東方翠鴉録   作:リッチ3673

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プロローグ

幻想郷最大勢力、妖怪の山。

その名の通り、この山には大量の妖怪が住んでおり、人間たちからは畏怖の念を抱かれている。

 

この山の妖怪たちは仲間意識が強く、特に山の頂点に立つ天狗はその傾向が非常に強い。

 

 

天狗。

かつて妖怪の山を統べていた鬼に代わり、山の主となった種族である。

彼女らは非常に強力な妖怪だ。

妖怪としての妖力や身体能力、どれをとっても幻想郷トップクラスの妖怪だと言えるだろう。

 

そして、この天狗という妖怪は組織化されており、縦社会で成り立っている。

頂点には妖怪の山の主である天魔、次点には天狗たちの管理を行っている大天狗、それ以下には事務作業を主に担当している鼻高天狗、報道担当の鴉天狗、山の警備隊である白狼天狗、鴉天狗の新聞の印刷を担当している山伏天狗。

 

このように、彼女ら天狗は組織というものに身を置き、各々が得意な役割を担当して動いている。

実際、それは合理的であるし、これによって天狗という種族は長い間繁栄し続けてきた。

 

だが、組織に身を置くということは、行動に制限も出てくる。

自分の意思だけで動くというのが不可能になるのだ。

 

何をするにも背後には組織がいる。

そして超えてはいけない線を作られてしまう。

この線を超えてしまった天狗は山から追放されてしまうのだ。

 

先程も言ったが天狗という組織、種族は仲間意識が非常に強い。

もし仲間が一人傷つけられたとしたら、全員でその敵をリンチにするような集団だ。

 

そんな彼女ら天狗だからこそ、仲間の調和を乱す者には非常に厳しい。

この組織に適応できない者は、山を追い出される。

 

これが天狗の社会だ。

 

もちろん天狗社会のシステムに不満を持っている者もいる。

だが、だからと言ってこれといった行動を起こしたりするものは、一人としていない。

 

自分たちの組織の恐ろしさは、自分たちが一番知っているからだ。

 

故に、天狗たちはのんびりと暮らしている。

そうしていれば、自分に害が及ぶことも無いし、いつまでも山で暮らし続けることができるからだ。

 

妖怪としての強さを無理に見せつけたりはせずに、新聞大会を開いて仲間で楽しく生活していく。

これが妖怪の山の頂点、天狗の生き方だ。

 

 

 

”彼女”は、そんな天狗の一員の鴉天狗であった。

彼女を一言で表すとするなら、そう。

 

”変わり者”。

 

これが一番相応しいだろう。

彼女は変わっていた。

 

変わり者揃いの鴉天狗の中でも、トップクラスの変わり者、言わば変人である。

 

彼女は決して常識がないという訳では無い。

やってはいけない事というのはしっかりとわかっているし、天狗仲間に嫌われているという事もない。

むしろ好かれている方であろう。

 

彼女を変人たらしめているのは、そのあまりにも意味不明な新聞内容。

何事も否定から入り、明らかに正しいとされている事にも否定から入っている。

 

否定、批判、逆張り。

 

こんな事をやり続ける事に意味はあるのか。

間違いなくないと言えるだろう。

 

そんな新聞を作り続けている彼女の名は、『(すい)(ごう)(れん)(ころも)』。

彼女はこの天狗社会に、何をもたらしていくのか……。

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