気づいたらジョニーでした。   作:タコベル

9 / 29
 すみません、遅くなりました。


第9話

 メリル達に追いつこうとしたら、既に拘束のための部隊が集まっておりました。なんなら戦車格納庫のゲノム兵達も一緒です。エレベーターが着いたところでバッタリ遭遇、離れられなくなりました。

 これはなんと言うかもう、今助けるのは無理ですね。

 

 そのまま通信棟に向かうとメリルとスネークの姿が、案の定ついて行ってたか。包囲して武装解除していると、スナイパー・ウルフも現れた。ゲームのシーンそのままのやりとりが繰り広げられる。

 俺はといえば、その横で淡々とメリルを拘束する。今にも飛びかかろうとするメリルもそうだが、ゲノム兵達も洗脳が解け始めているのか精神が不安定なやつらが出つつある。メリルが暴れでもするとエスカレートしかねない。

 背後からの囁き戦術で驚いたところを有無を言わさず拘束、我ながら猛獣使いみたいだな。スネークはといえば殴って気絶させられていた。随分と丁寧なおもてなしだ。

 猛獣もといメリルを連行し、車に乗せて運ばれていく。同乗できて助かった、また雪の中を歩かなくて済む。というかさっきも車を使えばよかったのでは・・・?

 

 程なくして戦車格納庫に到着、ウルフを先導にメリルとスネークを連れて地下へ降りる。急造の独房のあった部屋の隣、()()()()()や本来の独房がある部屋へと進む。

 するとそこには先客がいた。リキッド・スネークとリボルバー・オセロットだ。オセロットは嬉々として意識のないスネークを拷問台に拘束する。今度はしくじるなとリキッドに釘を刺されていた。

 この空間に長居したくない。メリルも引き渡して早々と退室しようとするとリキッドに呼び止められた。

「待て、そいつは外の独房だ。お前にも聞かなきゃならんことがあるからな、メリル」

 顔を隠されたままのメリルが体を強ばらせる。ウルフが疑問を口にした。

「この女に何かあるの?」

「マンティスをやったのはそいつだ。ただのガキかと思っていたが、後ろに何者かがいる」

 スネークに伝わったということは、そりゃミラー=リキッドにも伝わってるよね!予想通りに厄介なことになった。続くウルフの言葉にオセロットも興味を示す。

「・・・なるほど、あの通路で始めから狙撃を警戒してたのはそういうことね」

「ウルフの時も・・・一体何者なんです?」

「さぁな、ゲノム兵の中だと厄介だ。最近になって入ったのはこの女だけだ、もっと前から潜ませていたことになる」

「まさか、()()はこうなると始めから?」

「実験的な部隊だ、保険をかけていたのかも知れん。いずれにせよ、マンティスの洗脳も効いてなかったことになる。只者ではない」

 ひぇぇ・・・厄介どころの話じゃなくなってきたぁ・・・。"奴ら"って愛国者達だよね絶対!今のところまだ大丈夫そうだけど、バレたらどうなるのこれ・・・。

 考えるとお腹が痛くなってきた気がする。動揺を見せないよう必死に耐える、フェイスマスクがあってよかった。

 

