ゴブリンスレイヤー ~魂を継ぐ者~   作:ウォルナット

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女神官視点です。


袖触れ合うも多少の縁

 妖精弓手さんたちが持ってきた森の近くの遺跡のゴブリン退治の依頼の後、帰りの馬車の中でのことでした。

 

「そういえばあなた、ギルドで3人の新人と一緒だったじゃない? 知り合い?」

 

 思い出したかのように妖精弓手さんが発した問いは、わたしの胸を締め付けました。

 その時は思わず言葉を詰まらせてしまい黙り込んでしまいましたが、しばらくすると鉱人道士さんが執り成してくださり事なきを得ました。

 でもその後もしばらくその問いは頭から離れてくれませんでした。

 

 ギルドで一緒にいた3人。青年戦士さんと女武闘家さんと女魔術師さん。わたしの初めての冒険での仲間だった人たち。

 

 ゴブリンスレイヤーさんの依頼について回り、あまりギルドにいないわたしでも話を聞いたことがあります。

 曰く、新進気鋭の新人の一党だと。

 新人が冒険に出るとゴブリン退治でもネズミ退治でも怪我をするのは当たり前、帰ってこないことも日常茶飯事の中、毎日ほぼ無傷で帰還し受けた依頼も今まで一度も失敗していないらしいです。

 

 高火力の魔法が使える大砲役の女魔術師さん。

 

 素手ながら鍛えた身体と技で持って高威力の一撃で敵を屠る女武闘家さん。

 

 そしてどこで覚えたのか戦いというものを知っているかのような、慎重派の青年戦士さん。

 

 わたしがゴブリンスレイヤーさんについていくことにすると言った時もダメだったら戻って来いと言ってくれたやさしい人たち。

 あの人たちはわたしのことをどう思っているのでしょうか? そしてわたしとあの人たちはどんな関係性と答えるべきなのか……

 

(悪く思われていなければ、いいのですけど)

 

 今回の依頼の前にも心配そうに話しかけられていたのに、思わずゴブリンスレイヤーさんに食って掛かってしまい置いてきてしまいました。

 

(今度謝るべきですね)

 

 そんなことを思いながら、辺境の街に思いを馳せるのでした。

 

 

 

 

 

 

 ガヤガヤと、ザワザワと、いつものように喧騒に包まれた夜の酒場。わたしは今そこで、

 

「えー、では。神官さんの黒曜等級昇級を祝って!」

「「「かんぱーい!!!」」」

「か、かんぱーい……」

 

 青年戦士さんたち3人が催した宴会に参加していたのでした。名目はわたしの黒曜等級昇級を祝って。

 わたしはあの依頼の後昇級してそれをゴブリンスレイヤーさんに報告をしていたところをみなさんに見られ、それで今日の宴会を企画されたようでした。

 

 ……というか、

 

「あの……みなさんも昇級されてますよね……?」

 

 そう。気付かなかったのですが、あの依頼の前にみなさんも昇級をされていたそうなのです。

 

「みなさんのお祝いは……?」

「あー……」

「えーと……」

「そう、なんだけどね……」

 

 なぜかみなさんの歯切れが悪くなります。

 

「いやー昇級は確かにしてるんだけどなんか実感なくてな……」

「今のところ大きな怪我なんかはしてないけど、いろいろ失敗なんかもしてるからね……」

「そんな感じだったから、特に祝おうって気にはならなかったというか……」

「いや祝いましょうよ! みなさんの努力の結果なんですから!」

 

 過信したり傲慢になるのは良くないと思いますけど、さすがにこれは気にしすぎなのでは……

 そう思ってわたしは言いました。

 

「乾杯をやり直しましょう! わたしの昇級と、みなさんの昇級を祝って! かんぱーい!!」

「「「か、かんぱーい……」」」

 

 そうして改めて宴会を開始しました。

 といってもそんなに豪勢なものではなく、いつもの食事にお酒を付けた程度の物。わたしは果実水(ジュース)ですけど。

 

