ゴブリンスレイヤー ~魂を継ぐ者~   作:ウォルナット

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第2幕……というか幕間回。しばらく日常回が続きます。
今回は『新米戦士と見習聖女』編。
白磁等級だと受けられる依頼がないねん……




出会いと相性

 冒険者ギルドに併設された酒場には日夜冒険者たちが集い、その日の冒険の武勲を誇ったり、あるいは仲間たちの活躍を褒め称えたり、あるいは訳もなく騒ぎ立て常に喧騒に包まれている。

 店内には食欲をそそる料理の香りが漂い、皿に豪快に盛り付けられた料理が目を楽しませていた。有力冒険者のテーブルの上だけの話だが。

 そんな金銭的余裕のない冒険者は、いつか自分たちもああなるんだと語り合いながら、恨めしそうに硬くなったパンを野菜くずと肉の切れ端の浮かんだスープに浸しながら食べていた。

 

 

 

 あの牧場での依頼からしばらくたったある日の夕食時のことだ。

 

一党(パーティー)メンバーを増やしてみない?」

 

 という言葉と共に幼馴染に2人の冒険者を紹介された。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 そう言ってきたのは白い法衣を纏い至高神のシンボルである天秤と剣を掛け合わせた天秤剣を携えた聖職者の少女。何度か見たことがある見習聖女だ。

 

「……よろしく」

 

 そう不機嫌そうに言ってきたのはこちらも見たことがある革鎧を着て円い皮盾と長剣を装備した戦士の少年、新米戦士だ。

 

「えーっと……よろしく?」

「ええ、よろしく」

 

 状況がよくわかってないがとりあえず、

 

「座ったら?」

 

 ということで席についてもらった。

 

 

 

「で、どういうことなんだ?」

 

 話を持ってきた幼馴染に問いかける。

 話を聞くと、まずこの2人はおれたち同様幼馴染で冒険者になった一党で、そんな背景もありおれの幼馴染と見習聖女が意気投合。話の流れで一緒に冒険しないか、という話になり今に至るということらしい。

 思わず頭を抱えたくなる。

 

「……話は分かった。で? どうするんだ?」

「え? どうするって?」

「一党メンバーが増えた、よかったよかったじゃすまないだろ。人が増えればやり方も変わる。どうやって決めるんだ?」

 

 幼馴染に再び問いかける。

 

「えっとー……そのー……」

 

 幼馴染は頬をかきながら目をそらす。さては勢いだけで何も考えてなかったな。

 

「あう……」

 

 見習聖女も恥ずかし気に俯く。反応の差はあれど、これは幼馴染と同類だな。

 となるとおれと同じ立ち位置の新米戦士が不機嫌そうだったのは何の話もされないままいろいろ決められたのが気に入らなかったってところか。

 そこまで考えて新人剣士の方を見ると目が合った。おそらくこいつも同じ結論に至ってこちらを見たのだろう。思わずお互い苦笑が漏れる。

 

「それならまずは自己紹介から始めない?」

 

 女魔術師が話を進めるように提案してくる。

 

「そうだな。じゃあまずおれから。おれは戦士だ。うちの一党だと基本的には壁役(タンク)だな。攻撃役(アタッカー)もできなくはないがそっちはこいつに一歩劣るってところか」

 

「じゃあ次はあたし! あたしは武闘家よ。こいつも言ってたけど、うちの一党だと攻撃役ね。敵によって変わるけど、最前線で敵を倒すか、こいつの後ろに隠れながらヒットアンドアウェイで攻撃するかが役割ね」

 

「そして私は魔術師よ。日に2回、『火矢(ファイアボルト)』の魔術が使えるわ。最後方で待機しながら、必要に応じて必殺の魔術を放つ大砲役ってところかしら。そっちは?」

 

 そういって今度は2人に話を振る。

 

「えーと、俺も戦士だな。俺も前衛、壁役兼攻撃役だ。こっちは2人しかいないからな」

 

「あたしは聖職者、呪文遣い(スペルスリンガー)よ。この天秤剣でわかるかもしれないけど、至高神様の聖女。日に1回『聖撃(ホーリースマイト)』が使えるわ」

 

「『聖撃(ホーリースマイト)』?」

 

 奇跡と言ったら『小癒(ヒール)』か『聖光(ホーリーライト)』しか知らないからどんなものなのかわからない。

 

「『聖撃(ホーリースマイト)』は至高神様の裁きの雷をお借りして秩序の敵を討つ奇跡よ。威力のほどは信用してくれていいわ」

 

 なるほど。つまりこの2人も攻撃型か。

 

「……」

「どうしたの?」

 

 少し思うところがあって考え込んだのを訝しんだ幼馴染が問いかけてきた。

 

「いや、なんでもない。さてじゃあどうしようか。そっちは何か提案とか要望とかあったりするか?」

 

 幼馴染の問いを誤魔化し、新米戦士と見習聖女に聞くが、

 

「えーと、あはは……」

「……うーん」

 

 いまいちな反応が返ってくる。

 

「まあ言葉だけだといまいちイメージもできないか」

 

 それなら、ということで一度それぞれの戦闘を見てみようという話になり、翌日下水道で一緒にネズミ退治をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 翌日下水道にて。

 

「ふっ! よし頼んだ!」

「うん! セイっ!!」

 

