白兎に遺された、最強と最恐の造られしもの   作:覇幻

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久々です!お待たせしました。
今回は愚者さんです。


第431話 愚者、打合。

神アフロディーテの船を調査しろ、とメイが言うから【アフロディーテ・ファミリア】がいない間にガサ入れした。

驚いたな…確かに、これはアルテナで作られた魔導船だ。

製造国しか知らない起動スイッチを使って、メレンにあるオラリオ連合用のドックへ停めた。

…パクったりしないから許してくれ、神アフロディーテ。

 

しかし…これは、私の記憶が確かなら国家機密ではなかったのか?

神アフロディーテが言うには、アルテナの商人を魅了して譲ってもらったというが…。

あのアルテナが?

今のアルテナは一体どうなっているのだ…?

 

いやいや、私はもうアルテナとは関わりがなかったな。

さて、この船の構造をミュラーと【万能者】と一緒に調べてみるか。

…思えば、これが三人による初めての共同作業か。

 

さて、見てみるか。どれどれ…。

ふむ?見覚えのある魔道炉だな。この文字は…私のじゃないか!

「…なんだ、この魔道炉は私が設計したままじゃないか。私のサインもあることだし…(あいつらは何をやっているんだ?設備は真新しいのに、全く進んでないじゃないか)。」

「部長、そうなのですか?」

「アルテナは貴女の故郷と聞いたのですが…、そこまで深く関わっていたのですか?」

うむ、ガッツリとな。アルテナの首脳部ではなかったがそれに近かったな。

かなり奥深く関わっていたのは確かだ。

それもあの賢者の石事件がきっかけで離れてしまったがな。

 

おっと、こちらに集中しなければな。

「うむ、まあな。それはまたの機会に話そう。さて、どれどれ…うわぁ、これは恥ずかしいな。若気の至りで一気に作ったままだから、効率が悪い。」

「この複雑な構造の魔導炉を若気の至りで…?部長はすごいですね…。」

「それほどでもないさ。…ううむ、一から作り直した方が早いかもしれない。大分前だからどんな設計か忘れたな…。」

「設計図があればよかったかもしれませんね。」

「設計図?あっ!確か…設計図が必要になった緊急時に、解説書や設計図をしまう仕掛けが魔道炉まわりにあったはずだ。確かこの辺に(ゴソゴソ…ガチャ)…ああ、あった!」

「ええー…。アルテナは何故、貴女を放逐したのですか?アルテナの国家機密がただ漏れじゃないですか…。」

まあな、ほぼ脱走というか放逐されたというか…このあたりは複雑なんだ。

 

その話は面倒だから今度にしよう。

こちらに集中したいからな。

「まあ、それは話すと長くなるのでな。どれどれ(ペラペラ)……ああ、少しは改良しているが根本的に直していないな。何やっているんだ、あいつらは…。だが私の神秘がSになった以上、効率がいい最強の魔導炉が作れるな!」

「そ、そうですか(アルテナはこちらの賢者を放逐するなんて…馬鹿なのですか?)。」

「ふむふむ…よし!一から設計し直す手間が省けたな。私はこの設計図を元にして新たな魔導炉を作り上げるので、君たちは例のモノを進めておいてくれ。」

「わかりました。」

ふむ、久々の感覚だ。

今まで数百年は一人でやっていたから、部下を持つのは本当に数百年ぶりだ。

ミュラーは…まあ、改変されているからやましいことは考えないだろう。

【万能者】はどこまで食らいつけるか、これでお手並み拝見といくか。

 

彼女は神ヘルメスがある海国からさらって来たときは驚いた。

彼女がランクアップし神秘が発現した後、魔道具を次々と作るのは目を見はった。

才能があるに違いない。

ただ、神ヘルメスにこき使われているのは同情を禁じえないな。

見麗しい美人だというのに、目の隈が台無しだ。

…せめてここにいる間はたっぷりと寝かせてやるとしよう。

 

「早く進められるということは…、納期までは何とかなりそうですね。」

「きつぅ…(まあ、一人でやるよりはまだマシですね)。」

「うむ、私はこの体だから不眠不休が可能だが生身の君たちにはきついだろう。十分な栄養を取って十分に寝て、時間に集中して取り掛かってくれたまえ。」

「かしこまりました。」

「それは本当にありがとうございます。本当に嬉しいです。本当に来てよかったです。」

「………【ヘルメス・ファミリア】はどれだけブラックだったのだ?」

「聞かないで下さい…。」

「そ、そうか。」

あの神ヘルメスのことだ、さんざんと無茶振り言われているんだろうな。

こちらもウラノスから無茶言われているが、それほどでもなかった。

分野外の斥候まがいはやはり難しかったな…。

 

しかし…。

「今更だが…、メイたちはとんでもないものを思いつくな。」

「ええ、相手からすればそれは正に悪夢そのものですね。」

「全くだ。いや、あの2人を解放した時点で敵に回った者たちにとっては悪夢だろうね。…戦争遊戯までの【フレイヤ・ファミリア】を見たまえ。まさに道化だったぞ?笑えるようで笑えなかった…あの【フレイヤ・ファミリア】だぞ?」

「「わかります。」」

「それはさておき、すぐに取り掛かろう!私はこの古い魔導炉の設計書を元に書き直すことから始める。君たちは例のモノを仕上げておいてくれ。…彼らの言葉を借りるようではないが、時間は有限だからな。」

「「はい!部長!」」

ふむ、いい部下たちだ。

…アルテナに残された弟子たちは元気…いや数百年すぎた今は死んでいるかもしれんがどうなっているのだろうな…。




はい、アルテナの元賢者である愚者さんがアルテナの魔導船を回収しました。
そしてそれをもとにして、新たな魔導船を作り上げる模様です。
どのような魔導船になるのでしょうか?

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