【REBORN!】碧棺左馬刻が並盛中学校で教師を始める話。   作:根住

1 / 1
「_______...あ?」

その一文字しか出なかった。後ろから狂ったような怒気を含んだ声でサマトキィと叫ばれて、呼ばれて、イラつきながら振り返ったらもう声の主は眼前にいて。

ちょっとびっくりしてハグするくらい近くに来ていた男の顔を確認しようと視線を下にずらすと腹に一本ナイフが刺さっていた。痛みはない。ついに復讐を終えたと言わんばかりの男は顔を真っ赤にしてふーふー言いながらナイフから手を放し、嬉しそうには見えないその顔であ、あ、と俺とおんなじ一文字しか口から出てこない様子。

どろりと液体が腹から垂れていく。手元が震えて覚束なかったのか変に力が入って刺さったナイフは刺さってからねじられていて傷口が刺突された時よりもやべぇ感じに広がってしまっていて出血量が増えてしまっている。男の興奮しきった顔的には殺しに慣れていてやった訳ではなさそうである。なんにしても最適解だ、クソ。


「あー・・・その、なんだ。気ぃ済んだか」

「あ、あぁ、違、ぉれ、俺のせいじゃ、違う、ごめんなさい、お前のせい、じゃなくて、ごめんなさい、」

「ああオレのせいだな、職業柄よくあるんだわ。マ、捕まる前に逃げとけ。落とし前つけてぇんなら事務所の場所でも調べて指でも詰めてこい」


そんなことしなくとも監視カメラから普通に殺人犯として捕まるだろうが、人間と言うのは俺含めて感情が理性とか現実的問題とかこれからの人生とか全部すっぽかして相手ぶん殴ったり怒鳴ったり刺してしまったりする馬鹿が沢山いるのは身をもって知っているのでそんなにこの男を恨んではいない。俺だってナメた態度取った立場を理解していないクソバカウンコ借金爆増後ナシ男とか普通にぶん殴ったことあるし。


「んじゃあな、自首してぇならついでに救急車でも呼んでくれや...ってもういねぇか」


俺の言葉が最後まで吐かれる前にウワァだとか叫んで刺した男は足をもつれさせながら逃げていった。その間も腹からはでろでろどろどろ血は流れ続けている。クソ、結構オキニのアロハだったんだがなぁ。血の染みって確か普通の洗剤じゃあ落ちないが大根おろしが効くんだっけか。そんなことを考えている俺の頭はいやに冷静である。だってもうしょうがねぇじゃんね、と腹抱えてスマホ出してどうしよっかなといった具合。怪我なんて慣れているがここまで痛みがないとアドレナリンが以上レベルで分泌されてんのかな、アこれ死ぬやつか?と察しまでついてきてしまっている。

あーこれやべぇな、まだ親父に返してねぇ恩結構あンのにな、センセーに一報電話で言っとくか?リオーと銃兎とかに一応連絡しとくか。ライムでいいか?刻んどくか辞世のリリック。とりあえず手にしたスマホをやっとこさ操作して酔っぱらったテンションで。o'.まっとり.'o。とかいう名前にしたグループにすいすいメッセージを入れる。「やべぇ刺されたわ」「ねじられたから出血やべぇ」「後頼むわ」と三つくらい雑に送信するとすぐに「救急車呼べ馬鹿」「今どこだPCで向かうか」「まず場所を伝えろ動くなよ」などと兎のアイコンから次々とメッセージが来る。リオーは野営地で夕飯を作っているのか、そもそも野営地にはWi-Fi飛んでないのか既読もつかない。


「筋モンが救急車なんざ乗っていいもんなのか?」


こんな所で悩む辺り失血で頭が回っていないんだろうな、と思いはするものの救急車の番号すら思い出せないのでとりあえず夜中の誰もいない横浜の道の端によろよろ寄って座り込み、分からない番号を首ひねって思い出す時間もないので電話帳からセンセーという名前で登録してある番号に電話をかける。数回のコールの後結構早く相手は出た。


