久々のウラノス様回です。
「今…何と言った?愚者よ。」
「辞めさせてもらう、と言ったんだよ。ウラノス。」
目の前の賢者…いや愚者は、信じられないことを言った。
魔法大国『アルテナ』から出て彷徨い出た彼を、男神と女神が拾い儂へ紹介した。
そして、長年儂の私兵として働いてもらった。
【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が追放されても、下界を揺るがす【異端児】と私のつなぎ等を、感謝してもしきれないほどの働きをしてもらった。
その愚者が…辞める?
「何があったのだ。」
「本業に戻って専念させてもらいたいのだ。ウラノス。」
「答えになってないぞ。もう一度言う、何があったのだ。」
「…ウラノス。ベル・クラネル、あの少年のことをどう思う?」
ベル・クラネルか…。
ゼウスの落とし子であり、あのヘスティアの最初の眷属であり、ヘルメスのお気に入りであり、異端児からの信頼が厚く、フレイヤの魅了を弾き、今やオラリオを代表する冒険者の一人となっている。
今更、そのベル・クラネルがどうしたのだ?
「…彼がどうしたのだ?」
「ウラノス、私達は騙されたのだ。あの姑息な神、ヘルメスに。」
「…何だと?」
「…ゼウスの落とし子…彼は【ゼウス・ファミリア】の眷属ではない。」
「!」
では、何だと言うのだ?
「彼は…【ゼウス・ファミリア】の眷属の子…【ゼウス・ファミリア】の系譜を持つ者なのだ。」
「…そうか。」
愚者にとって驚くことかもしれないだが、私にとっては想定内だ。
「それだけなら、まだよかったんだ。…彼は、もう1つの系譜を持っているんだ。」
何…!?
「彼の父親は【ゼウス・ファミリア】最弱のあのサポーターだ。」
ゼウスと多くの醜聞を作った子か…。
…似てないな…、いやあの真紅の瞳だけか。
だが、もう1つの系譜だと?母親のか?
「彼の母親は…、あの最恐の【ヘラ・ファミリア】だよ。ウラノス。」
「!?」
馬鹿な…!そいつは、何ということをしたのだ!
そのようなことをすれば、男神と女神の夫婦喧嘩によってオラリオは滅びる!
いや……、黒竜にある意味感謝するべきか…。
皮肉なことだな。
「そうだよ。ウラノス、あの少年は【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】のそれぞれの直系の系譜を持つ、この世で唯一無二の少年なのだよ。」
……驚いた。ベル・クラネルがな。だが、
「それで…?愚者、お前が辞める理由にはならない。」
「ああ、そうさ。それだけなら本当によかったんだ。問題はその系譜がもたらすものなのだよ。」
…もたらすものだと?
「ウラノス、忘れたのかい?【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】には、恐るべき双璧がいたことを。」
…………まさか…彼らか?
彼らが復活したというのか!
いや、彼らは【ヘファイストス・ファミリア】、【ゴブニュ・ファミリア】にそれぞれ封印されているはずだ。
それぞれの眷属でなければ解放できないはず。
そして、その眷属である【静寂】と【暴食】は、7年前の大抗争で断絶したはずだ。
………あっ!
ベル・クラネルが持つ系譜か!
「ウラノス…。私は先日、【ヘスティア・ファミリア】へ訪問した。有無を言わさず拘束させられて、部屋の隅っこでベル・クラネルの半年間の経緯を、元ギルド受付嬢のエイナ・チュールと共に教えてもらったよ。あの…忌々しい【最強侍従】に!ああ!腹立つ!」
………愚者のこのような様子、久々に見るな。
そうか…【最強侍従】が解放されたのか…。
待てよ…まさか【最恐執事】もか?
