「ネフシュタンの少女か」
『おいおい、一輝。
なんだか、調子が変じゃないかぁ?』
その日の夜、一輝は夜の街中を歩いていた。
すっきりしない頭を切り替えるように、買い物を行っていた一輝の頭に思い浮かんだのは、以前の戦いで庇ったネフシュタンの少女の事だった。
自身や響と共に敵対している少女だと言う事も分かっているが、それでもあの時見せた何か悔しそうな表情を一輝はなぜか頭から離れなかった。
『なぁなぁ、一輝』
「なんだよ、バイス」
そんな悩みをしていると、先程から話しかけてくるバイスに対して、少し目を向けると
『なんだか、あの子達泣いていないか?』
「泣いている?」
どういう意味なのかと思い、見てみると、そこには夜の公園のベンチで寝ている兄妹がいる。
それは近所からよく遊びに来る子供という事で一輝は知っているが、それと一緒にいる少女はまるで知らなかった。
「年齢としてはさくらと同じくらいの年だと思うけど、どうしたんだ?」
一輝は気になり、すぐに近づいた。
「どうしたんだ?」
「っ」
女の子は一輝の声に気づくと、なぜか警戒するように振り向いた。
その理由がまるで分からず、困惑しているが
「あっ一輝兄ちゃん!」「一輝兄ちゃんだ!」
俺を見て、安心したように笑みを浮かべていた。
「なんだ、お前達。
いつも一緒にいる父ちゃんはどうしたんだ?」
「それが、迷子になっちゃって、それでどうしたら良いのか分からなくて」
「そしたら、このお姉ちゃんが一緒に探してくれるって言ってくれたんだ」
「なっ何を言っているんだ」
そう、妹の方が笑いながら答える。
それに対して、少女は顔を赤くさせながら言う。
「そうだったのか、ありがとう!
だったら、俺に任せてくれ!
すぐに父ちゃんに会わせるからな!」
「本当!」
「おう、五十嵐一輝にお任せあれ!」
胸を叩き、自信満々に答える一輝だが
『おいおい、本当に大丈夫かよぉ~』
(うるさい)
バイスの不安そうな声に、内心で返す。
そして、一輝は兄妹を連れて行こうとするのだが
「あっ?」
妹の方が少女の手を繋いでいた。
「何をしているんだ」
「えっ、一緒に来てくれないの」
妹は潤んだ目でそのまま少女を見つめ始めていた。
戸惑いを隠せない少女に対して、一輝は苦笑いをしながら
「えっと、ごめん。
もしも、少し用事がなかったら、少しの間だけで良いから、一緒に近くの交番まで来てくれない!」
このままだとまずいと思った一輝は頼み込んだ。
それを聞いた少女は困ったような表情をするが
「仕方ない。
あの時の借りもあるしな」
「借り?」
少女の言葉に思わず一輝は首を傾げるが
「行くぞ!」
少女はそのまま手を引いて歩き始めた。
それに慌ててついて行きながら、一輝は思う。
(それにしても、この子、どっかで会った事があるような気がするんだよなぁ)
一緒に歩いている少女にどこか懐かしさを感じながら、一輝達は歩く。
その道中では、少女と妹の会話を聞いていて、なんとも微笑ましい光景だと思っていた。
やがて、目的の交番に辿り着くと、丁度、兄妹を探していた父親を見掛けた。
「お前達、どこに行っていたんだ」
すると、心配していた父親は暖かく迎えてくれた。
それを見た瞬間、一輝も安心して息を吐く。
「良かったね」
「うん!」
「そうだな」
無事に父親と再会できた事に喜んでいる二人を見ながら、一輝は呟いた。
そうして、三人を少女と共に見送った。
「どうしたんだ?」
いつの間にか、隣に来ていた少女が一輝に聞いてきた。
「なんでもねぇよ。
それじゃ、私はこれで」
「あっ待って!
