気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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第6話

 無線の音で起こされたと思ったら、君の姿を見て正気を取り戻した(意訳)なんて事を本人に言わされる羞恥プレイをさせられました。本人にはドン引きされました。

 

 始めはなんか不機嫌だったけど、今思えば戦車に驚いた八つ当たりだったのでは?

 戦車のことは伝えてもよかったけど、伝えすぎるのもリスクを感じる。スネークで止まればいいが、ミラーは言わずもがな、キャンベルやナオミ達に伝わって怪しまれると面倒だ。

 グレイ・フォックスの件はまぁ、別に良いか!メリルと関わるところでも無い。俺と同じく、第三者がいるけど敵じゃ無いことが伝わればそれでいい。メリルが意外と冷静なのもわかったしな、考えられているのは良い傾向だ。

 ただ、サイコ・マンティスの過去を伝えたのは正直なところ賭けだ。メリルが対抗できるようにと教えたものの、上手くいくだろうか?

 そもそもマンティスの能力の限界もわからない。ゲームだと遠距離から精神干渉ノイズは受けても、読心や操ったりするのは近距離、実際に会わないといけない感じだった。もし当てが外れて、メリルの記憶が読まれて警戒して出て来ないとかなるとマズい。間違いなく俺を排除しようとするはず、マンティス対策しとくべきか?近づかないのが何よりの対策だと思ってるのだが、相手が来たら逃げようがない。やっぱりトラウマをぶつける作戦しかないのか。

 

 そういえばどれぐらい寝てたんだ?寝起きから無線をして時間を見ていなかった。時計を確認するとそれなりに休息は取れたようだ、風邪の具合も良くなっている気がする。しかし、寒いのも相まって腹が減る。

 寒冷地では寒さによって消費カロリーが増大する。例えば、南極で活動する越冬隊は1日約4,700キロカロリーで食事を準備するという。成人男性の1日の摂取カロリー目安が約2,200前後であるから約2倍に匹敵する。外で激しく行動すればさらに消費する。

 ナノマシンを注射したスネークやゲノム兵はその恩恵のもと、栄養剤や糖分の補給を受けているため食事については必要がなくなっているという。

 ここでもナノマシンか、万能すぎるだろ。

 恩恵に与れない身としては愚痴の一つでもいいたくなる。バックパックに隠し持ってきた寒冷地用レーション(MCW)を準備する。通常のMRE(レーション)がレトルトなのに対して、凍らないようにフリーズドライで作られた戦闘糧食で、カロリーもMREより多くなっている。

 お湯を沸かしメインのパックに注いで出来るまで待ち、食事にする。蛍光色の飲み物も始めはギョッとしたが今では慣れたものだ。普通のMREも温めればそれなりに食えるが、フリーズドライで作られたMCWの方が美味しい気がする。

 美味い食事は士気を上げる、更に温かければ文句無しだ。かのネイキッド・スネーク(BIGBOSS)はソ連のレーションより多少腐っててもヘビの方がいいといった。流石にそれはどうかと思うが、ナノマシンで食事の楽しみを奪うなんて、おのれ愛国者達許すまじ。

 ゲーム(MGS1)では食事シーンなんてなかったが、ジョニーはどうしていたのか?トイレに行く以上何か食べてはいたのだろうが、基地にあったレーションはネズミに齧られた跡があった。まさかジョニーはアレを・・・?

 洗脳されていてもしっかり食事を準備した自分を褒めてやりたい。

 

 メインとグラノーラを食べ終えた後、トースターペストリーとコーヒーで一息つく。シナモンシュガーが砂糖衣がけ(フロステッド)されてかなり甘い。戦場で甘味は貴重だ。マフィンと迷ったが、マフィンとチーズプレッツェルは食べずに取っておいて間食にしよう。ココアも残っているしな。

 今更この蜂起に協力することもない、もう一眠りするか。

 合理的にサボれるとは素晴らしきかな!

 

 ※※※

 

 戦車を撃破したスネークはエメリッヒ博士の保護に向かったようだ。流石は伝説の英雄、敵の中で連絡が来るのを待つしか無いメリルにとって、スネークの挙げた戦果は憧れと同時に畏怖の気持ちを呼び起こさせた。

 結果的にジョニーが言ったように何とかなったわけだが、何故戦車に生身で立ち向かって生きていられるのか?頭おかしいのでは?本当に自分がいてもいなくても何とかなってしまいそうだ。少しは助けになりたいのに・・・。

 

 しばらくするとスネークからまた通信が入った、無事エメリッヒ博士を保護したという。博士の安全の確保を頼みたいそうだが、メリルにもスネークに渡すものがあるため、予定通り合流することになった。