「・・・はい、神宮寺です」

「あ、センセー?俺だ。」

「おや。君からかけてくるだなんて、珍しいね」

「イヤちょっとな、刺されちまってさ」

「ハ????????」


困惑した声が返ってきた。そらそうだ、俺だってこんな電話貰ったらそんな反応する。考えてもみろ、電話口から「俺今刺されてさぁ」とか世間話感覚で言われたらそりゃあ脳バグるわ。


「ちょ、今どこだい君、今すぐこっちからでも救急車呼ぶから」

「ヨコハマディビジョンのー・・・何通りだっけかココ」

「既に思考能力が落ちてきていますね、血ででもいいから119番をメモして電話をかけなさい」

「あぁ救急って119番か・・・」

「位置情報もオンにしておきなさい、勝手に居場所を見つけてくれますから」


それじゃあ電話なさい、とさっさとセンセーは電話を切る。早くしろと促すためだろう。しっかり言われた通り腹から垂れる血で地面に119と書きそれを見ながら位置情報のボタンもぽちっと入れて電話をする。今度は救急ですか、消防ですか、という声が聞こえた。ア、救急です、刺されました、場所分かんねぇから位置情報探知してくれ、と伝えるとじっとしていてください、ナイフは抜かずにそのままにして下さい、という案内と手配する旨を伝えられる。探知し続けますので電話は切らないでくださいとも。


「あー・・・意識遠くなってきてんだけど寝ていいか」

「電話を繋いだまま口元に置いてください、呼吸音で状態を確認します」

「分ぁった」


呂律はあんまり回らなくなっているがそのまま冷たいコンクリートの上に寝そべり、口元にスマホを置きそのまま目をつむる。なんとなく、このまま死にそうだな、という直感を無視してそのまま意識を手放す。


最後に浮かんだ言葉は、意外と悪い人生でもなかったな、なんてガラにもねぇ言葉だった。


普通の序章

「・・・んあ?」

 

 

ぱちっと目を覚ます。まさか本当に見知らぬ天上だ、なんて感想が出てくるとは思ってなかったな。いや嘘だわ、何回かしたことあったわ。その度に弟分に泣かれて参ってたンだったわ。

よいしょと体を起こすと口に装着されていた酸素マスクが膝の上に転がった。右腕には点滴のチューブが針で繋がっており、しっかり病院に運ばれたことがぱっと見だけで理解できる。頭には包帯が巻かれており、しかし腹にはなんにも巻かれていない。その代わり足や肘には巻かれていた。ガラにもねぇ事最後に思った癖に案外死ななかったな、とは思うものの何か違和感。アレ、オレ腹刺されてなかったか?

 

 

「あー・・・とりあえず押しとくか」

 

 

まぁ状況は後から医者にでも聞きゃあいいか、とナースコールのボタンを探し押す。するとナースセンターにいる看護士がどうされましたかとスピーカーから聞いてくる。起きたわ、と伝えると焦ったようにお待ちくださいと返される。多分見舞いに来た誰かだとでも思ったンかな、と特に気にも留めず大人しく待つ。しばらくするとばたばたと慌ただしい足音がして、がらっと勢いよく扉が開きアオヒツギさんと大声で呼ばれる。そういえばココ個室じゃねえか、と今更気が付く。まだ起きたばかりでそんなに意識がはっきりしてないっぽいなこりゃ。

 

 

「あぁ良かった、最悪目を覚まさないかもしれなかったんですよ。どうして怪我をしているか覚えていますか」

 

「あぁ、奴の顔も覚えてるぜ」

 

「奴、ということは爆破事件の犯人ですか?良かった、警察もまだ追いかけている状況でして・・・」

 

「ハ?」

 

 

