白兎に遺された、最強と最恐の造られしもの   作:覇幻

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前触れもなく…賢者こと愚者さん回です!


第54話 愚者、号泣。

私は愚者。

これでも800年生きている。

かつて、『賢者の石』を作ったことがある。

その私が…。

 

メイドの前で椅子に座らせている。

 

「ふふふ、久しぶりですね。愚者。15年ぶりでしょうか?」

「…ああ、そうだな。」

「いけませんね。無断侵入して盗み聞きするなんて『賢者』の名が泣きますよ?」

「…ああ、そうだな。」

「おや、さっきから同じ返事しかしてませんよ?言語機能まで失ってしまわれたんですか?」

 

どうして…どうして…。

【ゼウス・ファミリア】の【最強侍従】がいるんだぁぁぁぁ!

 

「一言いいかい…、私は盗み聞きする気はなかったんだ…。」

「なら、一言かければよかったでしょうに。」

「貴女が…お前が…!私を有無言わざず拘束して、この部屋に転がしただろうが!しかも透明化させて!」

「それが何か?」

「「「………。」」」

このメイド!本当に変わらないっ…!

私がこのメイドと知り合ったのは数百年前…。

【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】がいた時からの長い付き合いだ…。

15年前に自ら封印したのを知った時、ホッとしたような寂しいような気持ちだったな…。

 

「時間が押してましたので、それに説明が省けましたでしょう?」

「…内容が濃すぎて困っている…。」

「……わかります(この方が『アルテナ』の賢者…ギルドの【幽霊】、そして神ウラノス様の側近)。」

私は現状の報告をしようと思い、【ヘスティア・ファミリア】ホームへ訪問した。フェンスを越えようとしたら、いきなり拘束させられ、猿轡をかませ、透明化させて、この部屋の隅に転がせられた。

エイナ・チュールの面談から始まり…現在に至る。

 

ベル・クラネルが男神の置き土産とウラノスから聞いていたが、置き土産どころじゃない!

【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の系譜をもつ者なんて聞いてないぞ!

【イシュタル・ファミリア】騒動の中心にあったのがベル・クラネルなんて、神ヘルメスからも聞いてないぞ!

あの神、黙っていたな!

本当に殴ってやる!骨だけど。

 

本当に濃い半年だな…。

彼はそれが当たり前だと受け止めている…。

彼がある意味心配だ…。

 

しかも…【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の魔導人形を2体解き放つなんて…。

そしてその2体ともベル・クラネルに絶対の忠誠を誓っているとのこと…。

その時点でこの戦争遊戯、勝っているのではないか?

 

「聞いていいかい…?」

「いいですよ。私たちの目的ですか?」

「お見通しか…(相変わらずいやな奴だな…)。何の目的だ…?もう勝っているのではないか?」

「賢者とあろう者がわかりませんか?ああ、骸骨だから脳がないのですね。仕方ありません。わかりやすく教えて差し上げましょう。」

『うわぁ…愚者様に喧嘩売ってますよ…。』

『しかも、あんなに怒っている愚者様、初めて見ます…。』

『ウラノス様に長年仕えてきた側近を、顎で使っている…。』

くそっ!昔からそいつはそうだった!

 

「この戦争遊戯は布石です。ダンジョン制覇と黒竜討伐のために。」

「!?…そうか。だからここまで用意周到なのだな…。」

「ええ、それに愚者。何故ギルドは【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】を制御できないのです。そこまで無能とは思いませんでした。」

「………仕方がないだろう。ウラノスは神フレイヤと神ロキが、男神と女神ほどの信用を置いていないんだ。お前なら分かるだろう?」

「はぁ……神ウラノスもあの元バカ主神と同様、役立たずですね。神ウラノスに言っておきなさい。『このメイとセバスは坊ちゃま第一。救界なぞ、知ったことか。坊ちゃまのやりたいこと全て叶えるのが私たちの望み。そのついでにやってあげるのだからありがたく思え。だから邪魔するな。邪魔したら滅ぼす。』とそう伝えときなさい。」

『…ウ、ウラノス様に…。』

『怖いです…。』

『…私、辞めてよかった…。ミイシャにも辞めるよう薦めたほうがいいかな?』

返す言葉もない…。

ここ数ヶ月、ベル・クラネルに任せっぱなしだ。

 

「あと、あの豚は何をしているのです?」

「ウラノスも流石に見過ごせなくなり全財産没収した…。1000億ヴァリスある。」

「せ、1000億ヴァリスっ!?」

「あのギルド長…本当にっ…。」

「あわわわ…。」

「そして、それを【ヘスティア・ファミリア】へ渡すようにとのことだ。」

「「「なっ!?」」」

「その程度ですか?足りませんね。」

「「「「へっ!?」」」」

何故だ?十分に足りるだろうが!?

