そう、暴喰ラーメンの丼の山を背景にして。
私はフレイヤと久しぶりに会った。
あの時のフレイヤから何か険がとれて、さばさばとしていた。
【白兎の脚】という伴侶が見つかり、そばにいることになったからなのか?
……嫉妬してしまうな。
フレイヤをここまでさせた【白兎の脚】に。
私が何もできなかったフレイヤを。
そしてフレイヤはあの日から、今日までのことを聞いた。
【白兎の脚】との出会い…彼の偉業…そして【フレイヤ・ファミリア】の戦争遊戯…。
ほぼ惚気話だった。
途中で激辛ラーメンの残り湯を飲まないと、聞いていられないぐらいだった。
フレイヤがヒューマンになったのを聞いた時は驚いた。
あのメイドがトップシークレットと言った理由がよくわかった…。
神をヒューマンにするのが、彼の血?
もはや、神じゃないか…。
「………その【白兎の脚】が貴女の伴侶なのか。」
「ええ、そうよ。」
「彼の血によって…ヒューマンに?」
「ええ、そうよ。」
「彼は…ヒューマンなのか?神ではなく?」
「間違いなくヒューマンよ?…まあ、神と崇められてもおかしくないわね。」
「そ、そうか。」
フレイヤがそこまで言うとはな。
ますます興味を持った。
そしてフレイヤから話を切り出された。
「それでアリィ?詳しくはメイから聞いたわ。」
「ああ、これで私の肩の荷が下りた。安心して帰れる。」
「そう…それならいいわ。…ねえさっきから気になってたけど、何で丼から手を離さないの?それに横の丼の数は何?食べ過ぎよ。」
「いや…『暴喰ラーメン』にハマってしまってな…。なぁ、ここの支店をシャルザード王国へ出さないか?家賃や税金は無料にしよう!」
うむ!これほどならシャルザードで流行るだろう!
いや、絶対に流行る!
ザルドという大男はそれを聞いて呆れた。
「あんたなぁ…。」
「はぁ…まあ、気持ちはわかるわ。デタイン砂漠のモンスターを討伐してからにしなさい?」
「ううむ。ここの大使に立候補するか…。」
「…貴女、女王でしょ?」
「仕方がないな……。」
…しばらくの間滞在期間を長くするか。
あいつらは当分胃を痛めてもらうが、ここのラーメンを食えばわかるだろう。
うむ。
フレイヤは心配するかのように言った。
「それでアリィ?王国はどう?」
「何とかつつがなく治まっている、とりあえずはな。あ、神ラシャプがオラリオに潜んだという情報があった。気をつけろよ?」
「もう送還したわよ?」
「そうか…え?送還?もう?」
「ええ。」
…早くないか?
まあ、いい。
ざまーみろ、ラシャプ!
さて、そろそろ切り上げるか。
その前に…。
「それはよかった…。ところで、その【白兎の脚】に会ってみたいのだが。」
「ダメよ。」
「え?」
「ダメよ。」
…あのフレイヤが開口一番で「ダメ」というのは珍しいな。
疑問に思った私は聞いた。
「いや…何故だ?」
「ダメったらダメ。さあ、帰りなさい。部下が待っているでしょう?」
「……そう頑なにすると会いたくなるな。私の性格を忘れたのか?」
「力ずくでも帰らせ「ただいま!」………。」
「(ニマァ)なるほど、今の声が彼なのか。」
苦虫をつぶしたフレイヤのこの顔は、初めて見るな。
…フレイヤに勝ったと思うのは、この場が初めてかもしれん。
さて、どんな奴なのだろうか?
あの屈強なオッタルたちを伏れさせ、
傲慢な美の女王フレイヤを見惚れさせ、
世界最強となった男は一体どんなやつなのだろうか?
え?
その場に現れたのは…どこでもいる少年だった。
いや…、白い髪に赤い目…兎みたいだな。
…この子が?
冒険者になって半年あまりで、レベル6となった?
【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】を敗北にまみれさせた?
