恋のカケ❌チガイ   作:生き残れ戦線

3 / 11
第一章スクールカースト編
第一話


入学式という学生時代最大の花道を人生最低の気分で歩いた赤兎は教室の前に着いた。

 

扉の前で項垂れる。

.....何をしているんだろうな。

何で俺は告白が成功すると思っちまったんだ。

あれじゃ成功するわけがないだろうに。

舞い上がっちまったんだ。彼女の姿を見て。

自分でもよく分からないが運命を感じていた。

 

こんなはずじゃなかった。

俺は自分の運命を信じちまった。

その結果がこれだ。

取り返しがつかない事をしてしまった。

穴があったら入りたいよ。

 

だけど俺の学校生活は始まったばかりだ。

こんな所で躓いていられないんだ。

諦めたくない。

 

さっきは醜態を晒したが少しでも赤兎は気を取り直そうとしていた。

まだ心はヘビィだが、そうは言ってられない。

今ここから新しい学校生活が始まるのだ。

もうすごく悲惨な目に逢っているが改めて赤兎は教室のドアを開けた。

シンと静まり返る教室。

 

途端に視線が刺さる刺さる。

気のせいだろうか誰も彼もが好奇に満ちた視線で見ている気がするのは。

いや気のせいではない。

「あの子じゃない?」とか「あいつが篠花さんに告白した.....」だとかのひそひそ話が聞こえてくる。

 

きっと先程の事が既に知れ渡っているのだろう。

いったいどんな情報が飛び交っていたのだろうか。

嫌な予感しかしない。

興味はあるがとりあえず自分の席を探した。

幸いと言うべきか一番後ろの窓際の席だ。

 

着席した途端にいきなり前の席の男子生徒が振り返って来た。

目には何故か尊敬の輝きがあった。

 

「おいお前だろさっきの告白騒ぎの特待生って」

「.....そうだけど?」

「凄いなお前!もうお前の話で持ちきりだぞやったな!」

 

何がやったななのか知らないが、やはり情報は既に知れ渡っているようだ。

この短時間でよくもまあと感心する。

 

「お前どこから来たの?出身は?」

「出身は尾張市だよ隣町から来た」

「へえ意外と近いな何でこの高校に来たんだ、しかも特待生枠で」

「待ってくれ質問ばかりで僕は君の名前すら知らないんだ」

「おっとそうだな俺の名前は荒戸竜門」

「僕は更木赤兎だよろしく、この学校に来た理由は.....」

 

矢継ぎ早に質問してくる生徒は竜門と言った。

スポーツをやっているのか短髪の体育会系だ。目鼻立ちが整っている。モテるだろうな、素直にそう思う容姿をしている。そんな竜門はニヤニヤと笑みを浮かべて言った。

 

「いやみなまで言うな分かってるって姫に告白するために来たんだろう?」

「姫....?誰の事を言ってんだ」

「おいおいこの学校で姫と言ったら柊篠花に決まってるだろ。そんなの中等科からの決まりだぞ。......おっとそうかお前は特待生だったな。それなら知らないのも無理はない」

 

そう言うと竜門は学校全体を指差すように言った。

 

「何を隠そう柊篠花はこの篠芽柊学園の理事長の孫娘なんだよ、だから小等科からの馴染はみんな彼女の事を姫と呼んでいるわけだ、どうだ恐れ入ったか」

「そうなのか知らなかった」

「......本当に素性を知らずに告白したのかよ」

 

不思議な生き物を見る様な目で竜門は俺を見る。

確かに素性も知らず告白するなんて変な話だ。

だけど仕方ない。

 

「一目惚れだったんだ」

 

竜門がポカンとする。

その言葉にクラス全体がうごめいた。

女子はキャーっと歓喜の声を上げ男子は恋敵を見る様な目で見てくる。反応は綺麗に分かれた。竜門も面食らった顔をしている。そして苦笑すると不穏な事を俺に向かって言った。

 

「そうか、まあこれから大変だと思うけど頑張れよ」

 

それはどういう意味だ、と問いかけようとするより先に担任が教室に入って来て、最初のホームルームが始まった。

 

 

 

 

 

一時限目が終わり担任が教室を出たと共に、今度は大勢の生徒が赤兎の周りに集まって来た。

 

皆一様にして面白い玩具を見つけたような目をしている。

明らかに嫌な予感が的中した。

次から次へと質問攻めにあった。

量と質はさっきの比ではない。

あまりの数に目を回した程だ。

ようやく理解した。先程の竜門の言葉の意味を。

こうなる事を予見していたのだ。

 

解放されたのは二時限目のチャイムが鳴ってからだった。

赤兎は机に突っ伏した。

 

はあーーーーやってられませんわ。

こちとら傷心中やぞ。それなのにずけずけと入り込んできやがって。

そっとしてくれ。

質問中どこかに消えていた竜門が前の席に戻って来た。

疲弊した様子の俺を見て苦笑。

 

「その様子だとかなり聞かれたみたいだな」

「もうみんな俺の好物から何まで知ってるよ、住所まで特定されるかと思ったわ」

「仕方ないさ、ここにいるのは昔馴染みばかりだからな新顔は珍しいんだよ、パンツの色まで聞かれなかっただけ良かったんじゃないか?」

 

うげ、そんな事を聞く奴がいるのかよ。

知ってどうすんだそんな情報。

身内ノリで悪いなと竜門は言った。

直ぐに慣れるさと輝く笑顔で。

.....こいつじゃないよな?

言っておくが俺にそんな趣味はないぞ。

 

赤兎はこの学校に早く慣れるべきか一抹の不安を感じた。

 

しかし不安とは裏腹に評判通り学校自体のレベルは高かった。

教室は綺麗だし授業内容も分かりやすい。

あれから無遠慮に聞いて来る生徒もいなかった。

これなら直ぐに溶け込めるかもしれない。

 

.....そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

「——お前今日から俺達の友達兼パシリな」

「よろしくねー赤兎くーん」

 

気づいたらガラの悪い生徒に囲まれていて。

なぜかパシリにされていました。

一体何が起きたのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。