 

「ダンジョン制覇と黒竜討伐のための資金には程遠いです。」

「し、しかしな。」

「あの豚は、私の計算が正しければ…あと1000億ヴァリスをどこかに隠しているはずです。」

「「「「な、何だってーっ!?」」」」

そんなバカな!?全部探したはずだぞ!

 

「…愚者。あの豚は『アルテナ』で収納魔道具をこっそりと数点購入していました。15年前に私が把握しています。」

「!?何か物が多いなと思ったが…、そういうことか。分かった。私が…「不要です。」は…?」

「貴方は少々抜けているところがあります。異端児のことといい、クノッソスのことといい…本当に無様です。魔道具を専念して作ることをお薦めしますよ。」

「それができたらそうしてる!だが、周りがそうしてくれないんだぁぁっ!?特にウラノス、神ヘルメスはぁぁぁっ!」

(……わかる、わかるわ…。ギルドで働いていた私もそうなのだから…)

『酒場でぐだ巻いている人を想像してしまいました。』

『私もです…。』

 

「愚者、あなたの本業は何です?」

「魔導士であり…魔道具作製者だ…。」

「なら、それに専念しなさい。今は【ヘスティア・ファミリア】の地盤硬めですが、私たちも協力しましょう。神ウラノスに『震えて待て』と伝えなさい。」

「………(ウラノス、すまない)。そうだな、そうした方が良さそうだ…。」

彼らが動くなら一安心だ。私も本業へ戻れるか………。

 

よっしゃあああああ!

 

「それで、目的はわかったがそれにはどうするかは、考えてあるのか?」

「まず、坊ちゃまを中心としたオラリオ連合を作ります。」

「ええっ!ベル君を!?」「何だと!?」

「坊ちゃまは既にオラリオにとって中心的存在になっています。そして今回の神フレイヤのおかげでさらに注目されています。坊ちゃまを中心とすればダンジョン制覇と黒竜討伐も容易になるでしょう。」

「…なるほど、一理ある。異端児もベル・クラネル第一となっている。そして今回でベル・クラネルに注目が集まっている。そういう事か…。」

(ベル君…半年でよくここまで…。…ギルドを辞めてよかった!)

 

「わかった。君の提案を飲もう。私は魔道具作成に集中しよう。」

「神ウラノスに、エイナさんと同じく退職届をぶつけなさい。そして魔道具作成に集中して、坊ちゃまのために役立てなさい。神ウラノスと豚は私たちがやりましょう。」

「ははは、そうするよ。……神ヘルメスはもう会ったか?」

「昨晩、罪を精算して釘を刺し、首輪をつけました。」

そうか…もう会ったのか。

…ざまぁみろ!その様子を見てみたかったな…。

 

「精算!?釘!?首輪!?」

「こんっ!?」

「春姫様、エイナ様…後で説明します。」

 

 

「エイナ・チュール…。」

「あ、はいっ!」

「ロイマンの暴挙、すまなかった。本当は君を戻したかったが、先程までの話を聞いてそんな気はなくなったよ。」

「…愚者様、申し訳ありません。私はベル君に一生ついていくと決めましたので。」

「そうか…君たちが羨ましいよ、本当に。」

若いって、いいなぁ…。

 

「1000億ヴァリスはどうする?」

「ここの地下に金庫室がありましたので、そちらへお願いします。愚者様。」

「わかった。後で届けよう。…メイ。」

「何ですか?」

「セバスは…何してる?」

「【ミアハ・ファミリア】と【ディアンケヒト・ファミリア】の取り込みと坊ちゃまの訓練です。」

「ええっ!【ディアンケヒト・ファミリア】も!?」

「うわぁ…本当にオラリオ連合を作るんですね…。」

「【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】が可哀想に思ってきました…。」

全くだ。この2人がいれば十分だろうに。

ベル・クラネルの手で決着をつけさせて、オラリオ連合を作りやすいようにしているわけか。

なら私は魔道具を作りまくって、ベル・クラネルの役に立てるよう専念しなければな。

 

「そうか…私はウラノスのところへ戻って、お前の言葉を伝えて工房に引きこもろう。用があればそっちから来い。」

「言われなくても行きますよ。ご心配なく。」

「そうか、来たら茶くらいは入れてやる。」

「ええ。15年間の話も聞きたいですね。では…賢者。」

「ああ、【最強侍従】。ではな。」

久々に会って、スッキリした。

ベル・クラネル…、君には本当に感謝しかない。

異端児だけでなく、私の孤独も救ってくれたのだから。

 

さて、ウラノスへメイの言葉を伝えると共に、エイナ・チュールと同じく退職届をぶつけてくるか。

 

……………ロイマン、合掌。




少々長めになりました。

愚者とメイ、セバスは愚者がオラリオへ入ってからの知り合いという設定にしています。

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