彼と会うまでの物語を書きます
起承転結の起、始まります。
村の中央の祭壇は、この村の名物。
なんでも、この
それはなんなのかはわからないけど、村の人たちにとってはご利益があるそうだ。
「ん? ……ああっ!?
アリス!? なんで君がカメ様に乗ってるの!?」
カメ様、それはこの村の守り神でこの村一の大きい亀だ。
それに乗っているのは妹のアリスと、この村の長老のアバさまだ。
「えへへっ! いいでしょ?
アバさまが、乗って良いって言ってくれたの!
ねえっ、アバさま?」
「ああ。今日は特別じゃ。
村の守り神 カメさまのお背中に乗せていただく日が来ようとは…………。
長生きはするもんじゃのう。
さあ、行くぞアリス。
他の者達も乗せてやらねば」
「はい、アバさま。
そうだっ! お兄ちゃんも乗って!
はい、私の手につかまって……」
アリスはそう言い、俺の方に手を差し伸べた、その時……!
「ダメじゃ!」
「…………えっ?」
「アルスは乗せられん」
「えっ!? なんで!?」
「そうよ! どうしてなの!?」
突然、アバさまは俺にカメさまを乗ってはいけないと言われた。
もちろん、アバさまは考えなしにこんなこと言う人ではない。
「………………。
よいか、アルス? この話は
「えっ? 俺に?」
「そうじゃ……」
「っ! アバさま……!」
「アリス、いつの日かお前が一人前の錬金術師になった時に話すつもりじゃったのじゃが、これだけは言っておかねばなと……」
「アバさま……?
それってどういう……?」
アバさまは数分の沈黙の後、俺にこう言ったのだ……。
「よいか? アルス…………それはな」
なんだなんだ!?」
突然、
「アリス──!!」
んっ……なんで妹が……?
…………まっまさか!?
「やっぱりダメだったじゃないか!
どうしてくれるんだい!!」
「え〜ん…………
ごめんなさい〜!!」
(今の音と言い、そしてこの足音は……!)
嫌な予感しかしないなぁ……!
「ああぁ…………
今年最後のハツラツ豆がぁ…………」
あぁ……今のやりとりのこの台詞……
アリス、やらかしたな?
「まったく!
アリスは逃げ足だけは速いんだから。
アルス! アルスっ!
いないのかい?」
「はいはーい、今ので起きたよー!」
「おや? まだ寝てたのかい?
あんたにしちゃ、めずらしいね?」
「ああ、実は……」
おばさんに、夢で見たことを話した。
アリスとアバさまがカメさまに乗っている夢を……。
「なんだって? アリスとアバさまがカメさまに乗っている夢を見た?
いやだよ、そんなことがあるはずがないじゃないか」
「だよなぁ……?」
「あっ、そうだよ! アルス、聞いておくれよ!
そのアリスちゃんがね!
錬金術でハツラツ豆を10倍に増やすって言ったのに、失敗して全部灰にしちゃったんだよ!」
「はぁっ……やっぱりそうか、
錬金術はまだ早いのに、あのお節介アリスは……!」
「出来の悪い妹の面倒を見てるあんたからしたら
たまったものじゃないよね?
全く、今年最後のハツラツ豆を…………。
アバさまがとーっても楽しみにしてらっしゃったのに、ひどいだろ?」
「はぁ……アリスには困ったもんだよ、でっ? 俺に何をしたら?」
「まぁ、本当はアリスちゃんが謝らないかってのが筋だけど
あの子の逃げ足と来たら…………
今回は仕方がないから、代わりにアバさまに謝ってきておくれ」
「だろうな、アバさまのところに行きますよっと……
確か、この村の奥の高台の大きな家だったよな?」
「そうだよ、まぁ言うまでもないか……
本当にアリスちゃんと来たら…………」
そう小言を言って、家をあとにする……。
(やれやれ、アバさまのところに行ったらアリスの奴を探すか……)
俺には、アリスと言う妹がいる。
ここ「エテーネ村」はなんも変哲もない村だけど、
錬金術が得意とする村だ。
でっ、さっき話した「ハツラツ豆」の件だが……
アリスの奴、どうやら豆を倍に増やそうと錬金したらしいが、
結果は知っての通りだ。
まあ、こんなところで文句言っても仕方がないか
アバさまのところに行って事の一部始終を伝えに行きますか……。
「あっ! シンイ!!
良いところに出会った!」
彼の名はシンイ、エテーネ村の魔法使いだ。
アバさまの付き人で俺たち兄妹の一番の親友だ。
「???
どうしたんですか? さっき外で何か騒いでいましたけど……?」
「ああっ、そうなんだよ……
実はな、アリスの奴…………」
シンイにハツラツ豆の件を伝えた。
「ええっ!? ハツラツ豆が!!」
「そうなんだよ、だから俺が代わりに来たって話さ」
「そうなんですか、あなたも大変ですね……」
「でよ、どうする?
手ぶらで済む話じゃないだろうし、どうしたら良いのか……」
「あっ! それでしたらアルスさん!
一つ、お願いを聞いてくれませんでしょうか?」
「ん? どうしたんだ?」
「ええっ、実は……」
「…………なんだって!?」
シンイのお願い、それはなんでもアバさまが最近ふさぎ込んでいるらしい。
どう言うわけなのかはわからないが、ことは深刻感じらしい。
「でっ? 俺に何をしたら良いんだ?」
「ええ、まずは「フカフカのもみガラ」と「干しどくけし草」の二つを持ってきてください、この二つは水車小屋のネイさんとノーラさんからもらえます、その二つがあれば充分です」
「わかった、その二つを持ってこればいいんだろ?」
「はい、よろしくお願いします」
「オーケー、じゃっ一っ走り行ってくる!!」
こうして、ネイさんとノーラさんに事情を話し、もみガラと干草を受け取る。
「おまたせっ!」
「アルスさん!」
シンイにもみガラと干草を渡した。
「ありがとうございます!
では、失礼して…………
さっそく作らせていただきますね!」
そう言い、机のある小道具を使う。
「そういや、シンイ?」
「んっ? なんでしょうか?」
「それ、どうすんだ?」
「ああっ、これですね……?
アルスさんはご存じなかったかもしれませんが、
実は私、裁縫が得意なんです」
「へぇ! そうなんだ!」
「はい、実はおばあさまの服も
いつも私が作っているんですよ」
「へぇ〜そりゃあ、意外だな……」
「よし! できた!」
「???
なんだそれ? 枕か?」
「はいっ! そうなんです、
ほら! 香りも肌ざわりも申し分もない。
最高の安眠まくらの完成です!」
シンイが編んだ物は、まくらだった。
「ああ、それで……」
「はいっ!
アルスさんが集めてくださった
もみガラとお茶の葉の効果で
おばあさまもぐっすり眠れるはずですよ!」
「そいつは良いっ!
ハツラツ豆の謝礼代わりにはうってつけじゃないか!」
「ええっ!
さあ! さっそくおばあさまに
使っていただきましょう!
一緒に向かいの部屋に来てください!」
「ああっ! ありがとう、シンイ!
今度魔法の訓練目一杯やろうぜ!」
「いえ、どういたしまして!
そうですね! まず、おばあさまに報告してからにしましょう!」
二人の交わした言葉は
これが最後になることを
まだ、知る由もなかった……
起承転結の起、完了
次は承の物語。