前回の続きです。
ちょっと長めです…。
彼のことを聞けば、アイズの追跡から逃れたがアイズと対決し、竜女をダンジョンへ逃したが神ヘルメスの生贄となった異端児の戦い、そして…あの黒いミノタウロスとの一騎打ちになったそうだ。
何がどうなったら、そうなるのだ……。わからん。
ただ、惜しい気がしたな。
あのミノタウロスの戦いに等しい、いやそれ以上の戦いを見れなかったことが。
レフィーヤがいつになく張り切っていたのは、その影響だろう。
やはり、惜しい。見たかったな…。
アイズは彼につく【疾風】の対決…そして竜女をかばうあの少年の対決…。
アイズは【疾風】を下したが、あの少年を倒すことができなかったそうだ。
あの少年が守る竜女に、自分の幼い姿を重ねてしまったそうだ。
その上、アイズの黒い炎をアイズ自身が疑うようになってしまった。
そしてあの竜女に対して嫉妬してしまったらしい、自分に英雄が現れなかったために。
私は、副団長として失格かもしれんが、アイズの近くにいる者としてそれは嬉しい。
あの少年には多くの意味で、感謝しなければならんな。
そして第一次クノッソス侵攻戦で、我々は大失態を犯した。
邪神タナトスまでも、邪神ディオニュソスにはめられてしまった。
神ペニアが、邪神ディオニュソスの隠れ蓑となり送還されてしまった。
それにより【ディオニュソス・ファミリア】、いや【ペニア・ファミリア】が全滅してしまった。
そして、フィルヴィスの偽死にレフィーヤが壊れてしまった。
邪神タナトスのあがき、そして『異端児』のセイレーンのレイがいなければ、フィンは死んでいた。
『異端児』との一時同盟がなければ、もっと大きな犠牲を払っていただろう。
その一時同盟を持ちかけたフィンを、変えさせたあの少年に感謝しなければならないのだ。
あの少年が投じた一石による波紋で、我々は助かったのだ。
それだけではない。
レフィーヤたちが会った邪神タナトスが示した絵画についても、あの少年は知っていた。
アイズたちがオラリオ中を探し回っても見つからなかった情報を、あの少年は持っていたのだ。
邪竜ニーズホッグ…『精霊の六円環』の逸話を知っていたのだ。
あの少年の祖父が作成した物語とのことだが…、この世界の中心と呼ばれるオラリオでも見つからなかった情報を、何故知っているのだ?
あの少年の祖父は、一体何者なのだ?
それは後にしよう。
ともかくあの少年がもたらした情報のおかげで、邪神ディオニュソスの企みが大体判明した。
第二次クノッソス侵攻戦へは、【ロキ・ファミリア】、【ヘルメス・ファミリア】、【ヘファイストス・ファミリア】、【ガネーシャ・ファミリア】、【ディアンケヒト・ファミリア】、…そしてフィンの説得により【フレイヤ・ファミリア】が参戦した。
後で聞いた話だが、地上では【ニョルズ・ファミリア】、【ゴブニュ・ファミリア】などがフォローしてたらしい。
ティオナ、ティオネがいる戦場へは【カーリー・ファミリア】が乱入してきたらしい。
そして…あの少年がいる【ヘスティア・ファミリア】が参戦した。
彼らの参戦は、我々にとって非常に大きな助けとなった。
これまでの戦いで多くの死者がでたが、彼らが参戦してからは死者は最小限だったそうだ。
フィンとタメ張るくらいの頭脳を持つ、小人族のリリルカ・アーデ。
私やガレスのフォローがあったにしろ、あそこまでの指揮は大したものだった。
まだ10代と聞き、驚いた。その歳のフィンより遥かに凌ぐだろう。
フィンの花嫁候補と打診してたようだが、既にあの少年に絶対の忠誠を誓っているそうだ。
その忠誠が愛なのかは不明だが、フィンとしては残念な結果になったな。
ガレスから聞いた話だが、ヤマト・命も非常に大きな助けとなったらしい。
彼女は重力の檻を発現する魔法を出し、『穢れた精霊』の魔法を悉く防いだとのこと。
ガレスも前線に出るようになり、大きな打撃を与えることができたらしい。
そして、攻守とともに優れてかなり助けになったらしい。
そして…私の戦場ではエルフの里を焼き払ったラキアの、魔剣貴族クロッゾの子孫であるヴェルフ・クロッゾが参戦した。
彼の参戦は正直複雑だった。
レベル2で魔剣を打つだけで大した戦力にはならないと思っていたが、それは大きな誤りだった。
彼は…私達魔導師、いや魔法を扱える全ての天敵だった。
魔力爆発を誘引する短文詠唱の持ち主だった。
しかも、砕けない魔剣を持ち放つことができるのだ。
ふざけるな、と言いたくなったくらいだ。
【白妖の魔杖】ヘディン・セルランドも言っていたが、つくづく我々エルフとの相性が悪い。
敵には絶対にしたくない。するなら、すぐさま倒さなければならない。
だが…、味方にすればこれ以上頼もしいものはない。