間抜けな声が出た。コイツ今なんつった、爆破事件だ?頭と手足に包帯があるのはつまり間抜けにも吹っ飛ばされて頭から落ち更に転がったってか。そうかそうか、しっかしオレは刺された事実はハッキリと覚えているんだが。まさか刺された後にしばらく入院してその後今度は爆破で消されかけて頭打ってすっぽり記憶が抜けている、とかいう状況だったりするのか。正直経験がないと言えば嘘になる。一回ポカやらかして鉛弾腹に抱えた時も一命をとりとめたのが奴さんにバレて今度は後ろから頭殴られて一日だけ記憶が丸々消えた事がある。

 

 

「・・・あー先生。一応確認で聞くんだが、オレ一回腹刺されて入院しなかったか」

 

「そんなカルテは今のところ確認してませんが・・・まさか記憶の混濁が?やはり頭を強く打っていましたから・・・名前は言えますか?」

 

「アオヒツギサマトキ」

 

「ご職業は」

 

「自由業」

 

「あぁやっぱり記憶が混濁していますね・・・」

 

「あ?」

 

 

自由業とは言ったもののヤクザで職業登録はできないので法律的には無職である。確定申告もなにも大体がアシがついてしまうので無職である方が都合は良いのだがポイントカードなどで無職などと書くのは流石にちょっぴり恥ずかしいので流石に自営業などと書いてはいるが。だから少なくとも、

 

 

「碧棺さん、貴方は並盛中学校の体育教師です。」

 

 

明らかにそれはねぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でだ。何回か質疑応答を繰り返して現状を整理したんだが、どうにもやはり消化がしきれない。

 

まず並盛町ってドコだよ。少なくともヨコハマディビジョンには存在した覚えがねぇ。と思い詳しく聞いてみると今は懐かしい県とかいう名前が帰ってきた。ハ?中央区は?言ノ葉党は?合歓は?と情けねぇ馬鹿面を晒して言葉を飲み込んで、今年は何年だと聞けばスマホもねぇ時代で今度こそハ?とかいうクソ情けねぇ声が出た。オイオイオイ、流石に医者がドッキリなんて仕掛けたりしねぇだろどういうことだよ思いはするもののどうしても信じられず、新聞を持ってきてもらう。

 

 

「・・・マジかよ」

 

 

本当に都道府県でディビジョンが区切られてた頃の年が書いてあるし、発行元は並盛町支社とも書いてある。なんなら首相の顔も名前も何もかも違うし、つーか男だし、テキトーに過去の奴持ってきてるかと思ったら思い切り中学校教師の男性が爆発に巻き込まれ重傷という記事がありアなるほどこれオレだな、と物事を理解した猿みたいなひらめき顔をする。

ちなみにニュースとかの軽傷が全治一か月未満、重症が全治一か月以上、重体が生死をさ迷ってるレベルでやべぇ状態を指す。何かを強く打ちは原形をとどめてねぇ場合である。

 

 

「えー、先生。オレ記憶混濁してるっぽいわ。ちょっと個人情報とか教えてくれ」

 

「目を覚ます前とまるっきり人格が違うようだ・・・これからの生活もありますし、構いませんがねぇ」

 

 

ここまで確認して現状を把握できないほど死線を潜っちゃあいないので大体察しがついてきた。違法マイクをオレを刺したおっさんが持っていたらまずナイフなんて持ってねぇだろうから違法マイクでオレが幻覚とか認識異常を持っている線はない。ということはだ、あのまま救急車が間に合って今入院中であり、目を覚ましていないオレが見ている夢の中であるということだ。言ノ葉党が政権を樹立する前に焦がれているこのオレが昔にタイムスリップしたという夢を見ていてもなんらおかしくはない。恐らくジュートあたりに話したら馬鹿にされるが。あとイチローの野郎も。

 