 部屋を出て独房までメリルを連れて行き、拘束と目隠しを外す。こうして近くで顔を見るのは久し振りだが、表情は固い。小声でメリルが話し始める。

「・・・ごめんなさいジョニー、あなたの言った通りだった」

「気にするな、過ぎたことだ」

「それでもよ。あなたにひどいことを言ったし、危険に晒している。謝らせて」

 随分としおらしい態度に少し驚き、思わず顔をしばらく見つめてしまう。整った顔が暗く沈んでいた。こうして見ると失敗に落ち込むただの10代(ティーン)の少女だ。

 こちらの沈黙と視線に耐えきれなくなったのか、メリルが続けた。

「・・・何か言ったらどうなの」

「・・・いや、そうしていれば可愛いらしいもんだなと。人の顔を遠慮なしに殴ったやつとは思えん」

「な・・・あれはあなたが・・・!」

「分かってる、冗談だ。言い返す元気があれば十分だ」

 不満げな顔をするメリル、少しは元気になったか。

「でもジョニー、本当に大丈夫なの?」

「確かに知られたくは無かったが、奴らの中で疑心暗鬼に陥ってくれるならそれはそれで好都合だ。つけこむ隙も増える」

 これは偽らざる本心だった、味方にスパイがいるかもしれないストレスは小さくないはずだ。それに、危険なのは初めから変わらない。スネークやメリルに比べればまだマシだ。

 すぐ隣の部屋にはウルフとオセロット、リキッドもいる。長話はできない。

「もし俺のことを聞かれたら無理に隠さなくていい。どこまで知っているか奴らが知れば焦るかもしれん」

「分かった、なんとか上手くやってみる」

「今は大人しくしているんだ。チャンスを待ってくれ」

「また時が来たら分かるのかしら?」

「・・・とにかく、体力を温存するんだ」

 鍵をかけて独房から離れる。

 数時間前とは状況が変わっていた。何より、ジョニーの知る原作(ストーリー)にはこんな状況(シチュエーション)は存在しない。当然、VR(シミュレーション)にもありはしない。ジョニーは答えを濁すしかなかった。

 

 問題はここからだ。どうやってメリルとスネークを逃すか。

 スネークの方は放置しておけばサイボーグ忍者が牢をブチ開けるが、タイミングを間違うと脱走したスネークと鉢合わせする。ずっとトイレにでも篭っていようか。

 そしてメリルを逃すのをどうするか。今ここで再びメリルに逃げられるのはかなりマズい。疑われる可能性が高い。どうにかして自力で出たように仕向けられないか。いっそ、サイボーグ忍者がやってくれないか。そうすれば万事解決する。だとしても、自分が忍者に斬られる可能性も捨てきれない。そいつは御免被りたい。

 ここで、先程腹が痛くなってきた気がしたのは気のせいではなかったらしい。じくじくと痛みが強くなってきた。こうなると考え事は無理で、急いでトイレに駆け込むのだった。

 

 ※※※

 

 ジョニーがトイレに入ってすぐ、隣の部屋から人が入る気配がした。

 足音は独房に近づいてくる。

「さて・・・貴様の知っていることを喋って貰おうか」

 この声はリキッド・スネーク、テロリストのリーダーだ。さっき聞きたいことがあると言っていた。負けてなるものかと強気に出る。

「私には話す事なんてないわ」

「話したくなければ喋りたくなるようにするだけだ、手間をかけさせるな」

 スネークと瓜二つのリキッドだが、メリルは独房のドアから見える目の奥に、スネークにはなかった憤怒と狂気を感じていた。

「マンティスをどうやって倒した」

「・・・言わなくても知ってるんでしょ」

「質問を変えよう、どうやってマンティスを調べた?直前に配属になったお前が、何故?」

「・・・・・・」

「それとも、誰かに入れ知恵されたか?貴様の言う協力者とは?何を知っている?」

 リキッドは本来知り得るはずのないことを知っていた、間違いなく内通者がいる。そして、知っている事を隠そうともしていない。バレることはないという自信か、メリルを決して逃さないという意志の現れか。

