ふぅ…つい感情が高ぶってしまった。
「ねえ…、あのアルフィアが馴染んでいるわよ。」
「そうでございますねえ、真っ先に消すかと思いましたのに。」
『ねえ、春姫。あの女の人って怖いの?』
『(怖いのは確かですが、ウィーネ様に先入観を持たせてはいけませんね)いいえ、あの方はベル様のお義母様でございますよ。』
『え、そうなの!?挨拶に行かないと!』
『あ、今はレイ様の歌を聞いております。終わるまで待ちましょう。』
『はーい!』
サンジョウノ・春姫もウィーネを可愛がっているな。
ベル・クラネルの次に彼女がウィーネを気にかけただけであって、異端児の彼らとわけ隔てなく接しているな。
む…?ベル・クラネルと神ヘスティアか…。
「ベルくん…どうしたんだい。」
「神様…僕は間違っていないと改めて思ったんです。この光景を見て。」
「そうだね…今までではあり得ない光景だね。」
「ええ、僕は改めて決心しました。この光景を広げて…ウィーネたちと笑って暮らせる世界にしていきたいと。」
「……ベルくん、その道は遥かに遠い上に険しいよ?その覚悟はできているのかい?」
「神様、僕はこないだの戦争遊戯で宣言したんです。【最強最高の英雄】になると。」
「!…そうだね。」
「なら、そういう世界にするのも【最強最高の英雄】が成し遂げるべきじゃないかと。」
「……そうだね。キミならできるさ!」
「はい!」
…【最強最高の英雄】か…。
君がいなければ、ウィーネも異端児の彼らも【暴蛮者】たちの魔の手にかかっていただろう。
思えば、【暴蛮者】たちがいなければここまでの進展はなかったかもしれない。
それまでの犠牲は計り知れなかったがな。
死んでいった異端児の皆…、無事に転生して再会できることを祈っている…。
そもそも、神ヘスティアがベル・クラネルを眷属にしていなければ始まらなかったな。
いや、…元をたどれば…大神ゼウスがベル・クラネルを育児放棄したのがきっかけだが…。
あの大神、何をやっているのだ…。
「ベル様、どこにおられますか?ウィーネ様が呼んでいますよー。」
「ベルー!どこー!」
「あ、神様。春姫さんとウィーネが呼んでいます。」
「ボクも行くぞー!」
------------------------
「………。」
「どうしましたか?愚者。」
「メイか…。」
「この光景は美しいですね。」
「ああ…。私はこれを求めていたのだ…。」
私に眼があったら、間違いなく泣いていただろう…。
それほど、私は感動しているのだ。
む、ウィーネがサンジョウノ・春姫によって【静寂】へ紹介しているな。
…見たところ、悪くはなさそうだ。
【静寂】もウィーネを気に入ったようだな。
でないと、ベル・クラネルの好感度が下がるからな…。
「坊ちゃまがおられなかったら、この光景は見れませんでしたでしょうね。」
「ああ…。」
「……異端児はかつて私達【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が切り捨て、見捨てた方々です。」
「知っている…。私はその後に彼らと会ったのだ。」
「ええ。その彼らと親睦を結び、大きな一歩を踏み出したのが私達の系譜を持つ坊ちゃまとは皮肉ですね。」
そうだな。彼が【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の系譜を持つ者と知ってたら、異端児の皆と接触させただろうか?
いや、しないだろうな。彼らを切り捨てたファミリアの系譜を持つ者と知ってたら…。
ベル・クラネルが自らの系譜を知らなかったことが、幸運かもしれない。
そして……、彼らができなかったことを彼は成し遂げたのだ。
「そうそう、ザル坊が追加の料理を作っています。」
「は?もう十分だろう…。皆、もう休めているぞ。」
「いえ、彼らへの土産だそうです。後で持参して頂けますでしょうか?」
「!ああ、いいとも。彼らも喜ぶだろう。」
「…ザル坊もあの時切り捨てたことを未だに引きずっています。償いと言えないかもしれませんが。」
「…償いなら、彼が既にしているだろう。いや、十分にお釣りがくるぐらいのな。」
ベル・クラネルは、ダイダロス通りのあの場で【ロキ・ファミリア】の目の前でモンスターを庇ったのだ。そして彼らをダンジョンに返すために【ロキ・ファミリア】と敵対したのだ。
最強派閥の彼らをだ。
半年前にベル・クラネルがオラリオへやってきて、多くの出来事があった。
それを振り返ってみると、私と彼が会うのは運命だったのだろう。
「……彼がオラリオへやってくるのを私は待っていたかもしれない。いや、私が賢者の石を造り主神に破壊され、自らを不死の呪いにかけてオラリオへ流れ着いたのも、ベル・クラネルに会うためだったかもしれない。」
「……縁とは不思議なものです。私達のファミリアになかったものを坊ちゃまが持ち、坊ちゃまの元に縁が集結しつつあります。それに…貴女の魔法は坊ちゃまの『幸運』なしではできませんからね。」
「…そうだな。彼なら成し遂げるだろう、いや成し遂げるに違いない。ダンジョン制覇に黒竜討伐、そして彼らと手を結び暮らす世界を…。」
「ええ…。私達は坊ちゃまに全てを賭けています。貴女は?」
「言うまでもないだろう。私はとっくに全てを賭けている。異端児騒動…いや、神ヘルメスの試練を打ち破った彼にね。」
「そうですか…。…賢者、今の貴女がやることは何でしょうか?」
「無論、ベル・クラネルのために魔道具を造り続けることだ。それ以外にないだろう?」
「よろしくお願いします。賢者。」
ああ、そうとも。
異端児騒動を経て、800年も生きた私に全てを賭けると決めたのだ。
彼のために、これからも魔道具を造り続けよう。
それはきっと、彼の助けになるに違いない。
ベルくんの決意が改めて強くなりましたね!
愚者さんの求めていた光景を目の前にし、感激していますね。
そして、ベルくんの力になろうと更に決意しました!
感想・評価をいただけますと、嬉しいです!