恋のカケ❌チガイ   作:生き残れ戦線

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第九話

「おい起きろ!」

 

誰かの罵声で目を覚ます。

意識が一気に覚醒していく。

どうやら寝てしまっていたようだ。

少しずつ思い出す。

そういえば誘拐されたんだ。いきなりバンに連れ込まれたと思ったら薬をかがされたのかそこから先の記憶がない。迂闊。セキトあくびを一つしてキョロキョロと辺りを見渡す。

 

どうやら俺が居るのは工場跡地のようだ。

使われなくなって久しいのか古ぼけている。

中央には恐らく主犯と思われる男達がいた。

赤兎が眉をひそめる。

 

異様な光景だった。何故か男達は仲間をリンチにしているのだ。

三人の少年達がボコボコにされている。

というかシュン、ナオヤ、コウキだった。

シュンを除いて固い地面に倒れこんでしまっている。酷い状態だ。死にかねない。

 

俺の方はというと、よし拘束はされていないな。

捕まった時に無理に暴れなかったのも功を奏したのか、あるいは素人だと思って油断したか。好都合だ。とりあえず俺の安全は確保された。

 

「おいどうした!立たんか!!」

「もう許して.....!」

 

ボロボロと涙を流して許しを乞うている。

人をパシリにしていたあのシュンが何も出来ないでいた。

高校生といっても相手が大人じゃ仕方ないか。

 

(あの様子だとまじで殺されかねないな)

 

あまり見ていて楽しいものでもない。

仕方なく赤兎は口を開いた。

 

「お前ら人を誘拐しといてなに仲間割れしてんだよ」

「!」

 

男達がこちらを見る。数は五人くらいだ。全員が醸し出す気配がかたぎのそれではない。やはりこいつらは。

 

「おう起きたんか」

「このガキも哀れなやっちゃのうこの鼻垂れどもがしくじったせいで人生台無しじゃあ!」

 

坊主頭の男がそう言うとまたシュンに蹴りを入れる。

鋭い一撃が鳩尾にはいる。悶絶し顔が真っ青になる。

 

「どうしてくれんじゃあ?娘一人攫ってこれんようじゃあ、もうお前らに用はないぞ」

「......すんませんすんません、もう一度チャンス下さい次は必ず」

「うっさいわ!黙っとれ!」

 

軽々しく頭部を蹴られて地面を転がる。

気絶したのか起き上がる気配はない。

死んでいてもおかしくない攻撃にさしもの赤兎も少しだけ同情する。

成程、あいつらの立場が少しだけ分かった気がする。

 

俺を誘拐した実行犯はシュン達だな。後ろの奴らが指示役か。

あいつらの口ぶりからして本来の目的は篠花さんの誘拐だろう。

俺が助けたせいで彼らの計画は失敗した。

リンチにあっているのは失敗の責任を負ってのもの。

俺は巻き込まれただけか。

 

よかった。それなら篠花さんは無事だな。

屋上でシュンの話を聞いた時から、こうなる事を想定し動いていて良かった。まさか当日に来るとは思わなかったが決着をつけるのは早い方が良いだろう。俺としても望むところだ。

 

「それで、いい加減お前らの正体を教えてくんねーかな」

「....このガキいい度胸しとるな」

「俺達が何者かって?知ったら後悔するでーギャハハハハ!」

「——うっさいわハゲ」

 

坊主頭の笑い声がピタリとやむ。何を言われたかを理解して徐々に顔が怒りで赤らむ。茹でだこだ。

 

「なめた口きいてんじゃねえぞガキが殺すぞ!!」

「分かったって、そういう恫喝は俺には効かないから早く教えてくれ」

「こいつ.....マジで殺すっ」

 

かなりの迫力だ。だが赤兎は奴らのやり口を知っているのか大して動じていない。むしろ早く進めろとばかりに催促している。

呆れた奴だ。この状況を分からない訳ではないだろうに。

男達はああそうかと赤兎を憐みのこもった目で見る。

こいつはもうとっくに恐怖でどうにかなってしまったのだ。

そりゃそうだ誘拐なんて死ぬほど怖い思いをしたのだ。頭のネジが外れても仕方ない。

 

「——やめろ彼にはまだ利用価値がある」

 

見ると一番奥で偉そうにソファーに座っている男がいる。

年齢は赤兎達に近い。

ジャラジャラと趣味の悪い指輪をしている。随分と羽振りが良いというか親の七光り感が凄い。

 

「初めまして私の名は名土(なづち)聖夜だ。恐れる事はない君と同じ学園の生徒だ」

 

こいつが黒幕か?