 メリルなりに慎重な行動を心掛けたため、正体がバレて弾切れになったり無線機が壊れる事態にもならなかった。どうやら独房からメリルが逃げたことは広まってない様子だった。侵入者の対応で忙しいのか、大して問題でもないと甘くみられているのか。いずれにせよ好都合だった。

 ゲノム兵の目を盗んで入り、無線に応答した女子トイレが利用者がいなくて都合がいいということで、そのままメリルはスネークを待ち、まもなく合流した。女子トイレに躊躇なく入るスネークに一抹の不安を覚える。

「どうもスネーク、さっきぶりね」

「メリルだな、無事で何よりだ」

 スネークはスネークでここまでメリルが無事だったことに安堵した。向こう見ずに格納庫から飛び出した時はどうしたものかと思ったが、今の落ち着いた態度に感心する。いい傾向だ。

「早速だけどスネーク、相談があるの」

「どうしたんだ急に」

「サイコ・マンティスに対抗するために2人で行動するべきよ」

 突然のメリルの発言にスネークは驚いた。聞くに、サイコ・マンティスは危険な超能力者であり、人を操ることさえできるという。もしそうなった時にショックを与えれば洗脳が解ける可能性があること、最悪の場合でも気絶等無力化すればなんとかなると説明された。

 どうしたんだ一体?何があったんだ?

 ジョニーとのやりとりを知らないスネークからすれば、メリルの急な変化についていけてなかった。メリルはメリルで、どうすればジョニーのことを気づかれずにマンティスのことを伝えられるか四苦八苦していた。

「やつが近くにいるのか?」

「分からないけど奇妙な音楽が一瞬聞こえた、警戒するに越したことはないはずよ」

 この状況、スネークは悩んでいた。メリルは致命的に経験が足りないが、彼女の言うことにも一理ある。それに、曲がりなりにも友人である大佐の姪だ。1人で死なれても寝覚めが悪い。

 結局、スネークはメリルの同行を認めた。無線で会話した時に感じた新兵特有の不安定さが今は姿を隠していることも、その判断を後押しした。

 メリルは持ってきたPSG-1と弾薬をスネークに渡す。

「メリルの武器は奴らと同じFA-MAS(トランペット)手榴弾(パイナップル)だけか?」

「武器庫からデザート・イーグルを拝借したわ。コイツなら使い慣れてるし大丈夫よ」

 .50AEを使い慣れてるだって?大佐、あんたの姪はどんな育ち方をしたんだ?

 スネークの困惑をよそに、メリルは準備を進める。

 ゲノム兵と同じ装備に太腿にホルスターをつけ拳銃(デザート・イーグル)を入れる。FA-MASの弾倉も独房での戦闘でいくつか消費していたため、銃と一緒に武器庫で弾薬と弾倉を拝借していた。スネークと合流するまでの時間にちょうど弾を弾倉に込め直していたところだった。弾込めを終えた弾倉を空だったマグポーチに入れていく。装備を通して体に重さが感じられる。

「何度でも言うが足手纏いにはなるな、そうなったら置いていく」

「わかってるわ、スネークは任務のことだけ考えて。エメリッヒ博士はどうする?」

「やつはステルス迷彩を持ってる。大人しくしてる分には安全だ」

「それなら大丈夫そうね。メタルギアは通信棟の先ね?地上ルートは氷河で塞がれてるから地下から行くしかない、所長室から行けるはずよ」

 準備を終えて、鏡に向き直るメリルの表情は不安と決意の混じる複雑なものだった。

「行きましょう、スネーク。生き残るために最善を尽くすわ」

「そうしてくれ、犬死するのもされるのも御免だ」

 スネークも装備の点検が終わったようだ。準備完了、伝説の英雄と共に戦う時間だ。大丈夫だ、自分ならできる。

 メリルとスネークは女子トイレを後にした。

 

 所長室に着く直前、再び奇妙な音楽が2人を襲った。最初の時より激しく圧力をかけ精神を揺さぶってきた。スネークはスニーキングの要領、精神を周りの状況にシンクロさせることで乗り切ろうとした。メリルの方を見ると自分より激しく影響を受けており、頭を抱え蹲っていた。

 何とか助けられないかとメリルに近寄ろうとすると感じていた圧力に変化があった。

「・・・!貴様、何故・・・!・・・誰だ!・・・・・・やめろ!」

 これは困惑?いや、恐怖か・・・?一体何が起きている?

