白兎に遺された、最強と最恐の造られしもの   作:覇幻

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第26話 後輩、見直。

私はセシル。

正義の女神、アストレア様の眷属です。

 

今、私はセンパイ…リューセンパイの背中に担がれてオラリオへ向けて走っています。

目をつぶり耳を塞いでいます。アストレア様もです。

怖い怖い怖い!

 

「ようやく、オラリオまで後1日で着きます。今日はここで宿をとって休みましょう。」

「「は、はい…。」」

センパイ、息切れ1つもしてない…。

レベル5ってすごい…。

私達が暮らしていた家からオラリオまで1週間程かかるというくらいのに、たったの2日で?

センパイ…すごい!

 

「ここは…アグリスの町ですか。この間までいましたが、ちょうど隠れ処があったはずです。

そこで休みましょう。」

「リュー…?この間って?貴方、オラリオにいたはずよね?」

そうです。センパイはオラリオで、『豊穣の酒場』で働いていたはずです。

何故、アグリスの町にいたのでしょうか?

 

「……。食事が終わってから説明します。何故、アストレア様を急遽オラリオへ連れて行かなければならなかったのか、何故アグリスの町にいたのかを。」

「リュー…。」

「つまり、昨夜の話の続きということですね!」

「……………遺憾ながらそうなります……。」

センパイは苦虫を潰したような顔をしていた。

あーあー、駄目ですよ!キレイな顔が台無しです!

私は、話の続きが聞きたかった。

センパイの生きた証を知りたかった。

センパイの正義を知りたかった。

 

---------------

 

私はセンパイが嫌いだった、大嫌いだった。

アストレア様の正義を汚して多くの人を殺したからだ。

アストレア様は理由がある、と言ってくれたが、私は納得していない。

正義は殺すためにあるんじゃない!

 

先日、センパイが現れた。

センパイを見た時、すぐわかった。

この人は、正義を汚してなんかいない。

 

オラリオへ今すぐ行く、と聞いて激昂した。

久々に会ったというのに何だ!

アストレア様がずっと心配されて、貴方の無事を祈っていたというのに!

アストレア様が宥めていなかったら、襲いかかってたかもしれない。

今考えると、無謀なことをしたかもしれない…。

 

レベル1の私にとって、レベル4は強いと思っていた。

ただ、それだけだ。何らかの工夫をすれば倒せるのでは?と。

でも、違った。

センパイは最低限の荷物とアストレア様を担いで走ってたのに、

私はそのセンパイが米粒になるくらい引き離された。

降参してセンパイに仕方がなく、やむを得ず担がれ走った。

 

む  り。

 

勝てるわけがない。早々と白旗を上げた。

 

休憩して私が涼しいところで、胃の中身をリバースしてた時、

「リュー…、貴方、恋しているわね。」

アストレア様のそのお言葉を聞いて、瞬時で回復して駆けつけた。

センパイは恥ずかしがって、白を切ろうとしていたが明らかに嘘をついていた。

センパイがアストレア様の言う通り、正直者だと知った。

それなのに、何故正義を汚し、人を殺してきたのか、を知りたかった。

 

そしてセンパイから…【アストレア・ファミリア】のセンパイ達が死んでいった理由を知り、センパイが『復讐』に身を堕とざるを得なかったのを知った。

悲しかった、悔しかった、私がその場にいなかったことを。

私がセンパイの立場なら耐えられない。

絶対に後を追おうとするでしょう。

…けど、センパイは『復讐』に身を堕とし、闇派閥を壊滅した。

 

アストレア様の言う通りだった。

センパイは、高潔で気高いエルフだということを。

そのセンパイが、『復讐』に身を堕とす程の衝撃な出来事だったことに気づいた。

 

私は恥ずかしかった。

センパイに嫉妬していたことを。

正義を汚したセンパイを見下していたことを。

今なら、センパイをようやくセンパイと見ることができる。

 

---------------

 

食堂でセンパイとアストレア様と夕飯を食べていた。

「久々の外食で、リューと一緒なのは嬉しいわ。」

「アストレア様と再びこう一緒に食事ができる、とは夢にも思いませんでした。」

アストレア様とセンパイ、本当に嬉しそうだ。

 