嘘だろ…。
しかし…何となくだが、どっかに惹かれるな。
いや…見るだけで心が洗われるような感じがする。
その少年は大男を見て声を出した。
「あ、ザルド叔父さん!こっちにいたんだ。店しまっていたから。」
「ああ、ちょっと野暮用でな。」
「ちょうどよかった!いつもの『暴喰ちゃんぽん』をちょうだい!人参多めで!」
「ああ、いいぞ。待ってろ。」
……ふむ。そんなに悪いような人間ではないな。
人参多め?ふふふ、つい微笑んでしまったぞ。
その少年は私に気づき、挨拶してきた。
「あ、お客様ですか?初めまして!【ヘスティア・ファミリア】団長のベル・クラネルです。」
「あ、ああ。シャルザード王国の女王である、アラム・ラザ・シャルザードだ。」
「ええっ!じ、女王様!?あわわわ…た、大変失礼なことを。」
ふむふむ。礼儀正しいな。
言っては悪いが、冒険者に合ってないような子だな。
…いや、だからこそ合ってないから【英雄】に合っているかもしれん。
気に入った。
国へ連れて帰りたい、と思うぐらいだ。
そして私はその少年に急接近した。
「いやいや、気にしないでくれ。無礼講と思ってくれ。さあさあ、横に座ってくれ!」
「あ、はい(近い近い近い!何か当たっている!)。」
「…………(惚れたわね、アリィ)。」
「ほらよ。」
「ありがとう!ザルド叔父さん!し、失礼します。」
「いやいや、麺が伸びない内に食べなさい。」
「はい!いただきます!(ズルズルズル!)」
ふふふ、可愛いな。
『また…増えたか。しかも女王サマだぞ?マジで、ベルを世界の王にするつもりじゃないだろうな?あいつらは…。いや、俺は何も見てねえ何も知らねえ。強く生きろよ…ベル。』
?
何故、その大男は涙ぐんでいるのだろうか?
フレイヤがしびれを切らしたように言った。
『アリィ…、もういいでしょ?ほら、帰りなさい。』
『なるほど、彼か。…若いな(それに…私好みだ)。』
『アリィ?』
『頼みがあるのだが…』
『ダメよ。』
『まだ何も言ってないぞ。』
『言わなくてもわかるわ。ダメったらダメ。』
ははーん。
この少年に私が惚れたということに気づいたようだな。
いいではないか。
そもそも私をこんなにしたのはお前なのだぞ?
『……私を無理やり抱いたくせに。彼も奪っただろう?』
『…まだよ。』
『は?まだ?』
『……ベルはまだ未精通なのよ?』
『何…だと?』
『どうせ、子種が欲しいとか言うんでしょ?ダメよ。』
『ううむ、私に男児がいないからな…。よ、予約はできないだろうか?』
『ダメ。』
ううむ、シャルザード王家の血に【英雄】の血が入れば今後のシャルザードは益々栄えるというのにな。
私がそう思っていると、先程のメイドが気配を出さずに現れた。
「失礼します。それはいいのでしょうか?王家の血が薄れても?」
「うわっ!」
「メイ…。」
フレイヤがこうまで警戒するのは初めて見たな。
メイドの質問に私は答えた。
「今更だ。それに…『英雄』の血なら誰も文句は言わないだろう?」
「それでしたら、しばらくお待ちくださいませ。予約は受け付けますよ?」
「そうか!」
「ちょっと!メイ!」
やった!予約できてよかった!
フレイヤが今まで見たことないほど、慌てているな。
メイドはすました顔で言った。
「いいではありませんか。その代わり産まれたらその子を徹底的に守りなさい。そうしないと…」
「そ、そうしないと?」
「シャルザード王国を砂塵にします。」
「……覚悟の上だ。」
あの子と出来た子なら、私が全身全霊をかけて守って育てよう。
そう覚悟した私を見て、メイドは満足したかのように言った。
「そうですか。では予約しておきましょう。」
「むー!」
「そうか!うむ!来てよかった!」
「稽古から早く帰るべきだったわ…。」
家臣の目をくらまして来た甲斐があったな!
さて、これで帰るか。
少年はまだ食っているか。ならシメに…。
「では、最後に…『暴食激辛マシマシ味噌ラーメン』を食って帰るか。」
「貴女…ハマリすぎよ。」
仕方がないだろう。
美味いのだから。
案の定、アリィはベルに惚れてしまいました。
アリィを帰そうとするフレイヤ様も可愛いですね!
そして、ベルの子種予約をするアリィさんです。
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余談ですが、ペースを取り戻しつつあるので3日に1回で載せていきます。
次回は12月18日です。