先日の戦いを受け、翼はその身に受けたダメージによって戦線離脱を余儀なくされるのだった。
その姿を間近で見ていた響は悩み続けていた。
「私がいつまでも未熟だったから、翼さんが」
そう言いながら、しあわせ湯にある休憩所で一輝に悩みを打ち明けていた。
仮面ライダーとして、自身を守ってくれた一輝に対して、これからどうするべきか、迷っている彼女は
「私は……どうしたらいいのか、わからないんです」
そう言って、涙を流す。
そんな彼女の言葉を聞き、一輝もまた考える。
だからこそ
「本当に、簡単な事かもしれないけど、未熟だったら、変われば良いと思う」
「え?」
その言葉を聞いた響は顔を上げると、そこには笑顔の一輝がいた。
「俺も、未だに仮面ライダーとして戦って、合っているかどうかなんて分からない。
だけど、いきなり変わろうなんて思わなくても良い。
今の響ちゃんができる事から変わっていく事、それが一番大事なんじゃないかな? 例えば、今こうして悩んでいる事もその一つだよ」
「私にできる事……」
それを聞いて、少しだけ心が軽くなった気がした。
それと同時に、自分の事を考えて話してくれる彼の優しさに触れて、胸が熱くなる感覚を覚えた。
「やっぱり、一輝さんには敵わないなぁ」
「ん?何か言った?」
「いえ、なんでもないです。
私、変わって見せます!
未来や皆の笑顔の為にも、強くなります!」
「よし、その調子だ!」
「だけど」
「んっ?」
そこで、響は少し困ったように笑みを浮かべる。
「いきなり強くなると言っても、どこで強くなったら良いんでしょうか」
「……確かに」
流石にすぐに答えが出なかった。
『なぁなぁ一輝』
「なんだよ、バイス」
そんな事を考えていると、バイスが突然話しかけてくる。
『いやさ、ぶっちゃけ俺達よりも絶対に強そうな奴、一人いるじゃないか』
「強そうな奴?
誰だ?」
『弦十郎ちゃんだよ!
いや、ぶっちゃけ、変身している俺達でも勝てるかどうか、不安になる程なんだけど』
「あぁ」
それと共に一輝が思い出したのは、翼を止めた時の弦十郎の動きだった。
それまで、まるで気配を感じなかったが、確かに強い事も考えると
「それ、良い考えかもしれないな」
「えっ、どうしたんですか?」
バイスの意見を採用するように、一輝は笑みを浮かべる。
しかし、バイスの姿が見えない響は、不安を感じずにはいられなかった。
「響ちゃん、師匠の候補、いたよ!!」
それから1週間程の時間が過ぎた。
その日、フェニックスに呼び出されていた一輝は、とある作戦を聞かされていた。
「護送ですか?」
「あぁ、どうやら二課で保管されていたデュランダルを別の場所に運ぶようだ。
その作戦に合わせて、俺達フェニックスも彼らの護衛を行う事になった」
そう言いながらヒロミは作戦の詳細を記した紙を一輝に渡した。それを確認しながら、一輝はある事に気がつく。
「あの、そういえば、大二は今はどこにいるんですか?
ここしばらく連絡がなくて」
「大二は今、別件で動いてもらっている」
「別件ですか」
そう言われ、一輝は首を傾げる。
「あぁ、詳細は俺にも聞かされていないが、安心してくれ」
「分かりました」
(なんだ?)
その時のヒロミの様子を見て、一輝は疑問を抱く。
だが、それ以上気にする事もなく、作戦の内容を確認した後、その場を後にした。
「ふぅ、しかし、本当に良いんですか、若林司令官」
それと共に後ろにいる若林司令官に話しかける。彼はどこか心配そうな表情を浮かべながらも、小さくうなずく。
「大二が現在行方不明な事を五十嵐一輝に知られたら、精神的に動揺する可能性が高い。
ならば、今は黙っている方が良い」
「……わかりました」
「すまないな」
申し訳なさそうな声を出す若林に対し、ヒロミは何も言わず、ただ黙って頭を下げた。
そして、護送作戦の当日。
一輝はへリに乗り込んでいた。
「それで、なんで俺はこのヘリに?」
「敵の油断を誘う為にだ。
護衛車に乗らない方が良い。
ならば、どこからでもすぐに向かえるここが一番だろ」
『えっ、でも、どうやって?』
「プテラでは間に合うか、どうか」
そう不安に思いながら一輝は言う。
「そういう時はこれ!
トップスピードで走るライノバイスタンプだ!」
それと共にジョージ・狩崎はそのまま一輝に渡す。
「ライノ?
