まだ日常回。
今回は話を進めるための準備回と周りから見た戦士くんたちな話になるかな。
ある日の依頼終わりのこと。
「おめでとうございます!」
という受付嬢の言葉と共に、おれたちは黒曜等級へと昇級したのだった。
……いやもうちょっとくわしく話をしよう。
おれたちはいつも通り達成できそうな依頼を選んで出かけ、無事達成して戻ってきた時だった。
「みなさん、この後お時間よろしいですか?」
そう言ってきたのは受付嬢。いつも通りの笑顔ではあったが、どこかいつもより嬉しそうにしているように感じた。
お互い顔を見合わせ特に問題ないようなので答える。
「はい。大丈夫です」
「少々お話があるのでこちらに来ていただけますか」
そう言って案内されたのはギルドの奥に作られた一室。そこで待つように言って受付嬢は出て行ってしまった。
「……え、おれたち何かしたっけ?」
「さあ……」
「何かしらね……」
そんなふうにお互い顔を見合わせしばらく待っていると、今度は監督官の女性と見覚えがある気がするチェインアーマーを着た先輩冒険者を連れた受付嬢が入ってきた。
「お待たせしました。では始めましょう」
そして面接のようなものが始まった。
といっても当たり障りのないことを聞かれた程度で何か疑われている気配などは特になく。何が何やらわからないまま困惑していると監督官が種明かしをしてくれた。
「ごめんなさいね。実はこれは昇級の為の面接なの。この人がお気に入りの新人にサプライズをしたいとか言い出してさー」
「ちょ、ちょっとそれは……」
そういうことらしい。なんでも冒険者の昇級には『依頼達成による報酬総額』と『社会への貢献度』、そして『問題のない人間性』の持ち主であることが求められるらしく、これはそれを確認するための面接だという。本来は事前に昇級の為の面談をすることを告知するらしいのだが、今回は受付嬢の悪戯心によりこんなことになったらしい。話を事前に聞いていたのだろう先輩冒険者もおれたちの困惑ぶりを笑っていた。
「こほん! とにかく! 面接はこれで終了です。みなさんの人柄に問題がないことは確認されました。監督官さんも異論はありませんね?」
「はい。問題ありません」
監督官が形式に則り承認を下す。笑いをこらえながらだったが。
そしてあらかじめ用意していたのだろう。受付嬢の座っていた机の中から3枚の黒い板を取り出しおれたちに差し出してきた。
「おめでとうございます。皆さんはこれより黒曜等級の冒険者となりました。これからも頑張ってくださいね」
差し出された黒い板、黒曜等級を示すドッグタグを受け取る。そうしておれたちは黒曜等級の冒険者になったのだった。
「「「……」」」
部屋を出てから改めて首にかけたドッグタグを3人で眺める。
「……なんか実感ないな」
「うん……」
「そうね……」
確かに条件は満たしたのだろう。しかしやってる側としてはまだまだ失敗や知らないことも多く、上に行けるとは思っていなかった。反応を見るにみんなも同じ思いだったのだろう。
「あーもうやめやめ! 私たちは黒曜等級に昇級した。それを認めましょう。そのうえでまだまだということは忘れずに精進しましょう」
女魔術師がそんなことを言ってくる。まあここで考え込んでても仕方ないか。
「そうだな。そうするか」
「……あ! じゃあさ! これから掲示板で依頼を確認していかない? 黒曜等級になったんなら受けられる依頼も増えるんでしょ?」
幼馴染がそんな提案をしてくる。おれたちもそれに賛成して掲示板前に移動することにしたのだった。
ロビーの方に移動して掲示板の方に向かおうとした時だった。
「『
街の中では通常聞こえるはずのない呪文を唱える声が聞こえた。なんだと思いあたりを見回すとロビーの端の席に妖艶なる魔女が煙草に火をつけているのが見えた。その席におれたちの仲間であった女神官の姿も見える。
しばらく話をした後にひらりと手を振って人混みの中に消えていった。なんだと思いながら声を掛けてみることにする。
「神官さん」
その声を聞いておれたちがいたのに気づいたのだろう。俯かせていた顔を上げた。
「みなさん……お久しぶりです」
「その……大丈夫か?」
遠目で見たときは気づかなかったが、だいぶ疲労しているように見えた。
「ええ……まあ……」
そうは言うがとても大丈夫には見えなかった。なにを言うべきかとしばし逡巡した時だった。
バタン! と2階の扉が閉じた音がした。そちらを見るとずかずかと無造作に降りて来るゴブリンスレイヤーが見えた。そのままカウンターの方に向かい告げる。
「ゴブリンだ」
「やっぱり余所からの依頼だったんですね!」
おれたちより先に部屋を出て事務仕事をしていた受付嬢が応対をしていた。なにやら遠出の依頼のために、受けていた依頼の報酬を求めているようだった。
そんなやり取りを眺めていると傍を通り過ぎる影があった。女神官だ。
「ゴブリンスレイヤーさん!」
しばらく悶着していたが話は纏まったらしく花のような笑顔を浮かべ受付へと向かっていった。
それを眺めていたら今度は2階から纏まりのない集団が下りてきた。
「ちょっと、オルクボルグ! 私も行くわよ!!」
そう言ったのはすらりと背の高い細身の麗人だった。浮世離れした美しさの顔の耳は笹の葉状に尖っており
「やれやれ、とんだ偏屈者じゃのう……」
そう愚痴りながらも面白そうに言ったのは、禿頭に長い白ひげ、ずんぐりむっくりした体型のおそらく
「子鬼殺し殿。拙僧も参りますぞ」
そう言ったのは見上げるような体躯に全身を覆う鱗を持つ
なんなんだあの集団はと思っていたら女神官がゴブリンスレイヤーの元に戻り、3人が合流しそのまま連れだってギルドを出て行ったのだった。
「なんだったのあの人たち……」
幼馴染がおれたちの意見を代弁するように言った。
「さあ……それよりあの娘大丈夫なのかしら……」
女魔術師も心配そうに言う。
「余計なお世話かもしれないけど……今度労ってやるか」
おれもそんなことを言うのだった。
受付嬢的には戦士くんたちは優秀な新人というより、自分を頼ってくれる素直な弟分的な立ち位置になっています。
姉貴分で姉気分。
いたずらを仕掛けようという程度には気に入っています。