大二がエビルだった事実。
それは一輝の身体を動かなくするのには十分すぎる程の事実だった。
身体を動かない一輝に対して、大二はその手に持ったエビルブレードでそのまま一輝に向かって切りつける。
しかし、その一撃は一輝に当たる事は無かった。
その前に雪音が割って入り、その一撃を受け止める。
だが、その一撃を受けた瞬間、雪音の身体は大きく吹き飛ばされ、地面に転がる。
「雪音ちゃん!」
その光景を見て、一輝はようやく動けるようになり、すぐに雪音の元へと向かう。
「ぐっ、うぅ」
「ほう、今の攻撃を防ぐとはな」
「大二!何をやっているんだ!」
起き上がる雪音を見て、一輝は怒りの声を上げる。
「お前を殺すのに邪魔したからな」
そう、非情な一言を呟きながら、大二はゆっくりと近づく。
『おい、一輝!
ここは戦わないと、お前も雪音も死んじゃうぞ!!』
「それはっ」
身体から出てきたバイスの言葉に、一輝は戸惑ってしまう。
一輝自身、大二と戦いたくはない。
だけど、ここで逃げれば、間違いなく一輝は殺される。
だが、それでも一輝は大二と戦う事を躊躇してしまう。
「一輝!」
その迷いを感じ取ったのか、雪音は叫んだ。
同時に一輝は腰にあるバイスタンプを取り出しながら、迫り来る大二の攻撃を避ける。
【フロッグ】
そのままバイスタンプを起動させ、それをベルトに装填する。
「変身!」
【バディアップ!響くぞニュー・ロック!跳ねるぞムーンウォーク!フロッグ!運命のバイオリンを鳴り響け!】
その音声が鳴り響くと同時に一輝の姿が変わる。
それはまるで蛙を思わせる姿であり、肩には鎖のような物が巻き付いていた。
「バイで行くぜ!!」
同時にバイスもまた蛙の要素が合わさったような仮面に変わり、一輝の隣に立つ。
「くくっ、良いねぇ、戦う気になったか!!」
それと同時にエビルブレードを手に持ち、襲い掛かる。
それに対して、バイスは舌を伸ばして応戦しようとするが、すぐに弾かれてしまう。
それを見た一輝は即座に肩にある鎖をまるで蛙の舌のように伸ばす。
しかし、鎖が弾かれた方向にはバイスがおり、その鎖を手に持つ。
「行くぞ、一輝!」
「あぁ!」
バイスの言葉と共に走り出す。
互いに鎖を持ったまま、大二へと攻撃に仕掛ける。
それをエビルブレードで防ぐが、その衝撃で大きく吹き飛ぶ。
だが、同時に一輝の肩に巻き付いている鎖が引っ張られる。
「よっほほい!!」
だが、それはバイスも同様であり、引き寄せられたまま蹴りを放つ。
「ぐっ」
「はぁ!」
怯んだ大二に対して、さらに追い打ちをかけるように一輝は大二の腕に鎖を巻き付ける。
「なに?」
「悪いが、大二、少し大人しくさせて貰うぞ」
「なるほどねぇ」
一輝の目的、それは初めから大二の動きを封じて、話をする事だった。
その為にあえて攻撃を受け、隙を作る。
それが一輝の考えだった。
そして、バイス自身もそれを理解すると、すぐさま一輝の身体から離れる。
「相変わらず、お優しいお兄様だなぁ!
けど、そんなお兄様に残念なお知らせがあるんだよなぁ」
そう言いながら、拘束されたまま大二はそのまま一輝に近づく。
「お前が大切にしていた大二は、もうこの世にはいない」
その言葉と共に、大二は驚きに目を見開く。
「何を言っているんだ」
「俺は大二の中にいた悪魔、カゲロウだ。
大二がお前に対する嫉妬によって、生まれた悪魔、それが俺だ」
「なんだと」
「お前は輪の中心にして、皆を笑顔にする。
お前はさぞかし、気分が良かっただろうなぁ」
「違うっ」
否定する一輝に対して、カゲロウはさらに近づく。
「大二は努力を重ねて、フェニックスに志願した。
兄貴がいない所で認められたかったんだろうな。
だけど、お前がそれを奪った」
「っ」
同時に思い出すのは、あの会場で一輝が初めて仮面ライダーへと変身した日。
「お前が仮面ライダーとなり、ノイズから人々を守った。
それが大二の中では大きな嫉妬へと変わった」
そう言って、一輝を見る目はどこか蔑むようであった。
その視線を受けて、一輝は何も言えなくなる。
「そして、あの日、フィーネから渡されたこのベルトによって、俺は完全に目覚め、大二を支配した。
けど、分かるよな、俺が生まれたのも、ノイズによって多くの被害が出たのも、元を正せば、全ては一輝、お前のせいだ」
「…………」
「お前のせいで、多くの人が死んだ! お前のせいで、大二は狂った!! お前が殺したんだ!!」
「ちがっ」
「違わねぇっ!!」
その叫びと共に、大二はエビルブレードを振り上げる。
「違うっ、違う!!」
同時に一輝は腰にある別のバイスタンプを取り出し、リバイスドライバーに押印する。
【カマキリ】
【ブラキオ】
同時にカゲロウもまたブラキオバイスタンプを取り出し、そのままツーサイドライバーに装填する。
【バディアップ!