「・・・私も詳しくは知らない、一方的に情報だけ送られるから」

「ウルフの時もか?」

「そうよ、更に言えばこうやって捕まることまで教えてくれた。分かってて捕まるなんてドジ踏んだわ」

 ジョニーに言われた通り、変に隠すよりも話せる範囲で話していく。そもそもジョニーが何者なのかはメリルも知らない、話しようがないのも確かだった。

 ついでに捕まったことについて自虐的に愚痴ってみたが、リキッドの反応は想像と異なるものだった。

「ウルフの時まで・・・。捕まるのが分かってて、何故よしとしたのか・・・目的はなんだ?何の意味がある?」

 ドアの向こうでリキッドは思案に耽っていた。リキッドは焦っているのか、余裕がないように感じられた。

 ジョニーといいリキッドといい、メリルの知らないことで勝手に考えるのをやめて欲しい。何も知らない自分が酷く間抜けに思える。ウルフも似た思いだったのか、声をかける。

「それで、この女はどうするの?」

「この様子ではこいつも詳しいことは知らん、ただの使い走りだ」

「じゃ、処分するの?」

「いや、使い道はある。まだ生かしておけ」

「そうね、あの色男を誘い出すのにも使えるかも」

 そう言うと、いつのまにかトイレから出ていたジョニーが鍵を開け、メリルはウルフに引き渡される。どうやらまた移されるようだ。ジョニーの表情はフェイスマスクでよく分からなかったが、焦っているような気がした。

 独房を出てすぐ、隣から男の絶叫が響いた。スネークの声だ、オセロットの拷問を受けているに違いない。メリルは耳を塞ぎたくなったが必死に堪えた。動揺を悟られたくなかった。

「貴様に同じ思いをさせてやれんのが残念だ」

 リキッドが先ほどの余裕のない様子から一転、スネークの苦しむ声を聞いて満足そうにしていた。

 この男に決して屈してはならない、メリルは一人そう誓った。

 

 ※※※

 

 メリルがリキッドとウルフに連れて行かれた。これでは逃すも何もあったものではない。原作(ゲーム)と異なり負傷してないから同じ場所で監禁されると踏んでいたが、当てが外れてしまった。

 トイレから出てリキッドとウルフがいたのは心臓に悪い。トイレを済ませたのにまたお腹が痛くなりそうだった。

 スネークの絶叫が何度か続いたかと思うとオセロットが呼んできた。どうやら休憩らしい。拷問に休憩もクソもないだろうが、取り敢えずスネークをガラス張りの独房に入れておいた。中のスネークの様子は拷問で消耗しているが大丈夫に見えた。今はナノマシンで連絡でもしているのか。

 さて、忍者を大人しく待ってもいいが、できるなら早いとこ出したい。試す価値はある。

 ジョニーはトイレの個室に入り、無線機で呼び出した。

「オタコン、聞こえるか?」

「ジョニーかい?悪いけど今少し忙しくて・・・」

「スネークのところに向かうんだろ?」

「・・・どうして知ってるんだい?」

「メリルが捕まった以上、頼れるのはオタコンしかいない。俺ならすぐに無線で呼ぶ」

 予想通り、いや原作通りにオタコンが向かっているようだ。これを利用しない手はない。

「そのスネークのいる独房の看守は俺だ、鍵も持っている」

「そうなのかい?それなら牢から早くスネークを・・・」

「そんなことをしたら俺が裏切り者だと殺される。一芝居必要だな」

「一芝居?」

「オタコンがステルスで俺を倒して、鍵を奪ったように見せるんだ」

「なんだって?そんなの無理だ!できっこない!」

「落ち着け、一芝居と言ったじゃないか。俺がやられたフリをするんだ、難しいことは何もない」

「・・・それ、本当に上手くいくかな?」

 オタコンが不安そうに問いかける。

「上手くやるしかないんだ。そうしないとスネークが死んで、核が撃たれるだけだ」

「・・・そうだね、やるしかないんだ。頑張ってみるよ」

 核攻撃というのが効いたらしい、オタコンは覚悟を決めたようだ。自分のREXから核が撃たれるのをなんとしても阻止したいのは変わらないらしい。

 今の時点では核は撃てないんだけどね!

「それで?僕はどうしたらいい?」

「俺の後ろから忍び寄ってガツンといった感じでいこう。タイミングは任せる」

「何か合図がいるかな?」

「来たらドアが開くので分かる、あとは俺が合わせよう」

 スネークにも気づかれたくないというのが本音、音や光はバレるかも知れないからやめておきたい。

「分かったよ、それじゃ後で」

「スネークの分のセキュリティ・カードを忘れるなよ」

「勿論だよ、任せてくれ」

 そう言って通信が切れた。あとは来るのを待つだけだ。上手くいくか考えるとお腹が痛くなりそうだが、今はちょうどトイレにいる。ついでに用を足してしまおう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。