気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

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 PS版、GC版、小説版で設定が異なるところがあるので都合がいいところを使ってます。ご承知ください。


第8話

 メリルとスネークはサイコ・マンティスを倒し、所長室の隠し扉から通信棟へと向かう。氷の洞窟は狼犬(ウルフドッグ)の遠吠えが響いて不気味だった。途中スネークと別れて前進する。メリルならギリギリ通れる隙間を使ってショートカットした。

 スネークはもう少しかかりそうだ、今なら無線が使える。

「ジョニー?聞こえる?」

「メリルか、今大丈夫なのか?」

「少しだけスネークと別行動している、大丈夫よ」

 少し声を顰めた様子で無線に答えるジョニーの声、おそらくスネークに聞かれることを警戒してのことだろう。

「そうか、ならいい。どうしたんだ?」

「マンティスを倒した、あなたの言った方法がうまくいったわ」

「・・・そうか、そいつはよかった」

「ジョニー?」

 ジョニーの助言のおかげで倒せたのだ、もう少し喜ぶかと思えば反応が乏しい。返事に妙な間があった。だが、メリルにも言いづらいことがあった。

「いや、なんでもない。役に立てて何よりだ」

「・・・ごめんなさい、ひとつ謝らないといけない」

「どうした?」

「マンティスに心を読まれて、あなたの事がスネークに伝わってしまったの」

「・・・スネークはどこまで知っている?」

「なんとか誤魔化して、例のディープ・スロート(内通者)と混同するようには話したけど・・・」

 メリルもあれでうまく誤魔化せたとも思っていない。ジョニーの存在をどこまで隠せたか自信がなく、語尾を濁す。

「・・・知られてしまったものは仕方ない、なんとかしよう」

「本当に大丈夫?」

「この話は後にしよう。それで、今はどこに?」

「所長室から洞窟を抜けた先の扉よ、通信棟につながるところね」

「そうか、その先には気をつけるんだ」

「地雷原のこと?大丈夫よ、任せて」

「・・・マンティスの記憶か、便利なもんだ」

「・・・どうして知ってるの」

 一体どうなっているのか。少しは役に立つところを見せようと、洗脳されかけた時に流れてきたマンティスの記憶の中の地雷原のイメージを有効利用しようとしたら、全て見透かされた。ジョニーこそ本物の超能力者なのでは?ジョニーが実はそうだと言ってもメリルは驚かない、そんな気になってきた。

「地雷原のことは知っていても、その先のことは知らないだろう?」

「先?通信棟のこと?」

「そうだ、そこから通信棟に行くまでは見晴らしが良すぎる。ほぼ一本道、絶好の待ち伏せ(アンブッシュ)ポジションだ」

「そんなの突破してやるわ」

 メリルとて考えなかったわけではない、その上で対処できると考えた。見晴らしが良いのは相手とて同じだ、こちらにはPSG-1(狙撃銃)もある。

「並の相手ならな。だが、FOXHOUNDには凄腕の狙撃手、スナイパー・ウルフがいる」

「スナイパー・ウルフ・・・」

「奴は何時間でも何日でも待ち続けるぞ。ウルフに撃たれるか、撃たれなくとも時間を稼がれて前後から包囲されるか。そうなると突破は無理だろうな」

「・・・・・・」

「仮に奴を倒せたとしても、通信棟内部にも大勢待ち構えているはずだ」

「じゃあどうしろって言うの?」

 八方塞がりの状況に苛立ち、思わず声を荒げた。

「・・・ここでスネークと別れれば、まだ道はあるかもしれない」

「なんですって?」

「奴らと同じ装備のメリルならまだ奴らを騙せるかもしれん、少なくとも2人とも捕まるよりマシだ」

「スネークを裏切れってこと!?」

「そうじゃない。2人でウルフとやり合ったところでリスクが高すぎるという話だ。スネークはまだしも、経験の少ない君は狙われるぞ。撃たれて足手纏いにはなりたくないだろ?」

「それは・・・」

「確かに狙撃は普通、狙撃手(スナイパー)観測手(スポッター)のペアだ。スネークは狙撃は専門ではないだろうし、必要だったら2人で相手すれば良い」

「でもそれじゃ捕まるってさっき言ったわよね?」

 ジョニーは何が言いたいのか、どうも話がまとまらない。

「・・・正直に言おう、どうして良いか俺にも分からん。このまま前進すれば間違いなく捕まる、それだけは確かだ。冷たく聞こえるかもしれんが迂回できない以上、撃たれるのも捕まるのも最低限のほうがいい」