マァつまりは現実の腹の怪我が治るまでしっかり寝て休みゃあいいので夢ン中でのオレの設定を遵守しつつ好きに生きりゃ問題はない。結構な致命傷っぽかったししっかり夢を見るほどに目を覚ましてねぇんだったら現実で一か月は眠ってるだろ、暇潰しにゃあ丁度いいわ。そう頭ン中で結論を出して目の前のオレの脳内医者に設定を聞き出す。

 

夢先生が言うにはオレ、というか夢碧棺左馬刻はちょっぴり優しいこの町の保健体育教師であり、割と生徒に慕われているそうな。担当クラスは持っておらず副担任。部活の顧問はしておらず、妹と出かけている様子を生徒含め夢先生はよく見かけているようだ。

ホントか?それ。怖がられてて脅されて好きな先生ランキングに無理やり割り込んでるだけじゃね?その言ってる生徒達顔引きつってんじゃね?合歓がまだ一緒にいるのは安心だが、そういや年代的にまだ一緒に住んでいる頃である。そりゃあ一緒に決まっているし、まずオレの夢なんだから一緒にいたいという希望はそりゃあ叶ってるに決まっているわな。

 

 

「ほーん、先生とオレは知り合いだった・・・んスか?」

 

「今更とってつけたように敬語なんて使わなくてもいいですよ。えぇ、知り合いと言っても担当医というくらいですがね」

 

「なるほど」

 

「そうそう、起きましたから職場である学校にも連絡しておきますからね」

 

 

このままじゃあ法律上どころか実質無職になるかもしれねぇ。教師ってどうやンだ。中学の内容だし体育だしそこまでできねェ訳じゃあねェだろうがどうやンだ教師。簡単に体の動きやら健康状態を見て点滴針抜いたりして検診をしてもらう。特に問題はないそうで明日退院できるそうだ。そもそも爆破事件も俺が気絶した前日にあったそうで現在時刻は午前八時。そんなに長い間気絶していた訳でもないし筋力が衰えている訳でもない。ので、今日は念のため入院する程度だ。つまりあと丸一日暇という事だ。時間が潰せるものと言えば先程もらった新聞くらいしかない。

 

淡路卓志(あわじたかゆき)と名乗ったこの医者はでは大人しくしててくださいね、と言い残して合歓と職場に連絡を入れに行った。そういや若い頃気絶して病院送りになった時も最初に連絡着たのは当時の兄貴だったなぁと思い出す。その後にまだ一緒にいた合歓、んで次にセンセーとイチローだったな。乱数だけ何故かお見舞いどころか連絡すら寄越さなかったな、この点だけはイチローのクソのがマシだったなと変な思い出を記憶の隅から引っ張り出してしまった。

 

 

「はぁ」

 

 

暇だな、と静かになった病室でぼんやりと頭の後ろに腕を組んでみる。ここから丸一日だぞ、長いわ暇な時間が。とりあえず新聞でも読むか、と手を伸ばしたところなにやらもごもごと扉の外から何かが聞こえてきた。誰かの話し声と足音だ。複数人の声で一人は高く、一人は少年らしい声で、更に一人同じような少年の声が聞こえる。扉から距離が空いてるからかはっきりとは聞き取れない。

 

 

「どわっ!?ちょ、なにすんだよリボーン!」

 

「オメーがちんたらしてるからだろーが」

 

「じゅ、10代目!なんて男らしい入室だ・・・!」

 

「ア?」

 

 

がらりと大胆に入ってきたのは二人の少年と赤ん坊だった。赤ん坊の癖にびしっと黒シーツにハットでめかし込んだチビは帽子に緑色のカメレオンが乗っている。押されて入った少年はなんというか、爆発してんな頭、といった感じ。最後の感極まった少年はハッキリ言って不良少年と言って差し支えない風体である。全員小さいしもしかしたら元教え子とその弟なのかな、くらいに思ってとりあえず見守る。最悪今は点滴も外れているし暴れられても少しは対処できるだろう。

 

 

「あ、碧棺先生!起きてたんですね!」

 