シュンを脅し手なづけ俺に差しむけたのは。

名土?どっかで聞いた事がある。

喉に小骨が刺さった様な感じだ。上手く思い出せない。

もっと聞き出そう。

 

「その先輩が俺に何の用ですか。いや俺じゃなく柊篠花にか」

「へえ.....分かるんだ。君なかなか良いね。話が早い、そう我々の狙いは彼女だ、正しくは柊の人間が欲しかった戦争するための道具としてね。つまり僕らは——ヤクザだ」

「若!かたぎに俺達の事を教えるのはどうかと」

「いいじゃないか彼には協力してもらうんだ、こっちの事情を教えておくべきだろう」

 

男達もそれ以上は言えないのか、へいと頷いた。

そんな事よりも.....やはりヤクザか。薄々そうじゃないかと思っていた。

だが戦争だと?何をする気だこいつら。

 

「名土組なんて聞いた事がない」

「.....小さい事務所だからね、だがこれから巨大になる私の力でね!」

「......それで何で柊と戦争なんて話になるんだ?」

「それこそが私が飛躍する為に必要なものだからさ、まずは名土を傘下に敷く親を超えなければならないからね!この町一帯を支配するあの大川組を!!」

 

赤兎の目が点になる。思ってもみなかった事を聞いたという反応だ。

 

「.....大川組?」

「そうだ君も名前ぐらいは知っているだろう尾張市を二分する勢力の片割れ、それが大川組だ」

 

知ってるさ。大川組の事は誰よりも俺が。

つーか、え?名土ってあの名土か?

喉の奥に引っかかっていた小骨の正体が分かった。

赤兎は知っていた。こいつらを最初から。

 

「灯台下暗しっつーか.....だったら初めから.....親父は何で?」

「何をぶつぶつと言っているんだい?」

「.....分かった。よーく分かったよあんた達の事が」

「そうかい!それで協力というのが、あの女を連れ出してきてほしいんだよ」

「——やるわけねーだろ馬鹿か」

「な.....っ!?」

 

あんまりな返答に聖夜の顔が固まる。

そんな事を言ってきた馬鹿は今までいなかった。なめた口を聞いて来た奴らは全員。

 

「よし殺せ」

名土組の組員が顔を見合わせニヤリと笑みを浮かべる。

「いいんですかい」

「ああ、私は馬鹿は嫌いだ、こんな状況で断るなんて殺してくださいと言っているようなものだ。だったらお望みどおりにしてやろうじゃないか」

「そういう事だ残念じゃったの、もう少し若に従順なら命までは助かっただろうに」

「一つだけ言っておく俺に手を出したら大川組が黙っちゃいねえぞ」

 

その言葉に組員たちが黙りこみ、そして爆笑する。

 

「わははは!面白い事言うじゃねえか!!」

「そうだな、そうだな大川組が黙っちゃいないな!」

「変わった命乞いの仕方だな」

 

にじり寄って来る。

その眼には愉悦の感情を宿して。

今の俺はかたぎにしか見えないはずだ。それでも関係ないというならこいつらはくずだ。だったら俺も手加減する必要はないよな。

 

ゆっくりと赤兎が立ち上がり足に力を込める。

一気に地面を蹴ろうとした、その時——

 

「そこまでよ!弱気をくじく不届き者達!」

 

の勇ましい声が。あたりを見渡しその声の主を探す。

資材置き場の上に誰かがいた。

その姿を見て赤兎は首を傾げる。

その少女は動きやすい恰好をしていた。

それだけならいいが顔には何故か面をしていた。鷹の顔をしたヒーローの面だ。

 

「お天道様を騙せてもこの鷹の目は誤魔化せない!悪のあるところに正義あり!鳥人戦隊バードレンジャーここに参上!!」

 

......いや誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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