この子に…メーテリアの愛息子にっ!
「(そうじゃ!儂偉いんじゃぞー!ぐべぇぇっ!)」
『この狒々爺!ベルへ教育悪いことをよくも散々と吹き込んだな!許さん!』
『アルフィア、止めなさい。貴方…後でお話があります。ええ、じっくりとたっぷりと。』
「(ひぃぃぃぃぃぃっ!)」
ふふふ、この子にどういうことを吹き込んだのかを全部聞かないとな。
…セバスに聞けばわかるだろう。
私の…【ヘラ・ファミリア】の系譜を持つなら記憶を全部読み取れるはずだ。
そう、くまなくな。
いかん。この子と話をしなければな。
一語一句聞き逃がせん。
「は、初めまして。お祖母ちゃん。ベル・クラネルと言います!」
ぐはっ!?
曇りなき目でそれを言われると、かなり心に突き刺さるな…。
あの人に長年育てられたのに、純真で礼儀正しすぎる…。
おのれ!アポロン、イシュタル、イケロスなどの邪神共め!
この子の純真な気持ちをよくも弄んだな!
イシュタルとイケロスは送還されてしまったが…アポロンはじっくりとやってやる!
エレボスめ!この子をよくも一人にさせてくれたな!
絶対に絶対に滅ぼしてやる!
塵一つも残さん!
いかんいかん。
この子から怯えた目で見られるのは御免被りたい。
「すまないね、私が…もっと早く正気に返っていたら…ベルを迎えにいっていたのに。」
「(うわ、ヘラじゃない。何だよ、その口調は。)」
『…誰だ?あいつは。』
『それは儂の台詞じゃ…。』
ヘスティア、その目で見られるのはやめてもらいたい。
この子が不審に思うだろうが。
ミアハ、ディアンケヒトもだ。
『信じられん…あれは本当に神ヘラなのか?』
『私は初めてお会いするのですが…、本来はどのような女神なのでしょうか?』
『アミッド…あれは本来のヘラではない。』
『もうベルに対して溺愛確定ではないか…。早すぎるぞ。』
何をコソコソと話している?
この子の声がうまく聞き取れんではないか。
「お祖母ちゃん…気にしないで。僕はお祖父ちゃんがいたのでそんなに…寂しくは…ううん。やはり寂しかった。けど、こうしてお祖母ちゃんにアルフィアお義母さんに、僕の本当のお母さんにメイ、セバスに会えて…よかった。」
……本当に、うちの夫によって14年間も育てられたのか?
嘘は言ってないから、心からの声なのだろう。
先程の言葉を何かに取り込めないだろうか?
もう一度聞きたい…。
「(ベルぅぅぅ!儂を忘れておるぞぉぉぉ!)」
お黙り!
貴方なんか、忘れて当然なのです!
『ゼウスは死んだことになっているから、仕方がないだろう…。』
『ふん!自業自得じゃ!』
「お祖母ちゃん…ごめん、お祖父ちゃんが半年前に死んじゃって…。僕がもっとしっかりしていたら…死なずに済んだかもしれない。ごめんなさい!」
…………いい子すぎる。
…………尊すぎる。
何も、こんな掃き溜めみたいなオラリオに来なくてもよかろうに…。
ああ!過去の私め!
何故さっさと正気に戻らなかったのだ!
はっ!
いかんいかん。愛しい孫との会話に集中しなければ!
「気にしなくてもいいんだよ。あの人はそうなるのが運命だったのよ。」
「(!?儂、ここに生きとるぞぉぉぉぉ!?ヘラぁぁぁ!ベルぅぅぅ!)」
『『『うわぁ…。』』』
知りません!
死んだふりしてベルの前から姿を消したのは、貴方じゃないですか。
ここからは私のターンです。
うふふふ。
「あれ?何故だろう?お祖父ちゃんの声が今、聞こえた気がするけど?」
「ふふふ、私達が会うのを天界から見て嬉しいのだろう。見守ってくれているさ。」
「うん…、そうだね!」
「(儂はまだ送還されとらんぞぉぉぉ!?)」
「(うわぁ…ゼウスが死んだことにしているよ。こんなヘラ、初めて見るよ…。)」
自業自得です。
こんな可愛い義孫がいるなら、話は別です。
「ベル…本当にお前はいい子だね。ん?アルフィアお義母さん?こいつはお前のお…。アルフィア、私の首に手刀を添えるのはやめろ。ベルが怯えるではないか。」
「……ベル。私はお前の何だ?言ってみろ。」
「ア、アルフィアお義母さんです。」
「だそうだ。わかったな?ヘラ。」
「お前…。はぁ、すまないね。ベル、この子はどうでもいいことに意地を張るんだ。困った子だね。」
「……誰だ?こいつは。」
『『『アルフィアでもそう思うのだな。気のせいではなくてよかった。』』』
全く…伯母さんと呼ばれるぐらいで過剰にならなくてもいいのにな。
ベルが怯えているではないか。
だが、メーテリア以外には無関心のアルフィアがここまでベルに対して心を開けてるとは驚いた。
……エレボスの誘いに乗らずこの子のところへ行くべきだったのではないのか?
