勇者視点です。
死んだはずのライラ姐さんが目の前にいるから、気が気でないでしょうね。
僕、いや僕たちはミスリルの檻の中にいる。
戦争遊戯の様子は、檻の中に別の神が作った『神の鏡』で見ている。
「………。」
「団長、すみません…。」
「フィン、すまない…。」
「ごめんなさい!私のせいで…。」
「レフィーヤのせいじゃないさ。あたしがパニクらなければ…。」
ライラ…の自爆攻撃によって脱落させられ、その爆発に巻き込まれティオネとアルガナも。
そして、間もなくレフィーヤとルルネ・ルーイが、【不冷】の魔法によって魔力爆発させてここへ来た。
…そして、ありえない人物を目の前にしている。
「無様だな。勇者サマよ。」
「ライラ…、何故君が生きているんだい?5年前に死んだはずじゃなかったのかい?」
「ああ、死んださ。この時代に来て生き返ったのさ。」
そんなのありえるわけがない。生き残っていた?
いや、生き残ってて潜めていた?
潜めていたなら、何故出てこなかった?
「あ、ありえない!何でだ!何で生きてんだよ!【狡鼠】!」
「うるせえぞ、【泥犬】。おめえ、自分の心配しとけよ。ここから出たら地獄が待っているぜ?」
「じ、地獄?」
「おめえ、あの兎のファンの賞金首にかけられてんぞ?グッズ100万ヴァリス分のな。」
「ひ、ひぃっ!……あの、レフィーヤ、その目やめてくれないか?怖いんだよ…。」
「む、むむむ。あのヒューマンのグッズ100万ヴァリス分とルルネさんとの縁…。どっちを選ぶべきか……。」
「レフィーヤ、あんた……。」
「む、ティオナとバーチェの決着がついたか。」
ティオナも負けたか…。
仕方がない。
今のバーチェ・カリフは僕も負けるかもしれない。
「【ロキ・ファミリア】の【大切断】、脱落!」
ドーン!
「はい、一人追加ですね。……これはバーチェさんのですね。カサンドラさん。」
「は、はい!」
【一度は拒みし天の光。浅ましき我が身を救う慈悲の腕。届かぬ我が言の葉の代わりに、哀れな輩を救え。陽光よ、願わくば破滅を退けよ】
【ソール・ライト】
「……うう。ああー!負けた!悔しー!何だよー!あんなの、あたしの知っているバーチェじゃない!」
「メイド服…あそこまで似合うとは思わなかったわ。ねえ、アルガナ?」
「(メイド服はともかく、あの戦い方…バーチェの奴、あのメイドから習得したのか?)私がいたとしても、今のバーチェには勝てんな。」
「ええ…私でも勝てないわね。今のバーチェには。」
そんなのどうでもいい。
「ライラ!何故君が生きているのか、答えろ!」
「はぁ…、ここまでとは思わなかったぜ。」
「ライラ!」
「………。」
パァン!
…?
僕は…ぶたれたのか?
「失望したぜ、勇者サマよ?」
「てめぇ!よくも団長を!」
「うるせえ!アバズレ共が!フィンをこんなにさせたのはおめえらじゃねえか!」
「「「!」」」
「特にてめぇだ!【怒蛇】!フィンがこうなってるとわかってんなら、止めるのがおめえの役目だろうが!」
「………っ!」
「見たくもなかったぜ、こんなになった勇者サマは。」
「…………。」
「なぁ、フィン?おめえの親指は何て言ってんだ?」
「…………。」
「答えろ!」
「…………。」
「フィン…。おめえの最大の失態はあの兎を敵に回したことだ。」
そうだ…。
ベル・クラネルに対して嫉妬してしまって、戦争遊戯を仕掛けてしまったのが始まりだ。
「フィン、あの兎はバグっている。神も世界もお手上げになるくらい、バグっている。」
「バ、バグっている…?」
「当たり前だろ?半年で第一級冒険者に至れるやつが、バグらないほうがおかしいだろ?どんな天才でも1つのレベルをあげるだけでも、数年かかるというのに、あの兎は数ヶ月でポンポン上げやがる。」
「そ、それはスキルか何かで…。」
「そんなスキルが発現するくらいバグってんだよ。あの兎は。」
「ライラ…君は、ベル・クラネルによって生き返ったのか?」
「生き返らせてもらったのは他のやつだがな、それ以上はトップシークレットさ。」
「だ、だが!そんなの反則だ!お前の名前は、私が手に入れた名簿なんかに乗ってない!」
!?
