メイがヘスティア様とバーチェを連れて出ていって、数時間後に戻ってきた。
…無事に戻ってきてよかった。いや、メイがいる時点で大丈夫だな。
「皆様、朗報です。バーチェ・カリフさんが【ヘスティア・ファミリア】へ円満に改宗できました。」
「…あれで…円満……なのか?」
「……バーチェくん、スルーしようぜ。そうしないとやってられないよ。」
殺し合いが常とするファミリアから、本当に改宗できたのか…すげえな。
戦争遊戯が終わった後になるかと思ったんだが、めちゃくちゃ早かったな。
「…………そうですね。ヘスティア様。」
「…君とは仲良くやっていけそうだよ、本当に。」
ヘスティア様とバーチェ、数時間前には初対面だったのに、ものすごく距離が縮まっているな。
何があったんだ…・。
「レベル6のバーチェ様が入ってくるとは、これで勝利へ近づけました!あ、リリと言います。レベル2で、【ヘスティア・ファミリア】の参謀をやっています。よろしくお願いします、バーチェ様!」
「ヤマト・命です。レベル2です。よろしくお願いします。」
「ヴェルフ・クロッゾだ。あー、下の名前は呼ばないでくれると助かる。よろしくな!」
「…バーチェ・カリフ…です。…よろしくお願いします…。」
バーチェがヘスティア様の後ろに隠れてる…。
レベル6なのに…。
「あー、少々人見知りな子なんだ。けど、いい子だぜ。みんな仲良くしてくれよ!後は、春姫くんとベルくんと、セバスくんだね!」
「…春姫とは、さっきの…むぐっ『これ以上言いますと、せっかく助かった命がなくなりますよ』……何でもないです……。」
うわ…メイが目に止まらぬ速さでバーチェの口を塞ぎやがった…。
そしてヘスティア様が振り返る寸前で、元の位置に…。
魔導人形って、すげぇ…。
「?バーチェくん、どうしたんだい?」
「…いえ、セバスとは誰…のことです?」
「私です。お初にお目にかかります。バーチェ・カリフ殿。」
「「「うわぁっ!?」」」
…いつの間に戻ったんだ?
「…(こいつも…強い…。)バーチェ・カリフ…です。よろしくお願いします…。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
「セバス、探ってきましたか?」
「ええ。前よりは楽でした。大したことありませんな。」
……まだ数時間も経っていないぞ…。
『バーチェくん、バーチェくん。』
『何でしょうか?ヘスティア様?』
『彼もメイくんと同じぐらい強いからね。気をつけるんだよ。』
『!?…あいつも…ですか?』
『うん…、まあさっきの交渉?も平気でできるから…ね。』
『…ヘスティア様…ありがとうございます。気をつけます(逆らってはいけないということですね。わかります)。』
……ヘスティア様とバーチェ、かなり仲良くなっているな…。
「…もう戻ってきたのですか…。早くありませんか?セバス様。」
「警備がザルでしたな。情けないですね、最強派閥の1つとは笑わせるばかりです。」
…相手は【フレイヤ・ファミリア】だぞ…。
俺はあんたらが怖いぞ…。
「ところで、セバス。報告をお願いします。」
「了解です。単刀直入にいいますと、神フレイヤはやけ酒で【猛者】たちに八つ当たりにし、二日酔いで寝込んでますな。」
「「「ゑ?」」」
「ああ…坊ちゃまとの口喧嘩がきっかけですか。美の女神とあろうものが笑えますね。」
「しかも【猛者】たちも不甲斐ありません。八つ当たりで右往左往にしているのを見た時は、情けなくて涙が出そうでした。魔導人形ですが。」
「「「USOダロ?」」」
やけ酒?八つ当たり?
もうわけわからんぞ!
『……ヘスティア様』
『…なんだい、バーチェくん。』
『この戦争遊戯…もう勝っているのではないでしょうか?』
『…ボクもそう思うよ…。けど、彼らはベルくんたちの手で決着をつけるべきだと言っているんだ。』
『…そうですか…。アルガナたちが哀れに思ってきました…。』
……ヘスティア様とバーチェ、俺たちと同じくらい仲良くなっているな…。
意外と相性いいかもな、あの二人。
「…すみません。セバス様、詳細をお願いできませんでしょうか…?」
「承知しました。忍びこんだ時、門番に至るまで神フレイヤの癇癪に、右往左往でした。まあ、無理もありません。今まで態度を崩さなかったあの神が、そこらの娘のように泣きわめき、ワインを水のようにラッパ飲みしてましたな。そして坊ちゃまの悪口をグチグチとこぼし、それに同意した眷属に怒りをぶつけて、不貞寝してましたな。少々理不尽ではないかな、と思いました。眷属たちの話を聞く限り、朝は二日酔いでかなり苦しんだそうですので、明日も欠席でしょう。」
「「「彼氏とケンカした後かっ!」」」
…ヘファイストス様はそんなことはしないよな?
ないよな?…俺も気をつけよう。
「…本当だったんだね。明日も欠席になりそうだね。まあ、時間は何とか稼げそうだね。」
「そうですね。ただ、神フレイヤはそうなるまで、坊ちゃまに本気ということがわかりましたね。」
「……とにかく、【フレイヤ・ファミリア】はそれどころではないとわかっただけで大きな収穫です!セバス様、ありがとうございました!」
「いえいえ、ついでに少々土産を持って参りました。」
「…天下の【フレイヤ・ファミリア】に…恐ろしい方ですね、セバス殿は。」
「…(これで二人…逆らってはいけない人が増えた…。ここにいて、私は本当に大丈夫なのだろうか?)」
…マジかよ。
ん?土産を持ってきた?
「セバス、土産は何です?」
「土産は、ワインと大剣、鎧、本ですな。ああ、本については持ち主へ明日返しますのでご心配なく。…大剣と鎧はこちらです。メイ、貴方にお返ししましょう。」
「私に?……これは!?」
というか、どこから出したんだ!?
このサイズ、服には入らないだろう!?
「ヴェルフ殿、執事の嗜みでございます。」
そんなのあってたまるか!?
俺…クロッゾ家にも執事いたが、そこまでじゃなかったぞ!
メイドもだ!
「……そうですか。それはどちらにありました?」
「【猛者】の部屋です。」
「「「はぁっ!?」」」
「なるほど。グッジョブです、セバス。」
【猛者】の部屋から盗むって…。
もうダメだ。こいつらにはついていけん。
俺は、明日自室を引き払って鍛冶場へ引っ越そう。
ベル、すまん。
次回もヴェルフさんです。
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