少女は本当に自分の能力が発動しないかと俺に問いてきた
「ああ、俺の目では完全に言葉を発する時に力は漏れてきていないからお嬢ちゃんの能力はほぼ完全に無効化したと言っても過言ではないな」
一通り説明したあたりで今度は質問してみることにする
「なあ、所で嬢ちゃんの能力が気になるんだが一体どんなのなんだ?」
少女は一瞬躊躇った。しかし意を返して質問に答える
「……私の能力は『口に出すと事態を逆転させる』程度の能力……少し話すだけで何かを逆転させてしまうの……」
少女は落ち込んだような表情をしている
「なんだ同族じゃないか」
少女は首をかしげる
「オレは天邪鬼だぞ?確かに種族という観点で見ると神と妖怪だから違うけど、能力は変わらないじゃないか」
「!!……確かにそうね。じゃあ……親戚みたいな感じなの?」
「……まあそうだな」
少女はどことなく嬉しそうな顔をした。
「……稀神サグメ…」
「ん?」
「私の名前は嬢ちゃんじゃなくて稀神サグメよ……」
「……ならサグメちゃんって呼んだほうがいいか?」
「そうじゃない……サグメって呼んで。貴方に言われると子供扱いされてる感じがするから」
「ふーん、ならなおさらちゃん付けしたほうがいいな」
「そうじゃない……!」
「あの天邪鬼はえらくあの神に気に入られたようじゃの
……」
二人が話している中鬼は遠目で見ていた。
(……あまり長居すると見つかるかもしれんからそろそろ移動したいんじゃが)
そう考えているうちに扉が勢いよく開いた
「ここに妖怪がいたか!!おい妖怪、稀神様から離れろ!!」
都の兵士達が剣を俺達に向けてきたがサグメちゃんの後ろに回り込む
「ふーん、そう言われると余計にこいつに近づきたくなるなぁ」
もはや近づくというよりは密着といったほうが良いほどだ。転邪は全く緊張した様子はなく、むしろイタズラしているような表情である
「……まあいつまでもここにいるわけにはいかないからさっさとトンズラしますよ」
能力が発動する。部屋にいた天邪鬼と鬼は一瞬で姿を消し代わりに笑ったような顔をしたマトリョーシカに似た人形が落ちてきた
「稀神様、大丈夫ですか!?」
一人の兵士はサグメに声をかけた
「ええ大丈夫よ。それよりも……あの妖怪達を探さなくていいのかしら?」
「申し訳ありません!これから捜索します!!」
兵士達は慌ただしく部屋を出ていった
「……あ、あの方達の名前を聞き忘れてたわ」
一方部屋から脱出した二人は絶賛兵士達と追いかけっこ中だった
「まて妖怪め!」
「待てと言われて待つやつがいるかよ!」
だが今の状態はジリ貧と言ってもいい。至る所から兵士が出てくるのでこのままでは捕まってしまうだろう
(こうなったら賭けではあるが……)
「おい鬼よ、あの集団に飛び込むぞ!」
転邪が指を指した先は大勢の人間がいる場所だ。
「お主正気か!?」
「あたりめえよ、おらおらみんなひっくり返っちまえ!!」
もはやテロと言ってもおかしくないくらい無差別に能力を撒き散らす。全ての物事がひっくり返りとある男性は髪が一瞬でなくなり、対して頭が寂しい男性はフサフサになるなどあらゆる事をひっくり返した
「ギャーー!! オレの髪がーー!!?」
「ああ、夢でも見てるのか!?」
転邪の行いによって街はパニック状態となり街中で騒動が発生したスキをみて二人は脱出した
都から暫く離れ、人の気配が完全になくなった事でようやく一息つくことができた
「お主……これは指名手配されたかもな」
「なに、いつものことじゃないか。それに楽しかっただろう?」
「まあそうじゃが……」
「それに……あの都の奴らがとんでもないことを考えてるのも分かったしな」
いつの間にか手に持っていた書類を鬼に見せた。暫く鬼は目を細めて読んでいたがある文をみて目を丸くする
「……月へ移住するじゃと!?」