しまった!そういうことか!
「へっ、引っかかったな。【泥犬】よぉ?」
「え?」
「あたしたちの名簿は今日、ヘスティア様からヘルメス様に初めて渡したんだよ?」
「な…そんなの…嘘だ!」
「……掴まされたということだね?ライラ。」
「(少しは戻ってきたか)その通りさ。【ヘルメス・ファミリア】に【ロキ・ファミリア】と懇意の【泥犬】がいるように、こっち側にもいんだよ。なあ、【泥犬】?心当たりはねえか?」
「そ、そんなのいな……あ。ロー…リエ…。」
「正解さ。うちの大将であるバグ兎のファンクラブの会長がローリエさ。」
「ええええっ!あのローリエさんが会長!?」
「「え?そっち?」」
「要するに、僕らは踊らされたということだね?」
「そうさ。いつもの勇者サマならすぐに見破ったはずだぜ?」
そうだね。僕の失態だ。
はぁ…整理してみるか…。
ん…?
…ロイマン?「時間は有限」?
…バーチェ?メイド?
ま、まさか!?
彼らを解放するには、最強と最恐の眷属…いや系譜…。
そんな…はははは。
彼が…後継者だったのか…。
彼らが動いたなら、ここ数日の理解できないことが全てつながる!
だが、彼には…。
「ライラ。彼は、7年前のことを知っているのか?」
「へぇ…ようやく調子が戻ってきたじゃねえか。ああ知っているさ、最近だがな。」
「なら、この状況が一転すると世界の敵になるかもしれないよ?」
「それも織り込み済みさ。この戦争遊戯が始まる前に、アストレア様からな?」
「それだけでは…ああ、ファンクラブか…。」
「それだけじゃねえよ。デメテル様、善神の女神様を中心とした女神連合、そしてギルドもな?」
「(ロイマンをああ変えたのは彼らか)……僕は彼らに時間を与えすぎたか。」
「ああ、そうさ。と言っても、事は1週間前に全部終わっていたらしいがな。」
「ファンクラブは彼らの案なのか?」「「え!?」」
「ああ、そうさ。だが、あいつらにとってはどうでもよかったらしい。ここまでの結果となったのは予想以上らしい。あのローリエの才能だとさ。」
「そうか。はぁ…。だが、ベル・クラネルとオッタルのあの互角の戦いぶりは?」
「それもトップシークレットさ、と言っても大方予想付くだろ?」
「なるほど、スキルか…。ああ!クソ!僕のやっていたことは天に唾する行為だったか。」
「まぁ、そういうことさ。この短時間でここまで当てたことに、いい情報をやるよ?」
「何だい?これ以上のことはもう勘弁したいけどね。」
「まあ、そう言うなよ。…耳貸せ。」「「「あ!」」」
『何だい?』
『あの兎な…、【静寂】の甥だぜ?』
『な!何て恐ろしいことを…。まさかあそこにいる人物は…。』
『しかも、あの【静寂】がおめえらが想像できないくらい、兎を溺愛しているぜ?弱点である病も完治さ。当然、あの兎にいろいろとしたおめえらのことに対して、かなりお冠さ。』
『……逃げ道は?』
『大人しく傘下に降るしかねえよ。あたしらも大方の派閥もな。』
「…はぁ。彼らが動いていて時間もたっぷりあり、君たちが復活していて彼女もいる以上、もう勝ち目ゼロじゃないか…。」
親指の疼きがようやく収まった。
『ようやくわかったか?』という感じで。
先程までの自分が不甲斐ないよ。
……どうにもなれ、だ。
「ライラ、膝貸してくれ。」
「あん?…いいぜ。」
「だ、団長!それなら私が…「30分後に交代してやるから待て。」…約束よ。」
不貞寝してやる。
この戦いを最後まで見届けて、彼の勇姿を焼き付けてやる。
ようやく、フィンは本調子に戻りました。
気が付いたら、もう手遅れになっており「もう知るか!」と不貞寝しています。
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