「う……ん? ここは……」
目を覚ますとそこは今はもう存在しないはずの都会の高層ビルの町並みだった。辺りはライトがついて活気だっているかと思いきや、誰一人もいない異質な空間が恐怖に感じた
(夢でも見てるのか……?)
「その通りですわよ」
声が聞こえたのでそちらに視線を向けると道路のど真ん中にピエロのような格好をした奴と稀神サグメがいた
「へー初めて貴方の夢に入りましたけど面白いですわね。まるで別世界みたいだわ」
「あんた俺の考えていることが分かるのか。それより誰だよアンタは」
「おや、これは失礼しました。私は『ドレミー·スイート』ですわ、以後お見知りおきを」
何となくだが面倒くさそうな奴な気がしたので早く夢から覚めたいのだが
「ていうか何でサグメちゃんもいるんだい?」
「貴方に用があって来たのよ」
てっきり彼女は黙ってあのドレミー何とかが話すのかと思っていたので少し驚いた
「あれ? もしかしてここでは能力が使えないのか」
サグメは首を縦に振る。となると俺の能力もここでは使えないのか……
「あ、そんな構えないでくださいよ。私達は別に戦いに来たのではないのではないのですから」
「じゃあ何のようだよ?」
するとサグメはこちらに近付いてきた
「用があるのは私。彼女は貴方の夢に入るための案内人なだけよ」
「なるほど………獏か?」
獏とは夢を食べる妖怪であり、確か人の夢に干渉する妖怪だったかと思い出す
「正解よ、ついでに言うと夢の管理人でもあるわ」
「どうりで俺の思考が読めるわけだ。大方アンタは夢の中限定だと無敵時間じゃないのか?」
「ええ、後貴方が夢にいる限りは貴方の記憶までこの本でわかるわ」
手に持っている本に全て書かれているらしい
サグメは俺等が話しているのをよそに手に持っている謎の白く光った玉をこちらに差し出してきた
「これを受け取って欲しいの」
「これは……?」
「いいから……」
流石によくわからない物は受け取りたくないので断ろうとしたら無理やりでも俺に受け取らせようとしてくる
「いや流石に怪しい物は受け取れないんだけど……」
「……これを使えば貴方の体の自然治癒が早くなるわ」
なんと言うか誤魔化したような言い方だったので少し信用ならないが……
「本当だな?」
「……当たり前よ、嘘は言ってないわ」
……まあ回復が早くなるというのなら受け取ることにする
「なあサグメちゃん、これどうやって使うんだ?」
「……ちゃん付けは辞めてくれたら教えてあげる」
まさかの交渉が始まった
「何でだ、可愛いだろ?」
そう言うと不服そうな顔をしたので黙らせるために頭を撫でる
「……私は子供じゃないんだけど」
「何言ってるんだ? まだ餓鬼には早いだろ」
「………」
あ、頬を膨らせて起こってるかわいい
「……仕方ねぇな、サグメでいいのか?」
途中で涙を流し始めた(多分嘘泣き)ので流石に可愛そうになったのでサグメを抱いてあやすことにした
「それでいい……」
「……そろそろ下ろしていいか?」
「いいわよ。悪かったわね」
サグメを下ろすと一瞬残念そうな表情をしていたが直ぐに普段の顔つきに変わった
「なんだい、まだ本当は物足りなかったのか?」
「……そうではない」
相変わらず表情がないから思考がわかりにくい
「結局私のちゃんと受け取ってくれるよね?」
「ああ、それはいいんだが……こんなのどうやって使えばいいんだ?」
本当に外見はただの光っている玉にしか見えないので用途が全く分からない
「時期にわかるわ」
「それはどういう………」
するとサグメの手にあった光の玉がフワフワと宙に浮かび始めこちらに向かってきた
そしてそのまま俺の胸元に来たかと思っていたら突然勢いよく体に入っていった
「一体何がおきて………ッガ!?」
玉が体内に侵入した瞬間体中が悲鳴を上げた。まるでさっきの異物を拒否するかのようだ
更に夢の世界にも異変が起きた。さっきまでの高層ビルの町中、景色まで変化して都の景色が混じった光景へと変わる。
ノイズが出ている様な雑音が鳴り響くなかで不味いと考えたドレミーはサグメに話しかける
「サグメ様、そろそろ彼の夢の世界が崩壊しますので脱出しましょう」
「たしかにそうね………ちょっとまってて」
サグメは倒れている転邪の前まで行き藻掻いてる転邪の上半身を抱きかかえる
「大丈夫です。苦しいのは今だけです………その後は私に近づくことができますから……それまで耐えてくださいね?神を惚れさせた代償は大きいですから仕方ないですけど……」
「サ、グメ……?それはどういう……」
サグメの言葉に疑問しかない転邪であったがその意味は遂に聞くことができなかった
「サグメ様、本当にこれ以上は……」
「……名残り惜しいけれどこれまでのようね」
最後に転邪の額にキスをして一瞬にしてどこかに行った
「クソッ、次会ったときはぜってぇ殴るってやるからな………覚えてろよ……………」
最後はサグメを怨みながら崩壊した夢の中で気絶した………
「……っは!?」
目が覚めたら洞窟の中だった。周りには部下達の付喪神と俺の腕の中に目を閉じている萃香がいた
「指揮官、怪我は大丈夫でしょうか!?」
自分の体を見つめる。服装はボロボロと言ってもいいほどだったが、身体には全く傷が無い
どうやら夢の中のサグメが言ったように治癒されている。包帯等の治療がされていない事から自然治癒でここまで回復したと考えるのが妥当だろう
「俺は問題ないが……お前達はもう駄目そうだな」
付喪神達は満身創痍というに相応しい状態だ。目の前で話している奴も片腕が無いし、顔色も優れていない。更には本体である唐傘もボロボロである
だが回復しようにも驚かす人間がいないので糧が手に入らない。まるで真綿で首を絞めるようだ
「はい。私を含めて時間はそう長くないです………」
「そうか………」
そうして一人、また一人と付喪神は姿を消していき最後は俺と未だに眠り続けている萃香の二人だけとなった