「【最恐執事】のセバスにはまだ会ってないが、彼も解放されているよ。…ウラノス、【最強侍従】から聞いた話で私達が知っている内容と齟齬があった。」
そして、私は愚者からベル・クラネルの半年間の出来事を教えてもらった。
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【ソーマ・ファミリア】の体質改善、イシュタルの送還等にベル・クラネルが関わっていたのか。
頭が痛くなってきた…。
「ウラノス…それで私が辞める理由だが、彼らが全て仕切るそうだ。」
「…何だと?」
「【最強侍従】から言付けがあるよ。『このメイとセバスは坊ちゃま第一。救界なぞ、知ったことか。坊ちゃまのやりたいこと全て叶えるのが私たちの望み。そのついでにやってあげるのだからありがたく思え。だから邪魔するな。邪魔したら滅ぼす。』…とのことだ。そして『震えて待て』だそうだ。」
「……………………………………。」
「ウラノス?聞いているかい?まだ、あるんだ。ロイマンから全財産没収したが、【最強侍従】が言うには『アルテナ』で購入した収納魔道具にまだ1000億ヴァリスがあるとのことだ。」
「……………………………………。」
ロイマンめ…私を謀ったな…
「そして私にもこう言ったよ。『異端児のことといい、クノッソスのことといい…本当に無様です。魔道具を専念して作ることをお薦めしますよ。』だってさ。元々私は魔導士だ。こういった斥候まがいのは本当に不向きなんだ。なので、彼らに任せることにしたよ。そして私は、あの少年…ベル・クラネル専属の魔道具作製者にならせてもらうよ。」
「……何だと?」
「彼らの目的は、ベル・クラネルを中心としたオラリオ連合を作ることだ。そして…、我々の念願でもあるダンジョン制覇と黒竜討伐を行うことだ。そのために、魔道具を作れということだ。」
「!?」
何だと…、いやかえって好都合か。
今回の戦争遊戯で、【フレイヤ・ファミリア】が勝ったとしても、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】ができなかったことを、【フレイヤ・ファミリア】が成し遂げるとはどうしても思えない。
だが、ベル・クラネルは良くも悪くも、オラリオの中心人物の一人として一番注目されている。
そして彼らがベル・クラネルを支えていくとなれば、ベル・クラネルを中心としたオラリオ連合を作るのは非常に現実的だ。
主神であるヘスティアも神望も高いしな。
そちらの方の可能性が非常に高い。
「ウラノス。貴方にとって悪い話ではないはずだ。長年いがみ合っていた彼らが、ベル・クラネルの元で絶対の忠誠を誓い手を組んでいる…。この時点で、我々の敗北は確定だ。そして神フレイヤ、神ロキとの戦争遊戯はそのための布石だそうだ。既に彼らはもうその地盤固めに奔走しているよ。」
「…………そうか。」
「既に、【ヘファイストス・ファミリア】、【ゴブニュ・ファミリア】、【ミアハ・ファミリア】【ディアンケヒト・ファミリア】、そして【ヘルメス・ファミリア】も彼らの手の内にある。」
「……………………………………。」
思ったより早いな…。
解放されて間もないはずだが…。
「残るファミリアも時間の問題だろうね。」
そうだな。【デメテル・ファミリア】もこうしている間に取り込み済みだろうな。
ベル・クラネルの生い立ちを知れば、あの善神であるデメテルは黙っていられないだろうな。
「………戦争遊戯は彼らがやるのか?」
「いいや。彼らは最後の保険だそうだ。戦争遊戯は、彼らを除く【ヘスティア・ファミリア】を中心とした連合で完全勝利または圧勝する必要があるそうだ。そうしないとダンジョン制覇や黒竜討伐は不可能とのことだ。」
なるほどな。彼らはオラリオから出れない制約がある。
だから、この戦争遊戯は鍛えるのにちょうどいいということか…。
「………それで、私との連絡担当は誰だ?ヘルメスか?」
「いいや、彼らから追って連絡があるそうだよ。だから私はこれが貴方に会う最後になるかもしれない。」
「!?!?!?…待て。彼らが…ここへ来るのか?」
「そうだよ、ウラノス。だから『震えて待て』とのことだ。…ウラノス、貴方には残念なことだが、ギルドは彼らが仕切るそうだ。」
「…ロイマンが黙っていられんぞ。」
あの権力、金の権化が、オラリオ連合を黙って見逃すわけがない。
確実に何かをしてくるだろう。
「ウラノス、彼らがそれを見落とすと思っているのかい?今回の戦争遊戯で【ヘスティア・ファミリア】への妨害をしてきたロイマンを、彼らが許すと思っているのかい?」
「……ロイマンが気の毒になってきたな……。」
「さあね。私もあの豚にはいい加減うんざりしてきたから、ちょうどいいさ。」
…【最強侍従】に会ったからか、スッキリした感じだな。
「ウラノス、はっきり言おう。ベル・クラネルを全面支持すべきだ。彼は、"救界"の要だ。それは今までの急成長や戦いを見てわかるだろう?」
「…そうか。未来はベル・クラネルの手に委ねられたな。」
「私はもう、全てを彼に賭けている。だから、私は彼専属の魔道具作製者になるのさ。私の引き継ぎは彼らがやってくれるよ。」
そうか、なら私ができることは祈祷だけだ。
「ウラノス、このような形になってすまないが…、長年、大変世話になった。」
「愚者、それはこちらもだ。長年、私を支えてくれて非常に感謝する。」
「……っ、また会おう。」
「ああ、またな。」
……………しかし、彼らがここへ来るのか…。
覚悟はしておくか。
今回は長かったため2つに分けようと思いましたが、明日の2回の更新の都合により1つにさせていただきました。
(明日はある人の視点が2回あります。)
ウラノスのセリフの中で、あるアニメの有名な方のセリフをいただいています。
(主人公の名前を変えているだけです)
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