 

よろけて転けそうになっていた爆発頭がこちらを見てはっと気が付く。こちらの名前を知っているという事は、えー、なんだっけ、並盛中学校だったっけか、の生徒なんだろう。以前体育を教えたことでもあったんだろうか。他二人もこちらの視線に気が付いたようで不良少年はウス、と声をかけ、赤ん坊はちゃおっすと独特な挨拶をした。

 

 

「あーすまねェがこちとら記憶がねェんだわ、自己紹介してくんねェか」

 

「えっ記憶が・・・?」

 

「ンだ覚えてねーのか」

 

「記憶喪失ってヤツだな。頭を強く打ったって言ってたが」

 

 

なるほど、この赤ん坊は頭が良いらしい。そういうことだと返すと困惑した顔ながらも改めて自己紹介をしてくれた。爆発頭は沢田綱吉、不良少年は渋々だったが獄寺隼人、ンでチビ介はリボーンと言うらしい。一人だけ西洋の血混じってンな、と思いつつこちらからも碧棺左馬刻だと伝える。俺からしたら初対面のガキ三匹なので違和感はないが向こうからしたらすさまじいだろう。何とも言えない顔を沢田はしていた。

 

 

「で、見舞いか?」

 

「あっ、はい・・・」

 

 

しょんぼりした顔で沢田はきちんと返事をする。なるほど、根は真面目だな。なんで獄寺不良少年とつるんでるのかは分からないが一緒にいるという事はパシリかなンかあってオトモダチになったかなんだろうが、なんというか、赤ん坊、気弱、不良といて視界の情報量が多い。もう一度すまねェなと言うととんでもないと返すあたり沢田はやはり不良とつるむタイプではなさそうだ。互いに何を言えばいいか分からなくなりガキ三匹と元教師らしい俺のいる病室がしんと静かになってしまった所で謎に跳躍力のあるリボーンが俺のベッドの上にある机に飛び乗った。いやジャンプ力強ェな。

 

 

「記憶がなくなったってワリには冷静だな」

 

「焦っても意味がねェからな」

 

「ちょ、リボーン急に何言ってんだよ、先生もすみません・・・」

 

「いや、賢いなコイツ。どっちかの弟か?」

 

「オレはツナのかてきょーだ」

 

「は?」

 

「コラ!」

 

 

かてきょーとかいうえらく昭和チックな呼び方に一瞬何のことだったか思い出せず、二、三秒してからやっとア家庭教師かと思い出した。俺使ったことねェぞその呼び方。そもそもツナって誰だ、と思っていると沢田の方がすみません弟じゃないんですけど、と言ったのでコッチかと閃く。綱吉だからツナか、縄の綱から急にうまそうになるなコイツ。つか思ったがどういう気持ちで付けたんだそんな名前。生類憐みの令でも発令しそうだなオイ。まぁ気弱そうだから動物は好きかもしれねェが。・・・チワワにもポメラニアンにも負けそうだな、コイツ。

 

 

「あ、そうだったこんなことしに来たワケじゃないんだった・・・!碧棺先生、あの、爆破事件のことなんですけど、その、」

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「すみませんでした!」

 

 

ベッドの前で綺麗に90°腰を曲げて突然謝る沢田とそれにつられてンのか合わせてンのか獄寺の方もすんませんっした、と軽く頭を下げた。いったい何のことか分からなかったので頭を上げさせて事情を聞くとなんと爆破事件の首謀者はコイツらだと言う。中学生が人吹っ飛ばすほどの爆発を起こすってむしろ才能だろ。かてきょーと名乗ったリボーンが止めたり注釈を入れない辺りきっと三人の中では犯人は自分たちで間違いないんだろう。

 

 

「あー、別にやったもんは構わねェ。なくなったモンは戻らねェしとやかく言うつもりもねェよ」

 

「でも、タイムカプセルはなかったんです。巻き込まないようにすればできたはずなんです」

 

