もう嫌だ、こんな世界。
個性がない、それだけ。たったそれだけでこんなにも違う。
嫌味、妬み、恨み、果てには虐め…。
もう疲れちゃったよ。
ここから飛び降りれば楽に…。
さよなら…
『まだ、早いんじゃない?』
っ!?
急にそんな声が聞こえてきて、踏みとどまった。
「誰…?」
周りを見渡したけど誰もいない。どうなってるの?
『あーあー、聞こえる?』
聞こえる。確かに聞こえるけども周りにはいない。何でだ?ついに疲れすぎて幻聴が…
『いや違うから。貴方の中に居る悪魔だから。』
あ、あく、ま…?
いや悪魔ってそういうおとぎ話系のやつじゃん。
『誰にでも悪魔っているんだ。その人の性格とか感情とかで違ってくるけどね。』
じゃあ、貴方は…?
『私は〜、まぁ優しい方だと思って欲しいな。』
そ、そうなんだ…。
でもなんで、私に話しかけてきたの?そのまま私が死んでも貴方には関係なさそうだけど…。
『えっとね、人から生まれた悪魔って結構めんどくさい身体をしてるんだ。身体の持ち主が死ねば悪魔も死ぬ。でも逆に悪魔が死んでも持ち主は死なない。変な身体だよねぇ。だからまぁ、私が一緒に死んじゃうから止めたっていうのもある。』
じゃあ、貴方が止めた本当の理由は…?
『君は周りから虐めを受けたり無個性ってだけで馬鹿にされたりと酷い仕打ちを受けてたね。私はそれをずっと見ていた。君の視点からね。それを見て私が思ったこと。それは…』
それは…?
『無個性で何が悪い?ってこと。』
…
『個性が無くて何か不便な事がある?個性が無くたって同じ人間同士じゃないか。それに元々人間ってのは個性が無かったんだ。時の流れで個性というものが生まれた。無個性の人間こそが本当の人間の姿なんだよ。』
じゃあ、私ってこのままでもいいの…?
『…まぁ、こうやって私と、悪魔と話せてる時点でもちろん普通の人間ではないのは明らかだね。』
え、なんで?
『普通悪魔と人間って話せないものなんだ。まぁ例外がいたりとかするけど。確率で言えば今の世界人口…、大体75億だっけ?その内の三桁いるか居ないかだよ。』
それって、すごいね。
『そ。貴方は凄いんだよ。個性を持って産まれてくるのが大体70%。それに対して悪魔と話せるように産まれてくるのは0.000000013%?かな。』
わ、わーお…
『まぁ数にしても実感がないよね…。人間の細胞が大体60兆あるうちの5000個(ネットで調べた)って言っても分かんないよね。』
うん、分からない。
『それだけ貴重なんだ。君みたいな存在って。だから、君を死なせたくない。これは君を利用したいから。駒として扱いたいからじゃない。私の、私自身の意思だ。だから君に提案しよう。』
て、提案?
『うん。あ、最近流行ってる言い方で言おうか。』
へ?
『素晴らしい提案をしよう。貴方も悪魔と契約しないか?』
けい、やく…?
『悪魔と契約。おとぎ話系のやつで良くあるでしょ?禁じられた力だー!とか、漫画とかでよくある展開でしょ?それだよ。今起きてるの。』
確かに…。でも…
『?何か問題が?』
いや、そういうことじゃなくて。
私なんかでいいの?
『貴方だからいいんだよ。さぁ、この世界の主人公は、貴方だよ。』
壮大だね…
『思い込みって大事だよ?自信にもなる。』
ふふっ、貴方って面白いね。
『あら、嬉しい。』
「いいよ。契約するよ。」
『ふふっ、そう言ってくれると思った。』
『それじゃあ一緒に契約の呪文を唱えようか。』
あ、やっぱりそういうのあるんだ。
『まぁ、そんな長くないから安心して。』
どんな感じなの?
『ゴニョゴニョ……』
オケ。
『「ここに、我ら主と遣いの契約を誓う。」』
『我が名はマナ。主に遣えし者。』
「我が名は悪夜見 御影(あくよみ みかげ)。遣いと共に歩みし者。」
『「ここに誓いを交わし、生涯を共に過ごし、運命も共に過ごし、死の瞬間までも共に迎えることを誓おう。」』
『よし、契約完了だよ。』
「あ、終わったの?」
『うん。左手を見てごらん?』
…なんか紋章がある。
『それが誓いの印。契約の完了を意味してる。』
すごーい…
『さて、これからよろしくお願いしますね、主様♪』
そんな固くなくていいし名前でいいよ。
『そう?じゃあ、改めてよろしくね、御影!』
うん、よろしくね。マナ。
これは、無個性だった私が内なる悪魔と契約して、ヒーローを目指すひとつの物語。
感想、誤字脱字、評価お待ちしております。