良かったら、何か奢らせてよ。
頼み事をしたお礼に」
「良いよ、別に。
第一、私は借りを返しただけだから」
「借り?」
何の事なのか、分からずにいると
『一輝っ、後ろ!!』
「っ!」
バイスの声が聞こえ、一輝はそのまま少女を抱えて、その場を避ける。
同時に見えたのは、エビルが襲い掛かっていた光景だった。
「エビルっいきなり何をしに来た」
「五十嵐一輝、貴様の始末は後だ。
それよりもやらないといけない事ができたからな」
「っ」
エビルはそれと共に手に持った武器であるエビルブレードを少女の方へと向けていた。
「あいつから伝言だ。
てめぇはもう用済みだ」
「なっ何を言っているんだっ」
意味が分からず、困惑する一輝だが
「何がどうなっているか、分からないが、この子はやらせない。
行くぞ、バイス!」
【ライオン】
それと同時に一輝は懐から取り出したリバイスドライバーとライオンバイスタンプを取り出し、そのまま起動させる。
「変身!」
【ガオーン!ゲットオン!野獣の王!ラーイーオーン!
見ててください!俺の雄叫び!】
そのまま変身する事によって、一輝は仮面ライダーリバイへと変身する。
それはまるでライオンの鬣を思わせるように全身は尖っており、そのままエビルへと構える。
「にゃお」
それはバイスも同じくライオンを思わせるヘルメットを着用しており、そのまま一輝と共に構える。
変身が完了すると共にエビルはそのままエビルブレードを振り下ろし、一輝に襲い掛かる。
だが、迫り来る攻撃に対して、手足から炎を放ちながら、その攻撃を受け流していく。
「こっちも忘れるなよぉ」
その攻撃を一輝が受け止めている間に、バイスはそのまま大きな炎を纏った拳をエビルに振り下ろす。
だが、それを予測していたのか、エビルは大きく飛び上がり、回避する。
しかし、その隙を狙っていたのか、一輝はバイスよりも先に動き出しており、そのまま大きく跳躍する。
上空に飛んでいるエビルに対して、そのまま踵落としを喰らわせるが、咄嵯に腕でガードされ、防がれてしまう。
(硬い!)
その硬さに驚きながらも、そのまま地面に叩きつける。
衝撃により発生した風圧で周囲の物が吹き飛んでいく中、一輝とバイスは着地をすると同時に走り出す。
そして、エビルが目指した先は
「っ!!」
「しまったっ」
それはエビルは近くにいた少女を人質にした事だった。
「五十嵐一輝、こいつを無事に返して欲しければ、変身を解除しろ」
その言葉に一輝は目を見開く。
「おいおい、そんな事を聞くと思っているか?
そんな見え見えの罠を「分かったっ」一輝、おい何を」
バイスの言葉を無視し、一輝はそのまま変身を解除する。
「おいおい、本当に解除するとはな」
呆れ果てた声を出すエビルに対して、一輝は睨み付ける。
それを見たエビルは満足そうな笑みを浮かべると そのまま少女の首元に刃を当てながら、ゆっくりと歩き始め、そのまま蹴り上げる。
『一輝っこの野郎!!』
変身が解除された事で、実態を失ったバイスはそのままエビルに殴りかかる。
しかし、実体がない為、バイスの拳はエビルをすり抜け、空を切る。
エビルは勝ち誇ったような表情をしながら、一輝を蹴飛ばしていく。
何度も、何度も、執拗に、一輝を追い詰めるように。
やがて、一輝を踏みつけたまま
「じゃあな、馬鹿め」
その言葉と共にエビルは大きく足を振り上げるが
「Killter Ichaival tron」
「なっ」
腕に拘束していた少女から聞こえる声。
同時に少女の身体は光に包まれると共に、その姿は変わっていた。
見た目には様々な違いがあったが、それは一輝にとってもよく知る存在。
「シンフォギアっ」
『えっ、どういう事どういう事!?』
何が起きているのか分からず困惑している中で、少女はそのまま拘束しているエビルに向けて、手に持っているクロスボウで殴る。
突然の事で、エビルはその攻撃を直接受けるが、そのままエビルは後ろに大きく下がる。
それに追撃するようにクロスボウでの攻撃を行うが
【ライオン】
何時の間にか、一輝のリバイスドライバーから奪い取っていたライオンバイスタンプを起動させ、そのまま自身のエビルブレードに装填する。
【バーサスアップ!Feel! a thrill! Spiral!仮面ライダーエビル!ライオン!】
その音声と共に、先程までの仮面とは違う、まるでライオンを思わせる白いペイントをしており、エビルブレードから火炎放射が放たれていた。
それは瞬く間にクロスボウからの攻撃を全て解かす。
「さっさと立ち上がれよ、リバイス!!」
「っあぁ!!」
少女の声を聞くと共に一輝もすぐ近くに落ちていたジャッカルバイスタンプを取る。
【ジャッカル!】
起動させると共に、すぐに立ち上がり、そのまま真っ直ぐとエビルに向かって、走りながらリバイスドライバーにジャッカルバイスタンプを装填する。
【バディアップ!