いざ無双斬り!俺が横切り!カ~マキリィ!俺たちオンステージ!】
【バーサスアップ!Feel! a thrill! Spiral!仮面ライダーエビル!ブラキオ!】
その音声が鳴り響くと共に一輝の姿はカマキリを思わせる鎧武者の姿へと変わり、その手には鋭利な刃が弓に備わった武器を手に持つ。
バイスもまたビス留めされた肩アーマーや、カマキリの翅のような腰マント、デフォルメされたカマキリの様な顔が特徴的な姿へと変わる。
そして、エビルもまた姿が変わっており、その仮面の色は灰色になっていた。
同時にその手に持っていたエビルブレードは巨大な鞭のように刀身が伸び、一輝達に襲い掛かる。
それに対して、一輝はその手に持った弓でその攻撃を受け止める。
「ほわっちゃぁ!!」
それの隙間をバイスは手刀でエビルに襲い掛かる。だが、エビルはそれを片手で受け止める。
すると、バイスの身体が宙へと浮き上がる。
同時にその腕を掴み、一本背負いのように地面へと叩きつける。
同時に地面には大きな亀裂が入り、バイスが叩きつけられた場所は陥没する。
しかし、一輝はその手に持っている弓を構え、そのままエネルギーの矢がカゲロウに襲い掛かる。
しかし、エビルはすぐに鞭のようにエビルブレードを広げ、その攻撃を弾き飛ばす。
だが、同時に一輝はカゲロウに向かって走り出す。
同時にバイスもその背中を追うように走り出す。
振り下ろされる一撃に対して、一輝は横に避け、その脇腹に回し蹴りを放つ。
蹴り飛ばされたカゲロウの隙を逃さず、バイスはそのまま飛び掛かり、拳を連続で放つ。
だが、それをカゲロウは片足で防ぎ、その勢いのままバイスの顎に膝を打ち込む。
「ぐぅ!」
「ほぉ!」
同時に二人の攻撃を防ぐと同時に、一輝はそのまま高くジャンプし、上空から無数の矢を放ち、バイスとエビルを襲う。
それに対し、二人は互いに左右に分かれ、回避行動を取る。
「やるねぇ」
「ふん、この程度か」
「なら、これはどうだい」
そう言うと共に、一輝はリバイスドライバーに手を伸ばす。
【リミックス!バディアップ!必殺!コマ斬り!ブッチギリ!カマキリ!】
逆立ちしたバイスがリバイの両肩に足先を乗せ、リバイの腕がカマキリの前脚、足が複腕を担い、バイスは腕が後脚、足先がカマキリの目を構成し、新たな姿、リバイスカマキリへと姿を変える。
同時にリバイスは空中へと浮かぶと、両腕を交差させながら、一気に開く。
その瞬間、周囲に竜巻が発生し、周囲の瓦礫を巻き込み、カゲロウスに向かっていく。
それに対して、エビルはエビルソードを振り上げ、風を切り、そのまま衝撃波を生み出す。
同時に発生した二つの暴風がぶつかり合い、周囲を破壊する。
「まだまだぁ!!」
その言葉と共に、バイスは両足に力を入れると、そのまま高速移動を始める。
その姿はまるで残像を残すかのような動きであり、その速さは常人の目では追いつかないほどであった。
「ちぃ」
「遅いっ」
その声と共にバイスの強烈な右ストレートがエビルの腹部に入り、吹き飛ぶ。
「これで!!」
その言葉と共に手に持った鎌をカゲロウに向けようとするが、瞬時にエビルは変身を解除する。
「辞めて、兄ちゃん!!」
「っ!?」
カゲロウは、まるで大二のように振る舞い、手を前に出す。
それによって、一輝は一瞬戸惑い、そのまま姿勢を崩れてしまう。
同時にカゲロウは笑みを浮かべながら、一輝を見る。
「悪魔のおれっちが言うのもあれだけど、卑怯者!!」
「あの野郎!!」
その行動を見て、バイスと雪音は叫ぶが、カゲロウはそれを無視し、すぐにバットバイスタンプをツーサイドライバーに装填し、構える。
【必殺承認!バット!ダークネスフィニッシュ!】
同時に、カゲロウはそのまま青緑色の稲妻を纏って巨大なバイスタンプ型のエネルギーを生成し、飛び回し蹴りを一輝に放つ。
それと同時に一輝は弓矢を構えるが、間に合わない。
一輝の視界が白に染まり、爆発が起きる。
「一輝!!」
それと共に一輝の変身は解除される。
「てめぇ」
雪音はすぐに構えようとするが、カゲロウはそのまま一輝を踏みつける。
それは、一輝を何度も踏みつける。
「大二っ大二っ」
一輝はカゲロウの中にいる大二に語りかけるように、足に手を伸ばす。
「しつこいなぁ、大二はもういないんだよぉ」
「違う!!大二はまだ生きている!!」
「そんな訳ないだろぉ?もぅ、大二は俺の中からは出てこないんだよぉ!」
それと共にカゲロウは再びエビルブレードを一輝に振り下ろそうとした時だった。
「悪いが、それ以上はさせない」
「っ」
聞こえた声と共に、カゲロウの手を掴んだのは弦十郎が掴んでいた。
『弦ちゃん、ナイス!』
それを見たバイスは思わず言う。
だが、カゲロウはすぐに手を振り払い、後ろに下がる。
「邪魔をするのかよ?」
「悪いが、これ以上兄弟同士の戦いをさせるわけにはいかないんでね」
そう言いながら、弦十郎は一輝を守るように前に出る。
「ちっ、てめぇと戦うには、些か準備不足だな。
仕方ない」
カゲロウはそう呟くと共に後ろへと下がる。
「また逃げる気か!」
「うるせぇ!」
それと共に、カゲロウはそのまま姿を消す。同時にその場にいた全員が安堵するが、一輝はゆっくりと目を閉じる。
(大二……)
それと共に一輝の意識は遠のいていく。