幻想郷最大勢力、妖怪の山。
その名の通り、この山には大量の妖怪が住んでおり、人間たちからは畏怖の念を抱かれている。
この山の妖怪たちは仲間意識が強く、特に山の頂点に立つ天狗はその傾向が非常に強い。
天狗。
かつて妖怪の山を統べていた鬼に代わり、山の主となった種族である。
彼女らは非常に強力な妖怪だ。
妖怪としての妖力や身体能力、どれをとっても幻想郷トップクラスの妖怪だと言えるだろう。
そして、この天狗という妖怪は組織化されており、縦社会で成り立っている。
頂点には妖怪の山の主である天魔、次点には天狗たちの管理を行っている大天狗、それ以下には事務作業を主に担当している鼻高天狗、報道担当の鴉天狗、山の警備隊である白狼天狗、鴉天狗の新聞の印刷を担当している山伏天狗。
このように、彼女ら天狗は組織というものに身を置き、各々が得意な役割を担当して動いている。
実際、それは合理的であるし、これによって天狗という種族は長い間繁栄し続けてきた。
だが、組織に身を置くということは、行動に制限も出てくる。
自分の意思だけで動くというのが不可能になるのだ。
何をするにも背後には組織がいる。
そして超えてはいけない線を作られてしまう。
この線を超えてしまった天狗は山から追放されてしまうのだ。
先程も言ったが天狗という組織、種族は仲間意識が非常に強い。
もし仲間が一人傷つけられたとしたら、全員でその敵をリンチにするような集団だ。
そんな彼女ら天狗だからこそ、仲間の調和を乱す者には非常に厳しい。
この組織に適応できない者は、山を追い出される。
これが天狗の社会だ。
もちろん天狗社会のシステムに不満を持っている者もいる。
だが、だからと言ってこれといった行動を起こしたりするものは、一人としていない。
自分たちの組織の恐ろしさは、自分たちが一番知っているからだ。
故に、天狗たちはのんびりと暮らしている。
そうしていれば、自分に害が及ぶことも無いし、いつまでも山で暮らし続けることができるからだ。
妖怪としての強さを無理に見せつけたりはせずに、新聞大会を開いて仲間で楽しく生活していく。
これが妖怪の山の頂点、天狗の生き方だ。
”彼女”は、そんな天狗の一員の鴉天狗であった。
彼女を一言で表すとするなら、そう。
”変わり者”。
これが一番相応しいだろう。
彼女は変わっていた。
変わり者揃いの鴉天狗の中でも、トップクラスの変わり者、言わば変人である。
彼女は決して常識がないという訳では無い。
やってはいけない事というのはしっかりとわかっているし、天狗仲間に嫌われているという事もない。
むしろ好かれている方であろう。
彼女を変人たらしめているのは、そのあまりにも意味不明な新聞内容。
何事も否定から入り、明らかに正しいとされている事にも否定から入っている。
否定、批判、逆張り。
こんな事をやり続ける事に意味はあるのか。
間違いなくないと言えるだろう。
そんな新聞を作り続けている彼女の名は、『
彼女はこの天狗社会に、何をもたらしていくのか……。