 話の通り今はお互いのやり方を見せ合っているところだ。まずはおれたちからということで、遭遇したネズミと戦闘することになった。

 前まではおれが1人で戦っていたが、剣を手に入れたことで棍棒を使わなくなったので、武闘家に装備してもらい攻撃役を担ってもらうようになった。

 おれが防ぎ、怯んでいる間に武闘家が仕留める。1匹相手なら必要ないが、複数相手する時などはこれでかなり安定するようになった。

 まあ、武闘家としては武器を使うことに思うところはあるようだったが。そこはしばらく我慢してもらおう。

 

「ふぅ……。まあ、こんな感じだな。おれが攻撃を受け止めてる隙に、武闘家が攻撃して仕留めるっていうのが基本だな」

「あと数が多いときなんかは私が魔術で数を確実に減らしてから戦う。できるようなら奇襲で仕留める……くらいかしら?」

「「おー……」」

 

 新米戦士と見習聖女が感嘆の声を漏らす。

 

「お、ちょうど新手が来たな。んじゃ、今度はそっちだ。頼むぜ」

「頑張って!」

 

 戦闘音を聞きつけたのか1匹の巨大鼠(ジャイアント・ラット)がこちらに走ってくるのが見えた。

 

「よ、よし! 行くぜ!!」

「う、うん!」

 

 そう言って戦い始めたのだが……

 

「えー……うん。まあ、しょうがない……のか?」

 

 割とグダグダな戦いぶりだった。まあ、ちょっと前のおれが1人で戦ってた時も似たような状態になったしな。前衛後衛の2人組ならこうなるのもしょうがない……のか?

 気を取り直して。 

 

「さて。これでお互いのやり方を見たんだが……どうしようか?」

「……とりあえず、私たちのやり方に加わってもらったら?」

 

 2人もとりあえずそれでいいということなので、そういうことになった。

 

 

 

 なったのだが……

 

「よっしゃ任せろ!」

「今!」

「「え!?」」

 

 おれが防御で作った隙に我こそはと幼馴染と新米戦士が同時に切り込んで、ぶつかりそうになったり。

 

 

 

「どわぁ!?」

「「おい!?」」

 

 ならばと盾役を交換したらあっさり崩されて作戦が決まらなかったり。

 

 

 

「すまん! 抜けた!」

「「……え?」」

「「ちょっと!?」」

 

 複数匹と遭遇した際に盾役を無視して後ろに向かった敵を、前衛2人がお互いもう1人が対処するだろうとスルーして後衛が直接攻撃されたり。

 

 

 

「《サジタ()……インフラマラエ(点火)……》」

「《裁きの(つかさ)、つるぎの君、》」

「「え? あっ!?」」

 

 後衛も後衛で呪文が必要な時に自分がと思い、かち合ったことに驚いた挙句、詠唱失敗(ファンブル)して使用回数を無駄にしたりと散々だった。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「うーん……」」」」」

 

 あの後とりあえずノルマは達成できたということで戻ってきたおれたちは、酒場で共に食事をしながら唸っていた。

 やっぱりみんな思うことは同じなのだろう。

 

「やっぱり問題だよな……」

「うん……」

「バランスが……」

「「相性が……」」

「「お金が……」」

「「「「「え?」」」」」

 

 違った。というかバラバラに言ったから何と言ったのかわからなかった。

 

「なんだって?」

 

 それぞれ何が問題だと思ったのか問いただしてみる。

 

「えーっと……。あたしはやっぱり即席だと息が合わないなって……」

「そう! それ!!」

 

 と言ったのは幼馴染と新米戦士。やはり前衛としては戦闘中即断即決が求められるからか、息が合わないのは致命的だと思ったのだろう。

 

「あたしたちは報酬がちょっと……って思ったのよね」

「ええ。当たり前だけど人数が増えれば取り分が減るのよね……」

 

 そう言うのは女魔術師と見習聖女。後衛……というか知恵者としては、この報酬量では生活していけないと察したらしい。それは確かに致命的だ。

 

「で? そういうあんたは?」

「バランス……役割かぶりすぎだよなって」

「役割?」

 

 いまいちピンとこないのか幼馴染が聞き返してきた。

 

「役割的に同じやつばっかなんだよ、おれたち」

「うん。それがどうしたの?」

「えーと、どう説明したものかな……。たとえば前衛だけで考えただけでも、盾役1人に対して攻撃役は2人もいらないんだ。ネズミ相手にそんなに攻撃力は必要ないんだから。だからと言って盾役2人必要な場面ってのもなかっただろ? 弓使いなんかの遠距離攻撃型とかだったらまた別だったんだろうけどな」

「つまり、手すきの人間が出てしまって効率が悪いって感じかしら?」

「そう。そんな感じ。前衛組の意見の、息が合わないってのはそういうのもあると思うんだよな」

 

 役割が被ってる分自分がやるべき、あるいは相手に任せるべきって判断も被るのが原因なんだと思う。

 

「将来的にそういうやり方の方がいいみたいな時はあるかもしれないけど、現状合わないと思うんだよな」

「……まあ、いろいろ言ってみたけど結論としては、私たちは一党としてやっていくにはあんまり……ってことよね」

「「「「「うーん……」」」」」

 

 また唸ってしまう。

 

「……まあ、一党としてやっていく分には合わなくとも縁のある一党として協力していく、みたいな感じでいいんじゃないか?」

「……つまり友達としてってことよね?」

 

 そういうことである。

 そんなこんなでおれたちの合同の冒険は幕を閉じたのだった。

 

 

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