「タイムカプセルが何か知らねェが、その歳で一人ブッ飛ばせりゃもはや天才だろ。その気になれば人ひとりブチのめせるんだぞって心意気がありゃあなんでもできるもんだ」

 

「・・・その気になれば、人ひとりブチのめせる」

 

「そうだ、ナマ言ってきた糞みてェな先輩もいざとなりゃブチのめせるって思ってればある程度心の余裕もできンだろ?そうすりゃ多少の頼み事も"まぁ雑魚の言う事だしな・・・"って聞いてやれンだろ。な?」

 

「もしかして雑魚のこと幼児か何かだと思ってる――!?」

 

 

でもなんだか心が軽くなりました、と少し晴れた顔を見せた沢田。こちらの様子を伺っていた獄寺もまるで見直したと言わんばかりのぽうっとした顔を見せている。コイツ実はさっきまで何で俺が、でもコイツが謝るって言うしくらいのスタンスだったなオイ。これで俺が下手に許さないとか言ってたらどうするつもりだったんだオイ。ちなみにタイムカプセルと言うのはどういうことなのかを聞くと根津先生とかいう屑が退学させない代わりに校庭から15年前のタイムカプセルを持ってこいと言われたらしい。根津が誰かは知らないしその前に突き落とそうとしたのも悪いとは思うが元の評判を聞いてみると東大卒だからって点数の低い生徒をいびるような奴だったらしく、マァどっちもどっちだなと思う。そんな彼のひっくい点数のテスト用紙が40年前のから出てきたらしい。まだ処分は検討中とのことだ。

 

 

「清々しいほどに屑だな。でも殺したらアシつくんだから控えとけよ、少年法があるとはいえお国にとんぼ返りかもしれねェぞ」

 

「ウス」

 

「ウスじゃねェ」

 

「ハイ!」

 

「よーしいい返事だ」

 

「(人殺しちゃいけない理由が物騒―!)」

 

 

ひえーっといった顔を隠しもしない沢田を無視しながらそろそろ帰ったらどうだ、と促す。少しぼんやりしていたとはいえそろそろ午前9時になる。こんな早くから人の病室に来るのも大概常識知らずだが素直に早起きだな、というくらいの感想しか抱かない。暇だったし丁度いい。が、そろそろ学生同士の時間も必要だろう。休みまで教師と顔を合わせたくないだろうしな。未だに教師という単語がしっくり来ないが。

 

 

「じゃあ、そろそろ行きます・・・お大事に」

 

「お前らも気ィ付けて帰れ」

 

「先公も気ィ付けろよ」

 

「左馬刻に様付けて呼べ」

 

「ハイハイサマトキサマさまときさま」

 

 

いい加減な感じはしたものの素直に帰っていく生徒二人は仲良く並んで歩いていく。その背中を見守って赤ん坊のリボーンはついていかなかった。ぼーっとその様子を見ながら赤ん坊ってどこからどこまでが赤ん坊だっけか、たっちできても赤ん坊だよな、でもしっかり歩いてるのは赤ん坊か?一歳児は赤ん坊か?どうだろう、もう合歓が赤ん坊だったころとか覚えてねェから線引きが分からない。このリボーンは果たしてどこら辺の部類何だろうか。

 

 

「・・・本当に記憶がねーのか?」

 

「あン?」

 

 

一人病室にちゃっかり残った赤ん坊は俺にそんなことを問いかける。なんとも賢くて聡い赤ん坊だ。机の上に乗った赤ん坊は真っすぐに俺を見やって離さない。じ、と見つめ返して十数秒。言う気がないことが分かったのか目を逸らし、邪魔したなと言ってぴょいっと窓に飛び移る。足すげぇな、いや体幹か?そのまま窓を開けてぴょいっとどこかへ行った。アレそういやここ何階だっけか。

 

 

「・・・うわ、」

 

 

ここ二階じゃねェか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。