 突然音楽が止み、感じていた圧力も消えた。蹲っていたメリルが顔を上げる。

「スネーク!やつよ!サイコ・マンティスよ!」

「何だって?」

「所長室にいるわ!行きましょう!」

 突然メリルが大声を出し、走り出した。慌ててスネークも後を追う。所長室のドアで立ち止まり、2人は銃を保持し突入の態勢を取る。

 突入してまず、部屋の真ん中に奇妙なものが()()()()()。部屋の装飾と思しき絵画や本棚の本など、様々な調度品が球状に固まって浮いていたのである。まるで中にあるものを守る殻のように。

 

「見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るなあアアあぁぁあぁーーーッッ!!!」

 

 男の絶叫が部屋に響く。スネークは銃を構えてはいたが、何が何やら分からなかった。謎の物体に気を取られメリルの行動に反応が遅れた。

 メリルは躊躇いなくFA-MASを構えた。セレクターは連発(フル・オート)に入っている。

「待てメリル!」

 メリルは躊躇いなく引き金を引いた。

 銃声が鳴り響き、弾丸が浮かぶ球を穿つ。調度品の一部は弾を止めたようだが、ライフル弾の連射には余りに頼りなかった。

 浮かんでいた調度品全てが力無く落下し床に散乱する。その真ん中で体に銃弾を浴び血塗れで横たわる男がいた。顔にはガスマスクをつけているが、虫の息で呼吸ができているのかも怪しい。

 サイコ・マンティスに違いない。

 メリルが近づくのに気がつくと、マンティスは血塗れの手足をバタつかせ逃げようともがく。

「来るな来るな来るな来るな!」

「おい!落ち着け!」

 余りの狂態にスネークがメリルを止め、マンティスに近寄る。マンティスはスネークに縋るように震える手を伸ばした。

「・・・小娘が何故・・・あの男は一体・・・・・・」

「何を言っている?」

 明らかにマンティスは怯えていた。抱き縋るマンティスにスネークは落ち着くのを待つしか無かった。

「・・・大丈夫か?」

「・・・貴様は・・・そうか、もう1人の・・・」

 正気を取り戻したらしいマンティスの話は陰惨なものだった。マンティスの過去、親殺しのトラウマ、顔の傷。スネークの後ろで聞いていたメリルも顔を歪める。

 スネークの中に本当の悪魔を見たと言うマンティス、メリルが思わず近づこうとして、マンティスは再び体を強ばらせる。

「そこの女・・・女の背後にいる男・・・貴様達は・・・一体・・・」

「何の話だ?」

「・・・貴様の知らないことは多い・・・せいぜい気をつけることだな・・・」

 マンティスの発言に今度はメリルが体を強ばらせる。マンティスは所長室の隠し扉を最後の念動力で開けた。

「スネーク、俺に未来は読めない・・・果たして結末(エンディング)はどうなるかな・・・?」

 マンティスが最後の呼吸をして動かなくなった。

 

「・・・メリル、何がどうなっている?」

「・・・マンティスの過去を調べたのよ」

「過去を?それで?」

「奴に洗脳されそうになった時、何か使えると思って。こんなに上手くいくとは思わなかったけれど・・・」

 スネークがメリルを問い詰める。さっきのマンティスの様子は異常だった、メリルは何を知っていて何をやったのか。

「何をしたんだ?」

「やつのトラウマを、親殺しと顔のことを洗脳されそうになった時に考えただけよ。結果はご覧の通りね」

「背後にいる男とは?俺の知らないこととは何だ?」

「・・・私にも協力者がいるってことよ」

「協力者?何者だ?」

「私もよく知らないわ、もしかしたらディープ・スロートと同じ人かも」

「ディープ・スロート・・・」

 メリルは何とかジョニーのことを誤魔化そうとする。

「・・・奴がここにいるのがわかったのは?」

「記憶が流れ込んできたのよ、マンティスの意識の一部と言うべきかしら?この部屋の様子が見えたわ」

「・・・・・・」

「とにかく、FOXHOUNDを1人倒せたんだから良かったじゃない」

 スネークの疑いは未だに晴れない。この作戦には秘密が多すぎる、現場にいるメリルならまだ大丈夫かと思ったがどうやら違うらしい。

 だが、先に進めるのは確かだ。今は前に進むしかない。不安を抑え込み、スネークはメリルと共に通信棟へと向かった。




 ジョニーの食べたCRWはNo.10 スクランブルエッグ チーズ ウェスタンスタイル です。
 フランス軍とポーランド軍のレーションは美味かったです。MREも温めれば嫌いじゃないです、温めれば。
 放出品のレーションを食べる方は自己責任でお願いします。
 食べる際は、中の加熱剤が経年劣化で温まらないことがあるので気をつけてください。冷えたまま食べるか、お皿に出して電子レンジで温めるといいでしょう。
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