 しばらく歓談をしながら食事に舌鼓を打ってると少し気持ちが落ち着きふと不安に思ってしまいました。

 まだみなさんに謝罪もしてないのに、みなさんの厚意に縋ってばかりでいいのか、と。

 

「……」

「どうした?」

 

 突然黙り込んだわたしを不審に思ったのか、青年戦士さんが心配そうに話しかけられました。

 

(そういえば、あの時も心配そうにされていましたね……)

 

 そう思い一つ、息を吸う。そして話始めました。

 

「あの、すみませんでした……」

「え、なにが?」

「その……このあいだの依頼に出る前に話しかけていただいたのに、そのままゴブリンスレイヤーさんについて出て行ってしまいましたし……。それに初めての冒険の後も一党を抜けてしまって……」

「……ああ、別にそんなこと気にしなくていいのに」

 

 青年戦士さんはそう言ってくれました。

 気にしていないと言ってもらえるのはうれしくは思いますが、でも……とそう思ってもしまいます。

 

「……確かに、何も思うところがないって言ったら嘘になるわ」

 

 女武闘家さんが言います。

 

「でもしょうがないじゃない。あなたは信仰のため? だっけ。その信仰のために冒険者になったんでしょ? それでゴブリンスレイヤーさんについていくべきだって思ったんでしょ?」

「それは……はい」

「ならそれでいいのよ。あなたにはあなたの事情がある。あたしたちにもあたしたちの事情がある。それなのにあたしたちについて来いとは言えないわ」

 

 女武闘家さんはそう言って許してくれました。

 

「冒険者は一期一会っていうのも普通のことらしいわよ。同じ一党での活動をメインにしつつも、何か理由があって別の人たちとも冒険に出る。あなたはたまたま1回目の冒険と2回目以降の冒険で仲間が違ったというだけよ」

 

 女魔術師さんもそう言ってフォローしてくれました。

 

「まあ、それでも気になるというならまた時間がある時に付き合ってくれればいいさ。友達なんだからさ」

 

 青年戦士さんがそう締めくくってくれました。

 

「友達……」

「そう、友達。……え? 違う!? おれがそう思ってるだけ!?」

「……いいえ」

(友達。友達ですか……)

 

 オロオロし始めた青年戦士さんを少し面白く思いつつ、その言葉を噛み締める。心が温かくなるのを感じました。

 

 

 

 そうして少し黙り込んでしまった時でした。

 

「なーにしんみりしてるのよ!!」

 

 突然別の席から飛び込んでくる影が1つ。妖精弓手さんだ。

 

「初めまして! 私は今度からこの子と一党を組むことになった者よ。よろしく! ね、あなたからこの人たちのことを紹介してくれない?」

 

 そうわたしに話を振ってきました。

 紹介。そう言われて思わず口角が上がりました。

 ならばと口を開き紹介を始めます。

 

「こちらの方たちは、それぞれ戦士さん、武闘家さん、魔術師さん」

 

 そこまで言って一つ息を吸い、そして告げます。

 

「わたしの、お友達です!」

 

 そうしてわたしは、わたしの自慢のお友達をわたしの新たな仲間に紹介したのでした。

 

 

 




今回はこれまで。

女神官の昇級が戦士くんたちより遅いのは、原作より人間的評価がギルド的に悪いからです。
原作においては一党が全滅しても冒険者を続けようとする健気な少女でしたが、今作においては同期の一党を捨てて銀等級についていくという感じなので若干マイナス評価をされています。つまり作者のせいです。
あとは原作でも鋼鉄等級昇級の際に問題になりましたが、実力を疑問視されているのもあります。今までソロで活動していたゴブリンスレイヤーに白磁の神官が追加されたところで意味があるのか?と思われています。

今回の依頼で妖精弓手たちからも評価されたことと、戦士くんたちが昇級したから示しもつくだろうということで昇級となりました。

あとは2話くらい日常回兼準備回をやって牧場防衛戦で2章は終わる感じになりますかね。
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