テクニカル! リズミカル! クリティカル! ジャッカル!
ノンストップでクリアしてやるぜ!】
その音声と共に正統派でヒロイックな外見。複眼にはバイザーが被せていた。
「うっそ~ん! 俺っち板なの? ねぇ板になっちゃったのー!?」
それと共に現れたバイスの姿は完全にスケートボードだった。
「よく分からないけど、やるしかないよな!」
バイスの困惑に頷きながらも、一輝はそのままバイスに乗り、走り出す。
【バディアップ!必殺! 軽々! 乗っかる! ジャッカル!】
エビルは向かってくる二人に対して、エビルブレードを構える。
そこから放たれた火炎放射に対して、一輝はまるでプロのスケーターのように華麗に避け、そのままバイスはエビルに突撃する。
その一撃に対して、エビルは大きく吹き飛ばされるが、即座に体勢を整えて、着地する。
だが、少女はクロスボウを変形させたガトリングガンをエビルに向けて放つ。
「ちっ」
エビルの装甲はそこまで硬くないのか、次々と火花が散り、少しずつではあるが、ダメージを負っている事が分かる。
「一気に決める!!」
【ジャッカル! スタンピングフィニッシュ!】
リバイスドライバーから流れる音と共に、一輝はそのまま宙に飛ぶと共にエビルに空中でリバイの足裏にバイスがくっつき、ボードで押し潰すようにキックする。
それによって大きく吹き飛んだエビルは地面を転がりながらも、何とか立ち上がる。
「ちっ、今回はここまでか」
そう呟くと同時にエビルはその場から消え去る。
「あっ待って……」
「逃げたか」
変身を解除した一輝はすぐに倒れている少女の元に向かう。
「ありがとう、助かったよ!」
「別に、あいつが襲い掛かったから、それに対処しただけだ」
「それでもだよ、本当にありがとね、俺は五十嵐一輝、君は?」
「……雪音クリスだ」
「ありがとう、雪音ちゃん!」
「ちゃん付けするな、たく」
ぶっきらぼうな態度を見せる雪音だったが、どこかまんざらでもない様子でもあった。
「とにかく、私はもぅ行くからな」
それだけ言うと、そのまま雪音はそこから去って行った。
「ありがとう!
良かったら、今度、俺の所の銭湯に遊びに来なよ」
「・・・気が向いたらな」
「うん、絶対に来てね」
それだけ言いながら、雪音を見送っていた。
そうしていると、ヒロミを初めとしたフェニックスのメンバーが来ていた。
「一輝、先程まで何が起きた」
「えっ、あぁ、実はエビルに襲われていたんです。
だけど、雪音ちゃんに助けられて、なんとか乗り越える事ができたんです」
「雪音?
まさか、雪音クリスの事か」
「はい。
けど、あんな子が二課にいるなんて、聞いた事なかったんですが、ヒロミさんは知っていますか?」
「それは」
その言葉と共にヒロミは少し戸惑いを隠せない様子だったが
「一輝、一つ聞きたい。
先程の戦闘で、助けに入ったのか?」
「えっえぇ。
危なかった所を助けてくれました」
「・・・そうか」
それだけ聞くと、ヒロミは少し戸惑っている様子だった。
「一輝、もしも、彼女と再び会ったら。
助けてやってくれ」
「えっ、それは勿論ですよ」
突然の頼み事に一輝は戸惑いつつも、しっかりと返事をする。