「心温まる忠告感謝するわ。つまり貴方は私に、臆病者みたいに隠れて安全なところに逃げろって言いたいのね?」

「・・・任務を優先しての意見だ」

 メリルは頭に血が上っていた、目の前にジョニーがいたら間違いなく掴みかかっている。

「自分にできる最善を尽くせと言ったのはあなたよ、ジョニー。私は経験の浅い新米だけど、それでも今の私の最善は目の前の敵から逃げることじゃない。それだけは確かよ」

「・・・死ぬかもしれない、運良く助かっても捕まって拷問されるかもしれん」

「ここで逃げるなら死んだ方がいい、それに拷問されても話すことなんかないわ」

 強気な発言をするメリルだが、不安を隠すための精一杯の強がりだった。ジョニーの言うことにも一理ある、自分のことだけ考えればそうするのが1番なのもわかっていた。

 それでもメリルは、スネークと共に戦うことを選んだ。ジョニーの言われるがまま背を向けることは彼女にとって、自分から逃げることと同義に思えたのだ。戦いを通して自分が何者で、自分の生きてきた人生を確かめようとしていた。

「・・・分かった、だがスネークにも必ず伝えてからにしてくれ」

「・・・そうさせてもらうわ、それじゃ」

「待てメリル!捕まったら俺がなんとか・・・」

 ジョニーの言葉が日和見的に聞こえて今は酷く癪に触る。

 ちょうどスネークの姿が見えたため、通信を切る。これ以上彼と話すつもりもなかった。

 

「遅かったわね、スネーク」

 スネークはメリルと通信棟へと繋がる扉の前で合流した。途中狼犬の群れを避けたので時間を食ってしまった。この時ばかりは女の体格が有利だと感じざるを得ない。

「スネーク、この先には地雷原がある。私の後にしっかりついてきて」

「よく知っているな」

「マンティスの記憶が流れてきたの。それとその先なんだけど・・・」

「先?通信棟へと続くんじゃないのか?」

 メリルが何か言いづらそうにしている。何かあったのか。

「・・・そうね、通信棟へは一本道で見晴らしが良いわ。待ち伏せしてるかも」

「なるほど、警戒して進むとしよう」

「・・・FOXHOUNDのスナイパーが待ち構えているかも」

「FOXHOUNDのスナイパー?確かウルフとかいったか」

 ブリーフィングを思い出す。凄腕のスナイパーとのことだったがそうなると話は変わってくる。

「スネーク、私がスポッターをやるわ」

「何?危険だぞ、メリルは隠れてろ」

「あなたまで私に戦うなって言うの?」

 メリルが悔しそうに歯噛みして詰め寄り、スネークを睨みつける。スネークは違和感に気づく。

()()()()()?他に誰が?」

「それは・・・」

「例の協力者か、ウルフのこともそいつから?」

「・・・そうよ、ついでにこのまま進んでも捕まるだけだとも言ってたわ」

 観念したのか、投げやりにメリルは答える。スネークとしては判断が難しかった。

「捕まった後が問題か。自力で脱出するか、メリルかオタコンに助けてもらえればなんとか・・・」

「ちょっと待って、どうして私が?」

「分かっているのにわざわざ2人で捕まることもない」

「私だけ逃げろって言うの?そもそも捕まる前提?」

「別に初めてではない」

 アウター・ヘブンの時はグレイ・フォックスと接触するのにわざと捕まった。古い記憶が蘇る、フォックスも覚えているだろうか。

「ダメよ、地雷原の場所は確実に教えなければいけないから私も行く」

「メリル」

「私も捕まっても助けられる人はいるでしょ?スネークだって狙撃は専門じゃないし、きっと助けになるわ」

「狙撃の経験もないのにスポッターなんて出来るのか」

「なんとかするわ」

 メリルはなんとかついていこうと必死で、滅茶苦茶なことを言っている。

「撃たれて足手纏いになったら?」

「言ったでしょ、足手纏いにはならないって。自分でケリをつけるわ」

 こうなるともう厄介だ、スネークはこの娘の性格がだいぶ分かってきた。落ち着いていたかと思ったがどうやら気のせいだったらしい。

 それとも、協力者とやらに似たようなことでも言われたか。

 スネークはメリルの同行を認めることにした。

「分かった、後悔するなよ」

「後悔させないわ、スネーク」

 

 ※※※

 

 クソっ、あの猪娘!脳筋!ゴリラ女!

 マンティス対策が上手くいったのは驚いたし、俺のことがスネーク達に伝わったこともマズイが、今はもうそれどころではない。

 どうにかメリルが撃たれるのは止めようとしたが上手くいかなかった。スネークについていくに違いない。

 なんとかメリルだけでも逃せないか?今から向かって間に合うか?間に合ったとしてもどうする?捕まるとしたら通信棟の手前か?考えをまとめたいが時間がない。

 万が一撃たれたら、治療して匿うのは無理がある。その時点で俺の役目はなくなる。原作通りの展開だ、いっそもうそれでもいいかぁ?

 考えれば考えるほど自棄になりつつある。無線だけのサポートじゃ限界が見えてきた。いよいよ直接出るしかないのか。

 だが、俺にあのFOXHOUNDとゲノム兵を相手に戦えるのか?

