儂はやつのいるとこまで地下を下っていった。
あれは地下でないと困るからな。
「あの…ゴブニュ様…。何故僕の母親を知っているのでしょうか?」
ベル・クラネル…。【白兎の脚】、史上最速のレコードホルダー…か。
「久しいな。あの時の坊主がここまで強くなるとはな。」
「はい!ゴブニュ様、あの時は励ましてくれてありがとうございます!」
「おにょ?ゴブニュ、ベル君と会っていたのかい?」
「はい、ゴブニュ様はオラリオへ来て最初に会ってくれた神様です。」
「うちは鍛冶系ファミリアだからな、坊主の希望と合わなかったんじゃ。」
「だったら、うちに来たらすぐにヘスティアを紹介してあげたのに。」
あの時は、たまたまホームにいたからよかったようなものだ。
ひと目であやつの子と分かったからこそ、儂が対応しなければならないと思った。
ゼウスと一緒かと思ったが、やつはオラリオへ入れないからな。
半年前、【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯、【アポロン・ファミリア】のホームの改築で、3回もベル・クラネルを見たが、本当によく似ている。
あやつがもし生きてたら溺愛するじゃろうな…。
…今回のフレイヤはやりすぎだ。
何故そこまでして【白兎の脚】を手に入れてたかったのかはわからぬがな。
ヘラの眷属の子とは知っておったのか?知ってたらあんな行動はせんかったろうに。
「ゴブニュ様?」
「ああ、すまぬな。…お主は母親によく似とる。それだけだ。」
「僕がお母さんに…?」
「はい、坊ちゃまはあの方によく似ています。目の色を除けばまさに瓜二つです。」
そうか…、メイはゼウスのお供であやつのファミリアへ出入りしとったから、会っていたのは不思議ではないな。
目の色はゼウスんとこのサポーター譲りか…。
何度も思ったが、よくヘラんとこの子に手を出せたものだ…。
「メイ、お母さんはどんな人だったの?」
「私は両手で数えるほど多く会っていませんが…、非常に優しい方であったのは間違いありません。」
確かに、ヘラはあやつを溺愛し絶対に外へ出さなかったからの。
あやつはあのファミリアの中で、異端で善心でもあったからのう…。
この少年と同じく、真っ白で不思議な子じゃった…。
病に侵されていなければ、双子の姉の【静寂】と共にオラリオを代表する、よき冒険者となってたであろうに…。
惜しい子じゃった…。いかんな、感傷に浸ってしまった。
む…着いたか…、あやつを封印している部屋に…。
「着いたぞ、あそこじゃ」
とっとと早く持っていってほしいものじゃ、正直この危険物は一時も置きたくはないからのう。
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リン、リン。
やはり鈴の音が聞こえる。僕の英雄願望と同じ鈴の音が。
けど、少し違う。この音は暖かい感じがする。
メイの時と同じ、懐かしみのある音が。
「あれ・・・ですか」
「まるで棺桶だな…。」「棺桶じゃな…。」
「彼女らしいよ…。」「しかも凶々しいわね…。」
「あのクソ野郎らしいです。」
本当に凶々しい…。吸血鬼が入ってもおかしくないくらい…。
骸骨…スパルトイ!?が多く貼り付けられている…。
…ほ、本物じゃないよね?本物っぽい…。
開けるのが怖くなってきた…。
「どれ、ちょっと…」「よさぬか!」
椿さんが近づこうとした途端、椿さんが炎にくるまれたぁぁぁ!
まだ触ってもいないよ!?
「あちちちちちぃぃぃぃ!なんじゃああ、この炎はぁぁぁ!」
「うわぁ…こっちもか…。」
「この棺桶の3メートル以内に近づこうとしたらああなるんじゃ。」
なにそれ、怖い!
「メイ君の時より凶悪じゃないか!」
「あの神らしいわね……。」
怖いけど、メイの時と同じく行かなければならない気がする…。
行かないと…めちゃくちゃ嫌な予感がする。
「お、おい…ベル…。大丈夫か…。」「大丈夫です、坊ちゃまなら。」
怖いけど、行かなきゃ…。
あれ…3メートル内に入ったのに椿さんのようにならない…。
メイの時より懐かしく…温かい気がする…。
「本当にあのファミリアの系譜を持っているんだね…。」
「しかも貴女のファミリアの眷属になるとはね…。神ながら運命を感じてしまうわね…。」
「ホントだよ…、あの子達の眷属の子がベル君とは誰も予想できないじゃないか…。」
神様とヘファイストス様がため息と同時に遠い目をしている。
…何だろう…複雑だ。
そうしている内に棺桶の前に立った。鈴の音が強くなっている。
"早く開けろ"とそう言っているように聞こえる。
「じ、じゃあ、行きますよ。えいっ」
メイの時と同じく棺桶に手のひらを当てた。
ゴゴゴゴゴ
棺桶が音と共に開いて、中には…。
「男性?」「執事か?」「執事じゃな。」
スーツを着たかっこいい白髪のお兄さんがいた。
「起きなさい。このクソ野郎が。」
メイがナイフをおじさんに投げつけていた。
というか、どこに持っていたの!?
「坊ちゃま、メイドの嗜みでございます。」
そうなの!?メイドってしゅごい…。
「いや、何度も言うがそんなわけないだろうが…。」
おじさんは目をつむったまま、そのナイフをすんなり指先で受け止めていた。
「メイ、相変わらず乱暴ですね。品もない。」
そう言って、眼をゆっくりと開けた。
オッドアイでかっこいい!
「貴方に言われたくないです。セバス。」
このかっこいいおじさんは、セバスさんと言うんだ…。
「メイ…何の用です。私を目覚めさせるのは【ヘラ・ファミリア】の眷属だけですが、貴方が開けるわけがありません。どんな手を使ったのですか?」
「残念ですが、私ではありません。こちらの方が開いたのです。」
【ヘラ・ファミリア】!?ヘルメス様の言っていた最強派閥の一つ!?
お母さん、すごい派閥だったんだ…。
「!?メ、メーテリアお嬢様!?いえ、男性…まさか…。」
おじさんは僕を見て、メーテリアと言った。
メーテリアって誰…?
「べ、ベル・クラネルです…。初めまして…。」
「…そうですか。貴方が…。これは失礼しました。セバスと言います。」
セバスさん、さっきまで殺すような目つきだったけど、僕を見てすぐ優しい目になった。
「セバス。この方の記憶を見てみなさい。そしたらわかります。」
メイ…セバスさんに対して素っ気ない…。仲悪いのかな…。
「では、失礼します。」
そういって、左手を僕の頭に当てた。
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