それ以前にお義母さんだと?
メーテリアにどう呼ぶつもりなのだ?
先程のメーテリアの反応から見て、この子に対して溺愛確定だろう。
……私は知らんぞ。
「い、いえ。お祖母ちゃん…あ、ヘラ様と言ったほうがいいのかな?」
「お祖母ちゃんと言っておくれ。ベルだけの特権だよ?」
「あ、はい!お祖母ちゃん!」
「よしよし。」「えへへへ。」
ずるいですよ!貴方は。
ベルが赤子の頃からずっと見てきたのを。
『ヘラの皮を被った何かではないのか?』
『ミアハ様…それは神へラに対して失礼なのでは?』
『残念だが、アミッド・テアサナーレ。私もそう思うよ…。』
『このヘラを見たら、天界も大混乱するじゃろうな…。』
…貴方によって育てられたのにここまで純粋無垢とは…。
さすが、私の娘メーテリアの子だな!
あの雑魚ゆずりの紅い眼は……妥協しよう。
可愛いからな。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「……セバス、こいつ気味が悪いぞ。私の知っているヘラじゃない。」
「私も驚いております。こんなに早く坊ちゃまに執心するとは思いませんでした。」
「孫馬鹿ですね。」
「……今の方がベルにとって幸せかもしれんな。もし、【ヘラ・ファミリア】が健在だったら間違いなく神室へベルを監禁して可愛がっていただろう、私達に見せず外へ一切出さずにな。アレを見て一層確信した。」
「ボク…大丈夫だよね?ヘラに殺られないよね?」
「大丈夫でございます。さすがのヘラ様もそこまではしないでしょう、多分。」
「多分!?」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「ベル、今までのことをお祖母ちゃんへ教えておくれ。」
「あ、はい!お祖母ちゃん!」
「(儂は一応クソガキヘルメスから聞いとるが、ベルの視点からの話も聞きたいのう。)」
「……セバス。この荷物をしかるべきところへ入れといてくれ。」
「かしこまりました。」
「(!?ちょ…せめてベルの話を…。)」
知りません。
可愛い義孫と手を繋ぎながら話を聞きましょう。
この子をあの人と14年間二人きりにさせてしまった、私が情けない…。
この子とほんの数分話をしただけでわかるが、この子は決して私を責めないだろう。
どう償いをしたらいいのだろうか…。
まあ、いい。それは後で考えよう。
今は、この子との団らんに身を任せるとしよう。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『坊ちゃまの自伝を全部読んだはずですが。』
『坊ちゃま本人の口から聞きたいのでしょうね。』
『【ヘラ・ファミリア】のあいつらがこの光景を見るまでは信じられないだろうな。あのヘラが孫馬鹿とはな(チラッ)。』
『そうだね…。ところでアルフィアくん、メーテリアくんは大丈夫かな?』
『ああ、大丈夫だ。呼吸も安定しているようだし。しばらくは特効薬を飲ませないとな。』
『儂らも確認したが、かなり収まっておる』
『ああ、特効薬がここまでとはな。もはや死の病は死の病でなくなったな。』
『まずは一安心ですな。』
『あとはベルくんの父親だね!』
『いらん。』
『不要でございます。』
『残念ですが、却下させていただきます。』
『な、何でだい!?』
『ヘスティア様、困ったあの子はゼウスそのものです。よろしいのですか?【ヘスティア・ファミリア】の風紀が完全に乱れますよ?』
『(別にいいのではないかのう。減るもんじゃあるまいぐほぉっ!?)』
『あー……理解したよ。』
『なので不要でございます。』
『うん。わかったよ。そうだね…ベルくんには悪いけど、ボクのファミリアには要らないよね!』
『『はい。』』
孫馬鹿になっているヘラを見て、ベルくん以外の神々と人々は怪訝な顔を見せています。
本来のヘラを知っているなら、当然ですね!
そしてゼウスが死んだ振りしていることを逆手にとって、義祖父母というポジションを独り占めにしています。
もうヘラの中ではゼウスが降格させられ、ベルくんがトップになっていますね。
そして、ベルくんの父復活を全否定させられました。
感想・評価をいただけますと、嬉しいです!