 とにかく急いで通路まで向かうことにした。どうするかは行きながら決めるしかない。

 

 ※※※

 

 狙撃されるのが分かっていて、悠長に体を暴露して前進する者はいない。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の際のサラエヴォ包囲では、狙撃兵を恐れて市民が通りを走った。いつしか狙撃兵通り(スナイパーストリート)と呼ばれるようになった。

 メリルとスネークも似たような状況だ。決定的に違うのはこちらも武器を持ち、相手を排除せんとする兵士だと言うことだ。

 地雷原を抜けてすぐ遮蔽に隠れた。まだ反応はないが、敵の存在を自分の命で確かめるつもりは2人ともなかった。スネークから双眼鏡を借りてメリルが前方を警戒する。スネークはPSG-1を準備していた。

「今のところ前方に動きはないわ、気づいてないのかも」

「向こうからは地雷原が見えていたはずだ、期待しない方がいい」

 地雷原で身動きが取れないうちに撃てばよかっただろうに。

 スネークはウルフのやり方に疑問を感じていた。余計な邪魔が入るのが嫌だったのか、ただの気まぐれか。結果として助かっている。

 距離にして50mから60m程度、オリンピックの射撃とほぼ同じか、やや遠い距離だ。しかし今ここで行われるのはメダルのために競うスポーツではなく、お互いの命を狙う殺し合いだ。

 それに、スネークのような潜入工作員に勲章(メダル)は縁がない。

 できればPSG-1の零点規正(ゼローイング)をやりたかったがのんびりやっている暇がない。この距離ならある程度は当たってくれると信じることにした。それこそ、オリンピックみたいに1cmを争うわけでもない。撃ちながら修正もできる。

 

 準備のできたPSG-1を置いて、メリルから双眼鏡を受け取り通信棟を観察しようとした。覗いてすぐ、窓の奥が光った気がして反射で体が動いた。カンマ1秒以下の世界に銃声が響く。物の動きが遅くなる感覚がして、顔のすぐ横を弾丸が通る。

「スネーク大丈夫!?」

 メリルが心配して声をかけるがそれどころではない。メリルの持っているFA-MASをひったくり、窓に向かって撃ち込む。いくらPSG-1が半自動ライフルとは言え、弾を素早く叩き込むのにスナイパーライフルよりアサルトライフルの方が都合がいい。この近さなら尚更だ、当たらなくとも牽制になればいい。

「クソッ、グレネード・ランチャー(40mm)があればな」

 次世代特殊部隊は実験的性格と秘匿性から装備が米軍制式とは異なっている。だが、わざわざフランス製のFA-MASや時代遅れ感が否めないPSG-1を使わなくともいいだろうに。

 グレネード・ランチャーがあれば窓に撃ち込んで部屋ごと制圧できる。だが、ゲノム兵の中に装備しているのは見かけなかった、無い物ねだりをしても仕方がない。

 メリルに銃を返し、スネークはPSG-1を手にした。

「この先の窪んでる場所まで出る、援護してくれ」

 メリルが頷き、スネークは少しでも早く着けるように隠れられる範囲で助走を取る。メリルの射撃を合図に約10m先の遮蔽に駆け込んだ。ウルフも撃ってきたが弾はスネークを外す。どうやら狙いは俺だけか?そう思った直後にメリルの近くの壁に弾が当たり、慌てて隠れていた。そこまで甘くはないらしい。

 スネークはスモーク・グレネードを前に投げた。煙が広がるのを待ってメリルに合図し、前に来るように促す。煙の隙間にメリルが見えたのかウルフが撃ってきた、別の窓からだ。焦ったのか知らないが、撃って位置をバラしたのは大きなミスだ。

 この状況を最大限生かさねば。遮蔽に入ったメリルに再び撃ってもらう。窓の奥に発砲炎(マズルフラッシュ)が見えた。メリルの近くを弾が通る。マズルフラッシュと弾道からおおよその位置は分かる。薄くなってきた煙の向こうにウルフの姿が見えた気がして、スネークは引き金を引いた。

 

 手応えはあった。メリルの援護で前の遮蔽に出ると、撃ってこなかった。メリルが前に出ても同じだった。倒したのか?死体を確認するまでは油断できない。通信棟に着いた2人だったがドアのセキュリティはレベル6、開けることが出来なかった。

「動くな!」

 ドアに気を取られた隙に通信棟の窓からゲノム兵が銃を構えていた。そちらに銃を構えようとすると、後ろの通路からもゲノム兵達がやってきた。盾やアーマーを着た重装備の者もいる。

 倒したと思ったスナイパー・ウルフも姿を見せた。手傷は負わせたがそれだけだったようだ。ウルフとスネークが対峙し、ウルフはスネークを獲物として認めたようだ。

 結局ジョニーの言う通りになってしまった。メリルは悔しげに銃を捨てる。包囲するゲノム兵を睨みつける。もし手荒な真似をされようものなら抵抗してやるつもりだ。後ろからゲノム兵が近づいてきた。

「なんとかしてみるつもりだ、大人しくしてるんだ」

 小声で囁く声に驚いて振り向こうとしたが。頭に麻袋を被せられ後ろ手に結束バンドで拘束された。車に乗せられ、どこかに運ばれる。

 スネークも一緒だろうか。メリルは不安と恐怖に押しつぶされそうだったが、捕まった時の男の声を思い出した。一体どうすると言うのか、この状況から逃げ出すことが果たして可能なのか。考えるうちに、少し落ち着きを取り戻していた。

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