですけどね!知ってるからこそ言えないし、関わりたくない。目をつけられるのは御免だ。

「とにかく、俺と君はスネークの知らないことを知っている。君はスネークの側でサポート、俺は君とスネークをサポートする。分かり易いだろう?」

「私が嫌だと言えば?」

「その時はまた自分にできることを探すだけだ。もっとも、君が断るとは思っていないが」

「・・・わかった、私も自分にできることをやるわ。それで、何か情報はある?」

 よし!Good Communication!つらつらと偉そうなことを言った甲斐がある。これで信用してもらえなかったらどうしようかと思った。

「運搬口を通る時はセンサーに気をつけろ。引っ掛かるとガスが出てお終いだ。赤外線ゴーグルを使うといい」

「ゴーグルね、他には?」

「核弾頭保存棟に行くまでの谷間は地雷原になっている、気をつけるんだ。地雷探知機が格納庫にある。あと、地下2階の倉庫にPSG-1があった筈だ。スネークに渡すといい」

「至れり尽くせりね、つくづくあなたが敵じゃなくてよかった」

「それはお互い様だ」

 素っ裸にされなかったおかげで腹痛も悪化しなかった、これは何よりも大きな成果と言える。

「あと、幻覚や幻聴は聞いたか?奇妙な音楽は?」

「ええ、エレベーターで幻覚を見たわ。あれは何?」

「あれはサイコ・マンティスの精神干渉ノイズだ。奴の記憶の一部が流れこんできたものだ。やつは核弾頭保存棟にいる、気をつけろ」

「独房でも言ってたわね。でもどうやって?」

「変な歌は奴の洗脳ミュージックだ、そいつで人を操る。既に君は奴の影響下にあるのかも知れない」

「そんな、どうしろって言うの」

「・・・心を無にして、自分を消すんだ。無我の境地でやり過ごすんだ」

「本気で言ってるそれ?」

 知らねぇよ!超能力に対抗するなんて考えたこともない。ゲームならコントローラーを差し替えればいいが、現実ではそうはいかない。スネーク、よく勝てたなこんなやつに!

「自分が何者か、何ができるか。自分を強く持ち、反撃の機会を待つんだ」

「自分、ね。ま、何とかやってみるわ」

「気をつけろよ、無理はするな」

「分かってるわ、自分のできる最善を、でしょ」

「頼んだぞ、俺は少し休ませてもらう」

「大丈夫?独房でも辛そうだったけど」

「おかげさんでな、誰かさんがぶん殴ってくれたおかげでゆっくり休める」

「あ、あれはあなたが言ったから・・・」

「冗談だ、何かあれば連絡してくれ。無線機を壊さないように気をつけろよ」

「?分かったわ、あなたも気をつけて」

 

 無線機が静かになった、これでしばらくは何とかなるか。無線機を壊されるとこちらから何もできなくなる。あとはサイコ・マンティスに対抗できるか、こればかりはメリル任せになってしまう。最悪、スネークが何とかしてくれる!

 無線機を置いて薬を飲む。横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。

 

 ※※※

 

 ジョニーからの通信を終え、搬出口を開けたメリルはスネークに開けたことを伝え、核弾頭保存棟で会おうと言う。当然、スネークは話が違うと声を荒げるがメリルは無視をする。自分にできる最善を、ジョニーに言われた言葉を常に頭に入れていた。

 思えば不思議な男だ。自分と同じ新米兵士なのに肩肘張らず、冷静に適切な指示を出そうと言う姿勢、たまに新米らしい頼りないことを言う時もあるがかえって人間味がある。

 正体不明、どこまで知っているか分からない謎の男だ。自分でももう少し警戒すべきだと思う。だが、彼は裏切らない。何故かは分からないがそんな気がする。これが女の勘と言うやつか?などと考えながら、核弾頭保存棟へ向かう準備を進めていくのだった。

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