『穢れた精霊』は彼にとってただの火薬庫だったようだ。
私、いや私たちにとって大きな助けとなった。
団長であるあの少年は…我ら【ロキ・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】の援護をしてくれていた。
目的は、囚われとなっていた【デメテル・ファミリア】救出のための遊撃だった。
神デメテルは邪神ディオニュソスによって彼らを人質に、言うことを聞かされていたのだ。
人質である彼らを救わなければならなかった。
だが、そこを見越してか多くの食人花などを配置していた。
彼らをかばいながら戦うのは容易ではなかった。
そこを助けてくれたのが、あの少年だった。
ナルヴィやクルスの話では、アイズとダブってしまうくらいの強さだったそうだ。
レフィーヤの葛藤がやっとわかった、と言ってたな。
そのおかげで囚われとなっていた彼らを全て救い出し、離脱に成功できたのだ。
レフィーヤとベートの戦場では、死んだはずのフィルヴィス・シャリアがいた。
いや、彼女が二人いたと言ったほうが正しい。
彼女は魔法で常に分身していたのだ。
遠征時で忽然と姿を消したのは分身魔法を解除したからだ。
1つとなった、フィルヴィス・シャリアは…アイズと戦った怪人を凌ぐ、怪人だった。
アイズと戦った怪人は肉弾戦や接近戦のみだった。
だが怪人となったフィルヴィス・シャリアは、魔法を使えるのだ。
そう…短文詠唱の魔法が恐るべき攻撃力を持ち、多くの死者を出してしまったのだ。
レベル7に相当する強さで、肉弾戦だけでベートをあっという間に倒したそうだ。
これまでと思った時に、【ヘルメス・ファミリア】が駆けつけた。
【万能者】、元【イシュタル・ファミリア】から改宗した【麗傑】、そして彼女…【疾風】が大きな助けとなりレフィーヤを守った。
本当にありがたかった。
ここでも、【ヘスティア・ファミリア】に大きく助けられた。
…元【イシュタル・ファミリア】のサンジョウノ・春姫。
メレンで、フリュネ・ジャミールをアイズと互角に戦えるほどにする、妖術を扱える者だった。
彼女は…レベルを1段階一時的にランクアップできる妖術の持ち主だった。
メレンの時は1人だけだったが、あれからスキルか魔法を習得したのか複数人に放つことができたのだ。
フィルヴィス・シャリアを相手にする戦場では、一気にレベル5が4人揃い大接戦となったそうだ。
特にレフィーヤの魔法…いやスキルが大きかったらしい。
だが…レベルの差がありすぎた。
フィルヴィスの魔法は全てを一掃し、彼らを地に伏せてしまった。
だが、サンジョウノ・春姫はまだ妖術を1つ残していたのだ。
レナ・タリーがベートを目覚めさせ、妖術を下しランクアップさせたのだ。
レベル7となったベートと怪人フィルヴィス・シャリアの激闘となった。
だが邪神ディオニュソスはまだ、奥の手を隠していた。
『穢れた精霊』を宿した深層の竜…邪竜ニーズホッグを模倣した『穢れた精霊』が本命だったのだ。
我々が危惧していた『精霊の六円環』はダミーだった。
邪神ディオニュソスの真の目的は、オラリオの崩壊ではなく…我々高レベルの冒険者の死だったのだ。
それを証拠に各戦場でもう少しで倒す寸前で『穢れた精霊』が全回復し、強化された。
疲労困憊だった我々は万事休すかと思う時に、体に、心に、響く大鐘楼の音が聞こえたのだ。
フィンが乾坤一擲であの少年を、邪竜ニーズホッグを模倣した『穢れた精霊』にぶつけたのだ。
下界の可能性を…未知を、邪神ディオニュソスへぶつけたのだ。
そして、私たちもその大鐘楼の音に激励されたかのように立ち上がり『穢れた精霊』たちを悉く撃破した。
ラウルから聞く限り、あの少年も邪竜ニーズホッグを模倣した『穢れた精霊』を跡形もなく消滅させた。
そしてレフィーヤたちも同じように立ち上がり、怪人フィルヴィス・シャリアを死闘の末、撃破することができたのだ。
最後は分身し、1人は邪神ディオニュソスへ…もう1人はレフィーヤへ別れの挨拶を告げた。
そして、アイズは怪人レヴィスとの戦闘で黒い炎に堕ちる寸前だったそうだが、あの少年の大鐘楼の音に目覚め、黒い炎が消えアイズ自身とあの少年との絆によって生まれた白い風によってレヴィスを撃破できたそうだ。
我々は、【ヘスティア・ファミリア】…特にあの少年に助けられたのだ。
でなければ、我々だけでなくオラリオも消えていただろう。
本来ならあの少年は、大いに賞賛されるべきなのだ。
決して我々【ロキ・ファミリア】ではない。
はい、79話に続き原作+ソード・オラトリアを振り返ったリヴェリア様視点です。
次の話もリヴェリア様視点ですが、現在に戻ります。