という事は、サイ?」
「突進力は抜群だからな。
どうやら、ナイスタイミングのようだ」
その言葉と共に、見ると、デュランダルを乗せた護衛者を襲うノイズの姿を見る。
「行くぞ、バイス!」
『了解!!』
それと共に一輝はそのまリバイスドライバーを腰に回し、そのままライノバイスタンプを起動させる。
【ライノ!】
そのままライノバイスタンプをリバイスドライバーに装填すると共に、一気に構える。
「変身!」
【バディアップ!最硬!最速!最高潮!ライノ!キャストオフ!】
その音声が鳴り響くと同時に一輝の身体は先程までのボディスーツを思わせる姿から一変。
身体の各部には重装甲ともいえる赤い鎧を身に纏い、同時にその仮面はまるでサイを思わせる一本角が生えていた。
「ふっおれっちが全ての中心だぜ」
それはバイスも同様に変わっていた。
それは既に人型ではなく、バイクだった。
一輝と共通して、サイを思わせる要素は見られるが、カラーリングや全体的なフォルムなど全てが異なっていた。
「行くぞ、バイス!」
その叫びと同時に一輝はそのままバイスに乗り込むと共に、エンジンをかける。
【リミックス!必殺!取っ替え!突進!サイ!】
同時に一輝がバイスへと屈むように乗ると同時に、そこにはまるで巨大なサイを思わせるバイクとなり、走り出す。
へリから降り立った一輝達はそのまま高速道路を一気に走り抜け、そのまま目的地に向かって行く。
周りに集まりだしたノイズを蹴散らしながら、そのまま突っ込み、切り裂くように振り払う。
そして、それを合図とするかのように一輝とバイスは一気に加速し、突き進む。
「ちっ、またっあいつかよ!!」
未だに目的であるデュランダル奪取を行えず、焦るクリスはソロモンの杖で次々とノイズを放っていく。
しかし、それは今の一輝達にとってはただの障害物にもならなかった。
やがて、目的地である響の元へと辿り着くのに、それ程時間はかからなかった。
「無事か、響ちゃん」
「一輝さん、はい!」
一輝の姿を確認すると、笑みを浮かべながらも、目の前にいるノイズを蹴散らす。
それは、ついこの間までノイズから必死に逃げる事しかできなかった姿とは思えない程に力強く、自信に満ちた表情をしていた。
その姿を見た一輝も小さく微笑んだ後、同じように拳を振るう。
「響ちゃん、デュランダルはどこに」
「確か、あそこのケースに」
そう指を指した瞬間、ケースに異変が起きた。
突如内側から爆ぜる様に壊れ、中から何かが飛び出すと共に、先程まで錆びた剣としか思えないそれは徐々に黄金の輝きを帯びた剣へと変わっていく。
「まさか、覚醒したっ」
それを見ていた了子は驚きを隠せなかった。
その中で、一人デュランダルに向かって、飛び出したのはクリスだった。
それを阻止するように響が背後からクリスに身体ごとぶつかる。
「渡すものかぁぁぁぁぁ!!」
そのまま勢い良くデュランダルへ手を伸ばし、その柄を掴む。しかしその瞬間、眩い光が辺り一面を覆う。
デュランダルを手にした事により、シンフォギアシステムの機能が向上した結果なのか、今までとは比較にならない程のエネルギー反応を示していた。
それはデュランダル自体の力だけではなく、持ち主となった響の力も相まっての事なのかもしれない。
だが、その強すぎる力は響から理性を奪っていた。
「響ちゃん!?」
一輝の声に反応して振り返った時には既に遅かった。
デュランダルを振り上げ、そこから巨大な光を生み出していた。
「おいおい、あれって、やばくないか!!」
「あぁ、このままじゃっ」
そう一輝は目を見開くと共に、次に目を向けたのは、クリスだった。
先程まで敵であり、未だに名前も知らないクリスはデュランダルに対して驚きを隠せない表情だった。
同時に、響は腕を大きく振り下ろし、その光を真っ直ぐとこちらに向かっていた。
「バイスっ止めるぞ!!」
「えっ、ちょ、一輝!!」
バイスの返答を待つ前に一輝はリバイスラッシャーを取り出し、リバイスドライバーに装填されていたライノバイスタンプを押印する。
【スタンプバイ!Here We Go!Let's Go!Here We Go!Let's Go!リバイバイスラッシュ!】
リミックスを行っている状態での同時に行う必殺技。
それはリバイスラッシャーから巨大な光の刃を作り出し、そのまま襲い掛かるデュランダルの光を押さえ込む。
「ぐっ!!」
デュランダルの光を受けながらも、全身の力を決して緩む事なく、立ち向かい続ける。
「お前っまさか」
クリスは一輝が自身を守る為に戦っている事に気付くと、目を見開く。
「はあああぁぁぁ!!」
一輝は全身の力を込めながら、迫り来るデュランダルの光をなんとか逸らす事に成功する。
しかし、逸らした先には工場地帯は爆発を起こさせ、大きな煙を上げていた。
デュランダルの一撃を受け止めた一輝は変身解除され、生身のまま地面に背中を打ち付ける。
『おいっ一輝!寝るんじゃない!!
まだ、ネフシュタンの奴がいるぞ!!』
聞こえてくるバイスの声は一輝の耳元に聞こえるが、先程のデュランダルの光を受けた事で、既に体力は限界を迎えていた。
「まったく、とんだお人好しだよ。
敵である、私を助けるなんて」
そう言いながら、クリスは一輝を睨む。
それと同時に、上空にはヘリが飛んでいた。
恐らくはフェニックスの応援が来たのだろう。
ならば、ここは撤退するしかないとクリスは思っていた。
「この借り、何時か返すからな」
それだけを言い残し、クリスはその場から姿を消した。
「一輝っ無事か!!」
やがて、クリスが立ち去るのと入れ替わるようにヒロミが駆け寄る。
「なんとか、それよりも響ちゃんは」
「あぁ、無事だ。
お前達のおかげだ」
そう言うと、遠くではデュランダルの影響で黒く染まっていた姿から元に戻っており、今は意識を失っているようだった。
その姿を見て一安心したのか、一輝はゆっくりと目を閉じた。