「おい!聞いたか?あの【白兎の脚】がいる【ヘスティア・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の戦争遊戯が起きるってよ!」

「それだけじゃねえぞ!【ロキ・ファミリア】が【ヘスティア・ファミリア】へ戦争遊戯を仕掛けたらしいぞ!こりゃ、【白兎の脚】でも無理だろうよ。明らかに【ヘスティア・ファミリア】の負けだろ。賭けにならねーよ。」

あー、うるさいなー。静かにしてよー。

アストレア様とセンパイが楽しんでいるんだから。

 

「何だと!?【ロキ・ファミリア】までも!?どういうことだ!」

「あ?なんだ、てめえは?ひぃっ!」

「答えろ。どういうことかを聞いているんです。」

「セ、センパイ?」「リ、リュー?」

「し、知らねえよ!ただ、先程のオラリオからの連絡で、【ロキ・ファミリア】が【ヘスティア・ファミリア】に戦争遊戯を仕掛けてお互い合意したってよ。そ、それだけだよ。」

「…馬鹿な…。【フレイヤ・ファミリア】だけでなく【ロキ・ファミリア】までも!?」

センパイ、すごく動揺している…。

もしかして、センパイの彼氏がいるところって【ヘスティア・ファミリア】?

 

「も、もういいだろ!その小太刀を下げてくれよ!」

「…!すみません。これはお詫びとして酒代にしてください。」

「…あ、ああ。あんた、【ヘスティア・ファミリア】と縁があるのかい?なら、【白兎の脚】に伝えてくれよ。頑張れ、とよ。」

「わかりました。伝えましょう…。すみません、アストレア様、セシル。先に部屋へ戻ります…。」

センパイは青い顔をして部屋へ戻っていった。

 

「アストレア様…センパイの彼氏がいるところって…。」

「十中八九、【ヘスティア・ファミリア】でしょうね。恐らくリューが焦ってたのはこのことだわ…。5年前まではヘスティアは下界に降りてなかったから、最近でしょうね。」

「【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】って、オラリオの最強派閥ですよね?」

「…そうよ。でもどうして?【ヘスティア・ファミリア】に戦争遊戯を?」

アストレア様は考え込んでいた、その背景について。

 

「センパイ…あっ!センパイの彼氏って【白兎の脚】でしょうか?」

「ええ、そうね。その可能性が高いわね。兎人かしら?」

「おや、先程のねーちゃんの知り合いかい?【白兎の脚】について知らないのか?」

先程、センパイが脅していた冒険者だ。

 

「ええ、5年間田舎にいたので情報が入ってないの。久々に出たので知らないわ。」

「あー、そりゃ知らんわな。【白兎の脚】はヒューマンの男性だぜ、名前は…いけね忘れちまった。」

ヒューマンなのに白兎?変な人ですねー。

おっと、それをセンパイの前で言ったら、お仕置きされますね。

 

「そう…その子について教えてくれる?」

「ああ、いいぜ。酒代もらったからな。そいつはな…。」

【ヘスティア・ファミリア】の【白兎の脚】について教えてもらいました。

 

--------------

 

食事を終えて部屋へ戻るところです。

「規格外ね…その子。」

「半年間でレベル4ですか…。」

驚きました。センパイの彼氏が冒険者になってたった半年でレベル4…。

 

「私もオラリオに長くいたけど、そこまで早くレベル4になったことは聞いたことないわ。」

「よほど才能があるんでしょうね。」

才能次第ですものね…。はぁ…。

 

「リューは部屋に戻ったところかしら?」

「そうですね…。!?」

「セシル?どうしたの?」

開けようとした部屋の中から…、すすり泣きが聞こえます。

センパイ…。

 

「センパイが…泣いています。」

「…そう、セシル。部屋へ入りましょう。今、リューのそばにいてあげられるのは私たちしかいないわ。」

 

そうです!私たちはファミリアです。

助け合わなければならないのですから!




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