ようやく、メーテリアの怒りが収まりそうだ。
「…終わったことは仕方がないわ。その結果、ベルはその悲痛な想いの強さで多くのレアスキルを産み出し、多くの命を救い、多くの心を救い、多くの人の心を奮い立たせた。異端児ちゃんたちでもね。…それだけでなく、ベルは時を越えてこの時代へ連れてきた。私達をね。」
「「ああ。」」
そうだな、あのスキルには驚いた。
だが、それは私達があの子を見捨てたことによって悲痛な想いから産まれたスキルだ。
よくやった、とはとても言えない。
言えるわけがない!
私達に…言える資格がない!
「ひっく…。私は…ベルが英雄のようにならなくてもよかった…。姉さんのいうように剣を取ってほしくはなかった…。ただの一農民として平和に暮らしてほしかった…。…けど、あの子は自ら取ってしまった、剣を。英雄の道を…【最強最高の英雄】の道を走ってしまった…。」
「「…………。」」
そうだ、あの狒々爺が語った英雄譚でベルは英雄を目標にしてしまった。
もっと他になかったのか!
あの娯楽のない村では…仕方がないか。
狒々爺やあの雑魚と同じ道を歩まないだけでもまだマシだな。
……ベルはもうあの戦争遊戯で公言した。
【最後の英雄】ではなく、古代の英雄達や私達【神工の英雄】を超える【最強最高の英雄】というとてつもなく険しい道を選んでしまった。
【ヘラ・ファミリア】としては不服ないが、あの子の身内としては失格だ。
特に私はな。
「私達が時を越えて連れてこられたのは、あの子が独りになってしまったがためよ!【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が黒竜に敗れ!私は病に倒れ!姉さんとザルドさんはオラリオの犠牲になった!……その集大成が今なのよ。」
「「ああ……。」」
本当に皮肉な話だ。
ベルがここまで来れたのは、私達が犠牲になったためだ。
だが、そのためベルは独りになってしまった。
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~巨大なスクリーンのある部屋~
「…ベルを支えるしかない。それしかない。」
「そうだね!アイズ。」
「ええ、あの人は傷ついても他人のために、例えモンスターでも立ち上がる人です。」
「(…何で一緒に同じ場所で生まれ変わらなかったでしょう。そうすれば兄さんと一緒にいられたというのに)」
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怒りが徐々に収まっていく…。
収束しそうだな。
「死んだはずの私達が生き返ってできることは、ベルをずっと支え続け、側にいてあの子に愛というのを教えることしかないわ。」
そうだな、あの子は未だ私達に遠慮している。
…ほんの数週間で14年ものの空白、いやあの子の悲痛な想いを埋められるとは思っていない。
「それはもちろんだ。私はあの子に救われた。今の私は【ヘラ・ファミリア】でもなく、オラリオのためでもなく、あの子のために生きる。」
あの子は【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が、世界が待ち望んだ英雄としても、私の…甥でもあり義息子でもあるのだ。
どうせ7年前で死んだ身だ。
何が何でもあの子を守らなければならん。
「ああ、俺もだ。あいつは俺のベヒーモスの毒を取り除いてくれた。なら、俺はあいつの障害となるものを取り除いてやる。」
「(チラッ)」「(コクッ)」
ヘラに確認せんでもよかろうに…。
まあ、7年前にあの子を見捨てた私達が言える義理ではないがな。
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~巨大なスクリーンのある部屋~
「以上が、メーテリアお嬢様の怒りです。よくわかりましたでしょうか?」
「「「大変理解いたしました!」」」
「私は初見ですが、ここまでとは思いませんでした。【女帝】を地にふれさせたのは本当ですか?」
「「「あの【女帝】を!?」」」
「はい、事実でございます。【ヘラ・ファミリア】の【最恐執事】である私が明言しましょう。【ヘラ・ファミリア】は最恐といわれているのはご存知ですね?その頂点が団長の【女帝】ですが、真の最恐はメーテリアお嬢様です。それはヘラ様公認です。絶対に怒らせてはいけません、いいですね?」
「「「はい!大変理解いたしました!」」」
「まあ、この中で至近距離で理解しているのは小僧と神ヘルメスだけですね。」
((ビクッ!))
「…………。」
「オッタルさん?何故、この大事なことを言わなかったのですか?」
「言ったら…、【ヘラ・ファミリア】総出でフレイヤ様と【フレイヤ・ファミリア】を嫐ると言われました…。」
「「「嫐る!?」」」
「その脅迫より…あの人の怒りが怖かったです。今はあの時より数十倍はあると思います。この距離で理解しました。シノス様…あの人には逆らわない方がいいです。」
「絶対に逆らいません!見てくださいよ!あの神ヘラを怯えさせ、正座させるくらいですよ!逆らいたくないです!(ガクガクブルブル)」
「ヘルメス、彼女を怒らせたことがあるのかい?」
「あるよ…。思い出したくないぐらい…恐ろしかった。ヘラの折檻よりもだ。」
「ヘルメス様…。」
「何をやったんだい…。」
「アスフィ…アイシャ…、ルルネを彼女の前に出すなよ?アレ以上の怒りの嵐が吹き荒ぶぞ…。」
「わかりました。しかし、ルルネはユーティスさんの投げ技によって複雑骨折で入院しましたので、それどころではないかと。」
「そうだったな…。」
「ユーティス…やはり、やりすぎだよ。」
「あれでも手加減してあげたのよ?まあ、おかげでアビリティがかなり上がったけどね!アスフィちゃん、また派遣してくれる?」
「勘弁してください…。」
「もうあの駄犬を許してやってもいいんじゃないかい?」
「「「まだ足りない(わ)」」」
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ベルくんは独りになったことによる、悲痛な想いにより多くのレアスキルを産み、それが多くの奇跡を引き起こしました。
それは元をたどれば、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の全滅から始まったと言っています。
仕方がありません…。
そしてアルフィアたちだけでなく、スクリーンを通して見ている人たちにもベルくんを支えようと改めて決心しました。
スクリーンを見せたのは、メーテリアの怒りだけでなくベルくんを支えることの再決心をさせるためでもありました。
そしてヘラを正座させるメーテリアに怯えているシノスさんことフレイヤです。
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